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『そして三人の物語 』
バルタサール・デル・レイaa4199)&紫苑aa4199hero001)&Lady−Xaa4199hero002


 時は2028年。異世界へ旅行できる技術をグロリア社が確立した頃、Lady−X(aa4199hero002)はコスメ関連で起業して一山あて、社長と呼ばれるようになっていた。
 英雄である彼女はこの世界に来た当時から一切歳を取ってはおらず、見た目は今もピチピチの、二十代のナイスバディ。だが中身はものすごく成長した。すっかり生活力逞しくなった。三年前は皿洗いもお掃除も満足にできなかったが、家事の腕も恩人からお墨付きをもらうまでになっていた。ちなみに社長業をしているが、同時に三年前からお世話になっているオネェバーでも働いており、はっきり言って社長業が副業、オネェバーの衣装・メイク係が本業である。
『(でも、バルちゃんと紫苑ちゃんはまだ帰ってこないのよね……)』
 バルタサール・デル・レイ(aa4199)と紫苑(aa4199hero001)。それがLady−Xと誓約している能力者と、彼と誓約しているもう一人の英雄の名であった。二人は数年前にこの世界から姿を消し、以降完全に消息不明。能力者であるバルタサールが死ねば、彼のライヴスで存在を維持しているLady−Xも消えるはず。だからもしこの世界にはいなくても、こことは違う別の世界で生き永らえているはずである。
 だからLady−Xはオネェバーの店主、キャシー(az0090)に相談し、オネェバー「かぐやひめん」で雇ってもらうことにした。二人を待ち続けるために。少しでも生活力をつけるために。そして今コスメ関連で社長業をやっている。お金はたんまりある。バルタサールと紫苑がいた頃の倍の倍の倍以上。好きな服も宝石も欲しいだけ手に入る。旅行だってこの世界のどこにだっていつでもいける。
 だが。
『うーん、もういっかなー』
 Lady−Xは飽きっぽかった。確かに自分は旅が好きだし、着道楽だし、宝石や綺麗な物が大好きだ。それが好きなだけできる社長業は魅力的と言えるだろう。
 でもかぐやひめんで働いて、身近にも楽しいことは色々とあるのだと知った。近所のスーパーに買い物に行くのも、料理を教えてもらうのも、閉店後に店のオネェさん達とカラオケするのも、楽しかった。旅は好き。宝石や綺麗な物も好き。でも一番好きなのは楽しいことだ。
 そして一番嫌いなのは束縛されるということだ。
 社長業はもう飽きた。バルタサールと紫苑は戻ってこない。技術は進歩した。お金はたんまりある。
『というわけで、バルちゃんと紫苑ちゃんのいる異世界に行くことにしました!』
 Lady−Xはキャシーのところにあっけらかんと報告に行った。三年経ち、人間であるキャシーは少しだけ歳を取った。もっとも今もトレーニングは欠かしていないので、Lady−Xとは別方向にワガママバディは顕在だが。
「そう。寂しくなるわね」
 キャシーは目元に刻まれた皺を一層深くした。三年前、キャシーは言った。バルタサールが帰ってくるまで、簡単に辞めさせてはあげないと。バルタサールが帰ってくるまでLady−Xの面倒は見ると。
「でも、Lady−Xちゃんがバルタサールちゃんを探しに行くなら、引き留めちゃいけないわねん。Lady−Xちゃん、立派になったわ。もうどこに行っても大丈夫よ」
 技術は進歩した。とは言えまだようやく確立したという段階で、もっと正確に言えば試作段階で不安定。使うだけで危険が伴うし、成功しても一方通行となる可能性は極めて高い。と言うより、もうこの世界に戻ってくることはないと考えた方がいいだろう。
『どうもお世話になりました。本当にありがとう、キャシーちゃん』
 恩人であり友でもあるキャシーにお礼とお別れを。キャシーは少し涙を浮かべ、そしてバチコーンとウインクをした。
「気を付けていってらっしゃい。バルタサールちゃんを見つけたら、よくも置いていったわねって一発ぶん殴っておやりなさい」
『うん、あたしもそのつもり』


