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『大切にしているもの 』
アルヴィン = オールドリッチka2378

 用意した花束の中に、緑の薔薇が三本。
 「穏やか」「希望を持ち得る」「愛している」「告白」……自己満足のようにこめられたそれを墓前に供えて、恒例のようにチョコレートを数個、人参を一本置く。
 アルヴィンの実家にある、家族たちの埋葬地。
 気まぐれのように一度始めたそれをやめるのは難しくて、河原に石を積むように、祈りを重ねていく。

「今年もネ、バレンタインの時期にナッタヨ」
 バレンタインは嫌いじゃない、気持ちがキラキラして、留めきれない想いが溢れてて、……自分の誕生日を覆ってくれる、特別な日だから。
 チョコレートパーティをして、サプライズのように誕生日祝いもしてもらった。誕生日は隠してはいないけど特別主張もしていない、なのに仲間である彼らはそれを覚えていて、祝おうとしてくれた事を有り難いと思っている。

「ソウソウ、あのネ――」
 少し前に、大精霊と契約してリアルブルーの守護者になった。
 だから何という事は感じていない、単にデメリットを感じてなくて、受け取るメリットならあった、そうしたいと思うだけの理由も持ち得ていた。

 契約の時、リアルブルーの憂う口振りは、アルヴィンが大切な少数のために自分を顧みず投げ出す聖者とでも言わんばかりで。
 買いかぶってくれて悪いのだけれど、アルヴィンは大精霊リアルブルーが思う以上の人でなしだった。
 アルヴィンの世界には“1”と“無限大”しか存在しない、無限大は勿論この世界の全部という意味で、この無限大もアルヴィンなりに大事にしていて、ただ優先度的には“1”の方がちょっとだけ重い。
 1の中にあるのは切れ端のような想いの残滓。貰った想い、見せてもらった気持ち、アルヴィンのところまで届く感情のさざめきをかき集めた、アルヴィンが少しだけ大切にしているもの。
 自分は1の中には入っていない、自分がいるのはゼロの裏側、プラスもマイナスも両方見ることの出来る位置で、どちらも選ぼうとしていなかった。
 そして勿論、他人も1には存在してしない。だって彼らは“こちら側”じゃないから、境界外。

 結局のところ、アルヴィンが守護者になってまで大切にして守ろうとしているのは、友人とか仲間とかそういう個人じゃなくて、彼らを通して触れる想いだった。間近で感じられる想いだから、とても大切、友人や仲間の真似事をさせてくれるから、かけがえなく思っている。
 どんな時間、どんなやり取りがあったとしても、アルヴィンの心は死んだままだから、人との関係を正面からは受け止められない。彼らの側にいるとは思えなかったし、同じになって、彼らにこっち側に来て欲しいとも思えなかった。
 アルヴィンなりに大切に思っている、でも、内情を知った彼らは怒るだろうか。気にしない子も、自分なりに受け止める子もいるだろうけど、少なくとも一人は確実に嫌がる気がする、だからか、未だ友人とは呼ばせてくれない。

 ああ、多分大精霊には伝え方が悪かった。
 “生きる事を強いられるなら、世界は美しい方がいい”、そのためなら過酷な戦場にも赴ける。辛いとは思わない、だってアルヴィンは元から慢性的に死にたがりだ。
 アルヴィンの選択は、本当の願いから遠ざかるって大精霊は言うけれど。
「僕の願いハネ――」
 今も昔も、失った人たちと一緒に逝きたかった。
 生きて見せられる想いが眩しいから、引力のように引き止められるだけで、願いは何一つ変わっていない。
 死ななくなるというなら願いからは遠ざかるかもしれないけど、そうでもなさそうだし、多少死ににくなるというのは別に構わない、だってアルヴィンは世界を眺める事だって好ましく思っている。

 リアルブルーはアルヴィンが抱く願いをどちらだと思ったのだろうか。生きたかった? 死にたかった? 正直どっちでも良かったのだけれど、正の大精霊だというのなら、生きたいの方な気がする。
 “貴方は本当は、彼らと共に生きたいのではないのですか――”
 可笑しくて笑いがこみ上げてくる、そう見てくれる事自体は微笑ましくて、興味深かった。
 誤解が生まれる理由があるとしたら、リアルブルーが人でなしのアルヴィンにそうであって欲しいと思うからか。ならばリアルブルーは素行以上に優しいのかもしれない、慈悲を向ける相手はちょっと間違ってるかもしれないけど。

「ゴメンネ、僕、実は他人のためにカラダを張る情熱ナンテ持ち合わせてナインダ」
 情熱はない、ただ祈りだけがある。必死で生きようとする人の背中を支えたいと思っている、そして、アルヴィンにでも感じ取れるだけの感情があったのなら、貰い受けたその熱で体を張っても構わない。
「……ダイジョウブ、生きる理由はソレホド強くないけれど、不幸にナル理由もナイヨ」
 幸せの形を問われたらちょっと困ってしまうかもしれないけど、言えるのは、今の過ごし方をそれほど悪くはないと思っている事。
 幸せを望むなら、この程度で十分ではないのか。結局は――陳腐に、たとえ立ち位置は少し変わっていたとしても、この世界、この生活を好んでいるから、守護者になってでも守りたいに行き着くのだ。

 今度リアルブルーに会う機会があったら、少しだけ訂正しよう。
 守りたい世界に僕はいないけれど、僕は僕の立ち位置で十分心地よく過ごさせて貰っている。少しの陰くらいは見過ごしてもらいたかった、何故なら、生きてる以上だれでも抱えているものだろうから――。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka2378/アルヴィン = オールドリッチ/男性/26/聖導士(クルセイダー)】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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そんな感じで、音無が思うアルヴィンさんの認識でした。
相当やばい発言が飛び出てますが、一応アルヴィンさんなりに友人って言ってもらった事は大切にしてるはずですし、残滓のかき集めに過ぎない1を守るために、それをくれた人も守ってくれる人なので、そのぉ……。
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2019年02月14日

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