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『『続・愛の行方――融合』 』
アレスディア・ヴォルフリート8879

 故郷を、大切な人達を滅ぼした男の刃が、ディラ・ビラジスに向けられていた。
「お前のせいだ」
 と、男はアレスディア・ヴォルフリートに囁く。
 体は闇の縄に拘束され、動くことが出来ない。
 武具と化せる筈のコインは、砕け散ってしまった。
「すぐに止めは刺さん。泣き叫び、別れを惜しめばいい」
 その言葉に、アレスディアは男の意図に気付く。
 自分のディラを大切に想う気持ちに気付き、この男は彼を甚振るつもりだ。
「ま、待て……ッ、抗体は私だけで十分だろう、ディラに手を出すな」
 必死なアレスディアの言葉に、男は楽しげな笑みを浮かべた。
「そうか、手を出されるのは嫌か」
 アレスディアが止めようとすればするほど、嘆けば嘆くほどこの男を悦ばせ、男はディラに攻撃を加えるだろう。
 止めてくれと、出かけた言葉を必死に飲み込む。
 自分の痛みには耐えられる。だが、他の誰かの痛みは耐えられない。
 それが、大切な人の痛みなら尚のこと。
(今、この瞬間にこの命が尽きれば……)
 舌を噛み切ろうかとさえ、思ってしまう。
 皆に護られた命を無駄には出来ない。でも、また更に、大切な人を失うというのなら――。
(私の命が無くなれば、ディラは自由になれるのに。傷つくこともないのに)
「ディラ、この男の掌に気を付けろ。空間が閉じる前に戻れ」
 無我夢中で、アレスディアは叫んだ。
「アレスも一緒だ」
 傷つきながらも、ディラは絶対に退こうとしない。アレスディアは首を左右に振る。
「まだ、間に合う……ディラだけでも戻るんだ。戻って、平和な世で、誰か、と……幸せ、に……」
 それ以上、言葉が出なかった。
 自由になって、傷つくことも傷つけることもない平和な世で誰かと……幸せに生きてくれればと思っていた。
 ディラが笑って生きてくれればそれでいい、と。
 だけれど、今、彼を前にして、自分のせいで苦しんでいる彼を見ても、言葉に出来ない。
 平和な世界で、家庭を持って、大切な、人を作って……戦いではない方法で、家族を守って、幸せに、幸せに生きてほしい、と……何故思えない。
 その世界で、ディラの隣にいるのが、自分ではない、他の誰かだと思うと、心が軋んだ。
(大切な人の幸せを願えないなどと、なんて浅ましい)
(ディラが幸せなら、それで十分じゃないか)
(私は誰かの幸せを護る矛であり、盾なのだから)
 そのために命尽きるのなら、本望のはずだろう。
 一つ、一つの考えに、首を横に振る存在がアレスディアの中に在った。
 その存在が、アレスディアの喉を締めて、言葉を出なくしている。

「お前は大切な者を死に導く。お前が愛した者は等しく死に絶える」
「お前のせい、じゃない。俺の意思だ」
 男の言葉と、ディラの言葉が響く。
「共にいてこそ、状況は切り開ける……そうだろ?」
(……ああ……そうか……)
 ディラのその言葉は、アレスディアが彼に言った言葉だ。
(私は、ディラと共にいたかった。それがどんな状況下であっても関係ない。ディラの隣にいたかった)
 不安げに、泣き出しそうな眼で、アレスディアはディラを見ていた。
「……今度は……置いて、いかないか……? 一緒に……いさせて、くれるか……?」
 彼が約束を破り、1人で行ってしまったことが、とても辛かった。
「1人で解決しようとしたのは、間違いだった。悪かった、もう離れない」
 信じて大丈夫だろうか。
 また彼は自分を置いていきはしないだろうか。
「いつだって、俺はアンタと一緒に居たい。だが、状況がそれを許さない時もある。そんな時は、アレスがこっちに来い! 矛を持たずに1人で飛び込むなッ!」
 ディラの怒声が響いた。
 彼と共にいてもいいのだと。側に行ってもいいのだと……。
 そう、理解したとき。
 彼女の意志が、ディラと共に育まれた意思と融合した。


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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号/PC名/性別/外見年齢/職業】
【8879/アレスディア・ヴォルフリート/女/21/フリーランサー】

NPC
【5500/ディラ・ビラジス/男/21/剣士】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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ライターの川岸満里亜です。
ウェブゲーム『続・愛の行方 後編』のアレスディアさんの心情のご依頼、ありがとうございました。
アレスディアさんの心を繋ぎ止めることが出来る台詞だったのか、少々不安が残っております……。
今後、愛を深められる出来事がありますことを、願っております。
東京怪談ノベル(シングル) -
川岸満里亜 クリエイターズルームへ
東京怪談
2019年01月31日

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