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『溢れ、立ち止まる』
クララ・グラディスla0188

 この世界に干渉するナイトメアの活動に時間の限りはないと言われている。
 奴らを倒すことが出来るライセンサーはすぐに対応し、この世界の敵であるナイトメアを排除しなければならない。
 しかし、この世界には時間が存在する。
 朝に本部に向かったクララ・グラディス(la0188)は何か任務がないか眺めていると、係員がバタバタと駆け込んできた。
 クララは考えながらも一歩後ろに動くと、横からの気配に気づいたが、その反応は遅かった。
「きゃっ」
 係員とぶつかってしまい、二人は反動で床に崩れてしまう。
 クララとぶつかったのは本部の係員だ。
 年齢は二十代前半の女性。長い髪を横に流して纏めて、ブラウスにタイトスカートという出で立ち。足元のベージュのパンプスがつるんとしたエナメル素材で目に入った。
「ご、ごめんなさい……」
 先に謝ったのはクララだ。係員はよろけながらも上体を起こしている。
「こちらこそ、前方不注意でした……すみません。お怪我はありませんか?」
 係員が心配そうに尋ねると、クララは「平気です」と返した。
 立ち上がろうとしたクララの視界に入ったのは係員が落としただろう書類だ。
「落としましたよ」
 クララが書類を拾って手渡す。
「ありがとうございます。これは先ほど発生したナイトメアの資料です。もし、宜しければご検討ください」
 資料を読むと、港で起きた事件で、緊急性がある内容だ。
 しかし、人数さえ集まればすぐに終われるとクララは判断した。
「参加します」
 反射的に反応したクララに係員は面をくらったが、笑顔で「ありがとうございます」と返した。
 その場の会話を聞いていたライセンサーが緊急性が高い内容と知り、次々に参加表明を行い、瞬く間に人数が満員となる。
 手短な打ち合わせの後、参加したメンバーは現場へと向かう。
 ナイトメアの数は数体であり、民間人への被害もまだのようだった。
 ライセンサー達は一時は苦戦を強いられたが、恙なくナイトメアを倒す事に成功する。
 本部への報告も終えて報酬を受け取った後、クララは本部内の休憩所で休んでいた。
 まだ幼いといえるクララにとって、ナイトメアとの戦いは恐ろしいものだ。
 ナイトメアにはいくつもの形状が存在するという。
 人類にとって未知なるもの……というにはナイトメアと人間は干渉しあってから人間にとって随分と時間が立っていた。
 故に奴らの情報が溢れ、彼女自体もその敵を屠ってきた。
 しかし、未だに戦いへの恐れは拭いきれてはいない。
 彼女の中で溢れ出る恐怖にクララの手は肩は震えていた。
 自身の身体の中で響く鼓動が煩わしい。彼女の芯に重たい異物が埋め込まれたかのように内臓が収縮していく感覚に苦しそうな表情で眉を顰める。
 戦いへの恐れ……戦いに対する何への怖れか、まだクララにはわからない。
 ぎゅっ、と手を握りしめ、その恐れに対して心の蓋をする。
 蓋をしてしまわないと、恐怖が身体中に蔓延してしまうような気がするのだ。
 目を閉じ、ゆっくりと呼吸を整える。
「……はぁ……」
 俯きながらそっと目を開いてクララはため息をついた。
 自身の中にある恐怖が鎮まっても、心の中にその残滓が残っているような気がする……が、時間が経てば消えるだろう。
 いつもの事だ。
 俯いているクララの視界に靴が見えた。
 つるんとしたエナメル素材のベージュのパンプス。
 ゆっくりと顔を上げると、先ほどぶつかった係員が書類を抱きしめて立っていた。
 心配そうにクララを見下ろしていた。目が合うと彼女はしゃがみ込み、椅子に座るクララと目を合わせる。
「大丈夫ですか……?」
「……もう、大丈夫……」
 頷くクララは自身に言い聞かせるようであり、その声は震えていた。
「ごめんなさい……ライセンサーなのに……こんな風に……」
 途切れ途切れでクララが自身の情けない様を見せてしまった事を悔やむ。
「自分の命がいつ奪われるかわからない状態に対し、恐怖を露にすることを笑う事は決していけない事です」
 そう告げる係員にクララは目を丸くする。
「私の尊敬する方から言われたことなんです」
 微笑む係員をクララが見つめた。
 その係員は元ライセンサーだったという。
 イマジナリードライブへの適性を持っていた為、ライセンサーになったという。戦闘訓練を受けたわけではなく、至極普通の一般人だった。
「初めての戦闘の時は、あまりの怖さに腰を抜かしてしまって……今も思い出すだけで顔から火が出そうです」
 眉を八の字にして恥ずかしそうにする係員にクララは口元を緩める。
「その時に一緒になったライセンサーに何かと助けて頂いたのです」
「そうなんですか……」
「恐れるのは当たり前の事であり、恐れる事をコントロールしろと……貴女はきちんとコントロールしてて、凄いですね」
 思いがけず、誉められてクララは面をくらってしまう。
「そう、かな……」
 彼女の言っていることの正否はクララにはわからなく、そのまま言葉を受けとる。
「私にはそう思えます」
 微笑む係員を見てクララは照れ隠しで無意識に俯いてしまう。
「私にはこれでしか稼げないから……」
 ライセンサーとして任務を果たし、稼ぐこと……自分で決めた事だ。
「人それぞれですから」
「そうだね……」
 ライセンサーは多様だ。この世界に住まう複数の種族がそれとなっている。
「あ、お仕事は大丈夫ですか?」
 気持ちが落ち着いてきたのか、思い出したようにクララが係員に尋ねた。
 係員はしゃがみ込んだまま、書類を抱えていたことに気づく。
 見つめ合うこと暫し。
 係員が顔面蒼白でテンパった様子で固まっている。
 中々に面白い光景のはずだが、笑えない。
「もう、大丈夫だから……」
「は、はい。何よりです。お帰りはお気をつけて……!」
 引きつった声で立ち上がった係員は足早に仕事へ戻って行った。
 クララは「大丈夫かな……」と心配しながら係員の後姿を見送った後、この場を離れようと、席を立つ。
 壁に掛けられている時計を見やれば、まだ午後三時。
 任務を見に行く気にはなれず、本部を出る。外に出て、クララは本部の建物を見上げた。
「やっぱり、怖いな……」
 戦う事は。
 それでも戦わねばならない。
 これからも。
 本部を背に彼女は歩いていった。


━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【la0188/クララ・グラディス/女性/12歳/ネメシスフォース×セイント】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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ご発注ありがとうございました。
鷹羽柊架です。
初のグロリアスドライヴで緊張しました。
クララさんの設定を拝見し、ライセンサーとして活動を始めた間もない頃、こういうシーンがあったのでは……と思いながら書かせて頂きました。
おまかせノベル -
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グロリアスドライヴ
2019年04月23日

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