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『鬼と福寿草 』
艶朱aa1738hero002)&雨海 六合aa5603)&帛雲aa5603hero002)&天海 雨月aa1738

 二月初旬。
 天海 雨月は古ぼけた汽車――電車ではない。ディーゼル機関車に客車が繋がれた列車だ――の内より、線路へ迫る木々の葉を見送り続けていた。
「この汽車ってのか? よくもまあ潰れもしねェでガタゴト走ってるもんだ」
 雨月の向かいに座す契約英雄、艶朱が、一合瓶からぐい飲みへ清酒を注ぎ、口へ運ぶ。
「廃線にするほうが高くつくから、ということもあるみたいだけど」
「なんか、そういうのってあるんすねー」
 雨月の言葉へ適当にうなずくのは、彼のとなりに座る雨海 六合だ。
 常は隠しているのだが、彼は天海の分家筋出身であり、本家の次男である雨月は「主じゃないけどえらい人」となる。
「山の外の者から見ればわしらは異形。なにをしでかしておるのか、知れぬほうが“怖い”んだよ」
 六合の契約英雄である帛雲が静かに語った。
「怖いって、俺らが? いやいや、みんな普通に暮らしてるだけだし、俺なんて普通に高校行ってるし! そっすよね、若!?」
 六合の反論に、雨月は困ったように笑みを返す。
「んー、そうだね。そうなんだけど、ね」

 彼らの郷里であるアマミの里は、深山のただ中にある隠れ里だ。
 近年まで獣道で下界と繋がるのみだったこの里は、下界の者たちに「魑魅魍魎棲まいしほとり」と恐れられてきた。なにせ里に住むのは人の倍にも及ぶ異形――艶朱のような鬼や、帛雲のような妖魔だったのだから。
 ライヴスリンカーという存在が明らかとなった後、ようようと異形が英雄なるものであり、里の人間が彼らと引き合う能力者であることが知れたわけだが、しかし。人心に根づいた迷信はなかなかにしぶとい。

「とはいえわしらを化物と恐れる者も減っている。このまま仲良くできるといいよね」
「それは……難しいんじゃね? だってハク、顔怖いし」
「超平和を愛する元妖怪なのに!?」
 六合の気まずい顔に衝撃を隠せない帛雲はさておき、雨月は艶朱を見る。
「艶朱もあんまり怖い顔しちゃだめだよ。乱暴するのもね」
「はァ? あっちがつっかけてこなけりゃなんもしねェよ」
 不機嫌の重みで眉根を引き下げる艶朱。
 過去の因縁はあれど、今は人に含むものはない。いや、丸め込まれたあげく、心に押し詰まったあれこれを絞り出されてしまったというほうが正しいか。
 あいつがいなきゃ、別の生き様も死に様もあったんだろうがなァ。合縁奇縁ってこった。
 酒の供に煙草が欲しくなるのをこらえ、酒精の甘みを噛み締めて、ふと気づいた。
「外に咲いてる黄色い花、ありゃなんだ?」
「え? えっと、なんだっけ。ちょっと待って。もう少しで思い出せるから」
 唸る雨月を「そんなに気になるほどのもんじゃねェよ」と止め、艶朱は花から視線を離した。



 ローカル線の終着駅から車に移った四人は、さらに山の奥へと向かう。
 山林を抜け、青く澄んだ水を湛える湖を回り込めば、ほとりに建てられた能楽堂が彼らをやさしく迎え入れた。
「準備はもう済んでるの?」
 一行の内でもっとも格の高い雨月の問いに、運転手を務める里の者が「あとは若様方のご衣装合わせだけです」と応える。
「げー、今年もアレ着んのかよ。窮屈なんだよなァ」
 げんなりと、艶朱。
「大丈夫だよ、艶朱かっこいいから!」
「ああ。わしは艶朱の晴れ舞台をゆっくり見物させてもらうよ」
 余裕を見せる六合と帛雲へ、艶朱は口の端をむっつり曲げてみせ。
「ぜってェ俺だけじゃ終わらせねェからな」
 一方の雨月は、里の空気を思いきり吸い込んだ。
 んー、帰ってきたぁ。
 息がつけるのも本家に着くまでのこと。たっぷりと味わって、備えなければ。

