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『ジェリービーンズ 』
アルヴィン = オールドリッチka2378

 新年のカウントダウンが近づくにつれて、リゼリオの街並みはどこかそわそわとした陽気に包まれる。
 数日前までは赤緑白と聖輝節ムードだった街の輝きも、より華やかな魔導イルミネーションに彩られて、新たな一年の幕開けを祝福しようとしていた。
「ンー、いいネ、いいネ」
 街の様子を愉快そうに見渡して、アルヴィンはひょこひょこと街を練り歩く。
 こんなに楽しそうなときに、外に出ないなんてありえナイ。
 それに新年を部屋で迎えるなんテ、ごめんだヨー。
 彼にとって、街へ繰り出す動機としてはそれくらいで十分だ。
 
 普段は深夜になれば流石に静かにもなる通りは、今日に限っては賑やかで。
 多くの人々とすれ違っては、その言葉が耳に届く。
 
 新年への期待。
 同様の不安。

 良き良き。
 期待はすなわち希望に心を洗われるということ。
 不安はすなわち守るべきものがるということ。
 どちらをとっても、世界は愛にあふれている。
 
 そんな中、ふとアルヴィンの頭の中にひとつの単語が思い浮かぶ。
 初詣――リアルブルーの一地域や東方に根付く新年の文化だったカナ。
 地元の神殿にはせ参じてお祈りを捧げる。
 1年間、健やかに過ごせました。
 今年もよろしくお願いします。
 確か、そんな意味で行くのだとか。
 神様をそんなに信じていないアルヴィンにとっては知識程度のものだったが、いちイベントとして見れば興味がないわけでもない。
「マ、ものは試しだネー」
 友人に聞く初詣は、なかなかに華やかな「お祭り」だ。
 楽しげなことなら体験してみない手はない。
 だけど、こちらの世界にいわゆるリアルブルーの神社はない。
 あ、いや、どこかにブルー出身のハンターが建てたものがあったカナ……?
 あったような、なかったような。
 なかったような、あったような。
「そんな時は、探してみヨー!」
 着の身着のまま気の向くままに、いつもの通り、街を練り歩く。

 新年まであと30分。
 そわそわしていた街の空気がふと落ち着いて、どこかしっとりとした落ち着いたものに変わる。
 くる年への願いから、ゆく年への想いへ。
 始まりよりも終わりを偲んでしまうのは人の常だ。
 とはいえアルヴィンにとってそれはそれほど重要なことではなく、今一番大事にしなければならないのは新年を迎えるまでに神社が見つかるかどうかだ。
 確か、赤くて大きな鳥居っていう木の門がトレードマークだって聞いた。
 だけど深夜の薄明かりでは色を判別することはできず、結果として聞きかじった鳥居という門の姿を心に描きながら、それを探すほかなかった。
 こう2本の柱が立っていて、その上に横向きの柱が2本通ってる感じ。
「そうそう、だいたいこんなかんじデ……」
 ふと見上げた道端の柱。
 そこに紛うことなき鳥居の姿があって、彼は思わずぽかんと口をあけて根本からてっぺんまで見上げてしまった。
「あったヨ〜!!」
 一瞬遅れて、歓喜の声。
 神社発見。
 ブルーの文化もだいぶ浸透したのか、鳥居から続く参道には、すでに多くの参拝客が列を作っていた。
 さっそくひょこひょこと歩み寄り、最後尾に並ぶ。
 先頭は見えないけれど、なに焦ることはない。
 時間だけはたっぷりあるのだから、むしろじっくりこの空気に浸ってみよう。
 
 途中、給水所のように置かれた出店でくつくつと煮込まれる白い酒を購入する。
 コップに詰まった温かさにかじかんだ手を温めながら、ずずっとひとすすり。
 独特の香りと穀物の強い甘み、そしてほんのり僅かなアルコール。
 それがどろりとした特徴的な舌触りと共にお腹に流れて、身体の中からぽかぽかと温かくなっていくのを感じる。
「これは何て飲み物なのカナ?」
「ああ、甘酒だよ」
「ワー、元も子もないネ」
 とってつけたような名前に、思わず笑ってしまう。
 とはいえ、なんかすんごい名前を付けられていても、後で友人たちに自慢するときに忘れてしまいそうだし。
 甘いお酒。
 甘酒。
 うん、これくらいなら覚えてられる。
 
 列の先、神殿らしい建物の屋根が見えて来た。
 この調子ならあと十数分もすれば「初詣」できるだろう。
 そんな時、空からドーンと大きな音が降ってきた。
 はっと見上げると、街の方の空一面に大きく開いたマテリアルの花火。
 色とりどりの光が星屑のようにきらめいて、大輪の花を咲かせていた。

――あけましておめでと〜!!

 他の参拝客が時計を見ながら思い思いに声をあげる。
 年が明けたのだ。
「ハッピーニューイヤー!」
 アルヴィンも負けじと声を張りながら、空に散らばるジェリービーンズに大きく手を振る。
 伸ばしたら掴めるのではないだろうか。
 それくらい空を埋め尽くす輝きに、飛び跳ねる心と一緒に身体も跳ねた。

 今年も楽しく素敵な年になぁれ。
 その願いを叶えるように、今年もいっぱい、笑顔になろう。
 
 
――了。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka2378/アルヴィン = オールドリッチ/男性/外見年齢26歳/聖導士】
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2019年01月21日

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