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『『続・愛の行方――心の軋み』 』
アレスディア・ヴォルフリート8879

「……今日は、もう、休むから……ディラも、ゆっくり休んでくれ……」
 アレスディア・ヴォルフリートがそう言うと、ディラ・ビラジスは何も言わずに部屋から出て行った。
 続いて、玄関のドアが閉じる音が響いてきた。
 アレスディアは自室に、1人になった。
 握りしめている拳が、震えていた。寒さ、ではない。怒りか、悲しみか……感情が身体にあふれ出ていた。
 強い苦しみの感情に、彼女は覆われ囚われていた。
 ディラがアレスディアを連れて、地下室から出た後、爆発が起きた。
 誰が起こしたものなのか、アレスディアもディラも知らない。
 だが、規模からして、あの部屋に居た者に生き残れる術などないだろう。
 事実、発生源の地下で人は見つかっていないという。
 ドクターだ、とアレスディアは思った。
 あの時、頭突きではなく――。
(ドクターの命を奪っておけば、火災は防げたのではないか)
 あの場で、意識が戻れば動ける状態であったのは、あの男だけだった。
(離脱者達の足を、意識を奪わなければ、何人かでも助かったのではないか)
 ディラに足を奪えと指示したのは自分だ。
(連れ出すことを優先していれば、あの女性だけでも助けられたのではないか)
 ディラのかつての仲間で、彼が手を組んだ女性。ディラのことが好きだったと、過去の想いを求めて向ってきた女性。
 渡さぬと、アレスディアは彼女を突き飛ばした。そうではなく、受け止めていたら。手を引いて、外に連れ出していたら……。
 そして、何よりも。
(想いを寄せなければ、想いに応えなければ、ディラを巻き込むことはなかったのではないか)
 失ったのは、彼のかつての仲間だ。
 ディラは仲間達に友情など、感じてなかったはずだが、彼は人の心を持っている。彼が自分に向ける愛情は演技なんかじゃないから。
 だから人の心を取り戻そうとしている知り合いの死を望んでなんかなかったはずだ。
 恐らくは、彼だって心に深い傷を負っただろう。
(誰かを護ろうとすることは、ディラを戦いに巻き込むということに他ならない。覚悟していたはずなのに。わかっていたはずなのに……)
 瞼に浮かぶのは、苦悩する彼の顔。
 戦うことを選ぶ彼女を組み敷きながら、逃げることを望む彼。
 自分がこういう女であることは、よく知っているはずなのに。
 彼の葛藤を見た時、アレスディアは平静ではいられなかった。
「護ってほしいなどと言うべきではなかった」
 アレスディアの口から、言葉が漏れた。
『嬉しい、苦しほど。俺は、そうありたい』
 それは確かな彼の言葉。2人とも、強く強く互いを護りたいと思っている。
 彼の言葉を消し去ろうと、アレスディアは首を左右に振る。
「敵の前に立つのはいつでも私一人で良い。隣にいてくれなくても、ディラが笑って生きていてくれればそれで良い」
 笑みを向ける先が、私じゃなくても、私である必要は何一つない。
 彼に普通の人としての幸せを与えられるのは、自分じゃない。
 自分じゃない誰かを、愛し護って笑って生きてくれれば。
 その大きな手で家庭的な娘を撫でて、抱きしめて、愛を囁いて――。
『ずっと、ずっとこうしたかったんだ』
 突然、彼の切なげな声がアレスディアの脳裏に響いた。
 彼の音が、激しい熱さを伴う感情が、思い浮かんでいく。
 押し込めようとするのに。思い出すべきではないのに。
『もう、離さない』
 絡められた指の感触が、重なり合った彼の温もりが忘れられない。
「っ……う……」
 あの温もりの中に戻りたい。
 強く、強く湧き上がってしまうその感情。
 拳を強く、ベッドに叩きつける。
 否、戻るべきではない。
 相反する想いが、アレスディアを深く苦しめていく。心が軋み、呼吸が乱れる。

 私は――
 私が彼を求めれば
 彼の未来も
 命、さえも
 奪ってしまう

 またどこかで、亀裂の走る音がした。


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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号/PC名/性別/外見年齢/職業】
【8879/アレスディア・ヴォルフリート/女/21/フリーランサー】

NPC
【5500/ディラ・ビラジス/男/21/剣士】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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お世話になっております。ライターの川岸満里亜です。
ウェブゲーム『続・愛の行方 前編』のアレスディアさん視点のノベルをお届けいたします。
今回はディラ視点のおまけが少々入りきりませんでした……。
引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
東京怪談ノベル(シングル) -
川岸満里亜 クリエイターズルームへ
東京怪談
2019年01月18日

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