 厳冬の最中、アマミの里では今年の豊穣を祈るため、護り主たる湖へ舞を奉納する祭が行われる。それがいつしか節分を取り込み、異形の多いこの里ではある意味、正月や盆よりも大切な行事となった。
 だからこそか。この日には里から離れている者たちも帰り来て、大層賑やかに盛り上がるのだ。
 四人が帰ってきたのも祭に参加するためであり、その中でも雨月と艶朱は大役を担っているのだった。

「ま、今日くらいゆっくりしたっていいんだろ? それよか酒と肴と煙草盆の用意はできてんだろうな!?」
 艶朱はとてもゆっくりとは言えない勢いで他の三人の背をばしばし叩いて急かし。
「え? 汽車の中でも飲んでいたのにか?」
 否応なく巻き込まれてしまう体質……というより、断れない質の帛雲は、結局逆らえずに歩き出し。
「っしゃ、宴会だー! 酒以外はおつきあいするぜ!」
 喜んで巻き込まれに行く六合は勇んで踏み出して。
「おー」
 巻き込まれたらそれはそれでーという雨月は押されるまま運ばれていく。



 天海本家の広間。老若男女、里に残っている者も常は離れている者もみな顔をそろえ、本家の用意した馳走に持ち寄った馳走を加えて大宴会を繰り広げていた。
「従魔? 愚神? どうってこたァねェよ。アマミの衆のがよっぽど顔怖ェ!」
 艶朱がカン! 灰吹――煙管の火皿に残った灰を落とす器(竹を用いることが多い)――に灰を落として呵々と笑えば。
「顔はあんたがいちばん怖いから!」
 すかさず六合がツッコんで、他の者たちもそれに続く。
「なンで口そろえてやがんだよ! おまえらみィんな、俺に世話してもらったくせに!」
「結局こうなるんだね」
 帛雲が苦笑して言った。
 いやはやまったく、今日は久々の会合なのに……いざ集まってしまえば、いつもどおりの様を見せる。
 まあ、艶朱だからなぁ。まわりの者は異口同音にそう応えたが、結局はそれに尽きるのだろう。
「んー。艶朱は変わらないからね」
 艶朱は今現在の里では最古参のひとりで、どうやら最初からあのような感じだったらしい。それ以前の有り様も本人曰く変わらないようだし、実際に雨月が知る今もこんな感じだし。
 だからこそ、里の連中も艶朱に会えば、自分の歳を忘れて小僧や小娘の頃に戻ってしまう。
「うるせェうるせェ! こうなりゃおまえら、まとめてかかってこいやァ!」
 よく言った! 男たちがこぞって立ち上がり、艶朱に襲いかかった。
「俺に負けた奴ァ好きな女の名前言うんだぞォ!」
 立ち上がりながら最初にかかってきた男を投げ飛ばし、艶朱が陽気に言い放つ。この「中学生かよ!」という無茶振りに、どよめいた男たちの足が止まったが。
「好きな女子がいないヤツはどうすんだよ?」
 手を挙げて質問した六合に、艶朱は少し考えて。
「里の女で気になってるヤツ言っとけ! そしたら喰っちま――」
 と。乱入した女子たちが艶朱の言葉を塞ぎ、怒声やら蹴りやら入れまくる。曰く、誰が喰わせるか! バカじゃないの!? いい歳してガキみたいなこと言ってんじゃないよ!
「んだよ! おまえらだって気になる男くれェいんだろ! そもそもこんなん祭あるあるじゃねェか!?」
「いやそれよりも、わしなにもしてないのになぜ蹴られる!? わしなにもしてないのに!」
 なぜかいっしょに蹴られている帛雲の哀れな様を見て、六合があわてて騒ぎの中へ跳び込んでいった。
「なんでいちいち巻き込まれてんだよ! あー、女子ももう落ち着けってば! 艶朱はいらないからハクはこっちに渡してくれよ! なんにもしてないって二回も言ってるしさ!」
 みんなも助けてやって! 六合の要請に男たちが動き出す。気になる女子と絡むため、ついでにげしょげしょに蹴られる永遠の兄貴分をもっと痛めつけてやるため、憶えていられたら帛雲を救うため。
 騒ぎの輪はあっという間に大きくなって、手がつけられない混沌を成した。
 それをながめる年長者たちはやれやれ、かぶりを振って。
 艶朱はほんに変わらんの。
 いっしょに見ていた雨月は「ん」、笑む。
 艶朱がいるだけで、時も場も関係なく、皆がこれほど盛り上がる。そうした力があの鬼にはあるのだ。それに。
 みんなが楽しそうだから、いっかな。
 そんなことを思って、彼は一層笑みを深めるのだった。
 さて、襖が壊れない内に外しておかなくちゃ。