「お頭、イントルージョナーの討伐、完了しました」
「怪我人の手当を急げ」
 部下に指示を出した後、バルタサールは巻き煙草の煙をふうと吐き出した。バルタサールは紫苑と共に仇を追って異世界に渡り、その後見事愚神を討ち果たすことに成功した。その間恐竜を食ったり、海をいかだで漂流したり、砂漠で危うく干からびかけたり、凍りかけたり色々したが、ものすごく長くなるので割愛することにする。
 だが仇を討ってめでたしめでたし、はい終わり……とはいかなかった。二人は元いた世界に……バルタサールの元の世界に戻ることはできなかった。
 とは言え元より覚悟の上。バルタサールは戻れないのを承知で仇を追うことを決め、紫苑も戻れないのを承知でバルタサールに付き合うことを決めたのだ。ゆえに悲観する理由はなく、今いる世界でどう生きていくかの方がよっぽど重要だった。幸い戦う術はある。武器は弾切れなしのAGW。そしてバルタサールと紫苑が辿り着いた世界にもイントルージョナーは発生していた。近隣住民の依頼を受けてそれらを狩っているうちに、いつの間にか義賊団の長みたいな立場になっており、とりあえずこちらはこちらで逞しく生きていた。
「……ん? 何か光らなかったか?」
 と、義賊団の一人が手をかざして空を見上げ、次の瞬間には「何かがこっちに近付いてくるぞ!」と周囲に向けて声を荒げた。見れば確かに、星のように輝く何かがこちらに向かって落ちてくる。
 すわ敵襲か、とバルタサールが銃を構え、義賊団も武器を手に取った、その時、ソレは轟音と共に着地しその姿を露わにした。長く豊かな紫の髪。肉厚な唇。小麦色の肌のナイスバディ。その姿にバルタサールは珍しく目を見開き、その人物は目の前の男に嬉し気に足を踏み出した。
『バルちゃん、紫苑ちゃん、会いたかったぁぁあッ!』
 次の瞬間、見事なぐーぱんちがバルタサールの右頬にめり込んだ。バルタサールは現役真っ盛り、だがキャシーに鍛えられたLady−Xのマッスルも伊達ではない。「お頭ァァアッ!」と声が上がり、バルタサールは崩れ落ちた。床に臥した相棒に一時視線を落とした後、紫苑は数年ぶりの再会となるLady−Xに笑顔を向けた。
『すごいね、どうやって来たの?』
『全財産投げ打って異世界行ったっきり旅行! バルちゃんも紫苑ちゃんもひどい! せめて書き置きぐらい残してくれればよかったのに!』
 その件に関しては非常に申し訳ないことをした。率直に言うとLady−Xのことを完全に忘れていたのだ。それに気付いたのは異世界に来てしばらくしてからであり、思い出したバルタサールに紫苑は真顔でこう言った。
『え、僕言ったじゃない。「忘れ物は?」って』
「……」
 言えよ。だがそれを言っても遅かったし、そしてもはやどうしようもなかった。迎えに行こうにも伝えようにも戻る手段は皆無である。もっともLady−Xはかつて『あたしも楽しみのために、仕方なくバルちゃんと契約したんだ』とか言っていたので、てっきりもう他のエージェント(お財布)と契約したかと思っていたが……。
『老後まで面倒みてあげるって約束したじゃない!』
 という言葉と共に再びぐーぱんちが飛んできた。色々と申し訳ないので甘んじて受けることにする。「お頭ァァアッ!」と義賊団の部下達の声が響いたが、紫苑は彼らに片手を上げ、笑いながらそれを制した。


『ふーん、義賊団。なにか面白そうなことしてるんだねー。二人で』
 数分後、Lady−Xはバルタサールと紫苑にじろじろとした視線を向けていた。なお「異世界」に来た影響なのか、バルタサールの年齢は五十代前半くらいで止まっており、紫苑とLady−Xも見た目にまったく変化はない。
「別に面白くは」
『そうかなー。少なくとも向こうにいた時よりはずっと楽しそうに見えるよ。なんだかすっかり健全な感じになっちゃって』
 紫苑が頬杖をつきながら言い、バルタサールはポーカーフェイスでバツが悪そうに口を閉ざした。紫苑の言うことは当たっている。もうカルテルに戻るのしんどい……とか思っていたが、メキシコ時代の経験がかなり役に立っているし、けっこう義賊団活動を楽しんでいる様子である。
 一方、紫苑も異世界の生活をそれなりに楽しんではいるのだが、けっこう健全(?)な精神状態になってしまったバルタサールに関してはつまらないなと思っていた。
 だが、Lady−Xが来たことで、バルタサールが困る様子を見られるようになるかもしれない。Lady−Xが異世界まで来るのは少し意外だったが、また賑やかになって、いいかもねとは思っている。
 Lady−Xは立ち上がる。
『よっし、あたしも一緒に義賊団を仕切っていくよ! そういえば海賊に憧れていた時期もあったなー。ここは海じゃなくて陸だけど、まあ似たようなものだよね!』
「…………………!?(何っ)」
 とバルタサールは思ったが、何も言わないことにした。というか言えない。色々と申し訳なくて頭があがらない。全財産をはたき、二人のいる世界を調べて特定し、危険も戻れないことも承知の上で来たとか言われてしまえばなおさら。もっともLady−Xは『まあいっかー』ぐらいのノリで来たらしいが。
『それじゃあみんな、あたしのことは姉御って呼んでね。名前はLady−X、これからどうぞよろしくね』
 色気たっぷりの美女からのハート付きのご挨拶に、野郎共からさっそく「姉御!」という声が飛んだ。なんせつい数日前まで社長業をしていたのだ。カリスマ性については一家言持ちである。
 バルタサールは密かに溜息をつき、紫苑はさっそくその様を楽しそうな顔で眺める。バルタサールがけっこう健全(?)な精神状態になって、それはつまらないけれど(含みあり)、なんだかんだご縁なので、どちらかが死ぬまでバディを続けていくつもりである。
 一方のバルタサールも、紫苑との誓約はこのまま続けていくつもりである。力を得るため、仇を討つため、そのために誓約したはずだったが、なんだかんだ長い付き合いになり、当初の利害関係からいい感じのバディになっている、とバルタサールは自覚している。
 もっとも、そんなこと口が裂けても絶対に言わないが。
『あたし達の冒険はこれからだ!』
 Lady−Xが唐突にそんなことを言い出した。どこかで聞いたことがある気がする。Lady−Xは拳を突き上げ、背後の二人を振り返る。
『って、この場合は言うんでしょ?』
 その台詞に紫苑がバルタサールの脇を小突いた。ああそうだ、確か紫苑がそんなことを言っていた。だから今回も、バルタサールは表情を崩さないままこう言った。
「知らん」

━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

 こんにちは、雪虫です。この度はご注文くださり、誠にありがとうござました。「アドベンチャー?」とのご注文をいただきましたので、そんなイメージで書かせていただきました。
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 これまでご愛顧くださり、本当にありがとうございました。
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2019年04月01日

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