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『ゴロスケ』
マクガフィンla0428

●File01
 いつのものように、マクガフィン(la0428)に指令が下された。
 暗い事務室。飾りっ気もなく、殺風景なここへ呼び出された彼女は、スーツ姿の男に言葉もなく投げ出された資料に目を落とす。
 男の顔写真。といっても、男の方としては撮られようとした写真ではなく、町を歩いている姿を盗撮したもののようだ。それにしても、撮影者はプロのようで、顔の特徴はしっかりと捉えている。
 これが張り付けられた書類には、写真だけでは判別しにくいような特徴が記されていた。
「後は、付属の資料を読めば分かる。仕事だ。やれ」
「かしこまりました」
 封筒に資料をしまったマクガフィンは、そのまま部屋を出る。
 ただ資料を受け取るだけの、彼女にとっては日常的なやり取り。
 そこに何の感動も感情もない。

●File02
 用意されたホテルに戻る。
 扉の施錠、カーテンを閉め、それからコンセント類の確認。盗聴や盗撮がないかをチェックするいつもの癖だ。
 特に問題ないと判断してから、マクガフィンはテーブルに資料を広げる。
 男の容姿を頭に叩き込み、二枚目の資料へ目を移した。
 そこには、男の主な行動パターンが記されている。午前七時半頃には家を出、電車に乗って食品の仲卸センターに出勤。午後六時に退勤、午後九時には帰宅している。妻と、小学生の娘がいるそうだ。
 というのは、さて、ここで気になるのは、退勤してから帰宅までの時間だ。出勤時に比べると時間がかかっている。
 計算すると、およそ一時間半ほどの空白。
 指令が下されたのは、この一時間半にあるのだろう。
 三枚目の資料。
 そこに、空白の時間に関する謎が隠されていた。
 勤め先である仲卸センターの近くで、二週間ほど前にナイトメア出現の情報がある。SALFよりライセンサーが出動し、これを退治したのだが。
 どうやら、その事件現場にこの男がいたらしい。当時は巻き込まれた一般市民として、ライセンサーと共に出動した警官隊により避難させられている。事件以後、男の帰宅が遅くなった。
 恐らく、ナイトメアの出現によって業務が混乱しているとでも家族に言っているのだろう。しかし仲卸センターではそんな様子はなく、男は退勤すると人込みに紛れるようにして忽然と姿を消し、ある程度の時間になると駅に現れて帰宅を開始している。
 加えて、男の帰りが遅くなった頃から、子供の行方不明が多発しているという。
 何らかの形でナイトメアに関与している可能性は高い。
「これは……。なるほど、そういうことですか」
 五枚目の資料は新聞の切り抜き。日付は昨日だ。
 倒されたというナイトメア。それにそっくりな生物の影が、その町で目撃されたという記事だ。写真もなく、少々信ぴょう性に欠けるが、間違いない。
 スマホが鳴った。番号は非通知。いつものことだ。
『資料は確認したか?』
「今、一通り目を通したところです」
 先ほど事務所で資料を渡してきた男の声だった。
 時刻は、午後六時十五分。
『男が退勤後に向かう先が分かった。住所を送る。すぐに向かえ』
 それだけで、電話は切れた。続いて情報が送られてくる。
 ここからそう遠くはなさそうだが、急がねば男が帰路についてしまう。

●File03
 ゴミ屋敷とでも言うべき場所だった。というよりは、空き家か。男は確かにこの家へ向かったとのことだ。
 路地裏とはいえ、大きな物音を出すわけにはいかない。用心のため、EXISである師子王をいつでも抜けるように用意をし、中の様子を伺おう――として、気配を感じ、放置されたゴミの陰に身を隠した。
 足音が聞こえる。そちらに視線を送ると、ターゲットの男が現れた。その背には小さな子供を背負っている。子供はぐったりしていて、眠っているのか死んでいるのか判別がつかない。
 男はゴミ屋敷の窓を開けると、中に背負っていた子供を放り込んだ。
 直後、骨を砕くような音が聞こえる。
 なるほど、とマクガフィンは全てを察して男の背後に立った。
「そこで何をしているのですか」
 まだ武器を見せない。確かな証拠を掴むまでは。
 ビクリと背を震わせた男が振り返る。
「み、見たのか?」
「子供を攫い、この家へ投げ込んでいましたね。中にいるのはナイトメア。さっきのは、餌。違いますか?」
 推測だ。
 しかし核心を突いた自信がある。それを裏付けるように、男の顔色が変わった。
「……ターゲット特定。ナイトメアを餌付けしていました。この男をレヴェルと断定し、処分します」
 インカムで彼女はどこかへ呟くように告げる。
 すると自棄を起こした男が、マクガフィンに掴みかかった。
 躱すまでもない。が、男の手は彼女の顔を隠す布を捕らえ、剥ぎ取る。
「ひ――ッ!」
 その素顔は、筆舌に尽くしがたい醜さ。いや、醜いと形容することもできない、バケモノとでも呼ぶべき容姿。
 マクガフィンはというと、素顔を晒したことを気にもせず、師子王を抜いた。そして、強張り腰を抜かした男の首を切り落とす。
「あなたにも、子供がいるのでしたね。他人の子をナイトメアの餌にするなんて、所詮あなたは眩しい世界に生きられない異分子でしかないのです」
 男の亡骸を抱えると、マクガフィンはそれをも家の中へ放り込んだ。
 ナイトメアは餌を得た。後は組織の方から上手くSALFに連絡を取ってもらえば、ライセンサーが始末するだろう。

 マクガフィン。
 代えの利くもの。
 その使命は、日向に生きる者を守るため日陰に生き、道を踏み外した者を始末すること。
 今夜もどこかで、梟が鳴いている。

━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
ご依頼ありがとうございます。
暗殺者さんですので、そこをピックアップさせていただきました。
お気に召していただけましたでしょうか?
おまかせ商品ですので、選ばせていただいた内容は以上の通りですが。
色んな角度から描けそうで、とてもわくわくいたしました。
今後のRPの糧となりましたら幸いです。
おまかせノベル -
追掛二兎 クリエイターズルームへ
グロリアスドライヴ
2019年04月23日

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