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『God kits boost ritch!』
化野 鳥太郎la0108)&旅のお供la0059)&桜壱la0205)&ナナシla0051

●御曹司マンション四〇階
 グロリアスベースに聳えるマンション。五五階建のそこには、多くのライセンサーが住まっている。
 マンションの部屋は一人住まいも可能だが、中には家賃を浮かすために他のライセンサーと同居する者もあるようで。
 化野 鳥太郎(la0108)もその一人だった。
 同居人はとあるヴァルキュリアではあるのだが。彼はとある欠点を抱えていて……。
「こ、こいつは!」
 部屋の片づけをしている最中。鳥太郎は見つけてはならないものを発見してしまった。
 その名を口にするのも悍ましい。黒く艶やかな外見。不動に見えて恐るべき瞬発力を見せるそやつ。
 敢えて本来の名を避けて呼称するならば、Gと呼ぶ以外にない。
 棚の裏から這い出してきたGだが、壁際に鎮座したかと思うとそこに我が物顔で居座る構えだ。
 何を隠そう、同居人の欠点とは、こいつの存在だった。一目見ただけで、いや名を耳にしただけで、発狂するほどに苦手なのだ。
 同居人が外出中で良かった。本当に良かった。
「よし、今の内に始末してやるぜ」
 新聞紙を丸めた鳥太郎。足音を殺し、Gへと忍び寄る。十分に距離を詰め、シンブンシソードを振り被ると。
「もらったァッ!」
 勢いに任せて振り下ろした。
 しかしその一撃はただ床を叩くだけに終わった。
 殺気を読み取る力に長けたGは、圧殺される前に目にもとまらぬ速度で離脱。
 だが諦めるわけにはいかない。鳥太郎は新聞紙を振り回しながら、逃げ回るGを追う。
 小さな敵を前に部屋中を行き来するのだから、当然のように激しい物音が響く。それ自体はやむを得ないのだが。
 ややあって、部屋のドアが開いた。間の悪いことに、同居人が帰ってきたのだ。
「先生、ただいま! 紅茶買ってきましたよ。すぐ淹れますね」
 ヴァルキュリア、桜壱(la0205)。
 その声に、鳥太郎が青ざめたことは言うまでもない。

●御曹司マンション四〇一号室
 同じマンションの隣室には青年と少女が住んでいた。二人もまた、ライセンサーである。
 少女はおやつを食べながらテレビを見ており、青年はコーヒーを飲みながら読書する、ゆったりとした休暇を過ごしていた、そんな時である。
「隣の部屋が騒がしいね」
 ヴァルキュリアの少女ナカモ(la0059)が同居人に声をかけた。
 先ほどから壁越しに伝わってくる音。響き。不審に思うのも無理のない話だ。通常であれば壁を叩くなどして隣室に抗議するところではあるものの、そこに住まうのは知人である。
 呼びかけられたダラ(la0051)は、不服に思うどころか違う心配をしていた。
(確かに騒がしすぎる。ナイトメアか?)
 グロリアスベースの、しかもマンションの一室。そんなピンポイントにナイトメアが出現するのは些か不自然だ。それに、隣人はライセンサーでもある。万が一戦闘になっていたのだとしたら、物音どころの騒ぎではないだろう。
 一瞬脳裏によぎった思考は、平素戦場に身を置くが故の杞憂だったのかもしれない。
 とはいえこの騒がしさは少々異常だ。
「俺、様子を見てくる」
「私も行く!」
 飲みかけていたコーヒーをテーブルに置き、ダラがソファから立ち上がる。
 その背にナカモも続いた。
 隣室で起きる騒ぎ。二人を待ち受けるものとは。

