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『日はめぐり、たどり着く場所。 』
煤原 燃衣aa2271)&阪須賀 槇aa4862)&無明 威月aa3532)&藤咲 仁菜aa3237)&人造天使壱拾壱号aa5095hero001)&楪 アルトaa4349

 無機質な扉が地獄へと続いているなどと誰がおもうだろうか。
 歩み寄ればウィンと音を立てて開く自動ドア。
 その奥には暗闇と無が広がっている。
 そこには何もない、何も見えない。
 むしろ自分たちが纏う血の香りの方が濃厚にあたりに満ちる気がする。
 ここには自分達しかいないのではないだろうか。
 そう、鎖繰が思った矢先である。
 仁菜が前に出た。
「さがって」
 短く、小さく、鋭い声。
 普段以上の俊敏さを持って、普段とは違う盾を構える。
 仁菜は全員を守るように先頭に立ち。
 匂いでもない、気配でもない。殺気でもなく思い出もない。
(これはなに?)
 悪意としか評せないその存在を真っ向から受け止めた。
「コイツ……『吐き気を催す邪悪』ってヤツだお……」
 槇の言葉が闇に響き、仁菜は知っている感覚を思い出そうと記憶を探る。
(これって…………前にも感じたことがある)
 その問いかけに第二英雄が頷くと、仁菜の脳裏にフラッシュバックする映像がある。
 まるで愚神商人や王と対峙した時のような威圧感。
 得体のしれない、底の知れない気配。
(ダメ、これを隊長に近づけちゃいけない)
 そう思った矢先である。
「よう、燃衣。げんきそぉじゃねぇか。また死に損なったのか?」
 その声に全員が聞き覚えの有ることだろう。
 燃衣は様々な思いをかみ殺して、まず一言だけ闇の中に言葉なげた。
「やっと、会えましたね。清君」
 直後灯りが灯った。灯ったと言っても『黒日向 清』が浮かび上がるように、その体だけ照らすようにだ。
 依然として部屋の様子は見えない。
 暁メンバーはまるで暗闇に放りだされるような感覚に陥った。
 背後の扉が閉まる。
「何故こんな悪事を?」
 燃衣がはっきりとそう口にする。その問いかけか、それとも燃衣の言葉が面白かったのか。清は燃衣を鼻で笑った。
「意志は霊力を増幅する。とりわけ悪意は強く霊力を増幅する。霊力は力だ。全てはその力を育み、回収する為に」
 回収…………収穫。よく聞く言葉だ。ラグ・ストーカー関連では特に。
「なぜそんなにも力を。優衣の事か? ボクが悪かったのか?」
 燃衣の脳裏によみがえるのはあの日の記憶、全てを失ったあの日。新しく生まれ変わったあの日の記憶。
 炎のなかに消える弟。その悲鳴と清の馬鹿笑いが重なった。
「お前らの事は何の影響もない、わかるか? お前等みたいなちっぽけな人間なんて比較にならないほどに、大きな運命と俺は出会ったんだよ」
 燃衣は眉をひそめる。
 その隣でマキは銃のロックを外した。
「なぁ燃衣」
 清は両手を広げて踊りだしそうなテンションで問い掛けた。
「幸せって何だと思う?」
「僕らは問答をしに来たわけでは有りません」
 仁菜が、槇が鎖繰が武装を構える。
「全ての命には死がある」
 朗々と語りだす清。
「幸福の根源とは死より遠ざかった事を感知する事だ」
「命が尽きないのが幸せ?」
 仁菜が嫌悪の表情を、わかりやすく向ける。
「俗物が…………しかし、理解は早いな。おおむねそう言うことだ」
 吐き捨てるように告げる清。清は仁菜をまるで興味のないもののように扱う。
「死にたくない、その気持ちはあるよ」
 その死にたくない、というワードに清は眉をひそめた。
「私だって死にたくないし、誰も死なせたくない。だけど一人で生き続けるのは本当に幸せ?」
「死にたくないし、死なせない?」
「私は一人じゃ生きられない。ここまで来れたのも仲間と英雄がいてくれたから」
 そう仁菜は背後を振りかえる。そして清へと向き直り再び戦闘態勢をととのえた。
「自分以外全ての命を奪って生きることに、意味なんかないよ」