「っしゃ! めんどくせェこたとっとと片づけちまうぜ!」
 翌日。痛飲したはずの艶朱は朝早くにぱっちり目を醒まし、集めた子どもらを見渡して口の端を吊り上げた。
「六合! 例のもん、準備できてるか!?」
「抜かりなし!」
 サムズアップで応えた六合は、大きなタライに張ったぬるま湯から新品の雑巾を引き上げて絞り、次々子どもらへと渡していく。
「雑巾もらったヤツから構えろ! 朝飯の前に廊下全部、ピッカピカにしてやんぞォ!」
 真っ先に廊下へ雑巾を置き、その上に両手をついてクラウチングスタートの構えを取る。
「わしもう子どもじゃないのに……」
 艶朱のとなりで構えさせられた帛雲の嘆きは、当然のごとく誰にも届かない。
「女の子は俺といっしょに広間の掃除だよ」
 雨月は女子を引き連れ、昨夜の宴会後の後始末である。
「後で衣装合わせもあるんで、若はあんまりがんばんないどいてくださいよ」
「んー。これくらいは大丈夫だよ」
 箒を渡してくれた六合に笑みを返し、雨月は晴れ渡る寒空へと視線を投げた。
 明日は祭の本番だ。アマミの巫僧として、彼にはこなさなければならない役割がある。今日は艶朱と共に身を清め、心を静めて備える日なのだが。
 なんでおれたちばっかそうじなんだよー。にーちゃんとかねーちゃんとかもいんのにー。ふこーへーだぜー。口を尖らせる男子たちへ、艶朱はくわっと牙を剥いてみせ。
「あいつらはなァ、おまえらの弟とか妹とか増やすのに夜っぴいて張り切ってんだ! 寝かせといてやんのが情けってもんよ。わかったか!?」
 実際のところ、昨夜の騒ぎで想いを通わせた者たちがいるのは確かなのだが……こんな子どもたちに含みをわかれというのは、さすがにどうだろう。
「ああ。わしなんにもなかったから張り切らせられるのか……寂し過ぎる」
「いや、俺だってなんにもなかったし……張り切るしかないだろ」
 景気の悪い顔を見合わせる帛雲と六合はさておき。昨日張り切ることを許されなかった連中も集まってきて、やけに寂寥感のある雑巾がけレースが開始。
「辛気くせェー!」
 当然のごとくに先頭を行く艶朱が叫んでしまったのも、まあやむなしといったところだ。
「雨月ィ! 厄払いに強ェ酒持ってこいっ!」
「今日は祓(はらえ)の日だからだめだよー」
 言い返しておいて、雨月は畳の目に箒を沿わせていく。
 朝餉が済めば、さすがの艶朱も騒げなくなるだろう。だからそれまでは放置する。

