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『 大掃除にはご注意! 』
ファルス・ティレイラ3733

 ある日の晴れた日。
 ファルス・ティレイラ(3733)は街外れにある大きな屋敷へと訪れていた。
「こんにちは」
 ティレイラはそう声を掛けながら玄関のドアを軽くコンコンとノックした。
 するとすぐに「はぁ〜い」と鈴の音がなるような美しい声と共にキィーとドアが開いた。
 開いた玄関には一人の少女が立っていた。
 肩まで掛かる黒髪に魔女のような風貌をしており、年齢はティレイラと同じくらいの少女だった。
 ティレイラは目の前の少女から何でも屋の仕事の依頼でこの屋敷を訊ねていたのだった。まさか依頼主が自分と同い年くらいの少女だとはティレイラは予想はしておらず、少し新鮮な気持ちだった。
「待っていたわ。今日は宜しくね」
 そう言って少女はティレイラへとにっこりと微笑んだ。
「こちらこそ宜しくお願いします」
「うん宜しく。では早速だけど屋敷の中に入ってくれるかしら」
 少女からそう促され、ティレイラは屋敷の中へと足を踏み入れた。
 ティレイラは少女の後ろから続くように玄関の通路を歩き、その後ティレイラ達は一つの広い部屋へとたどり着いた。
 部屋の中には大きな本棚、調度品、棚の上には呪具類などが置かれていた。おそらく片付けの途中か何かだったのだろうか。近くの棚には乱雑に色んな物が置かれて溢れかえっていた。
「ティレイラさんにお願いしたいのは部屋の大掃除なの。見ての通りこの部屋結構物で溢れているでしょう? 一人じゃぁ大変だから一緒に掃除を手伝って貰いたいの」
「もちろん大丈夫です! その為に私ここに来たのですから」
「有難う。本当に助かるわ」
 嬉しそうにする少女にティレイラもまた薄く微笑んだ。

 そしてティレイラと少女の二人は部屋の大掃除を開始した。

 乱雑に本棚の中に詰め込まれていた書籍を綺麗に揃えなおし呪具類は棚の上へと並べるように置き、ホルマリン漬けになっている魔法生物は少女の指示に従って別の場所へと移動する。
 大掃除をする中で床に転がっている本を手に取り、本を読みたい衝動に駆られてしまうがティレイラはぐっと我慢をする。
 掃除中に片付けていた本を手に取って読みたくなる事などよくある事だ。そう思いティレイラは片付けを進めていく。
 暫くして片付けをしている最中に部屋の隅にある巨大な二枚貝が口を開けた状態で鎮座しているのをティレイラは見つけた。
 思わずティレイラは手を止め、その二枚貝へと近づく。
 (わぁ凄く大きい……)
 そう思いながらティレイラは二枚貝を興味津々で眺める。見れば見るほど巨大な二枚貝であり、ひと一人充分に入れそうなくらい大きかった。

 その時。

「きゃぁ!?」

 ティレイラの近くで片付けをしていた少女は何かに躓き、ドン!! とティレイラへとぶつかった。
 二枚貝の前にいたティレイラは少女とぶつかった拍子に二枚貝の中へと倒れ込んだ。その直後巨大な二枚貝が口を閉じてしまった。
 閉じた貝の中でティレイラは手を伸ばし必死で貝を開けようとする。
「何これ? ……んっ、開かない……」
 ティレイラは伸ばした手に力を込めて上へと押し開けようとするがビクともしない。
「……どうして出れないの……。このままじゃぁ、ここに閉じ込められちゃう……」
 焦りを覚えつつも必死にもがくティレイラはいつの間にか全身が薄膜でパックされたような心地良い感覚に包まれる。
「……何この感覚気持ち良い……。だっ、駄目このままじゃぁ……」
 ティレイラは心を乱されながらも足掻き、抵抗するが薄膜の心地良さに次第に負けて伸ばしていた手を下ろし、
「……もう限界……」
 脱力してしまった。
 二枚貝の中に閉じ込められたティレイラは貝の中で魔法の膜が何層にも重なり、ティレイラの身体を硬質化して封印していく。

***

「ティレイラさん大丈夫! 今開けるからね!?」
 そう言い、少女は二枚貝の中に閉じ込められたティレイラを助け出す為に魔法具でこじ開けた。
「ティレイラさん大丈夫……」
 そう言いかけた瞬間、少女は思わず言葉を失った。そこにはティレイラの姿をした真珠の塊が現れたのだ。
 それは美しくも綺麗な真珠の少女ティレイラの姿。
「素敵だわ」
 少女はティレイラの姿を見ると小さく呟き、そして思わずティレイラの身体に抱きついた。
「まさかこんな素敵なものが見れるなんって思わなかった。本当に、本当に美しくって綺麗で、それでいて素晴らしいわね。これなら研究材料に凄く良いわ!!」
 少女はそう言いながらティレイラの身体をくまなく調べるように弄くり回し、興奮する。
 そして少女はティレイラの顔に手でそっと触れ、ティレイラを見ながら囁くように告げた。
「ごめんね。暫くそのままね」
 そして少女は大掃除を中断し、真珠の塊と化したティレイラを自分の研究室の方へと運んだのだった。




―― 登場人物 ――

 ファルス・ティレイラ

 ――――――――――

ファルス・ティレイラ 様

こんばんわ。せあらです。
この度はご注文、ご指名の方有り難うございます!
今回は二枚の貝に閉じ込められらるお話しをとの事で書かせて頂きました。
今回もティレイラさんの物語が書けて大変幸せでした。
書かせて頂きまして本当に有り難うございました。


せあら
東京怪談ノベル(シングル) -
せあら クリエイターズルームへ
東京怪談
2019年02月25日

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