「何を当たり前のことを言っている? それはそうだろう?」
 その言葉に仁菜は目を見開いた。
「死にたくない、死なせたくない、誰もがそう思うに決まってる。だからこそ優位をとる必要があるんだろうが」
「優位?」
 仁菜が思わず問いかける。
「この命は、この細胞は一人でに増えたか? 違うだろ? 捕食し、場所を得て、日の光さえ、誰かかから奪ってんだよ。だったら死なせない、死にたくない。それを有言実行するには誰よりも優位をとらないといけない」
 仁菜は感じていた。
 この人間とは根本的な価値観、倫理観が違う。たぶん分かり合えない。
「一人じゃ生きられない。いいだろう…………なら自分が生きられるだけの他人も護りきれない優位を得ろ。
 誰も死なせたくない。それもいいだろう。だったら死なせないだけの優位を得ろ。
 俺たちはなぁ、奪わないと生きられない。そう言う運命の元に生きてるんだよ。
 それが嫌なら、俺たちをそう設計した神より優位をとれよ」
 謳うように継げるように清は言葉を吐き出し続ける。壊れたジュークボックスの様に恍惚として。楽しげに。
(こんな、こんなやつに隊長も苦しめられて、威月たんも…………)
 槇は枯れたはずの涙があふれるのを感じた。
 しかし、敵から目を放すわけにはいかないのだ。敵はいつこちらに襲い掛かってくるか分からない。
「それが、あなたの、あの日。全てを滅ぼした理由ですか?」
「話をせかすなよ、燃衣。悪い癖だぞ。だからあいつは死んだ」
 燃衣が拳を振り上げようとしたとき、鎖繰がその手を取った。
「彼女が言っている。まだ手を出すなと」
 鎖繰の小声に気づかずに清は話しを進める。 
「死の回避の為に命は『優位』を得る必要がある」
 違う。
「人が人に進化したのは『優位』を得る為だ」
 違う。
「誰かに認められて幸せなのは優位を得るからだ」
 違う。
 聴けば聴くほどに槇の中で違うという声は大きくなっていく。
 清は間違っている、どうしようもなくその思いだけが増していく。
「人を虐げたり逆に復讐を果たそうとする事も優位を得る為だ」
「それは手段と目的が逆だお」
 槇が銃を突きつけながら反論する。
「何かがしたくて、何かが欲しくて、救えない者を救いたくて、誰もが優位になることを望むならわかるお。けどアンタはそれを優位を得るために優位が欲しいって言ってるお。それ何のためだお」
 清は静かに槇を見つめる。
「中身のない力じゃ意味ないお、当然思いだけじゃだめだお」
「まずはすべてがなせるようになってから考えればいい。そうは思わないのか?」
「隊長が言いたいのは、全てをなすために優位を得たとしても、その時にはまわりが更地になってるってことだお」
「だったら、その更地に新しい世界を作るさ。俺は神だからな」
「アンタは自分で悪だと気付いていない……もっともドス黒い『悪』だお……」
「清君。僕はとっくにあなたの言う、優位を…………あなたは得ていると思っていました。違うんですか?」 
 燃衣がそう問いかける。 
「それは今の話か? 昔の話か?」
「今も昔も」
「だとしたら燃衣。御前は」
 清の拳が震えた。そしてその背中から爆発的な霊力を発し清は顔を手で覆う。
「お前は収穫と関係なく殺さなきゃなぁ!!」
 それは翼となって空間を叩いた。
 暗い闇の様な空間はひび割れ。砕けるとそこには研究施設が広がっている。
 研究施設と言っても広い。とてつもなく広く。培養槽が無数にならぶ。
 その培養槽の中には全てヴァレリア・ヴァーミリオンが収まっており。
 あたりを見渡す槇に気が付くと、目を見開いて槇をじっと見つめた。
「趣味が、悪いね」
 独り言のように仁菜がつぶやく。
「お前が奪ったんだろうが! 俺から」
 その言葉に燃衣は目を見開いた。
「気付いてなかったってか? そうだろうなぁ、お前は何も気づけない愚図だった。昔も今もだ!」
 激昂する清の体内から何かが伸びてくる。それは皮膚を引き裂くことなくぐにょぐにょと清の体を、形を変える。
「お前といるせいで俺はどれだけのものを失わないといけなかった?
