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『フィナーレからのプロローグ』
la0346


 そちらの方をふと見てみたらうっかり轢かれた。
 それが創(la0346)が「こちらの世界」に流れ着いた理由だった。少なくとも創当人はそう考えている。
 創はあちらの世界で十歳だった。今も十歳ではあるのだが、とりあえず今も「こちらの世界」に来る前も、可愛い十歳の少女であり、あったということは断言してもいいだろう。
 その日、創は行儀正しく横断歩道を渡っていた。きっちり右手を垂直に伸ばし、右を見て左を見てまた右を見てから足を踏み出したはずである。
 「ひったくりー!」という声が聞こえた。
 そちらの方をふと見てみたらうっかり轢かれた。
 先に述べたようにきちんと行儀正しく渡っていたはずなので、創ではなく創を轢いた者の過失100%だと思う。
 あ、そうかひったくりがバイクかなんかに乗っていて、逃げるついでに創を轢いたのか。なるほどなるほど。
 と言うと轢かれて死んだみたいであるけれど、正確には跳ね飛ばされてその後「ゴンッ!」って音がした。多分あたりどころがわるかったんだと思う。うん。

 とりあえずその時「あ、死んだ」と思った。そして死んだ事実より、「人間って死ぬ時『あ、死んだ』ってわかるんだー」の方が余程気になった。別に自殺志願者ではなかったが、死んだら死んだで仕方ないかー、ぐらいの感想しかなかった。創は順能力がある方なので、「死」という状況にもすんなり順能しようとした。

 ところがどっこい、気付けば創は見知らぬ場所に立っていた。具体的には見知らぬ場所に来たというより、目が覚めたら世界全体がハイテクになっていたような感じ。
 それもそのはず調べたところ、自分の記憶の西暦に六十年がプラスされており、実家の住所にいったらそこに自宅があった気配もなかった。役所的な痕跡も一切存在しなかった。
 これが普通の子供であればショックで泣きじゃくっていただろう。いや大人でも泣くかもしれない。事故で死んだと思ったら六十年後に飛ばされており、家もない。家族もいない。頼りになる者もまるでおらず、この時代の知識もない。まずパニックに陥るのが多分普通の反応だろう。
 
 だが創はこう思った。仕方ない、これからはただの「創」として生きていくしかない か。と。創は順能力がある方なので、「六十年後」という状況にもすんなり順能してしまった。

 というか内心としては「仕方ない」どころか「きゃっふうわっふう」状態だった。
 なんせ両親を埋めること無く合法的(?)にフリーになれたのだ。もっと自由に楽しみたい!
 自分で自分の責任を取れるだなんて、なんて素敵な自由だろう!

 心残りがあるとすれば、年上の従兄、かつ創の弟分(創談)が「そーちゃん」と呼んでくれなかったことだが。
 とは言っても旅先で、今日が賞味期限のプリンがあったことを思い出した程度の心残り。従兄はもしかしたら悲しむかもしれないが、なんせ六十年後に来てしまったのだ。諦めることにしよう。お互い。

 それから創は小学校編入の準備に着手することにした。小学校を卒業できていなかったので、とりあえず義務教育だけは済ませておきたいところ。
 とは言っても年代のズレに伴う学力のズレや、世間一般常識のすり合わせもしなければならないから、義務教育以前に勉強をしなくてはいけないし、その前に「六十年前の人間」が小学校に通わせてもらえるのかは不明だが、まあ、なんとかなるだろう。
 なお姓は隠匿することにした。水落の本家については存続しているようではあるが、藪蛇になった場合のリスクの高さから頼るつもりはゼロに近い。ついでにランドセルを買うつもりはない。高いし、二年しか使わないだろうし。



 創は知らない。
 実際にはちゃんと(?)死んでいて、葬儀も済ませられていることを。
 自分が死者で「魔女」であることを。
 将来(?)「魔女」になるか「人間」になるかは今後次第であることを。
 魔女となった暁には『災厄』の名を冠することを。

 彼女の名前は創。
 従兄のやんちゃモードから人生経験による思慮深さを抜き。
 『最悪たる災厄』の悪成分を詰め込んで。
 大叔母の狡猾さを羽織らせて。
 そこへ年齢相応の経験の甘さからくるポンコツさを盛り合わせ。
 もふもふとかわいいものとクマモチーフのものが好き。

 これから綴られていく物語は。
 前の世界で死んで。
 こちらの世界で生きていこう。

 という説明だけだと前向きなおはなし。

━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

 こんにちは、雪虫です。この度はご注文くださり、誠にありがとうござました。「不明点とか諸々全力でおまかせします」とありましたのでかなりフリーダムに書かせていただきました。イメージや設定など齟齬がありました場合は、お手数ですがリテイクのご連絡お願いいたします。
 これまでご愛顧くださり、本当にありがとうございました。
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グロリアスドライヴ
2019年04月01日

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