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『『続・愛の行方 中編』 』
アレスディア・ヴォルフリート8879

 闇の縄に縛られて、アレスディア・ヴォルフリートは次元の狭間に引き摺りこまれていた。
 光と闇が渦巻く、歪んだ世界で彼女を待っていたのは――。
「将、校……」
 アレスディアは息を飲み、コインを盾に変えて闇を振り払う。
 闇を発する禍々しい武器を持ち、彼女前に立つその男は決して忘れる事が出来ぬ相手。
 アレスディアの肩に消えることのない深い傷を負わせた相手。
 彼女の故郷の人々を、殺し、滅ぼした男。
「なぜ……」
 深い憎しみの感情に囚われ、言葉が出てこない。
「抗体を取りに来た。それだけではないが」
 男の目が鋭利な刃物のように光った。
 彼の眼もまた、深い憎しみを表していた。ただその男の眼は、アレスディアとは違い、冷たく鋭い。
「こう、たい……。あの騎士団に、所属しているの、か」
「そうだ。理由は言うまでもないだろう。そこでお前の生存を知った」
 男が剣を振り、放たれた闇の刃がアレスディアを襲う。
 盾でアレスディアは闇の刃を受け止めつつ、男を睨み続けた。
「『護る』が口癖のようだな。それで、一体誰を護れた?」
 闇を放ちながらの、男の嘲り。
 闇の刃は盾で防げても、言葉の刃は全てアレスディアに突き刺さっていく。
「民は無残に殺され、お前に縋った離脱者どもは焼け死んだ」
 故郷の人々の姿が、アレスディアの脳裏に浮かんでいく。
 自分を護ろうとした人々。護るべく、護りたかった人々が殺されていく、姿が。
 声が、血が、命が無くなった、滅んだ故郷が、アレスディアの脳裏を駆け巡っていく。
「離脱者の中に、魔術師の女がいただろう? あの女は人身売買で団が買った女だ。貧しい家に生まれ、親兄弟の生活のために、自ら売られたそうだ。才能はあったが冷酷になれず、使い物にならなかった。ウイルスで不要な感情を殺すまではな。他も、ウイルスを処方された者は同じようなものだ」
 ディラのことが好きだったと言っていた女性のことだ。アレスディアの脳裏に浮かぶその人は、女性らしい綺麗な人だった。
「案ずることはない。団は高額で彼女を買い取っている。お前とちがって彼女は家族を救っている。自分自身は、お 前 に 殺 さ れ た が」
 アレスディアの目から憎しみの感情が消えていく。
 表情は凍りつき、呼吸だけが荒くなっていた。
「そうだ、民も離脱者どもも、お前が殺したも同然」
 闇の鞭がアレスディアへと飛ぶ。盾で防ぐも、体勢を崩し、彼女は膝をついた。
「ディラ・ビラジスもそうだ。お前があの場に行かなければ、あんな死闘を演じることもなかった」
 闇の針が、アレスディアの頭上から降り注ぐ。防ぐより早く、降り注いだ針がアレスディアの身体に突き刺さった。
「全ては、お前の浅はかな情けと正義感が引き起こしたことだ」
 彼女の目から完全に光が失われたことに、男は冷たい喜びをたたえた笑みを浮かべた。
 男は、アレスディアの後方へと魔法を放つ。
 歪んだ空間から、外が見えた。
 異変を察知し、アレスディアの部屋に駆け付けたディラの姿が――。
 目を見開いて、アレスディアは何か言おうとする。その彼女に、攻撃を加えながら近づき男はこう囁いた。
「あの男も、殺す気か?」
 途端、彼女が持つ盾が消え、コインに戻り……砕け散った。
 男の掌が近づいてくる。
 知っている。
 この掌に触れると、吹き飛ぶ。
 血と肉と共に、命が吹き飛ぶ――。

 ディラは買い物の途中で、空間の歪みを感じ取り、急ぎアレスディアの部屋へと戻った。
 外からでも分かるほどに、彼女の部屋付近に歪みが生じていた。何らかの魔法道具で、空間と空間を無理やり繋げている。
「アレスを……連れていくつもりか!?」
 何故?
 抗体を持つ女なら、他にも沢山いるはずだ。わざわざこの世界に拉致に訪れずとも。
 開かれた空間はそう短時間で閉じることはない。
 間に合う。彼女を追える。駆け付けることが出来る。
 だが――一度、行ってしまったら。帰路はない。
 この世界に、彼女と過ごした2年間の平和を取り戻すことは、もうできない。
 悲しみと絶望の果てに、苦しんで死ぬ最期しか見えなかった。

 あの日。
 政府の軍人であった男は、向ってきたアレスディアを返り討ちにした。
 それがきっかけとなり、民衆が蜂起し、負傷。部隊に損害を出し、中央より冷遇されるようになった。執念で生き延びた男は、後にとある騎士団に拾われる。
 ――故に、アレスディアに深い恨みを抱いていた。
 彼女の盾が消え失せ、コインが砕け散った様を見て、男は知る。
 最も残酷な復讐の方法を。より深く、彼女を苦しめる手段、心を完全に壊す方法を。
 実験体として使い物にならなくなろうが構わない。抗体を持つもの1人くらい失っても、代わりはいくらでもいる。
 心を打ち砕き、尚更なる絶望を与え、嬲り殺してしまえばいい。


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号/PC名/性別/外見年齢/職業】
【8879/アレスディア・ヴォルフリート/女/21/フリーランサー】

NPC
【5500/ディラ・ビラジス/男/21/剣士】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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ライターの川岸です。危険レベルSのご依頼ありがとうございます。
次回ですが、男(将校)は、アレスディアさんを動けなくした状態で、お前のせいだと嘲笑いながら、ディラをじわじわと痛めつけていきます。
最終的にはアレスディアさんの手でディラが死ぬよう仕向けるつもりです。

ディラの応戦方法は、ダガーと魔法です。自身に対する闇の拘束具は魔法で切り落とせます。

それから補足ですが、敵NPCの台詞などの、地の文で断定されていない文章は、真実ではないことも含まれています。
例えば今回でいいますと、魔術師の女の生立ちはアレスディアさんを苦しめるために、男が適当に作りだしたものとなります。

尚、次元の狭間の先に行く結末を迎えた場合、お2人の物語はバッドエンドとなります。
それではプレイング、緊張しつつお待ちしております。
東京怪談ウェブゲーム(シングル) -
川岸満里亜 クリエイターズルームへ
東京怪談
2019年01月22日

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