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『あなたとあなたの理由 』
Uisca Amhranka0754

 Uiscaはゾンネンシュトラール帝国、帝都にある軍の書物庫を訪れた。
 閲覧室の最奥のテーブルには書物を広げているアラベラがいる。調べ物をしているらしい。
 靴音で、アラベラもUiscaに気がついた。
「あら、どうしました?」
「歌舞音曲部隊のお部屋へ行ったのですが、アラベラさんはこちらだと伺いましたので。あの……お邪魔でしたか?」
「いえ、そんなことはありません。調べ物をしていただけですよ」
 アラベラは、資料を閉じて立ち上がった。
「妾も休憩しようと思っていたところです。食堂へ行って、お茶でもいただきましょう」
 アラベラは資料を片付けて立ち上がる。

 さて、食堂には午後の間食を取りに来た兵士たちでそこそこ賑わっていた。
 紅茶や、クッキーなどの菓子を囲んで2人は向かい合う。
「今日はですね、アラベラさんに聞いてみたいことがあったのです」
「ちょうど良いタイミングですね。妾も守護者について少し話を聞いてみたいと思っていたのですよ」
 その言葉に、Uiscaはどきりとした。
「ご存知だったのですね……」
「稀少価値というのは、それだけで目立てますもの」
「稀少価値、ですか?」
「ええ。あれは誰でもなれるものではないのでしょう? 細々とした契約が必要という話も聞きましたし。……なるほど、Uiscaは選ばれた者、ということですね!」
 アラベラはいささか興奮したように言う。
 対して、Uiscaは背中を丸めて恥ずかしそうにする。
「あら、何か妾は変なことでも言いましたか?」
「いえ、そうではないのです! でも、その……」
 Uiscaは周囲を気にするように、小声で言った。
「私、おかしなところありませんよね……?」

 元々、Uisca自身は辺境出身のエルフで、旅巫女として活動している。ハンターでもある彼女は、普通とは違うことが当たり前だった。だから、守護者になることも大きな変化とは捉えていない。
 しかし、Uiscaが守護者になる少し前。帝国から出されたある依頼で、アラベラはUiscaにイメージの話をした。
 誰かが誰かに持つイメージ。実像ではなく、虚像のこと。アラベラは真実よりも虚像を優先しようとした。
 それが今回Uiscaを悩ませる原因になったらしい。
「そうですか……Uiscaは他人からの自分のイメージが気になるのですね」
「ええ。前に、死んだあとの自分の評価は気にならないって言いましたけど、さすがに今見える周りの人の態度の変化は気になるのです……」
 ところで、ここは帝国軍人が主に使う食堂である。だから周りは基本的に帝国軍の軍服を着た人間ばかりで、その中で軽やかな民族衣装を纏ったUiscaと、華美な平服のアラベラは目立つ存在だった。
「私、変なところありませんよね……?」
 Uiscaがさりげなく髪を撫でて、変な癖がついていないか確認する。
「何も問題ありませんよ。あなたはいつも通り可憐です」
 アラベラはこういったことに慣れているので、平然と紅茶を飲んでいる。
「しかし、守護者というのは見た目の変化はないものなのですね?」
 強大な力を手にしたUiscaだが、会ったばかりの彼女も、今の彼女も、アラベラには特別変化しているようには見えなかった。一目見ただけでは、可愛らしいエルフの少女としか思わないだろう。
「まばゆいばかりの光が体から溢れるとかするのかと思っていました」
「似たような技はありますけれど……」
 Uiscaはここで、話の軌道を修正し、聞きたいと思っていたことを話しはじめる。
「アラベラさんは守護者のことをどう思いますか?」
「稀少性が高くて良いな、と思います」
「……他には?」
「特にないですね」
「アラベラさんは、守護者になりたいと思ったことはないのですか?」
「難しいところですが、妾はきっと、守護者にはなれないでしょう」
「なれない……のですか? ならない、のではなく?」
「はい。妾にとって大事なのは妾のことだけで、世界なんてどうでもよい存在です」
 アラベラは帝国の英霊ではあるが、生前北部制圧に参加したのは、戦えば目立てるからであり、忠義や義侠心のためではない。自分のために戦い、自分のために散った。それがこの女の本質だ。
 そんな女に星の守護という大役を、大精霊が任せるとは、アラベラにとっても想像できなかった。
「そもそも、英霊が守護者になれるかはわかりませんし。この復活した体だけで今のところは良しとしましょう」
「では、生きていた時と英霊になった今で、何か違いは感じますか?」
 英霊は、人々の伝承によって形作られて、体は正のマテリアルでできている。本質的に、人間とは一線を画する存在だ。
「体感としてはあまりないのですけど」
 と、そこでアラベラは一度言葉を区切った。
「生き方は意識するようになったかもしれませんね。ほら、英霊や精霊は人々の伝承や信仰心に支えられている存在でしょう? ですから、妾はより強く目立つことを意識していかないと、いつかは……」
 ──消滅してしまうおそれがありますから。
 こともなげにアラベラは言ったつもりではあるが、その語尾は少し震えていた。
「妾の性質に最も見合ったカタチがこの英霊の体なのでしょう。……そう考えるとUisca、あなたはどうして守護者になったのです?」
 アラベラは話題を変えた。
 正しい理由と覚悟がなければ、大精霊と契約できない。戦闘能力に優れていても、力を欲する理由が不純であれば、守護者にはなれないのだ。
「私は……」
 Uiscaは大精霊と契約した記憶を思い出す。
 覚悟を問われ、試練を暗示された記憶を。
「私は、守護者の力で多くの人を守りたいのです。でも、歪虚を殲滅したいわけではありません」
 Uiscaは語る。彼女は歪虚殲滅には懐疑的ですらあった。
「歪虚だから、倒す。歪虚だから、悪である。そうは考えたくないんです」
 普通と違っていたUiscaだからだろうか。異端である、というだけで判断はできなかった。
「歪虚であっても、相手の行動の良し悪しで判断したいと思っているんです」
 アラベラは、Uiscaが進もうとしている道は孤独なものだろう、と思った。でも、それを止める権利は誰にもない。彼女が決めたことがから。
「ふふ、ふふふふ」
 と、ここでUiscaがいたずらっぽい笑みになる。
「どうかしましたか?」
「いえ……、そういえば、エミルさんには思いを伝えられたのかな、と思いまして」
 それは、大きな戦いの後の、狭い部屋での出来事だ。
「ええ、多分……」
「気になることでも?」
「妾は『好き』という言葉を今までも他の人に伝えたことがあります。けれど、エミル相手には、今までと違う何かがあるような気がして……」
「それだけ、大切な人だったのでしょう」
「……エミルにとってはどうだったのかしら」
「エミルさんは最後、笑っていましたか?」
「はい。あれは──」
 いつも張り詰めた顔をしていたエミルが見せた、とても穏やかな微笑みだった。
「じゃあ、きっと、伝わっていますよ」
 種族の隔てなく、生死の別れなく、正と負の違いなく。
 ただ、誰かが誰かを想う心が届くように、Uiscaは祈った。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka0754 / Uisca Amhran / 女性 / 16 / 聖導士】
【kz0250 / アラベラ・クララ / 女性 / 22 / 英霊】

【ゲストNPC / エミル・ズィック / 男性 / 32 】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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祈りが手を伸ばす
それが、刃より先に、あなたの一番やわらかいところへ届くように
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2019年03月18日

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