●御曹司マンション四〇二号室
「鳥太郎、そんなに騒いで何があった」
「こんにちはー!」
 ダラ、ナカモの両名が部屋を訪ねたのは丁度桜壱が帰宅した直後だった。
 これぞ天の助けと顔を上げたのは鳥太郎だ。
「二人とも、良いところに! 桜壱さん、お客さんだから紅茶多めに淹れて!」
「分かりました。少々お待ちくださいね」
 買い物袋から茶葉を出し、湯を沸かし始める桜壱。
 この瞬間しかないと踏んだ鳥太郎は、来客者二人に無言で手招きをした。
 胡乱に思いながらもダラとナカモが部屋の奥へ。
 鳥太郎としては、声に出して事情を伝えるわけにはいかない。聞かれてはならないのだ。だからこそ、壁に張り付いたGを静かに指さして事情を察してもらおうとした。
「ふおおおおおおおおお!!」
「ど、どうしました?」
「いや、何でもない」
「今日の茶葉は桜壱のセンスに任せたと言ったら、ナカモさんが興奮してしまったみたいで」
 突如視界に映った黒い生物。仰天したナカモがつい声を上げる。
 不審に思った桜壱が顔を覗かせようとする。
 しかしその視線を遮るようにダラが立ち、鳥太郎はナカモの口を押えながらとっさの機転で取り繕った。
 ナカモもこくこくと頷く。
 ふーんと漏らした桜壱は、再び火の監視に戻る。
 ほっと胸を撫で下ろした三人。顔を寄せ合って、作戦会議を開始した。
「桜壱さんは、アイツを見ると大暴走を起こすんだ」
「じゃあ、見せるわけにはいかないね! 私が気を引くよ」
「なら、俺も討伐を手伝おう。しかし、高層マンションに現れるとは、やはりナイトメア……」
「「流石にそれはない!」」
 概ね話がまとまったところで、ダラの発言に二人が同時にツッコミ。
 また何事かと顔を出そうとした桜壱。
 これへ咄嗟に飛び出したのはナカモだった。
「大丈夫、何でもない、本当に何でもないから!」
 両手を最大限に広げてディフェンスの構えを取る。
 瞳に疑問符を浮かべて小首を傾げる桜壱だが、普段から仲の良いナカモが言うのだから、そうなのだろうと人数分のカップを取り出しに戻る。
 ふぅと息を吐いたナカモは、鳥太郎とダラへ視線を投げて、「そっちは任せるよ」とメッセージを投げる。
 察した二人は、丸めた新聞紙を手に、壁際のGへ敢然と立ち向かう。
「ダラさん、二人で挟撃しよう」
「……了解だ」
 床に対して平行の姿勢を取るGだが、この頭側へ鳥太郎が、尻側へダラが周る。
 互いに目配せし、頷き合ったのを合図として、前後から同時に新聞紙を叩きつけた。
 しかし。
 カサカサと恐るべき速度でGは走り、二人の攻撃は空振りに終わる。
「二人とも、何をして……」
「ねぇ! お茶菓子、お茶菓子どうしよう! 紅茶だけじゃ寂しいもんね!!」
 その騒ぎに桜壱がまたも様子を確認しようとするが、ナカモがその首根っこを掴んでキッチンに引き戻した。
 間一髪。
 一瞬心臓が跳ね上がる心地だった鳥太郎とダラだが、再びG討伐に集中する。
 先ほどの攻撃を回避した敵は天井へと張り付いていた。
「俺が叩き落す」
「分かった。トドメは俺が」
 再度役割を確認した二人。
 タイミングを合わせ、ダラが軽く跳ねる。伸ばした腕、握られた新聞紙。天井を掠めるようにして、Gを叩きにかかる。
 流石にこれは不意打ちを食らったようで、Gはポトリと落下した。
「もらった!」
 待ち受けていた鳥太郎が、間髪入れずに新聞紙を振り下ろす。
 ちなみに、ご存じであろうか。
 一説によれば、Gは翅を備えるものの、己が飛べるという自覚はないのだとか。外敵による脅威で真に生命の危機を感じることで、その背の翼は覚醒し、大空へと羽ばたくのだ。
 そう、今こそがその時だ。
 黒きGは光に透けるその翅で飛び上がり、寸前のところで鳥太郎の攻撃を躱したのだ。
「ふおあああああああ! 鳥太郎さん! ダラ!! こっち来たよおおおおおおおお!」
 目の端で始終を見ていたナカモが思わず叫ぶ。
 その黒き者が自由への翼を手に入れ颯爽と飛翔する姿は、キッチンからでもよく確認できる。
 しまったと思うが遅い。
 嗚呼、桜壱が振り向いてしまう。
 どうする、どうする……!
「と、飛んでる! 飛んでるよおおおおおお!!」
 狂乱しながらも、ナカモは最後の手に出た。いや、それはナカモの胸にも恐怖が宿ったからなのかもしれない。
 軽く飛び上がったナカモは、桜壱の目を塞ぐかのように抱き着いたのだ。
「ふ、ぉ……!?」
 突然視界が真っ暗になり、何が起こったかも分からずに手をバタつかせる桜壱。
「なるほど、仲が良いとは思っていたが、そこまで進んでいたか」
「何だって!? せ、先生は認めないぞ。いや確かにナカモさんは可愛らしいし、桜壱さんとも仲良くしてくれている。しかしそのようなことは、まだ早いと」
「何か言ってないで、早く何とかしてー!」
 ナカモが悲鳴を上げる。
 絶妙な勘違いをした鳥太郎とダラは、しかしその声で我に返る。そう、これは彼女が全てをかなぐり捨てた捨て身の策なのだと理解したのだ。
 ホバリングの要領で飛び続けるGだが、翼を手に入れたばかりで動きに慣れていないのか。速度はゆっくりだ。
 これを叩き落し、即座に勝負に出なくてはならない。
 一方で、視界を塞がれた桜壱は。
「ナカモさん? えっと、何……? 皆で、何をしているのですか?」
 何とか抱き着く少女を引き離し、先ほどから室内で起きている騒動を確認しようとする。
 だが離そうとすればするほど、ナカモは抱き着く腕に力を込めてくる。
「フラフラと……。厄介な」
「このっ、落ちろ!」
 ダラ、鳥太郎と順に新聞紙を振り回すものの、慣れないながらにフラフラと飛び回るGをなかなか捉えることができない。
 しかし。またとない絶好の機会が訪れた。
 Gは飛び続けて疲弊したと見えて、着地する場所を探していたらしい。そして、たどり着いたのは、衣装デザインの都合で剥き出しとなったナカモの左肩だ。
「あれ、何か、肩に変な感触」
「動くな、ナカモ。今仕留め――」
 ダラがシンブンシソードを大上段に構え、今度こそ最後の一撃を繰り出そうとした、その時だ。
「いい加減に、離れてくださいって」
 抱き着かれていた桜壱が、とにかくナカモの腕を解こうと彼女に触れた。
 そう、Gが止まる、左肩に。
「「あ」」
 男性二人が呆けたような声を発するが、時すでに遅し。
 あれほど追い続けた憎き敵は、この瞬間に絶命した。
 視界を奪われた桜壱の手によって。
 手のひらに妙な感触を覚える桜壱。
 何が起こったのか分からず、思わず腕の力が抜けるナカモ。
 ようやく視界を取り戻した桜壱は、何を手にしたのかを確認する。
 ナカモも、己の左肩へ目を移した。
 そこにあったものは、潰れ、脂ぎった体液を染み出させ、バラバラとなった黒きアイツの死骸。
 無音の時が数秒だけ流れた。
 その後。
「うぉああああああああああああッ!?」
「ふぉああああああああああああッ!?」