 覚えてるか? 燃衣。の山を駆けずり回ってる時によ。お前を助けて池に落ちたことがあっただろう? あれで親父の形見の時計はダメになった」
「それは、気の毒だったお。全面的に隊長が悪いお」
「御前は知らなかっただろうが、御前が集まりに遅れたせいで俺はあいつとの時間をとりそこなった。御前が忘れた教科書のせいで、俺の教科書を貸す羽目になった」
「ちょっとまつお、話のスケールが急にダウンしてついていけなくなったお」
 清の口は決壊したダムの様にさまざまな言葉を並べ立てる。
「御前にかけた時間。御前と一緒にいたせいで失った評価。御前に分け与えなければならなかったおやつ。お前のことを任された俺は御前から逃げることが出来なかった」
 ほんの、ほんの日常の一ページ、施し施されですら清からすれば燃衣が奪ったことになっているのだ。
 その言葉に燃衣はむなしさにも似た感情を抱いた。
「清君…………君は、僕が嫌いだったんだね」
「そうだ! 御前なんて大嫌いだった。俺からすべてを奪っていくお前は俺より圧倒的に優位だった。その優位が俺には欲しかった」
「僕は…………」
 燃衣の言葉を遮り清は言葉を続ける。
「あいつでさえ、最終的には御前の物になった。結局、お前の隣にいる俺は空っぽだった」
 それは死に等しいと清は言った。
「……優位を得る為には力が必要だ。力無き者はすぐに死ぬ『力こそが全て』……だから俺は力を求めた」
 結果、天使が舞い降りたという。
「いや、あれは神だな。俺を導く神だった、神はなんでもできるって俺に言った、だったら何でもやってやろうって思ったんだ」
 その言葉の意味を察して槇は食らいつくように叫んだ。
「神サマとか永遠の命を目指すとかバカジャネーノだお、いくら空っぽだからって、そんなんじゃ意味ねーお」
「意味…………か?」
「人間、普通に生きて普通に死ぬのが一番幸せだお! ゲームやって! 彼女出来て! 孫に囲まれて末永く爆死すんだお!」
「御前たちのようにか?」
「う…………俺に彼女はいねーお。けどそれでも…………そうだお。俺たちこそ、幸せだお」
 そう言い切る槇を清は鼻で笑った。
「だったら、今ここで俺が殺しても、お前たちは幸せだったっていって死ぬんだろうな?」
 殺気と共に言葉を飛ばす清。
「そんな話にはならないでしょ!」
 仁菜がそう声を荒げる。
「いや、そう言う話だ。お前たちは流されるままに生きて。死ぬべき時が来たら死ぬ。そう言ってるんだろう? だったら、お前たちはいくつの『死ぬべき時』をゆがめてきた?」
 仁菜は息をのんだ。
「お前たちと俺は何が違う? 自分の思い通りにならないことを、思い通りにして来た。それを何度も何度も続けてきた。俺とどう違う?」
「だれも不幸にしてねぇお」
「それは本当にそうか? 燃衣にとっての俺の様に、陰で泣き寝入りしている誰かがいるとは思わないのか?」
「いたとしてもそれは愚神とかだお。だから何の問題もねぇお」
「なら、虐げられている俺たちが、俺達の優位を脅かすお前らを食っても何の問題もねぇな」
「話にならねぇお」
「それは、こっちのセリフなんだよ」
 告げると清は息をのんで中指を立てて槇を挑発する。
「バカにわかるようにいやぁ。お前等もう用済み。せめて糧となって消えろ。そう言うことだよ」
 決して相容れない、槇はそう結論付けた。
「もういいよ、清君」
 燃衣が悲しそうに言葉をかける。
「一つだけ聞きたい。キミが……皆を。弟を殺したのか?」
 しかし、再び向けられた瞳は炎に染まっている。
「お前の弟にはプリセンサーの才があった、弟の魂を再現し未来を視る力を得たんだ、それはあいつが望んだことだ」
