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『雨という名の 』
la3088

 春の弱い雨が雫となって窓ガラスを叩いている。
 雨の音以外は何も聞こえない静かな日。
 こんな日は、私は決まってあの人のことを思い出す……。

 この“雨”と同じ名前のあの人を、私は忘れない――。


 放浪者である泉(la3088)がこちらの世界に転移する前の異世界――。
 その世界では獣人と獣が住み、人間というものがいなかった。
 獣人と獣は似て非なる全く違う生物で、お互い狩るか狩られるかの生存競争を常に繰り広げている。
 そんな世界の片隅で、泉は生まれた。
 雌2、雄7の9人兄妹の末っ子で、泉は双子の妹だ。

 同じ姿をした双子の姉は、手先が器用で怖がりさん。
 いっつもウチの半歩後ろを手ェ引かれて歩く。
 どっちがお姉ちゃんか分からんなぁなんてよぉ言われたけど、そんなんどっちでもえぇやんって思ってた。
 だって『ウチらは二人で一つ、悲しいことは半分こ、嬉しいことは二倍やでぇ』って。
 口癖のように言う姉の笑顔が大好きだったから。

 まだ小さくてもやんちゃだった泉は、ある日一人で森に仕掛けた罠を見に行こうとした。
 狩りはまだ早いって皆言うけど、泉は皆の言うことを無視してこっそり外に出て行く。
 その後ろに、姉が付いて来ていた。
 やはり双子の片割れだからか泉の考えは姉にはお見通しのようで、今まで泉は姉を欺けたためしがない。
 姉は危ないから帰ろう、怒られるで、と半ベソをかきながら一生懸命泉の後を歩いている。
 泉は半ば呆れながら、
「怖いんやったら帰りぃや。ウチ一人でもでけるもん」
 と姉に言うが、姉は帰らず付いて来る。
 本当は怖いのだろうが、泉が心配なのもあるのだろう。そういう所もまた姉らしい。
 それならそれでいい、と泉もそのまま森に向かった。
 もしかしたら、そうやっていつも我を張らず怖がりな姉に良い所を見せたかったのかもしれない。
 二人で一つだから、姉ができないことは全部泉ができるのだと証明したかったのかも。
 その時の気持ちは今はもう泉にも分からないが、とにかく色んな意味で子供だったことは確かだ。

 やがて仕掛けた罠の近くまで来ると、見事獲物が掛かっているのが見えた。
「ウサギや! ほらみぃ♪」
 やっぱり。こんなん一人でも全然平気や。
 得意になって駆け出す泉。
 と、その刹那。
「っ!?」
 野生の勘とでも言おうか、不意に重い気配を感じる。
 バッと振り向くと、そこにはよだれを垂らした獣の獅子がいた。
「――っ!!」
 子供の泉より大きい。
 その恐ろし気な姿と殺気に圧倒されて、声が出なかった。
 逃げなきゃ、と思うのに、足が地面に凍り付いてしまったかのように動かない。
 たすけて。
 獅子が大きな口を開けて泉に飛び掛かって来た。
「!!」
 泉は思わずぎゅっと目をつぶり、地面に叩きつけられる衝撃を感じる。
 が、痛みはほぼない。
「……?」
 そうっと目を開けると、その先には獅子に噛み付かれた姉の姿があった。
 何が起こったのか、泉は突然理解した。姉が咄嗟に泉を突き飛ばして庇い、自分が身代わりとなったのだ。
 その小さな体に獅子の鋭い牙が突き刺さり、姉は血にまみれている。
 姉の瞳が泉の目と合った。
 口元から流れる血と共に早く逃げろと泉に訴える声が聞こえて。
 だけど泉は目を見開いたまま、震える身体を動かすことができなかった。まるで脳と体が切り離されてしまったかのようだ。
 獅子が姉の体を振り回し、みるみるうちに緋色に染まっていく姉の姿を見続けることしかできず――。

 泉は立ち上がろうとも逃げようともせず、茫然と眼前の出来事を見ていた。
 いつの間にか兄達が駆け付けていてどうにか獅子を倒したが、彼らも無傷ではすまなかった。
 泉は無事だったけれど、払った犠牲はあまりにも大きいものだった。
 なのに。
 家に帰っても誰も泉を怒らず、ただ悲しみが家族に降りかかるばかり。

 ……なんで……誰もウチを責めへんのん?
 ウチのせいであの子はあんな……あんな……

 そして泉は心が割れる音を聞いた……。

 どぉして? いつもウチが悪いことをしたり言いつけを守らんかったら怒るやろ。
 ウチは取り返しのつかんことをしたって分かってる。いつもみたいに怒ってえぇのに。

 そうしてくれれば、泉も力一杯泣き叫んで謝ることができたのに。
 皆悲しい顔をして泉を見て目を伏せるだけで、泉を責めるようなことは何も言わなかった。
 きっとそれが罰なのだろう。
 誰かに泣いて謝ったところで意味などない。だって本当に謝るべき相手はもう泉の前に現れないのだから。
 激しく怒鳴られ罵られるよりもつらく厳しい罰。
 もう悲しいことは半分にならない。全部泉が背負っていくものになった。
 心の半分は失われたまま、忘れることのできない罪悪の傷となって残り続ける。


 ――こんな雨の日は、私は決まってあの人のことを思い出す。
 この雨と同じ名前のあの人を……。

 二人で一つ……そう言った半分はもういない……。
 一生……ずっと……私は……半分しかない……。


━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
ご依頼ありがとうございました!
泉さんにはこんなに悲しい過去があったんですね…。でも今は明るく振舞っているというのが胸を打ちます。

発注文に書かれていた雰囲気を壊さないようにと思いつつ書かせていただきました。
泉さんのイメージ通りになっていると良いのですが。
「何かちゃう」とかどこか気になる部分などありましたら、ご遠慮なくリテイクをお申し付けください。

気に入っていただけたら嬉しいです。
よろしければまたご縁がありますように。
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久遠由純 クリエイターズルームへ
グロリアスドライヴ
2019年04月25日

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