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『とある暑い夏の日、神との出会い』
桃簾la0911


 長い長い階段を降りる。出迎えるのは見知らぬ世界。
滝の様に降り注ぐ蝉時雨を。肌を焼く灼熱の太陽を。噎せ返るほどの濃い緑の香りを。痛いほどに五感を揺さぶってくるこの世界を、桃簾(la0911)は眩しげに目を細めて見る。
最後の壁と聳え立つ、何故か開かない透明な扉を――僅かに残っていた躊躇いを、無理やりにこじ開けて。

さあ、その心の赴くままに未知の中へと――



 桃簾は知らぬ事だが、住処となったマンションはいわゆる一等地にあり。住民の憩いの場にと、近くには大きな公園が整備されていた。楽しげな人の声に誘われたはいからさんは、見様見真似で遊歩道を歩き始める。初めて見る景色に、大正浪漫な袴の裾同様、視線はあちらこちらと落ち着きがない。それもそのはず、茂る緑は同じなのに、ここは故郷である『カロス』とはがらりと様相が違っている――それに。

「民とは、このように過ごしているのですね」

走り回る子供や立ち話をする女性達に、日向のベンチで居眠りをする老人。全てが、桃簾の傍には無かったモノで。上品さを保ちながらもどことなし、その足取りは期待に弾み。好奇心に瞬く黄金の瞳は、全てを焼き付けんと零れんばかりに見開いて――そして、道すがらのとある箱を捉えた。捉えてしまった。そう、悲劇はここから始まる。

「この箱は何でしょう?中に色とりどりの筒が……」

ペタリ。――チカチカ。

触れた瞬間、悲鳴代わりとでもいうように哀しく灯りを明滅させる自動販売機。桃簾は首を傾げた。

ペタリ。――シュン。

もう一撫で、で、電飾の半分が消える。桃簾は反対側に首を傾げ、懲りずに手を伸ばした。もうやめてあげて欲しい。

ペタリ。――シュウウン。

祈り虚しく、大きく震えて全ての光を消す自動販売機。その見事な散り様に、桃簾は納得したように頷いた。

「触ると光が消える絡繰りなのですね」

芸人一座の十八番を観覧した心持ちで称賛に手を打ち、桃簾は満足げに立ち去る。哀しいかな、自動販売機の沈黙したこの場には、真実を告げられる者は誰も居なかった――


第一の惨劇から所変わり。歩くのに注意が必要な程度には雑多な商店街を、桃簾はマイウェイで進む。人混み?高貴な姫の気品に、行く道は自然と開かれるのだ。真っ直ぐ己の進む先を見ていた黄金の視線が、ふと横に逸れる。

「この場所は何です?」

次のいけに(二重線)、姫の興味の向いた先は――?

「『家電量販店』?やはり文字が読めないのは不便です。早急に習得しなければ」

看板らしき物に首を傾げながら足を踏み入れた桃簾は、するりと手近な炊飯器を撫でる。丸みを帯びたフォルムに誘われたらしいが――掌の下で液晶がスンッと消えた。小さな命の灯火が消えた事に気付かぬまま、桃簾はふらりと店内を歩く。

「板の中に人が居ますね。これも絡繰りでしょうか……あら、消えました」
「これは風を生み出しているので――触ると止まる物が多いのですね」

ゆるりと行脚する姫の御幸は、ぐるりと店を一回りして。通りし後に闇と沈黙を振り撒いていく。段々と暗くなっていく店内は、それに比例してどんどんと騒がしくなっていく――主に悲鳴で。

『こっちも落ちてるぞ!一体どうなってる!』
『ダメです!初期化受け付けません!』

――後に魔のブラックアウトと呼ばれた禁忌の日を作りし災厄の姫君は。

「……透明な扉というものは、どうしてこうも強固に作ってあるのです?」

こじ開けた自動ドアの隙間を、手慣れた様子で潜り抜けていた――


第二の災厄も己のみは知らぬままに立ち去り。桃簾は再び街を彷徨い始め――くらりとした視界に、思わずしゃがみ込む。常春の故郷と違い、地球の夏は暑かった。とても、暑かったのだ。