 憎悪、怒り、その他もろもろ。燃衣はすでに問答程度で彼を許すつもりはない。
「あいつ?」
「神にして、悪意」
 そんな燃衣を清は嘲笑う。
「そうだなぁ、あの日。あの時。よく覚えてるぜ。俺が神として覚醒した日だ」
「もう、いいと僕は言ったはずです」
「まぁ、聞けよ、燃衣。物語は校舎裏から始まるんだぜ」
 それは優衣との決別の日でもある。そう語りだす清。驚く燃衣。
「こっぴどく振られてな。理由をきいたら。ほっとけないからだとさ。御前だよ、おまえ、お前のことがほっとけないってよ」
 失意に飲まれその場に立ち尽くす清。遠くに聞こえる喧騒。グラウンドを走り回るバカの群。窓から汚い音を漏らしている吹奏楽のイカレポンチども。
 清はすべてが嫌になったという、全てを壊したくなったという。
 だが目の前に現れた神が。
『すべてを与えよう』
 そう言った時、清は目が覚めたと言った。
「そん時全部わかっちまったんだよな。俺の存在意義というかさ。俺が神だって」
 そう。あの時清は。
 幼い少年ですら神にしてしまう存在と出会ったのだ。

  *   *

 外では激闘が続いていた。
 アルトがこしらえた急造の偽極姫は何度も壊され、そのたびに新しいパーツと装備を交換する。
 もはやその火力、物量はたった一人で戦争をしていると言って過言ではない。 
 もう一人、神のごとき力を宿した精霊含め。一介のリンカーと呼ぶはパワーもスペックも違い過ぎる二人と朱雀は善戦を繰り広げていた。
 そんなアルトにヴァレリアヴァーミリオンが話しかける。
「あなたの人生が狂ったのはいつ?」
 アルトは空に飛びあがりミサイルとレーザーを放つ。アルトは連弾の様に光る鍵盤をかき鳴らして旋律と共に戦場を圧倒していた。
「そうだな……それは」
 いくつか候補はある。両親がいなくなったとき、腕を失った時、姉妹と離れ離れになった時、再開したとき、大切な人が出来た時。
 でも、それでも。
「アタシは神になりてぇなんて思ってねぇ」
 ヴァレリアは清の身の上話を全て話してしまった。
 それをきいたアルトや彼女に意見を求めるように。
「どれだけ人生が狂っても、どれだけ寂しくても、どれだけ痛くても。けどいっこいっこ前に進まねぇとな。うまくならねぇんだよ。ピアノみたいなもんだ」
「あなたはその腕に高性能なピアノ自操機能をつけることが出来たはず。それをしなかったのはなぜ?」
「決まってんだろ。それじゃアタシの魂は表現できねぇ」
 アルトは周囲から襲いくる炎のダーツを体を回転させて直撃を防ぐ。前方にシールドをはって叩き落とし。ミサイルポッドを切り離すと輸送機型に改造された偽極姫がドッキング、あっという間に装備が補充される。 
 両腕を重ねると指先が分厚い刃にかわる。それを重ねると巨大なドリルのような形状となり、放たれたそれは地面を削りながら朱雀を追い詰めた。
 朱雀が空に逃げても自動追尾。
 アルトは腹の部分を開いて超大型の砲塔をさらす。
 収束されたエネルギーは炎さえ焼ける光の束。
 朱雀の行く先を演算して予測すると自分の腕ごと撃ち落とすつもりでレーザーを放った。
 あまりの出力に空中を飛んでいられなくなり、地面を削りながら着地するアルト。
「ふきとべ!」
 アルトは片手での演奏に切り換えてもう片手でミサイルを腕に装備した。そのまま発射するとそれは光の中に突っ込んで大爆発を引き起こす。
 空中にさいた光の華。その中から一枚花弁が落ちたかと思うと、空中で身を翻して。アルトへ突っ込んでくる。
