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『【任説】OVERDRIVE 』
齶田 米衛門aa1482)&スノー ヴェイツaa1482hero001)&ウィンター ニックスaa1482hero002

 砂塵巻き起こる砂漠の道を、軽快なエンジン音を響かせて行く車がある。オープンタイプの軍用車を改造して牽引車にているらしいそれには、これまた奇特なナリをした人影が乗っている。

「にしてもお前、まぁた派手にやらかしたもんだなぁ!」

 運転席に座っているのは、露草色の髪を風に遊ばせている男。太陽光から目を守るためサングラスを装着した姿は、どこぞの組織筋の者だと言われても納得できてしまうような凄みがある。が、陽気な雰囲気で朗らかに笑う顔は穏やかそのもので、見るものに恐怖心を感じさせない。
 男の名を、ウィンターという。髪の毛の間から生えたねじくれたツノと尖った耳が、彼が狭義での「人」ではないことを示していた。露出している皮膚に鱗が見当たらないので有角鱗人《ドラゴノイド》ではなさそうだが、かといって他に当てはまる種族は思い当たらないような、不思議なナリをしている。

「うう、面目ないっス……」

 助手席を倒して寝かされているのは、洗いざらしの髪を短く切りそろえた青年。 見るからにボロボロの風体で、機械義手である右手など原型を留めないほど壊れてしまっている。
 青年の名を、ヨネという。罪悪感と遠慮と不甲斐なさを混ぜこぜにしたような表情で雲ひとつない空を見上げ、車の振動に揺られている。時折、内側から弾け飛んだように壊れている右手をみては、溜息を吐き出していた。

「スノーもおかんむりだったぞ。ヨネがまた無茶やらかしたー! って。今日はお説教だな」
「ぐむむ、仕方ないべ、今回ばかりは甘んじて受けるっスよ。自分でも相当無茶したなぁとは思ってるんス……」
「ホバーバイクが壊れて帰れない、って連絡来た時は耳を疑ったぞ。アレは俺が作ったやつの中でもかなーり頑丈にできてるからなぁ。まぁ、あの大きさの砂鮫が出たんなら然もありなん、って感じだが」

 苦笑しながら肩をすくめて、牽引する荷台を親指で示すウィンター。そこにはフレームの歪んだホバーバイクと、鈍く太陽光を照り返す銀灰色の骨格。

「よく倒せたな」
「コレのおかげっスよ」

 ヨネが生身の左手で大破した義手を指差せば、ウィンターが呆れたように鼻息を吹き出した。

「そーゆー用途に使うもんじゃぁないんだが?」
「なんとやらとハサミは使いよう、ってやつっス」
「バカはお前だこの愚弟。ったく、無茶しやがって。無事なのが奇跡だぞ」

 隣に寝そべるヨネの頭髪をぐしゃぐしゃに見だして、ウィンターが呆れたようにため息を吐いた。髪を乱されるヨネはなんだか嬉しそう。

「でも、いい素材手に入ったっスから、プラマイでいうとプラスっスな」
「バーーーーーカ」
「あいでッ」

 無事な左手でサムズアップなどするから、ヨネはウィンターの拳骨を食らって悶える羽目になる。兄弟仲は良いようだ。

「そりゃ、砂鮫の骨格とコア、しかもこの大きさのやつがほぼ無傷だ、素材としては文句ないけどな。それでお前が怪我してりゃ世話ねーんだ」
「でも結果的に無事だったじゃないっスか」
「結果論の話ししてねーの! 過程で危険な目にあうなっつってんの!」
「いだだだだだだ!! 兄さん痛いっス!! あと危ないからちゃんと前見て運転して!!」
「誰もいねーわこんな砂漠のど真ん中!!」
「ぃぎゃあああああ!!」

 ジリジリと肌を焼く日差しの下、ヨネの若干嬉しそうな悲鳴がどこまでも響き渡っていった。



「こンのバカヨネ!!」
「アダぁ?!」

 ボロボロの風体で帰宅を果たした愚弟に開口一番一切躊躇のない鉄拳制裁を下す獣耳の女性。名をスノーといい、ヨネどころかウィンターすらも敵わない、この家最強の存在だ。
 フンッ、と不機嫌に花を鳴らすスノーは、鉄拳の痛みに地面でうずくまって悶えるヨネを見下ろして腰に両手を当てている。怒ってるぞ、と全身で表現する彼女に、ウィンターも苦笑したまま弁明する様子はなかった。あまりそうは見えないが、怒っているのはウィンターも一緒である。

「状況は?」
「砂鮫1匹とタイマン。腕のコア暴走させて頭爆破して倒してた。すげぇでかいぞ、見るか?」
「持って帰ってきたのか……まぁお前が素材目の前にして我慢できるわけがなかったな……」

 使いものにならないヨネを無視してウィンターに問いただすあたり、スノーの慣れがうかがえる。そしてウィンターの「素材」に対する飽くなき欲求も知っているため、頭痛を堪えるような顔をしながらもそれについて特に言及はしない。するだけ無駄だと長い付き合いの中で学んでいるのだ。

「しかし、お前が『でかい』と言うくらいだ、相当な大きさなんだろ?」
「まぁな。よくコイツ一人で倒せたな、って程度には。俺のトラックくらいは余裕であるんじゃないか? 距離も相当人里に近かったし、あれはちょっと、調査しないとだな」

