▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『微笑む神の名は(4) 』
白鳥・瑞科8402

 時は僅かに遡る。「教会」の拠点にて、神父から今回の任務を受領する時に、瑞科は彼からある事を言われていた。
 今回の任務の、現場に突入するタイミングと、敵をせん滅する方法は全て瑞科へと一任するという言葉だ。今まで一度も失敗した事のない瑞科の力を、神父も信頼しているのだろう。
「あら、でしたら、わたくしが突入するタイミングは決まっていましてよ」
 瑞科はそして、あえて儀式の真っ最中に教会へと突入する事を選んだ。生贄が怪我をしそうになっていたら無論突入を早めるつもりだったが、なるべく時間ギリギリまでは彼らの儀式を見守るつもりであった。
「今回の任務は、わたくし達「教会」に仇なす全ての者の討伐……。その神こそが、わたくし達の教義に反しておりますわ」
 狂った事を考える信者が、今回の狂信者の他に現れないとも限らない。二度と同じような事が起こらぬようにと、瑞科はあえて神を呼び出させる事にしたのだ。その神をも、この手で討伐するために。
「また同じ事をしでかされたら、たまったものではありませんもの」
 くすり、と微笑む瑞科の様子は至っていつも通りであり、その顔に神と対峙する事に対する怯えはなかった。頼もしく微笑みながら、聖女は自らが赴く任務へと思いを馳せながら戦闘衣装へと着替えに行くのだった。

 ◆

 教会に響く怪物の悲鳴が、瑞科の意識を現実に引き戻す。任務を受領した時の事を少し思い返していた瑞科だったが、その手が敵への攻撃を忘れる時はなかった。
 何度目かも分からない瑞科の強烈な一撃が、敵の懐へと叩き込まれる。それでも、暴虐な神は暴れて抵抗を続けた。ひたすらに暴力を振るい続けるその醜い姿に、瑞科はここでこの敵を倒す事にして正解だったと胸中で思う。自分のいない場所でこの神が召喚されていたら、被害は甚大なものになっていただろう。
「やはり今回の計画にして正解でしたわね。これも、神父様達の協力があっての事ですわ」
 全てをたった一人のシスターに任せるのは、よっぽどの信頼がなければ踏み切れぬ事だ。瑞科が今まで築いてきた信頼と勝利が、今回の任務において大きな力となり神をも圧倒している。その事実が、聖女の心を高揚感で満たしていた。
「さぁ、懺悔のお時間ですわ。たとえ神様がお許しになろうとも、わたくしの前で悪行は許されません。大人しく、お眠りなさいませ!」
 最後の一撃が下る。憎悪を撒き散らすその醜悪な身体に、光が走る。しかし、それは電撃ではない。
 瑞科が太腿に携えていたナイフ。少女達を解放するために使われたそれが、今度は怪物の魂をこの世から解放する。
 怪物のどす黒い血が、不格好な花を咲かせる。倒れ伏した相手は、それでもまだ瑞科を喰らおうともがいていたが、やがて動かなくなり沈黙した。
 再び、教会を闇と静寂が支配する。戦闘を終えた瑞科は、自身の服に汚れがついていないかを確認すると、満足げに笑みを浮かべる。怪我一つ、汚れ一つ負う事なく、たった一人で任務を成功に導いた聖女の横顔は、晴れ晴れとしていた。

 ◆

 教会を出た瑞科を一番最初に迎えたのは、何人かの少女達の心配する声だった。
 狂信者達に捕らわれて、瑞科が助け出したあの少女達だ。見たところ怪我はなさそうだが念のために信用のおける医療施設で診てもらう必要があると考えた瑞科は、敵には聞こえないように小声で少女達に教会の外で隠れているように指示を出していたのだった。
 組織への連絡は、狂信者達を倒した時にすでにとってある。しばらく待てば、後の事は彼らが何とかしてくれるだろう。
 ふと、一人の少女が瑞科へと何かを聞いてくる。どうやら、恩人である瑞科の名前を知りたいらしい。
「わたくし? わたくしの名前は……」
 花が咲く。化物が咲かせたものとは違う、愛らしい笑顔の花だ。
 自らの名を名乗り微笑んだ聖女の顔を、少女達が忘れる事は恐らくないだろう。なにせその笑顔は、少女達が今まで見たどんなものよりも、美しかったのだから。

 夜は明け、日がまた昇る。少女達を医療班に預けた瑞科は、任務の報告をするために拠点へと足を向けた。
(さて、次はいったいどんな任務がわたくしを待っているのかしら?)
 聖女は、まだ見ぬ次の任務に思いを馳せ心を踊らせる。少女達に「女神様のようだった」と後に噂されるようになる彼女、白鳥・瑞科の前にはただ希望だけがあった。

━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛

【8402/白鳥・瑞科/女/21/武装審問官(戦闘シスター)】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
ご発注ありがとうございました! ライターのしまだです。
全4話からなる瑞科さんのお話、このようなお話になりましたがいかがでしたでしょうか。
お楽しみいただけましたら幸いです。何か不備等ありましたら、お手数ですがご連絡くださいませ。
それでは、また機会がございましたらその時は是非よろしくお願いいたします。このたびはご発注、誠にありがとうございました!
東京怪談ノベル(シングル) -
しまだ クリエイターズルームへ
東京怪談
2019年03月14日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.