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『Reunited Family』
ユリア・スメラギla0717

その日はユリア・スメラギ(la0717)にとって、特別な日だった。
 2059年の3月も終わりになる頃――。
 それは、ユリアの弟の一周忌だから。

 その日はユリアの両親も集まることになり、家出以来、ユリアは初めて両親と会うことになった。
 弟のお墓のある管理事務所で、ユリアと両親は顔を合わせる。
「――久しぶり」
 ユリアは少し後ろめたいような気持ちで、でも会えて良かったという表情を見せて彼らに言う。
 両親は笑顔でそんなユリアを迎えてくれた。
 やはり親は子供がいくつになっても親なのだ。娘に会えて嬉しくないわけがない。
 相変わらず両親は仲が良く、手桶や柄杓を持ってユリアの前を並んで歩く。

 ユリアは家出したといっても、両親はユリアの住所も連絡先も知っており、毎日のように夫婦のイチャラブメールを送って来るし、時々は通話で会話したり、なんなら毎月仕送りまでしてくれているので、結局ユリア自身に家出感はまるでなかった。
 実際に会うこと自体は久しぶりだが、ほぼ毎日メールのやり取りをしているせいか、あまり離れていたという感覚もない。
(でも……)
 とユリアは思う。
 両親はいつもライセンサーをしているユリアの体を心配してくれていた。
 それも当然だ。
 弟はライセンサーであるがゆえに亡くなってしまったのだから。
(……あたしは……パパとママに、息子が亡くなった後、娘も死にに行くって追い打ちをかけたようなもの……。パパもママも、本当はあたしに実家に帰って来て欲しいのよね……)
 両親としては、娘までライセンサーをやって欲しくないというのが本音だろう。
 息子を亡くしたばかりなのに、二人の反対を押し切って娘もライセンサーになってしまったのだから、その胸中を思うとユリアも申し訳なく思う。
 今ならちゃんと両親の気持ちを考えることができるが、だけどあの時のユリアは自分を止められなかったのだ。
 自分も適合者になったと知った時、これは天啓だと思った。弟の仇を討つのは自分しかいない、と。
 両親は強引にライセンサーを辞めさせようとはしなかったが、時々『辛かったら帰って来ていい』と言って遠回しにほのめかしたりしていた。
 その度にユリアはごまかして、ライセンサーを続けてきた。
 それが変わったのは、ユリアに恋人ができてからだ。
(あたしの恋人の話になった途端、ものすごく興味深く食いついてきて……おかげで、彼を守りたいからって理由でライセンサーを続けること、納得してもらえたわね……)
 最後には娘のやりたいことを認めてくれる、優しい両親なのだ。
 ユリアは改めて温かい気持ちで、二人の後姿を見ていた。

 お墓を掃除して、ユリア達は手を合わせる。
 両親も穏やかな眼差しで墓を見つめ、きっと心の中で弟と対話しているのだろう。
 ユリアはイチゴとハルシャギクの花を手向けた。弟の命日の4月13日に由来する花だ。
「久しぶりね……空の彼方から、見守ってくれてる?」
 まるで弟がそこにいるかのように話しかけ、空を見上げるユリア。
「今ね……お姉ちゃん、あなたと同じライセンサーよ」
 両親は気を利かせたのか、少し離れた所でユリアを待っていた。
 確かにこういうのを聞かれるのは少し恥ずかしいので、ありがたかった。
 ユリアは弟の姿を思い浮かべる。
 大好きだった彼の姿を。
 泣いてしまいそうになるが、泣いてしまったらきっと弟が悲しむと思い、恋人のことを考えそれを支えにして、ユリアは顔を上げた。

 今日は弟に伝えたいことがあるのだ。
「あたしね……恋人が、できたの」
 『えッ、本当に!?』と驚いている弟の顔が目に浮かぶ。
 ふふふ、とユリアは笑う。
「優しくて、何事にも一生懸命で……一緒にいるだけで幸せになれる、お姉ちゃん自慢の彼氏よ」
 彼のおかげで、ユリアの心も変わった。
 ライセンサーになったばかりの頃は、弟の復讐をすることで頭がいっぱいだった。
 ユリアの全てだった弟を奪った、憎きナイトメアを全て滅ぼす。
 それがユリアの心を占めていた。
 でも今は違う。
 もちろん何年経とうがナイトメアに対する憎しみは決して消えはしないが、それ以上に『守りたい』という思いが強くなったのだ。
 恋人がいる世界を。そして
「あなたが守ろうとした、あなたが望んだ平和な世界を、あなたに代わってお姉ちゃんが絶対に実現するからね」
 ユリアのイメージの中の弟は優し気に微笑んでいる。
 『お姉ちゃんに任せたよ』と言っているかのようだった。

 それからユリアは彼の魂が安らかであるように、もう一度心の中で祈りを捧げ。
「……そろそろ、帰らなきゃ。また、来るわね。あたしと彼のこと、見守ってて」
 最後にそう言って、ユリアは踵を返す。
 立ち去りかけたユリアの耳に、

 ――来てくれてありがとう――

 という弟の声が聞こえた気がした――。


━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
再度のご依頼、ありがとうございました!
今回は心情が中心で、ユリアさんのご両親や弟さんに対する思いがちゃんと伝わるように、と思いながら書かせていただきました。

大幅にユリアさんの気持ちをアドリブで膨らませて行間を埋めたのですが、ご希望に添えているでしょうか……?
イメージとのずれやご不満な部分がありましたら、ご遠慮なくリテイクをお申し付けください。

またご縁がありましたら嬉しいです。

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久遠由純 クリエイターズルームへ
グロリアスドライヴ
2019年04月16日

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