●御曹司マンション四〇階の悲劇
 悍ましいものを目にしたショックで大暴走を引き起こした桜壱とナカモ。
 それにより部屋中の家具が倒れ、沸かしていたお湯はひっくり返るという大参事。
 二人がようやく落ち着きを取り戻した頃には、最早お茶会など開けないほどに部屋の中ハメチャクチャになってしまっていた。
「そ、そうでしたか。なるほど、それで……」
「うぅ、ごめんなさい」
 事情を説明された桜壱はシュンとなっている。同じように暴れたナカモも同様だった。
「ともかく、片づけよう。それから改めてお茶にしよう」
「俺も手伝う」
 何はともあれ、この部屋を元通りにしなくては、今夜ゆっくりと眠ることもできない。
 四人は気を取り戻して倒れた家具などを元の位置へと戻し始めた。

 しかし。こんな話をご存じではないだろうか。
 Gは、一匹いたら数十、数百はその部屋に存在すると。
 ナカモと桜壱が倒れた棚を引き起こす。その陰にいたものは……。
「うぉああああああああああああッ!?」
「ふぉああああああああああああッ!?」
 総勢三匹にも及ぶ、新たなるGであった。
 対G戦闘、その第二ラウンドのゴングが鳴った。


━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

ご依頼ありがとうございます。
ドタバタコメディをご要望とのことで、描かせていただきました。
お気に召していただけましたでしょうか。
この虫、私も苦手ではありますが……、現れた時はとても苦戦しますよね。
ご存じかもしれませんが、洗剤をかけると一瞬で倒せてしまうのだとか。
ともかく、四人がとても仲良しなことが発注文からも読み取れました。
鳥太郎さんとダラさんの大人な男の関係も良いですが、桜壱さんとナカモさんのちょっと幼いような仲の良さも素敵ですね。
もっともっと描いてみたいとも思いましたが、これ以上書くと収拾がつかなくなりそうで……。
それほど楽しいご依頼でした。
またご縁がございましたら担当させていただければと存じます。
重ねてになりますが、この度のご依頼誠にありがとうございました。
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2019年04月10日

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