「目の前に救いが降り立ったあなたはそれにすがったはず。差し伸べられた手ををあなたはとった。それは清も同じこと。絶望して、疲れ果てて、それでも救いを望んで救える人が目の前に現れた。それはあなた達と一緒」
「全然ちげぇよ」
 アルトの周囲を跳ぶ二体の鳥形偽極姫、それは腕に接続されると先ほどよりも大きな拳となる。
 拳に霊力が充填されるとそれは左が負の力。右が陽の力となって。
 握りあわされることにより反発、膨大なエネルギーが周囲の物理法則すら砕いていく。
「それが間違った力だったら途中からその力を使うのをやめりゃいい。それが出来なかった弱い心があいつだろうが!」
 アルトは真っ向から朱雀へと向かう。
 衝突し、その体にひびが入りながらも仲間を信じて戦い続けた。

   *   *
「黒日向 清。いや清君と呼ばせてもらおう」
 その時鎖繰が口を開いた。
 ただその声音は燃衣のよく知る者に似ている気がした。
「威月さん?」
「もう私でも分からない。だが彼女たちの意見も述べさせてもらおう」
 鎖繰は単身清の前に立つ。
「まず私から。御前気持ち悪いぞ。自己肯定感のない中学生で発想が固まってる、もっと世界を観ろ、楽しいものが沢山あるぞ」
「あ?」
 その言葉に清は怒りをあらわにした。その表情は燃衣がよく遊んでいた彼の表情に似ていた。
(そうか、清君……君は……)
 あの時でもう世界が、時が止まってしまっているのだと燃衣は気が付いた。
「そして次は彼女からだ。お前の元かのだよ」
 鎖繰は実際魂にアクセスし続けるには体力を使うのか汗をぬぐいながら言葉を紡ぐ。
「私は、あなたの事が確かに好きだった。でも燃衣の事が好きなのも確かだった。二人とも危なっかしくてほっておけなくて」
「だから二人とも手に入れようとしたのか?」
「そうじゃない。けど、そう映ったならごめんなさい。あなたに謝る。だからもうこんなことは、やめて」
「それが最後か?」
「まだあるぞ、最期は御前が弄んで殺した威月から。『隊長にぶっ飛ばされてくれたら許してあげます』だとさ、自分が死んだこと忘れてるんじゃないかな、ほんと」
 ふらつく足取りの鎖繰はかくんっと体を折ってその場に膝をついた。
 鎖繰はシンを見上げながらこう言葉を閉めくくる。
「少し、いい顔になったな、それなら私たちの言葉も通るかもしれない」
 そう燃衣をみて一歩下がる鎖繰。
「シン君、あなたは間違った力を求めすぎた。僕たちが倒します」
「それは困る。俺はあの日願ったことを完遂できていない。わかるか? 燃衣。俺は願ったんだよ、『全てが欲しいってな』」
 その言葉に神は驚きの表情を見せたという。 
 その時、培養槽の中のヴァレリアが一斉に目を覚ました。培養槽を叩くともがくようにその表面を割り、そして生れ出ることが出来ないままに絶命していく。
 その絶命したヴァレリアの喉から黒い何かがデロリとこぼれ。
 それは培養槽を透過すると一所に集まった。
 清の真後ろの培養槽に集まって、ヴァレリアを中心に黒い塊を形成した。
「答えはできっただろ? もうそろそろ遊ばせろ。白虎も青龍も玄武も。あいつらがやられるなんてどれだけぶりだよ。わくわくが止まらなかったぞ、燃衣!」
 そして黒い塊は腕をのばして培養槽を破壊すると歩きだす。
 歩きながらそれは人の形を取り戻し、清の投げたマントに身を包むと人造天使壱拾壱号とよく似た姿……いや、正確にはもっと似ている対象があるだろうか。
「君は、弟とよく似ているようだけど?」
 燃衣が問いかけるとその少女は人造天使壱拾壱号なら絶対しない、いやらしさに満ちた笑みを浮かべる。
 それは語る。始まりの言葉を。三つ目の眼が開く。緑色が鮮やかな瞳だった。