「これは、どういうことです……地面が、揺れ……」

思わず掌をついた地面は、焼けるように熱い。反射的に引き戻した手に、何やら冷たい物が触れる。

「大丈夫、お姉さん?」

ひんやりとした手が桃簾をベンチに座らせ、そのまま、更に冷たいナニカを桃簾に握らせてくれた。

「暑さにやられたっぽいし、どうぞ。冷たくて美味しいよ」

歪む視界の中、売れ残りだから気にしないで、と笑顔で去っていく屋台の女性。礼も言えなかった、と気付いたのは、冷たい雫が手首を伝ってから。

「美味しい?……では、これは食べ物ということですね」

衣装を汚さないように、と手巾で拭う間にも小さくなっていくその食べ物に。桃簾は覚悟を決めて唇を開いた。紅い舌先がおそるおそる白い塊をつついて――その冷たさに驚いて一度引っ込む。だが、そこからは早かった。

「何て冷たくて美味しいのでしょう……生き返ります」

ほう、と零れる吐息は甘く、感動に瞳の潤む様は、まるで恋をしているかのよう――いや、事実、桃簾は恋をしてしまったのだろう。このような冷たい甘味など、元の世界では王侯貴族たる自分にさえ貴重だったのだから。

「……この世界は、民でさえこのような物を食べられるのですね」

ここに来てから驚きの連続だった。馬がいなくても走る馬車、色鮮やかな衣装の数々、溢れかえる見も知らぬ、けれど魅力的に手招く様々な物達――そして。

(枷はありながらも、皆、自らの生を選択して生きている)

完全ではなくとも、ここには『選択する自由』があった。高貴なる身分の者として、何不自由ない暮らしを送ってきた己が、唯一手に入れられなかったモノ。ここでなら一時的にでも手に入る、いや、このまま故郷に帰る手段が見つからなければずっと――その考えは、先程食べた氷菓のように甘く心へと語りかけてきて。桃簾は、口を笑みに形取る。ああ、なんて。

「――下らないこと」

ふわりと流れる風が前髪を攫い、額の紋が束の間、顕わとなる。薄く笑む表情は、高貴なる者の誇りに満ちていて。桃簾は己の手を掲げる。この白魚のような指の先、桜貝の爪の一枚一枚まで全て、民の安寧の石垣の一つとなるべく民の血税によって磨き上げられたモノ。そう在れる誇りを、培ってきた矜持を――汚されてたまるものか。

「帰れないというのならば、道を作るまで」

苛烈な輝きを黄金に宿し、稜線に沈む夕陽を刺す。その頬を、夜の混じり始めた風が優しく宥めるように撫でるのを感じ、そっと光を瞼に隠した。いつかは帰る、国へ、我が民の元へ――必ず。ただそれまでの、ほんの少しの間だけ。

「束の間、地球を満喫するくらいは……許されるでしょう」

まだ見ぬ沢山の楽しいもの、美味しいもの。この世界にいる間だけは、それらを己に許そう。
とりあえず帰ったらこの氷菓の名を聞くところから、と。桃簾はゆるり、夕暮れに染まる街並みの下を歩き始める。

靴音が奏でる、軽やかな自由の足音を供にして――




 ナプキンで口を拭い。銀の匙を皿に置いて。

「私、アイス教徒になります」

2Lパックのアイスを涼しい顔で食べ終えた桃簾の第一声に、保護者は激しくむせた。何言ってんだコイツ、とその表情が雄弁に語っている。

「尊きものを信じ奉ずるのが宗教なのでしょう?」

何か間違っていますか、と。そう心から告げながら新しいパックを開ける姿に、保護者は全てのツッコミを放棄するのであった。


━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
GLD初納品、ご縁を有難うございました。
機械クラッシャーっぷりが面白く、ついつい悪ノリしてしまいました。高貴なる矜持は想像で書きましたので、解釈違いでしたら遠慮なくリテイクをお願い致します。アイスはお腹を壊さないのでしょうか、だとしたら羨ましいですね。
この一幕が、この世界の彩りとなることを願いまして。
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日方架音 クリエイターズルームへ
グロリアスドライヴ
2019年03月26日

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