『■或る、平穏な日の始まり 』

バルタサール・デル・レイ（aa4199）

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「……切れてやがる」
　四角い紙の箱を手の内でくしゃりと握り潰し、寝起きの顔でバルタサール・デル・レイ（aa4199）は低く唸った。
　用済みになった煙草の空箱を、視界の隅に見えたゴミ箱へ投げる。
　それがぽすんと中へ着地するのを見届けもせず、サイドテーブルの引き出しや机の上といった心当たりを一通り荒らしたのだが。
「……ストックも切れてるじゃねぇか」
　背に腹はかえられず、吸い殻から長めの一本を引き抜き、潰れた先端に火を点ける。
　煙を深く吸い込み、吐き出し、ようやくバルタサールは目が覚めた。
「買いに行かねぇとなぁ……煙草」
　ベッドに座って整える前の髪をかき上げ、うんざりと呟く。
　頼んで買ってきてくれるような気の利いた輩など、今の彼の身辺にはいなかった。
　ようやく補給した朝の一服に刺激されてか、今度は身体が空腹を訴える。
「ヤニを喰って生きていけりゃあ、楽なんだが」
　仕方なく煙草を咥えたまま腰を上げ、彼はベッドルームから出た。


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　キッチンに入るとベッドルームから移動する途中で回収した新聞をテーブルに放り投げ、冷蔵庫の重い扉を開けて中を覗き込む。
　だが扉の重量感に反して、庫内は寒々しい。
　――というか、すっかりビールの保管庫と化していた。
　出かける機会が多ければ、そのまま外で食事を済ませるパターンも多く。
　そうなると食材を買い置きしても無駄になる為、合理的と言えば合理的なのだが。
「……卵と、ハムもあるか」
　何か買いに行くのも面倒なので、つまみ用に残っていた適当な材料で妥協する道を選択。
　取り出した卵3つとハムの塊を、テーブルに転がした。
　普段から使っていないせいかシンクは綺麗で、調理道具も使用に問題はない。
　フライパンに油をひいて熱し、手早く目玉焼きでも作るかと卵を割り入れれば、初手から無残に内臓破裂を起こした。
　一瞬だけ眉根を寄せたものの、殻をシンクの隅に投げ捨て、2個目3個目を割り入れる。
　結果、成功率は約3割。
　少しばかり不本意な結果だが、混ぜてしまえば問題ない。
　当初の予定が現場の判断で変更されるなんて事態は、往々にしてあるものだ。
　かくして、軽く塩コショウをしたのち、スクランブルエッグが出来上がる。
　後はナイフで少し厚めに切り取ったハムを二枚ばかり平皿に置き、そこへスクランブルエッグを乗っけた。
　食材を物色中に棚で見つけたソルトクラッカーを取り出し、最後に缶ビールを添える。
　椅子に座るとまず缶ビールを開けて喉を潤してから、新聞をテーブルに広げ。
　スプーン代わりのクラッカーで卵をすくっては、口に運んだ。

　バルタサールが追う『ターゲット』に繋がるような、目ぼしい記事は今日もない。
　愚神に関する情報を得るなら「H.O.P.E.」を使うのが手っ取り早いだろうが、日常の断片から手がかりを探す行為を完全に放棄する気にもなれなかった。
　何かしらの――第六感めいたものに、僅かながら期待しているのかもしれない。
　しかし相も変わらず世界は退屈で、ポケットを叩いても煙草は切れたままだった。

　とりあえず腹の虫は黙らせたので、使ったものをさっさと洗って片付ける。
　食後の一服も出来ないまま、髭を剃り、髪を整え、シャツの袖に腕を通した。
　それから武装を確認し、スーツを纏う。
　最後にコートを引っかけながら、彼は玄関へと向かった。


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　天候は適度に晴れ、気温は低い。
　昨日の今日で街は劇的に変わる事もなく、人や車の流れは休むことを知らない。
　見かけた自動販売機で繋ぎの煙草を仕入れ、手の内で遊びながら「H.O.P.E.」へと足を運ぶ。
　見慣れた施設の、巨大なモニターが幾つも並ぶフロアに入って、すぐにバルタサールは紙箱の封を切った。
　取り出した煙草に火を点け、まずは息継ぎをするように深く一服。
　紫煙を吐いて肺の空気を入れ替え、ようやく人心地ついたところでモニターに目を向ける。
　帰りには、また予備の煙草を補給しなければならないが。
　まずはカウンターで業務に当たるオペレーターへ、煙草を咥えたままバルタサールは声をかけた。
「何か、厄介で面白そうなネタは入ってねぇか？」

　そして今日もまた、煙草と硝煙の匂いと面倒なパートナーの相手が混ざった、『平穏』な一日が始まる――。



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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【PCID　／　名前　／　性別　／　外見年齢　／　種族　／　クラス】

【aa4199／バルタサール・デル・レイ／男／48／人間／攻撃適性】

おまかせノベル

風華弓弦

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2019年01月11日