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『お買い物デート』
la3088)&イリスリルヤ・レンネla2945

●二人でショッピング
 今日はお休みの日。天気も良く、絶好のお出かけ日和だ。
 泉(la3088)とイリスリルヤ・レンネ(la2945)は二人連れ立って、以前からの約束だったショッピングへと出発した。

「良いお天気で良かったですね」
 弾むような足取りのイリスリルヤが青空を見上げて言った。
「リルリル、昨日はちゃんと眠れたん?」
 イリスリルヤを愛称で呼び、泉は隣を歩く可愛らしい彼女の頬を指でつんつんとつついた。
「いえ、あの、お姉さんと初めてのお買い物に行けるのが嬉しくて、あんまり寝れなかったんです。でも、今は全然眠くないので、不思議ですね」
 ふふ、とイリスリルヤは微笑む。
 泉のことを『姉』と言ったイリスリルヤだが、実際は二人の間に血の繋がりはない。
 二人は放浪者で、外見も違うし出身世界も違う。だが、こちらの世界に転移してから出会った彼女達は、本物の姉妹のように仲良くなった。今では、実際のどんな姉妹よりも仲が良く、姉妹らしく見える。
「お洋服が欲しくても、あたし選び方が分からなかったので……でもお姉さんはお洒落だし、お買い物に付き合ってくれるって言ってもらえて、ずっと楽しみにしてたんです。お洋服の選び方、お姉さんのを見て勉強しますね」
 妹同然に思っているイリスリルヤの健気な言葉に、泉は思わずきゅ〜んとしてしまう。
 ホントにイリスリルヤは素直で良い子だ。また、そんな彼女でなかったらこんなに親しくはならなかっただろう、と泉は思う。
「なんやかわえぇこと言うてくれるやん〜。もうこれはデートやな。うん、デートて言うてまおか♪」
「はい、デートですね♪」

 期待に胸を膨らませ、二人はお洒落なファッション系のお店が集まっている町の一角にやって来たのだった。

 色んなお店をはしごして色んな服を見たいと考えている泉は、良さげだと思った店にどんどん入って行く。
 いつもは直感で買い物してしまうことも多いが、今回はイリスリルヤの服の見立てもあるので、いくらか慎重に服を見ていくことにした。
「ん〜、これなんかリルリルにどうやろ?」
 パッチワークを使った、アジアンなカンジの淡いピンクのワンピースを手に取り、イリスリルヤに合わせてみる。
「えぇやん、めっちゃ似合うわ〜! じゃあこれは?」
 ともう一方の手に持っていたカジュアルなカフタン風ドレスも当ててみた。
「こっちもえぇな! ヤバイどれも似合う……めっちゃかわえぇやん」
「そうですか? 泉さんにそう言ってもらえて嬉しいです。でもたくさん候補があると迷っちゃいますね」
「まぁまぁ、待ちぃな。あ、裾アシメの中華風ワンピかわえぇ……色ちあるでぇ♪」
 と泉は黒と紫系の服を取る。
「双子コーデ言うやつしよか♪ はい、リルリルはこっち試着してみて」
「わ、分かりました」
 泉は黒、イリスリルヤは紫系の中華風ワンピースをそれぞれ持って、試着室で着替える。
「どう? リルリル、着替え終わった?」
「あ、はい!」
 外から声をかけられてイリスリルヤが試着室のカーテンを開けると、わあ、と泉が声を上げた。
「リルリル、めっちゃ似合とるわ〜! ほんまかわえぇ〜! ほら、自分で見てみ?」
 泉がイリスリルヤを鏡の方に向かせて、自分と並んでいる姿を見せた。
 黒い色の服の泉は白銀の髪が映え、赤い瞳と合わせるかのように服にも赤いラインが入っていてとても似合っている。
 イリスリルヤの方は、顔や腕に見える青い鱗が紫系の色と良く合っていて、いつもより少し大人びた感じになった。
 いつもと雰囲気の違う自分を見て、イリスリルヤの顔に少し恥ずかし気な、でも喜びでいっぱいの表情が広がる。
 こうして同じ服を着て二人並ぶと、本当の姉妹のようだ。そう思えるのが、なによりイリスリルヤは嬉しかった。
「お姉さんもとっても素敵です」
「ほなら、これ買うの決定な!」
「はい、じゃあ次はこの服に合う靴をあたしが選びますね」
「じゃ、あっちの店行ってみぃひん? 他の服も試着してみよ♪」

 そんな感じで、二人は存分に楽しみながらいくつかのショップを回った。

「あ、ここは男の人用の服もあるんですね」
 イリスリルヤは何件目かの店内を見回して言った。
「せやなぁ。あの二人に似合いそうな服も探そかぁ」
 『あの二人』というのは彼女達共通の男友達のことだ。
「ふふっ、どんなのが似合うかなぁ。かっこいいのを選んじゃうんだから」
 ここまで泉と一緒に色々なタイプの服を見たり試着をしてみて、イリスリルヤの服選びのセンスも少しは自信が付いてきた。誰かのために選ぶという楽しさも分かってきたところだ。
 彼らに自分の選んだもので喜んでもらえたら。
 と言いつつも、そこはやはり女子なのか、二人はつい自分らの服をあれこれと試着して気に入った物を買ってしまうのだった。

