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『あなたに伝えたい言葉 』
温羅 五十鈴aa5521


 温羅 五十鈴(aa5521)は歩いてくる逆萩真人(az0136)を認めると、無言で駆け寄り、ぎゅっと手を握り締めて笑いかけた。
 あれからまた四度、季節が巡って。真人は奉仕活動を終え晴れて自由の身になった。
 それで五十鈴が「家に遊びに来てくれませんか」、と誘いをかけたのだ。真人は最初渋るような顔をしたが、それが半ばポーズであることを知っている。五十鈴がじっと見、にこりと微笑みかけていると、「まあ、どうしてもって言うんなら」と最後に真人は折れてくれた。
「お腹は空いていませんか? 今からごはんにしようと思うのですが、一緒に食べていただけませんか?」
 五十鈴がそう問いかけると「どうしてもって言うんなら」と真人はいつもの調子で答えた。お昼時と重なるように真人のことは呼んでいた。色々な物を作れるように、冷蔵庫の中には既に食材を用意してある。
「何が食べたいですか? 真人さんの食べたい物を作ります」
「なんでもいいけど」
「それでも、なにか」
「食べられるならなんでもいいよ。……ガキの頃は、まともな飯をもらえる方が少なかったし」
「でしたら、肉じゃがとカレー、どちらの方がいいですか?」
 もっと凝ったものでも良かったが、ザ・家庭料理というものをあげてみた。真人はしばし黙った後「……肉じゃが」と答えた。五十鈴はにこりと笑みで応える。
「肉じゃがですね。わかりました。それにわかめと豆腐のお味噌汁と、卵焼きもつけようと思いますが、どうですか」
「……いいんじゃないの」
「それじゃあ、がんばって作りますね」
 数十分後、食卓には五十鈴お手製の料理が並んだ。真人は礼儀正しく両手を合わせ。五十鈴も同じく。二人揃って「いただきます」を述べた後、温かい料理に箸をつける。
「お味はどうですか」
「いいんじゃないの」
「良かった」
「……うまいよ」
「ありがとうございます」
 食べながら他愛ない話をした。真人は放っておくとすぐに黙ってしまうので、五十鈴が持ちかけて。真人がぼそぼそとそれに答える。失くしていた五十鈴の声は今はすっかり戻っており、ころころと鈴を転がすように、楽しそうに会話をする。
「そういやアンタ、英雄は」
「もういません」
「……は?」
「今は私の一人暮らしです。だからどうぞお気になさらず」
 英雄の存在を懸念しているものだと思い、五十鈴はにこりと微笑みかけたが、真人は目に見えて慌てだした。
「いやいやアンタ、ダメだろう。女一人のところに男連れ込むのは!」
「……え?」
「『え?』じゃねえわ、危機感持てよ! 男の英雄とずっと一緒だったから麻痺してるのかもしれないけど、普通は女一人の所に男連れ込んじゃいけないの! 家に上げたっていうだけで、都合のいいように解釈する馬鹿共なんていっぱいいる……し……」
 そこで真人の声は消えた。口を噤み、視線をうろうろさ迷わせた。そして五十鈴から視線を逸らしながらこう言った。
「べ、別にアンタのこと心配してるとかじゃねーけど……ちょ、ちょっとは警戒しろよ……こ、今後よく知りもしねえ男を簡単に上げたりしないように……」
 そこでようやく、真人が自分を心配してくれたのだと気が付いた。五十鈴は先程より笑みを深め、真人へと話しかける。
「真人さんはよく知らない人じゃないので、大丈夫です」
「……やっぱ知ってるヤツでも禁止」
「でも、真人さんなら大丈夫ですよね?」
 微笑みながら見つめていると、真人は顔をしかめながらも、こくりと小さく頷いた。
「だ、大丈夫って言っても、俺はアンタに手を出したりしないって意味であって、信じていいって意味じゃないから……」
 真人はぼそぼそと言い続けるが、それが五十鈴を慮っての、偽悪的な優しさであることはとうに知っていた。真人さんは、優しい。降り注ぐ花びらのような人だと思う。仄かな優しさがひとつ降るたびに、ああ、好きだなぁと、そう思うのだ。
 だから、どうか幸せであってほしいと願って。
「四年前に、指切りしたこと。覚えていますか」
 ずっと、ずっと、言えなかったから。
 ずっと、ずっと、言えたらいいなって思ってた。
「――お友達に、なって頂けませんか?」
 それは、かつて真人の兄に、今はもう遠くへ逝った五十鈴の友人に告げた言葉。真人は目を見開き、それから顔をくしゃりと歪める。
「四年越しに……いや、十年越しに言いたかったことって、それなの?」
「はい」
「……そうだな、またこうしてたまに飯作ってくれて、簡単に男を家に上げないって約束してくれるなら、いいよ」
 条件付きの了承。その中に五十鈴を慮る言葉を混ぜる真人は、やはり優しいとそう思う。
 もし断られても好きなままだったと思うけど。
「私、真人さんのこと好きですよ」
 ゴホッ、と真人がむせた。味噌汁が器官に入ったのかと慌てたが、真人はむせながら顔を上げる。
「条件追加。そういうこと、男相手に簡単に言うのも禁止。……勘違いされたらどうすんだ」
「勘違いじゃないですよ。私、真人さんのこと、好きです」
 五十鈴はまたふわりと笑う。五十鈴は二十七歳になったが、性格や雰囲気等は相変わらず。真人は重く息を吐き、五十鈴に聞こえぬようぽつりと呟く。
「どういう意味で言ってんだか」
「? なにかおっしゃいました?」
「いいや、別に。なにも」

━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

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2019年03月26日

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