 甘かった。
「やべェやべェ!! 死ぬ死ぬ!!」
 湖から白木の桶で汲んだ冷水をかけられ、艶朱が叫んだ。
 祭の衣装をつける前に神聖なる湖水を浴び、穢れを落とす。ゆえに雨月も同じように里の者の手で水をかけられているわけだが。
「俺囃子なのに! 俺囃子なのに!」
「それよりわし関係ないのに! ぜんぜんわし関係ないのに!」
 それよりもなによりも、先のふたりに並べられ、白一色の行衣姿で水を叩きつけられる六合と帛雲である。
「言ったろうがよ。俺だけじゃ終わらせねェってよほぉっ!!」
 またもやかけられた冷水に、艶朱が縮み上がった。
「おまえらいいかげんにしとけよ! 祭の前に主役が逝くぜ!? そしたら化けて出てやっからなァ!?」
「んー? 祭に出てくれるんなら、それはそれで大丈夫かも?」
 応えておいて、雨月も水に備えてぐっと力を込める。



 衣装合わせを済ませた後は、麓から登ってきた商工会役員たちとの挨拶が待っていた。
 明日は臨時列車を出してツアー客もご案内しますんで、ひとつよろしくお願いしますね。白髪頭を下げる会長に、雨月はやわらかく微笑んだ。
「駅には車で送り迎えするから、安心して来てもらって大丈夫」
 それを聞いていた艶朱は口の端を歪めて白湯をすすり。
「なァんで俺らの祭が見世物になんだよ。そもそも化物呼ばわりしてんの、下の連中だろうが」
 共に白湯を飲む帛雲はかぶりを振る。
「アマミはもう隠れ里ではいられない。迷信を祓うためにも、こうしたことは大事だよ」
 説教や説得ではなく、ただの確認だ。
 謂われなき悪意が呼ぶ悲劇を識る艶朱は、だからこそ里の者が外界へ出て行くのを止めなかった。そして自身が雨月と共に行くことを決めたのも、最初の契約主である雨月の祖母との縁ばかりが理由ではないはず。
 人にも人が生きる場にも流れが必要だ。せき止めれば淀み、腐りゆくばかりなのだから。
「変わってくってちょっと怖いけどさ、おもしろいもんでもあるよなぁ。お嫁さんになってくれるかもな女子も増えるしね」
 したり顔で語った六合の頭をぺしりと叩き、艶朱は息をついた。
 よォ。あんたが言ってたとおり、里はどんどん変わってくぜ。それがいいんだってあんたは笑うんだろうが……俺だきゃあ変わんねェ。いつまで経っても、どこまで行っても俺は俺だ。って、それも笑われちまうか。
 ま、いいや。好きなだけ笑っとけ。
 あんたのその顔が、俺にゃあいちばん笑えるもんだからよ。
 遠くを透かし見るように細められる艶朱の両眼。
 雨月は背中で彼の万感を感じ、やわらかくうなずいた。
「主役もやる気みたいだし、明日は最高の祭が見せられると思うよ」

 祭のため、酒と煙草を断たれて大騒ぎするのではないかと懸念されていた艶朱だが、騒ぐこともなく明日の舞台となる能楽堂を見やって過ごす。
「祭が終わったら飲み放題だからね」
 夕餉である野草粥の匙を置き、語りかける雨月。
 艶朱は鼻をひとつ鳴らして白湯を呷り。
「おう。美酒銘酒、樽でそろえとけ」
 ここでこの世の終わりみたいな顔で粥をつついていた帛雲がおそるおそる。
「若? わし、ほんとに“頭”役? 威厳とかないよ?」
「ハクはまだいいよ、立ってるだけでいいんだからさ。俺なんかクソ重い衣装動き回るんだぜ! 本気で死ぬよ?」
 六合も唇を尖らせた。
 ふたりには告げていなかったのだが、今年の祭からは軽装で済ませていた配役にも言い伝えの通りに再現した、派手で重い衣装が配られることとなったのだ。
 ちなみに六合は囃子のリーダーということで、言い伝えをぶっちぎって飾り立てたキラキラゴテゴテな狩衣が。麓で魑魅魍魎と謳われた英雄たちの頭役を与えられた帛雲は、いろいろと怪しげなパーツをくっつけた武官束帯があてがわれた。
「ほんとにこんな平安風だったんすかね、若」
 着物掛けにかけられた衣装を指して言う六合に、雨月は「んー」。
「言い伝えだからわからないけど……本質がきちんと伝わってればいいんじゃないかな」
 変わりゆく時代の先へ伝えるべきを伝えて、進む。
 雨月の言葉へ含められた意に、六合と帛雲はそろって神妙な顔をうなずかせた。



