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『思っていたのとだいぶ違っていたでござる(白虎丸談) 』
虎噛 千颯aa0123)&白虎丸aa0123hero001


「もうー永平ちゃんから全然連絡が来ないんですけれどー」
 虎噛 千颯(aa0123)はテーブルの上でうだもだし、逆萩真人(az0136)はそれを見て「ウゼェ」という顔をした。
 話は一週間程前に遡る。「真人ちゃんいつ暇? 一週間後? じゃあこの喫茶店に来て」と千颯から電話が来た。そして返事をする前に切られた。バックレても良かったのだがバックレたら後で十倍ぐらい面倒になりそうな気がすごくした。それで渋々来たところ、ここにはいない男、李永平(az0057)の話をおっ始められたのだ。なお同じく千颯に呼び出され、千颯の英雄である白虎丸(aa0123hero001)も同席している。
『千颯……そんなに連絡を入れたら永平殿に迷惑でござるよ』
「いや、向こうが忙しいのはわかってるんだぜ……でも、連絡がないと心配になるんだぜ」
 千颯は親友を亡くした過去があり、それがトラウマとなって親しい者を長らく作ることができなかった。友人と呼べる者はいる。しかし真に心を開き、本音を語れる相手はいない。白虎丸はそんな千颯の状況を知りつつも、千颯の気持ちを最優先にしていたのだが、何時までも逃げていては千颯は永久に救われない。そんな想いで荒療治に踏み切ることにした。ケンカもしたがその甲斐あって、千颯はようやく永平に対して素直になることができた。のだが。
「だって永平ちゃん全然反応してくれないし、あっても素っ気ないんだもーん。やだやだもっと構ってほしいー会いたいー話したいー夜明けまでずっと意味のないことでダベりたいー」
『千颯……お前、面倒くさいでござるよ……』
 白虎丸がついに言った。千颯はダンと立ち上がった。机を鳴る音が大きく響いた。周囲への迷惑この上ない。
「な!? 面倒ってどういうことだよ! 俺ちゃんは永平ちゃんを心配してだな」
『心配で月一ペースは面倒でござる』
「きもっ」
「真人ちゃん今『きもっ』とか言った!? 本来なら週一毎日にしたいところを一生懸命抑えているのに」
「きもっ」
「また『きもっ』って言った!?」
『永平殿は怒っていいと思うでござる』
「白虎ちゃんにまで言われるとか心外なんですけど……」
「っていうか俺、帰っていい? 野郎の(省略)話に付き合う趣味は一切ないんで」
 真人は心底嫌そうな顔で席を後にしようとした。白虎丸のおかげでちょっとは前に進んだとは言え、長年のトラウマを完全に解消したわけではなく、変に拗らせて面倒くさい感じに仕上がってしまっている。しかも千颯本人にその気が全く無いのでタチの悪さが倍増している。せっかくの休日に謎の呼び出しを喰らった挙句、目の前で男同士のメール事情など聞かされたらそりゃあ帰りたくもなる。
「待って。帰らないで。真人ちゃんと、それと白虎ちゃんに聞かなきゃいけないことがあるから」
 千颯は急に真面目な顔をし、真人は片眉を吊り上げながらもう一度椅子に腰かけた。千颯の表情から真面目な雰囲気を感じ取ったから……ではない。帰ったら帰ったで面倒そうだったからである。残ったら残ったで面倒そうでもあるのだが。
「何。聞かなきゃいけないことって」
「何故俺ちゃんを除け者にして息子を連れて真人ちゃんに会ってたの?」
「……は?」
『うん?』
「俺ちゃん聞いてないんですけど? なんで真人ちゃんに会ってるの? いや会うなとは言わないけど俺ちゃんは父親よ!? 父親である俺ちゃんに一言断りを入れるのは当然だと思うんですけど!?」
 説明しよう。真人は六年前従魔を使った事件を起こし、逮捕され、H.O.P.E.エージェント達の働きかけもあり更生施設で二年、H.O.P.E.で奉仕活動をして数年を過ごすこととなった。今はまだ奉仕活動の真っ最中で、ようやく最近外出を許可されるようになったというところ。
 その六年前、真人が逮捕されて数週間後、面会の機会があり、千颯と白虎丸も面会を希望し赴いた。その後白虎丸は頻繁に真人に会いに行ったり文通をしたり、千颯の息子を連れて会いに行ったりしていたのだ。
 千颯には一切何も言わず。
『真人殿をサポートするとあの時言ったでござるよ?』
「そうだけどそうじゃなーい! なんで俺ちゃんをスルーしてそういうことするのかなあ!? 俺に言おうとか、俺も誘おうとか、そういうこと思わなかったわけ!?」
『真人殿本日のご予定は?』
「ねえちょっと聞いてる?」
「寝てるつもりだったけどこの(省略)野郎に邪魔された」
「俺ちゃんを無視して話を始めないで!」
「コイツいつもこうなの? 駄菓子屋ってのも大変だな」
「ねえちょっと」
『駄菓子屋も楽しいでござるよ』
「俺の話を」
「いやだってコイツの相手をするのも業務の内なんだろ?」
「聞いてって」
『駄菓子屋の仕事に千颯の相手は入っていないでござる』
「俺の話を聞いてええええ!」