●スイーツで一休み
「はぁー大概歩いたし荷物もぎょーさんやわぁ」
 泉とイリスリルヤは両手に紙袋をいくつも持って、少し立ち止まった。
 あっち行ってこれを買い、こっちの店でそれを買いなどしてというのは、実は結構な距離を歩いていたりする。店を出るたびに荷物も増えて行き、疲れるのは当然と言えるだろう。
「あ、お姉さん、公園に車? お店? があります」
 道の向かい側を見たイリスリルヤが、公園に停まっているクレープの移動販売車を見つけたのだ。
「何だろう、クレープ? お菓子なのかなぁ、甘い匂いがしますから」
 少々ぐったり気味だった泉の白虎耳が、ピクッと反応した。
「お? クレープ? クレープ言うた? 食べよ食べよー♪ あまぁーいもーん♪」
「あ、泉さん待ってくださいー」
 泉は急に元気になってクレープ屋を目指し、イリスリルヤもその後を追う。

「チョコバナナを一つください」
「ウチはいちごカスタードで!」
 クレープと飲み物も一緒に買った二人はベンチに腰掛け荷物を置き、ようやく一息ついた。
「あ、お姉さん、半分こしませんか?」
 イリスリルヤが自分のチョコバナナを差し出す。
「あらぁ、ええのん? じゃあこっちも半分こしよ♪」
 こんなふうにシェアできるのも、仲良し姉妹ならでは。
「あ、いちごカスタード美味しいです」
「チョコバナナも美味しぃわぁ♪」
 仲良く分け合ってクレープを食べている二人は、周りが羨むくらい微笑ましい光景だった。
 ぽかぽかの日差しの中、公園のベンチで並んで座り、甘くてふわふわのクレープを食べ、もちもちのタピオカミルクティーを飲む。
「はぁ〜……」
 こんなに至福な時はない、と泉はこの時間を満喫する。
 イリスリルヤも心地よい疲れをタピオカミルクティーを飲んで癒していた。
「美味しかったですね」
「せやな。あ、そういや服ばっかりでアクセ見てへんなぁ……最後にも少し見て回ろか?」
「はいっ」
 イリスリルヤは元気よく返事をして、立ち上がった。

●おそろい
 さっきとはまた違った通りに入って店先を見ながら歩いていると、イリスリルヤはふと足を止める。
 お洒落な店構えの雑貨店だ。
「ん? リルリルなぁーんや気になるもんあった?」
 先に行きかけた泉が聞いてくる。
「あの、このお店に目を惹かれちゃって……その、皆で、何かおそろいが欲しいなぁ、なんて」
 『皆』というのは男友達二人も含まれている。結局彼らの服は買えていなかったので、雑貨なら、と思ったのだ。
「せやったら、入ってみよか」
 泉に促されてイリスリルヤは雑貨店に入った。

 何だか変わった形の壁掛け時計やらフォトフレーム、ゴミ箱、置物みたいな物等々、色々な雑貨がある。
 うぅ〜ん、と頭をひねりながら店内を物色する泉。
「……野郎共もや言うたら……ブレスレットかネックレス?」
「いいですね。それだったら普段から身に着けられますし」
 泉の提案に、イリスリルヤも賛成した。
「あ、コレ……」
 ふと泉は目に入ったブレスレットを手に取った。
「革紐に誕生石のブレスレットやったらおそろいでけそうやない?」
「そうですね。さすがお姉さんです」
 店員に聞くとパワーストーンは自由にカスタマイズできるというので、二人は男友達の分の誕生石を探し始める。
「あ、お姉さん見てください。石には色々意味があるみたいですよ」
 イリスリルヤはパワーストーンの名前と意味が書いてある一覧表を見て、
「誕生石だけだと寂しいですから、お二人にふさわしい意味の石も、一緒に合わせてみませんか?」
「なるほど。えぇアイディアやん」
 という訳で、二人は一覧表を見ながら男友達に合いそうな意味の石の組み合わせを選び、自分達の石も同じように選んで、四人分のおそろいのブレスレットを作ってもらったのだった。

 望みの買い物を済ませ雑貨屋から出た泉とイリスリルヤは、早速ブレスレットをはめてみる。
 イリスリルヤ達は皆生まれた世界も種族すらも違うけれど、地球というこの世界でとても大切な絆を結ぶことができた。ブレスレットはその証だ。
 自分の手首に着けられたブレスレットを光にかざして見ながら、イリスリルヤは言った。
「ふふ、あのお二人も喜んでくれるでしょうか?」
「もちろんや。こぉ〜んなにかわえぇウチの妹ちゃんが、心を込めて選んだもんなんやからな♪ 気に入らんなんてゆうたらぶっとばすで」
「あ、暴力はダメですよ泉さん」
「いややなぁ、冗談やってぇ」
 そして二人は笑い合った。
「さ、そろそろ時間も遅ぉなるし、買い物もたっぷりしたし、帰ろか」
「はい、そうですね」
 二人は並んで夕暮れの道を歩く。
 疲れは全く感じなくなっていた。
 心が満たされ、まだ話し足りないようなどこかに行き忘れているような、そんな名残惜しさがあるだけだ。

 イリスリルヤは、そーっと、泉の方に片手を伸ばした。
 遠慮がちに泉の手に触れると、泉はその手を優しく握り返してくれた。
 どちらからともなくお互い顔を見合わせる。
 泉は嬉しいような照れくさいような笑みをこぼして。
 イリスリルヤは天使のような喜び溢れる微笑みで応える。
 二人の間にもう言葉はいらず、切っても切れない絆のように、手を繋いで家へと帰るのだった――。


━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
ご依頼いただきありがとうございました!
仲良しな二人を、こちらも微笑ましく思いながら書かせていただきました。

ブレスレットのくだりはご指定に少々アレンジを加えてしまったのですが、大丈夫でしょうか?
他、泉さんの大阪弁や(大阪弁は好きなので張り切って書いたのですが)内容にイメージと違う所などございましたら、ご遠慮なくリテイクをお申し付けください。

気に入っていただけたら幸いです。
またご縁がありましたら嬉しく思います。

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久遠由純 クリエイターズルームへ
グロリアスドライヴ
2019年04月09日

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