▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『 春の戦い』
エテルナ・クーリゲルla0218

『……そちらではもう春でしょう? 少しおしゃれでもしてみたらどうかしら? 写真、期待してるわね』

 母親から送られてきた1通のメール。

 エテルナ・クーリゲル(la0218)の小さな戦いはここから始まった。

 日頃からたまにではあるが女性らしさを忘れないように、と言う母の事だ。

「外見から女性らしさを、と言うことなのだろうな。しかし、おしゃれか……」

 幼い頃から軍人教育を受けてきたこともあって、エテルナには年頃の女性らしさというものに疎い自覚がある。

 そんな彼女に、急におしゃれしてみろ、と言うのはかなりの難問だった。

「調査、検討する必要がありそうだな」

 分からないのであれば、学べばいい。

 エテルナは、すぐさまファッション雑誌を買いに書店に向かった。

  ***

「……」

 雑誌コーナーに到着したエテルナは、眉間にしわを寄せ難しい顔をすることになった。

 雑誌の種類が多すぎるのだ。

 そもそも、どれがファッション雑誌で、どれがそうでないのかがわからない。

 どの年代向けかは表紙に写っているモデルを見れば何となく分かる。

 だが、問題はそこからだ。

『デートコーデはこれで決まり!』

『テイスト別おしゃれ見えファッション』

 服に関する煽り文句が付いているのはファッション雑誌だろうと思うのだが、

『春を呼び込むメイク大公開』

『今、断然かわいいのはこのヘアスタイル』

 と言うように、メイクやヘアスタイルを前面に出されると、一見ファッション雑誌ではないように思う。

 だが、念のため中を確認すると『このメイクはこんなコーデにピッタリ』などと書かれているのだ。

 こうなると、それらもファッション雑誌であるような気がしてくる。

 だからと言ってそれっぽい雑誌を全部買うとなると平積みされている雑誌だけではなく、ラックに並ぶ雑誌まで全部買わなくてはならなくなる。

「勤務中に申し訳ありません」

 流石にそれは何か違う気がして、エテルナは女性の店員を呼び止めた。

「どの雑誌を買えば良いのでしょうか?」

 おしゃれ初心者であること、女性らしい服装がしたいを伝えると、店員は少し考えてから数冊の雑誌を勧めてくれた。

「助かりました。ありがとうございます」

  ***

 部屋に戻り早速ページを開く。

「……」

 雑誌を全部読んでわかったことは、ファッションという物にはガーリーからスポーティ、カジュアル、綺麗めなど色々なジャンルがあることと、どのジャンルが自分に似合うのかわからないということだけだった。

「女性らしい、と言うことならやはりスカートだろうか。だが、この服では急な戦闘には対応できないな」

 そもそも想定されていないので当然なのだが、彼女には雑誌に載っている様なふわりとしたスカートが戦闘に向くとは思えない。

(軍人たるもの、いつでも民間人を守れるようにしなくてはならないからな)

 見慣れない単語を検索しながら雑誌を見返し、出来るだけ動きやすいスカートを探す。

「パーカーはスポーツメーカーが販売したものが始まり。スウェットは伸縮性、吸汗性、防寒性に優れた厚手の生地……」

 最終的にエテルナが選んだのは、パーカーにスウェット素材のミニスカート、スニーカーと言うカジュアルなコーディネートだった。

 腰に巻いているネルシャツという物は厚手の布で作られたシャツであるということしかわからなかったが、まだ寒さが残るこの時期に防寒性が高いのは好感が持てる。

 腰に巻いている意味はどう考えても分からないが、それがおしゃれという物なのだろう。

「これは、どこで入手出来るんだ?」

 書かれているメーカーの名前を検索すると、グロリアスベースで全て手に入ることがすぐに分かった。

 忘れないように、とメモしていく途中でふと書店で見た『春を呼び込むメイク』という煽り文句が頭をよぎる。

「ん、化粧はどうするべきか」

 写真ではモデルが下の方を見ているためメイクがよくわからない。

 そのページを開いたまま別の雑誌を見るが、店員が色々なジャンルのファッション雑誌を選んでくれたせいか見れば見るほどわからなくなっていく。

 それならば、と検索しようとしてエテルナの手が止まる。

 検索ワードが分からないのだ。

 とりあえず、雑誌に載っていた単語をつなげ検索してみると、ずらっとメイクテクのサイトが出てきた。

「ファンデーションはパールの入ったリキッドタイプがお勧め。アイメイクはナチュラルな陰影で立体的に。チークと同じ系のリップで統一感を……。そんなことまで考えるのか」

 エテルナも、式典などでメイクをしたことはある。

 だが、その度に同期の女性が貸してくれていたのでメイク道具は持っていない。

「一式買うとしよう」

 そう言いながらサイトに書かれている化粧品もメモしていく。

「そういえば、このモデルは私より髪がずいぶん短いようだが、髪型はどうするべきだろうか?」

 次の敵は髪型だった。

 写真に写るモデルの髪は肩より少し長いくらいに見える。

 高い位置で縛ってなお腰よりも長い髪のエテルナが彼女の髪型を真似ることは出来ない。

「……髪は普段通りでもよさそうだな」

 再び雑誌を見比べたり検索したりしていたが、最終的に彼女はそう決断した。

 種類が多すぎてよくわからない、と言うのが本音だが、検索する限りでは同じようなファッションをしている女性にもポニーテールは多い。

「女性らしいファッションと言うのも奥が深いな……っと、買い物はまたにしよう」

 窓の外を見るといつの間にか日は西の空に沈み始め、空には星が瞬き始めている。

(こんなことを毎日のようにやっている女性達には頭が下がるな)

 自分には真似できそうもない、と思いながらエテルナは大きく伸びをして夕食の準備を始めた。

 後日、買い物に行った彼女に今日とはまた違った戦いが待っているのだが、それは別のお話。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
【 la0218 / エテルナ・クーリゲル / 女性 / 17歳(外見) / 女性らしさを求めて 】
おまかせノベル -
龍川 那月 クリエイターズルームへ
グロリアスドライヴ
2019年04月09日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.