 肩をすくめるウィンターの言葉に難しい顔をするスノー。
 ウィンターのトラックとは、彼が仕事用に使っている商品運搬用の4トン級のホバートラックのことである。全長7.5メートル、全幅2メートル、全高2.5メートルを超える中型のトラックで、主に大型の商品を積載して砂漠を爆走する、ウィンターご自慢のモンスター車両だ。もちろん改造済みである。

「ンンー、そりゃ確かにマズいな。あとで協会に連絡しておく」
「頼む」

 そのトラックに匹敵する大きさの砂鮫、と聞き、スノーも危機感を募らせたらしい。難しい顔をして頷いていた。 

「兄さんも姉さんもヒドいっスよ……もっとちゃんと無事に帰ってきたカワイイ弟の心配して」
「誰がカワイイ弟だ誰が。調子に乗るんじゃねーよカワイクナイ愚弟が」
「痛い痛い痛い!!」

 兄と姉が話している間に回復したらしいヨネが調子こいて唇を尖らせていたが秒でスノーに締められた。頭を両手でぐりぐりやられて悲鳴をあげている。

「ワシだって危険な目にあいたくてあってんじゃないんスけど!」
「知ってる。だがそれとこれとは別の話だ! 大人しく説教受けろ!」
「理不尽!!」
「ぬわーにが理不尽だ! 心配かけやがって! この! この〜!!」

 身長差などなんのその。ヨネの頭を抱え込むようにして両手の拳でこめかみをグリグリするスノーに、悶える弟はジッタバッタと身を捩る。
 お互い本気ではないじゃれ合いだから、見ているウィンターも微笑ましそうにしているだけ。なんなら暴れるヨネの足を掴んでくすぐってくる始末。あまりの暴挙にヨネは本気8割の蹴りで応戦したが、体勢が悪いせいであっけなく避けられてしまった。くそぅ。

「じゃれ合いもほどほどにな〜。ヨネ、落ち着いたらドック入れよ」
「ヘーイ」
「その前に説教だ覚悟しとけよ」
「うえぇぇ」

 兄と姉にもみくちゃにされるヨネは、お説教の単語に嫌そうな顔をしながらも、どこか嬉しそうに目元を緩ませていた。



 砂漠の入り口に立つ木製の建物。出入り口らしき大きな扉には、大きな文字で「補給地 ヴェイツ食品店」とか書かれた看板が鎮座している。
 周囲に他の家屋はなく、人影もない。そんなどこか寂しい雰囲気を漂わせるその建物から、砂漠の乾いた空気を震わせて響き渡る悲鳴が聞こえてきた。

「ッでぇ!!」
「我慢しろ、自業自得だ」

 大げさなほど跳ね上がった肩を力強く叩いて、ウィンターがどこか呆れたような顔をする。

「ううう、この痛みだけは慣れないっス……なんとかならないんスか?」
「なんもならんから嫌なら壊すな。これだってタダじゃないんだぞ」
「ぐぬ、わかってるっスよ……」

 無鉄砲が過ぎる弟分を前にして隠す気配なく大きなため息を吐くウィンター。今しがた義手を取り付けてもらった弟分は、神経接続時の痛みを引きずって涙目である。それでも唇を尖らせて「でもワシの所為じゃないし」などと言い募るあたり、ヨネもなかなかにいい性格をしている。

「でも兄さん、もうちょっと優しくしてくれたってバチはあたんねぇと思うんスけど」
「何が優しくだバカヨネ。そーゆーのは消耗品みたいにバカスカ装備壊さなくなってから言え」
「ぐっ」

 ウィンターの言葉が耳に痛いらしく、唇を引きむすんでおし黙るヨネ。「消耗品みたいにバカスカ装備壊」している自覚はあるらしい。
 もぐもぐと何か言いたげに口を動かすヨネだったが、結局何も言えずに口をつぐんだ。
 そんなヨネを見て、ウィンターがいろいろな感情のこもった溜息を吐き出す。この弟分は、要らんことには口がよく回る癖に、自分の言いたいことは一つも言わないものだから困る。

「……砂鮫のコアでなんか新しい装備作ってやるから、次は壊すなよ」
「……!!」

 結局のところ、なんだかんだでウィンターも弟には甘いのである。
 ヨネがキラキラと瞳を期待に輝かせるのを、ウィンターは愛しいものを見る眼差しで見守っている。

「おーい、メシできたぞー」
「お、わかった! 今行くー!」

 扉から顔だけ出したスノーが呼ぶので、男どもは今までの空気など霧散させて、いそいそと身支度を整えた。汚れた格好で食卓につくとスノーのカミナリが落ちるのである。彼女は食に対して自分にも他人にも妥協を許さない。

「兄さん、あの骨格って何に使うんスか?」
「お前の新しい移動手段と義手」
「!」

 食卓に向かうまでの短い間に交わした言葉でヨネのテンションが爆上がりし、スノーに「落ち着いて食え!」と拳骨をもらうまであと数分。
 砂漠の補給地は今日も平和である。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【aa1482/齶田 米衛門/男性/21歳/アイアンパンク】
【aa1482hero001/スノー ヴェイツ/女性/20歳/ドレッドノート】
【aa1482hero002/ウィンター ニックス/男性/27歳/ジャックポット】
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2019年01月15日

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