「命が力を求め続ければそれは何処へ至る? ……『神』だ」
 一言一言話すだけで室内の温度が下がった気がした。 
「死を、全てを超えし存在へ至る事は生命の深淵なる目的だ。そして其れは出来る。この世界は僕らならば」
「……『大いなる悪意』は既に六つ集めた」
 そう言葉を継いだのは清。
「残りは燃衣、君の憎々しい魂の内で育った『瞋恚』を喰らうのみ」
 そう指さす、その何者かはその身の邪悪を清に纏わせ始めた。
「ごきげんよう燃衣。そしておめでとう。
 我が名は【イヴウィル】その意は悪意。
 ……君の仇だ。
 復讐者の日々はどうだった? 真実に到達した気分は?
 嘲笑う者や彼女は楽しんで頂けたかな?」
「そうですか、これがたどり着くべき真実。そして最後の敵なんですね」
 燃衣は料の拳に炎を宿す。
「隊長、やるお。もう覚悟はできてるお」  
 告げたのは槇。
「もう、今まで食べたパンの数を聴く気にもならねぇお」
 頷く仁菜。
「隊長、勝てると思う?」
「那由多以下の確立ですかね。これはなんていうか、手におえる気がしません」
 だが燃衣は引く気は一切ない。命に代えてでも倒さなくてはいけない。
「千に一つ、万に一つ、それがたとえ那由他の彼方でも 俺には充分に過ぎるお」
「神が相手と言われたって負けるもんか」
 仁菜が告げる。
「私はもう諦めないって。折れないって決めたんだ。
 見てて……威月さん。
 私が貴女の最後の思いを守ってみせるから」
 直後施設が揺れた。
「朱雀が遣られたかな、…………奴と。何よりあの神霊は誤算だった…………真なる神が出しゃばるとはね」
 敵の共鳴が完了する。膨大な霊力を前に暁は削られた戦力で立ち向かうことになる。
「だから俺は神を目指す、目指せるから目指す。今こそ収穫の時だ」
「そんな倒錯した欲望を許すつもりはありません」
「さぁ死ね親友よ!お前を喰って俺は神となる!」
 振るわれた最初の一撃、まるで霧の塊を叩きつけられたようなわけのわからない攻撃。
 だがそれを見ても燃衣は立っていられる。

「俺が『俺たち』が、お前の仇だ」



━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…………・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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『煤原 燃衣 (aa2271@WTZERO)』
『阪須賀 槇(aa4862@WTZERO)』
『藤咲 仁菜 (aa3237@WTZERO)』
『人造天使壱拾壱号(aa5095hero001@WTZEROHERO)』
『楪 アルト(aa4349@WTZERO)』
『無明 威月(aa3532@WTZERO)』
『月奏 鎖繰(NPC)』
『ヴァレリア・ヴァーミリオン(NPC)』
『黒日向 清(NPC)』

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛

 お待たせしました、鳴海でございます。
 もう一本の方はすぐにお出しできますので少々お待ちください。
 ライター通信もその時に。それでは。

追記
 内容失礼しました。修正いたしました。お手数をおかけしてすみません。
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2019年02月15日

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