 果たして祭は来たる。
 里の者たちや外からの客人たちが左右を固める中、白絹の装束で身を固めた雨月が歩で地を鎮めながら厳かに進み。
 帛雲に連れられた英雄たちが続く後を、六合と歳若き囃子たちが、楽器を奏でて追った。
「冬過ぎて春来たる。その水の恵みをもて、この年に豊かなる実りを与えたまえ」
 湖へ捧げ物を沈めた雨月を英雄たちが囲み、ゆるやかに舞い始めた。
 その三拍子を支えていた囃子の楽が、六合の合図で音を弾ませ、一気に加速する。かくて英雄たちに追いたてられた雨月は、観客たちと共に能楽堂へ。
 舞台の中央で待ち構えていたのは、これも華美な装束に身を包んだ艶朱である。
「福は内!」
 宝剣を抜いて告げた雨月に合わせ、艶朱もまた背負っていた大剣を高く掲げ。
「鬼も内!!」
 帛雲と英雄たちがふたりの剣舞を巻いて手を伸べ。囃子がそのまわりを駆け、楽に足踏みの拍を加えてはやし立てる。
 自ら盛り上がって、観客を盛り上げて、ふと全員が解ければ。
 面をつけた能楽師が進み出て、能楽奉納を舞い始めた。

「ずいぶん大仰な感じになったけど、いい祭だったね」
 一昨日と同じ天海本家の広間。
 自分の肩を揉み揉み、帛雲が微笑んだ。
「福も鬼もいっしょに内へ! って、どんだけ欲張りだって話だけどさ」
 ついでにバレンタインも済ませてしまうことにしたらしい女衆からチョコレート(義理)をもらった六合は、それでもうれしげにチョコを頬張る。
「来年はホワイトデーもいっしょに済ませようってことになるかも。準備してこないとな、ハクもさ」
「え!? わしなにももらってないのに!?」

 そんなふたりや里の者から離れ、艶朱は湖のほとりにひとり座し、酒を飲んでいた。
「ったく、こっぱずかしい真似晒しちまったぜ」
 悪態をつきながらもその面には笑みが浮かんでいる。
 昔は悪かった。しかし、悪鬼たる業のすべてを祓い落とし、人と添って生きることを誓って以来、彼は他愛なく笑うようになった。
「全部あんたのせいで、全部あんたのおかげだぜ。貸しも借りも丸っと残してきやがってよォ」
 湖面に酒を注ぎ、自らも飲んで、振り返る。
「迎えに来たのか? ガキじゃねェんだ、てめェで帰らァ」
 誰かに差されたらしい福寿草の黄で銀の髪を飾った雨月は艶朱に手を伸べた。
「みんなが待ってるから、行こう」
 その手がやけに、思い出に残るあの手と似ていて……目眩がした。いや、そればかりでなく、福寿草だ。
 そうか、汽車の外に見えたのも福寿草だったか。あいつが好きな花だってェのに、忘れちまってたな。
 あのとき、祭の後で俺に差し出して、“思い出”って花言葉もあるんだって、そんなこと言ってよ。
「――はっ!」
 威勢よく立ち上がった艶朱はぱんと雨月の手を自らの手で打ち鳴らし、かろやかに踏み出した。
「主役がいなきゃあ盛り上がんねェか! っしゃ、朝まで飲むぜェ!」
 思い出に溺れちまうにゃまだ早ェ。俺はたった今差し出された手を引っぱって行くぜ。このまんまの俺で、先の先の、もっと先までよ。


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【艶朱(aa1738hero002) / 男性 / 30歳 / 福寿草の鬼】
【雨海 六合(aa5603) / 男性 / 18歳 / 踏み込み系男子】
【帛雲(aa5603hero002) / 男性 / 42歳 / 巻き込まれ系紳士】
【天海 雨月(aa1738) / 男性 / 23歳 / 綿菓子系男子】
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2019年02月26日

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