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『春の名残 』
ミィリアka2689


 木々の隙間からは柔らかな日差しが差し込み、石畳を照らしていた。その下を、桜色の髪を靡かせた、小柄な少女――ミィリア(ka2689)がせっせと走っている。憧れのおサムライさんになるため、そして女子力(パワー)アップのため! 日々の弛まぬ努力が肝心なのだった。
 そんな彼女が立ち止まって息を整えた瞬間、ふわりと風が吹き、それに乗って小さな花弁が舞う。白地にほんのりと薄いピンクで色付いた、桜にも似たその花を見て、ミィリアは遠い日の約束を思い出した。もう叶うことのないことだけれど、彼女の中にしっかりと根付いている。それから幾度目の春が過ぎただろうか、ミィリアはあの言葉を思い出しながら、決意を新たにした。
「おじいちゃん。ミィリア、頑張ってるよ」
 ミィリアが花に向かってそう呟くと、その下に軒を連ねていた店から一人の女性が出てきた。女性はミィリアを一目見ると愛想よく微笑みかける。
「ハンターさんですか? お疲れ様ですー」
 ミィリアが微笑み返すと、女性は彼女を気遣うように店内を指し、
「よかったら休憩してってください」
 と言って、案内を申し出た。ミィリアもちょうど喉の渇きを覚えていたため、女性についていくことにした。店内はリアルブルーの日本にかつてあった茶屋とよく似ていて、ミィリアはどこか懐かしい気持ちになる。
「実はスタッフにリアルブルー出身の人がいて……」
 ミィリアがきょろきょろとしている横で、女性はこう切り出した。



 湯気を立てる湯呑と、皿の上に団子が三本。お盆に運ばれてやってきたそれは、香ばしい匂いと色彩でミィリアを楽しませた。
「口に合えばいいんですけど……」
「ありがとう! でござる!」
 湯呑の中になみなみと注がれた緑茶で喉を潤すと、ミィリアは団子を食べ始める。緊張した面持ちで見守る女性を前に、ミィリアは目を輝かせた。中の餡は甘く、でも上品な味わいがした。
「うわぁ! このお団子、すごく美味しい! ……でござる!」
 その声を聴くと、女性はほっと胸をなで下ろしてこう呟く。
「よかった……これじゃないって言われたらどうしようかと……」
「そんなことないでござる! なんで?」
 ミィリアから空いた串を受け取りつつ、女性は不安げにこう説明し始めた。
「だって……」
「ええっ!?」
 ミィリアの装いが武士のように見えたから、本場の人間にこれは違うって言われたらどうしよう……、そういった趣旨のことを言い終えると、女性は空いた湯呑に緑茶を注いだ。ミィリアはそれを聞いて怒るでもなく、怪訝そうな面持ちになるでもなく、非常に嬉しそうな顔で女性に詰め寄った。
「ミィリア、おサムライさんに見えた!?」
「えっ!? 違うんですか!?」
 それを聞いて驚く女性と、同じく驚くミィリア。暫しの間ののち、落ち着いたミィリアは自分の夢と憧れのおサムライさん像をぽつりぽつりと語り始め、女性はそれをうんうんと聞いていた。ミィリアの話が終わると、女性は柔らかい微笑を浮かべて口を開く。
「そうだったんですねぇ……なれるといいですねぇ、おサムライさん」
「うん、頑張るでござる!」
 そうして、ミィリアは再び団子を頬張った。
 空いた皿と湯呑を片付けながら、女性はミィリアの背中に手を振った。
「ありがとうございましたー」
「また来るでござるー!」
 ミィリアはそれに気付くと手を振り返し、また先の先に伸びる道を走り出す。それは長い長い道のりであったが、頑張れるような気がした。
 外では未だに木々の隙間から柔らかな日差しが差し込み、やさしい風に乗って先程見たものと同じ花弁が舞っていた。それに応援されているような気持ちになりながら、今日もミィリアは往く! 憧れのおサムライさんを目指して!

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【ka2689/ミィリア/女性/外見12歳/闘狩人】
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ファナティックブラッド
2019年04月19日

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