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『バクとナイトメアと俺』
ケヴィンla0192

 ケヴィン(la0192)が目を開けるとそこは見知らぬ街だった。

「キャー!」

 つんざくような悲鳴にその方角を見ると、人より何倍も大きなマンティスが角の様に発達した顎で女性に迫っている。

 何故か持っていたミラージュワンドを掴みケヴィンは走り出した。

「これでも喰らいやがれ!」

 ワンドを振り下ろす。

 ケヴィンのレベルはベースの中でも高い方に分類される。

 武器自体の攻撃力が低くても多少のダメージ位与えられる、はずだった。

「なっ?!」

 しかし、ナイトメアは無傷。

 それどころか、リジェクションシールドによって逆にケヴィンが吹っ飛ばされる。

「イマジナリードライブが起動しねぇ。不良品かよ!」

 他の武器を探るがいつも持っているはずの銃器は何故か消えていた。

「それじゃダメバク! あいつらナイトメアは魔法少女にしか倒せないんだバク!!」

「あ?!何言って……」

 何か変なことを言い出した声の方に目を向けると、そこにはバクがいた、手乗りサイズの。

「どうしてそのステッキを?! ……仕方ないバク!おじさん、ワンドを空高く掲げるんだバク!!」

「いや、何言ってんのかわかんねぇから!」

「ナイトメアがそこまで迫ってるバク! 急ぐバク!!!」

 その声に、ナイトメアの方を振り返ると、鋭利な顎がケヴィンに振り下ろされる寸前だった。

 すんでのところで回避し、一瞬ワンドを見つめる。

 この不良品しか使えない今、手乗りバクの提案に乗るしかないように彼には思われた。

「これが終わったら説明してもらうからな!……夢の力をここへ! 変身!!」

 ワンドを空へ突き上げると、口が勝手に動いた瞬間、体が光に包まれ……。

「魔法少年ケヴィン君参上!! って、何だこれっ!!!!」

 そこにいたのは、フリフリの赤いキュロットスカートを履いた少年だった。

「魔法中年にならなかっただけよかったバク……。戦い方は体が知ってるはずバク! さあ、ナイトメアを倒すバク!!」

「いや、そこじゃねーよ!!! あぁーもう、クソッタレが」

 いつの間にか(ピンク色の可愛らしい)銃になっていたワンドの照準をナイトメアに合わせ引き金を引くと、ナイトメアの顎が吹っ飛ばされる。

 衝撃でぐらりと傾くナイトメアの身体。

 その隙に義手の掌に開いた穴に、銃口を突っ込むケヴィン。

 銃はまばゆい光を放つと腕の先がアクションゲームにでも出てきそうな刀に変化した。

「マジック高周波ブレード!!」

 横薙ぎの一閃。

 しかし、それはナイトメアの巨大な足に傷すらつけられない。

「話違うぞ! ダメージ入らねぇじゃねぇか!!」

「敵が大きすぎるんだバク! ケヴィン君、ブレードに敵を倒すイメージを送り込むんだバク!」

「もうどうにでもなれっ!」

 半ばやけくそになりながら、マンティスを倒すイメージを頭に思い描く。

 その刹那、星やハートと言ったファンシーな光がケヴィンを包み込む。

「超変身!」

 雷に打たれたような衝撃と光に一瞬目を閉じ目を開くと、視界に収まらないほど大きく見えていたナイトメアが、視界に収まっている。

 いや、それよりもこの視界には既視感があった。

 アサルトコアに乗った時と同じ視界だ。

「俺がでかくなんのかよ! もう何でもいいや……」

 とんでも設定のオンパレードに頭が痛くなってきたケヴィンは考えることを止めた。

 ブレードを構え、正眼に構えるとそのまま腕に叩きつけると、周囲の建物を破壊しながらナイトメアの腕が落ちる。

 が、すぐに再生する腕。

 見ると顎もいつの間にか再生している。

「胸の中心にあるコアを破壊するんだバク! そうしないとどこを攻撃してもすぐ再生するバク!!」

 バクの声に、コアに突きを見舞うが、その部分のシールドが強化されているのか刃が通らない。

「くそっ、もっと強い……」

(ドリルのような……)

 そう思った瞬間、ブレードがドリルに変化した。

「考えた通りの武器になるってか。こいつはいい」

 ケヴィンは一度離れてから、ナイトメアの懐へ突っ込みコアにドリルを突き立てる。

「死ねぇぇぇ!」

 殺意を込めた声と共にドリルが高速で回る。

 パリン、とシールドが割れる音がしてコアにひび割れていくのが分かった。

 そのまま、もう一歩前へ出ると、コアが完全に砕け散るのに呼応したかのようにぐしゃりとナイトメアの身体が瓦解し、周囲に体液と肉塊をまき散らしながらナイトメアは形を失った。

「ざまぁみろ!!」

  ***

 視界に、真っ黒なままつけっぱなしのテレビと床に置かれた怪獣映画のDVD、半ば無理やり貸し出された魔法少女の漫画が目に入る。

「いつの間にか、寝てたのか……。なんかすげぇ嫌な夢見た気がする」

 夢の内容は思い出せないが、むかむかとした感覚から悪夢だったことだけは分かった。

 スマホの時計を見ると、朝まではまだ少しある。

 床で寝てしまったせいか体も痛い。

「寝なおすか」

 テレビを消し、ケヴィンは寝室へと移動することにした。

 そして、次はどうか夢など見ないようにと願いながら、眠りに落ちていくのだった。



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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【 la0192 / ケヴィン / 男性 / 37歳(外見) / 突っ込み系魔法……少年? 】
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龍川 那月 クリエイターズルームへ
グロリアスドライヴ
2019年04月17日

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