 白虎丸は千颯のことを案じていた。自分の本音を隠そうとふざけて、茶化して、すぐ逃げ出して。それではいつまで経っても「独り」きりのままだから。
 だから、六年の時を経て、ようやく自分の本音を人に伝えれる様になった千颯に、少しだけ安心していた。安心できると思っていた。
 そしたら自分の思っていた方とは違う方向へ突き進んでいた。違うそうじゃない。何故このように進化した。心の底から今後が、六年前とはまったく別方向に心配になっている。思っていたのとだいぶ違っていたでござる。
 だがまあ、千颯がそれで幸せならいいかなとも思っている。
 永平殿は怒っていいと思うでござるが。
 あとは、千颯の子供を連れて行った件については、特に悪気は無い。
「えっじゃあこいつの相手はボランティア? タダ働き? アンタも苦労してんだなー」
『特に苦労はしていないと思うでござる。……いや苦労しているでござるか』
「どっちだよ」
「いやちょっとお願いだから俺ちゃんを無視して二人で楽しそうに雑談しないで!」


「ってことがあったんだよ永平ちゃーん」
 その夜、千颯はすんすんしながらぽちぽちメールを打っていた。なんだか面倒くさい彼女みたいだが、三十にもなった子持ちの男の所業である。面倒くさい彼女の数倍は面倒くさい。しかもメールの内容は大体が無駄である。
 そのまま千颯はしばらくスマホを眺めていたが、諦めて寝ることにした。反応がないのは重々に承知している。
 その時、メールの着信音がした。千颯はスマホにすがりついた。送り主は永平で、そこにはこう書いてあった。
『生きてる』
 多分生存報告だろう。違うそうじゃない。そりゃあ「連絡がないと心配になるんだぜ(キリッ)」とか言っていたが、連絡が素っ気ないと拗ねている時点で欲しい反応はそうじゃない。別に「それは大変だったな」とよしよしなでなでして欲しいとかは言わないから……いやそれはそれであり?
「もー白虎ちゃんも真人ちゃんも永平ちゃんもそっけないー構ってー無視しないでー俺ちゃんを除け者にしないでー」
 とまたすんすんしていると、メールの着信音がした。千颯はスマホに視線を落とした。送り主はまたもや永平で、そこにはこう書いてあった。
『来週、そっち行けることになった。時間が合ったら会おう。話はその時聞く』
 永平は千颯に怒っていい。白虎丸もそう言っているし天の声もそう言っている。だが永平は千颯にこのようなメールをもたらした。
 騒ぐ千颯に妻がキレ、おたまを投擲するまで、残り五秒。

━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

 こんにちは、雪虫です。この度はご注文くださり、誠にありがとうござました。特に永平をご所望のようでしたので最後ちょろっと入れてみました。
 イメージや設定など齟齬がありました場合は、お手数ですがリテイクのご連絡お願いいたします。
 これまでご愛顧くださり、本当にありがとうございました。
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2019年03月28日

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