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『PRIME HEART 』
マキシマム・プライスla3360

●戦え超ロボット生命体
 多く群れを成して飛ぶ、イナゴ型のナイトメア。その威容は天を覆い、人々を恐れおののかせる。光ある方へと逃げ惑い、誰もが助けを求めて叫ぶ。
 その声を聞きつけて、マキシマム・プライス(la3360)が走る。下半身が変形したその姿はまるで人型戦車だ。胸元に嵌め込まれたコア――彼の本体がきらりと光を放っていた。
「待っていろ! 今すぐに行く!」
 装甲車との融合を解除。マキシマムは空高くへと射出され、ナイトメアの群れへと突っ込んだ。腰部にマウントされた剣を抜き放つと、渾身の力で目の前の一体をぶった切る。
「この私の前で狼藉を働き、生きて帰れると思うな!」
 激しい口調で言い放つと、押し寄せてきたイナゴの群れを手にした斧で次々に切り刻んでいく。果敢に矢面に立つその雄姿は、正義の為に戦う者の鑑であった。その背後に従う仲間のライセンサー達も、果敢にナイトメアの群れへと切り込んでいく。
「纏めてくるがいい。正義の力の強さというものを、その身を以て知るのだ!」
 挑発と共に全身から光を発する。光に晒されたイナゴの群れは、翅を広げてマキシマムを包み込み、その顎で噛み付いてきた。彼の張るシールドに、一つ一つ小さな罅が走る。それでも彼は一切怖気ること無く、背後のライセンサーに叫ぶ。
「私にいい考えがある! このまま私ごとこの群れを焼き払うのだ!」
「えええっ?」
 ライセンサーは叫ぶ。ネメシスフォースの必殺技の一つ、“咲き乱れる赤”。広範囲の敵を一斉に薙ぎ払う威力を秘めながらも、そのエネルギーは簡単に暴走して味方まで焼き払ってしまう。わざわざやれと言われても、尻込みするのが人情というものだ。
「私が簡単にへこたれると思うのか! 今すぐに撃て!」
「……ええいっ!」
 彼の熱意に折れ、ライセンサーは半ばやけっぱちになって“赤”を放った。弾けた炎が、マキシマムごとイナゴを焼き払っていく。シールドの表面が、融けるように歪み始めた。
「ぐぅっ……しかし、この程度……何の問題もない!」
 機械生命体らしからぬ、100%の気合と根性で耐え抜くマキシマム。イナゴの群れが次々果てていく中で、彼だけは戦場に堂々と立ち続けた。
「いい一撃だ。私が身体を張った甲斐がある」
 一人呟いていたマキシマムだが、目の前の一回り大きなイナゴが一体、そのお腹が妙な動きを見せた事に気が付いた。背中が割れ、何かが飛び出してくる。
「いかんっ!」
 咄嗟に飛び出し、マキシマムは飛び出したイナゴを上から押さえ込んだ。人体とイナゴの頭を組み合わせたような見た目のナイトメアは、顎を打ち鳴らしてマキシマムの胴体を蹴りつけた。バランスを崩し、マキシマムはどさりと地面に墜落した。
「大丈夫ですか!」
 また別の一人が慌ててマキシマムのシールドを回復させる。マキシマムは身体を変形させて素早く起き上がり、銃を引き抜く。
「すまない、感謝する」
 言いつつ、彼は目の前の敵を見据える。敵は素早く跳躍すると、軽やかにマキシマムへ拳を突き出して来る。堂々と対峙したマキシマムは、左手を突き出し怪人の顔面を押さえ込んだ。
「醜い存在だ。その首捻り取ってくれよう!」
 怪人は両手両足を振るって逃れようとするが、マキシマムは顔面を掴んだまま、一切離そうとしない。その胸に銃口を押し当て、何発も撃ち込んでいく。その度に体液が飛び散り、マット塗装が施されたマキシマムのボディを汚していく。
「これぞ、“値千金”の一撃と知れ!」
 マキシマムは目の前の壁に怪人を叩きつけ、頭を罅割れの中に埋め込んだ。斧を取り出すと、彼は力任せに振るってその首筋に叩きつける。
 怪人の首が飛ぶ。壁が弾ける。怪人は瓦礫の中へと沈み、ぴくりとも動かなくなった。

「……ふう」
 溜め息と共に、全身のパーツから白い蒸気を噴き出す。今日も正義の勝利。人類の平和は保たれたのである。
 が。
「いかんな。……またやってしまった」
 意気軒昂に振るった一撃は、今日も街をほんの少しだけ破壊してしまったのであった。

●この世界の為に
 戦いを終え、器物損壊の弁済に関する報告を終え、マキシマムはゴロゴロと足元のタイヤを転がし、SALF本部の中を歩き回っていた。白い制服に身を包み、彼らは慌ただしく方々を行き交っている。
「彼らは上手く戦えているだろうか」
 SALF職員の働く姿を見るたびに、彼の下で働いていた仲間達の姿を思い出してしまう。同じ鋼鉄と貴金属で構成された肉体を持つ超ロボット生命体たちの事を。
 彼らの能力を心配しているわけではない。マキシマムが指揮官として打ち出す策は何時でも力任せであり、むしろ部下の考えた作戦の方が理に適っていることが多かった。彼の指揮官としての存在意義は、すなわちチームの支柱であった。“値千金”の一撃で敵を正面から打ち破り、仲間達の戦意を高揚させる事が、マキシマムの存在意義だったのである。
「奴らは非道だ。流言、篭絡、同士討ち、何でもやる。……その策謀に惑わされてはいないだろうか」
 マキシマムに策略は意味がなかった。策を弄さずとも、敵の策に嵌まろうとも、真正面から事態を解決するだけの力があった。
 だが、マキシマムは己の中に燃える正義の本能に突き動かされ、仲間の下を離れてしまった。今頃、彼らはどのように戦いを続けているのだろうか。策に翻弄され、敗北を喫するような事になってはいないだろうか。
 不安が思考回路を過ぎった時、マキシマムは慌てて首を振った。
(いや、彼らに限ってそのような事はあるまい。彼らだけでも、きっとうまく切り抜けてくれているはずだ。指揮官の第一義は、仲間を信ずる事だ。仲間を思わず、ただ戦う機械となった時こそ、私はただの暴力装置となり果てる……)

 それだけは許されない。彼は改めて己を律し、顔を上げて次なる戦いへと赴くのだった。

 END


━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

●登場人物一覧
 マキシマム・プライス(la3360)

●ライター通信
初めましてですね。影絵企我です。これから宜しくお願いします。

これを書かせて頂くうえで何をイメージしたかは言うまでもないと思いますが……上手く描けているでしょうか。満足していただけると幸いです。

ではまた、ご縁がありましたら……
おまかせノベル -
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グロリアスドライヴ
2019年05月07日

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