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『世界の切り取り線は四角 』
赤羽 恭弥la0774

(良い位置を陣取る事が出来た。距離もベストだな)
 胸中で、赤羽 恭弥(la0774)はガッツポーズを取る。彼の黒色の瞳が、スコープ越しに敵の姿を捉えた。
 そこにいるのは世界に仇なす存在、ナイトメア。SALFに所属する恭弥の、今回のターゲットだ。
 事前の話し合いで、作戦は入念に立ててきている。敵もさして大きな個体ではない。恭弥達の実力であれば、苦戦する事はないだろう。
 だが、目を離す事なく獲物を見据えるその横顔に油断の色はなかった。戦場では何が起こるかは分からないものだ。敵の動き一つ一つを注視しながら、恭弥は周囲への警戒を怠る事なく次の一撃に備える。
 知識と経験を活かした数々の戦術を元に、恭弥は絶好のタイミングで敵へと攻撃を与えていった。今日の経験もまた、次に活かすための記録の一つとなるだろう。数を重ねる程、情報は精度を増していく。実践のデータが次の勝利への大きな礎となる事を、恭弥は知っていた。
 仲間と連携しながら、その銃弾は敵を追い詰めていく。地形を活かす事も忘れない。暴れたナイトメアが倒した木々は自然物で出来た即興のバリケードとなり、恭弥の事を敵の攻撃対象から逸らしてくれる。
 この地域は、かつては観光地として名が知れていたと聞く。近くにある山から見る景色も、絶景なのだ、と。
 だがそれも、ナイトメアに侵略される前の話だ。我が物顔で暴れる彼らのせいで、この周囲の地域は現在一般人の立ち入りが禁止されていた。
 景色を見る楽しみすらも知らず、ただ欲望のままに暴れるナイトメア。これ以上の蛮行を、許すわけにはいかない。
(――少し反省しような!)
 弾丸はその無粋な侵略者を、真っ直ぐに貫く。倒れ伏したナイトメアが動かなくなった事を確認し、急所を的確に射抜いた狙撃手はその口角を上げるのだった。

 ◆

 恭弥が再びその地へと訪れたのは、その依頼を成功させてから幾日が過ぎた頃であった。
 ナイトメアがそこに再び現れたという報告も、何かトラブルが起こったという話を聞いたわけでもない。それもそのはず、今回は仕事で訪れたわけではないのだから
 ナイトメアの支配から開放されたその地域は元来の穏やかさを取り戻し、再び観光地として賑わい始めている。近くにある山も、人々が立ち入れるようになったらしい。
 その場所こそが、恭弥の目的だった。履き慣れた靴が訪れた事のない山道の土を踏み締める感触に、恭弥は胸が高鳴るのを感じる。
 この場所もまた、彼が仲間と共にナイトメアを倒しこの地を解放したおかげで得る事の出来た戦果の一つだった。世界を旅する冒険者である恭弥にとって、新しい冒険の地を旅する事は何よりもの報酬なのである。
 ここだけではなく、この周囲に存在する目ぼしいスポットを恭弥は事前にピックアップしてきていた。ただし、戦闘の時とは違い計画をあまり詰めすぎないようにしている。
 旅において重要なのは、現地での情報収集だ。その場に実際に行かないと、分からない事は多い。
 旅のさなかで、恭弥はこの地に関する情報を集めて行く。この記録もまた、次の旅に活かすための知識となり、恭弥にとっては忘れられない記憶になるだろう。
 世界には、まだ見た事がない場所が無数にあるという事実が、恭弥の冒険心をくすぐってやまない。途方もないと思われようが、その全てをこの足で巡ってみたいと願ってしまうのは冒険者のさがだろう。
 最も、他の世界へとその内また飛ばされてしまう可能性もあるのだが……。いくつもの世界を転移してきた放浪者である恭弥は、その可能性も覚悟していた。
 世界に慣れてきた頃に、また別の世界へと飛ばされる。何度か繰り返してきた突然の転移は、恭弥の意思を尊重してはくれない。
 それでも、恭弥はまたその新しい地で、旅をするのだろう。無数の世界、無数の場所。歩む彼の足が、止まる事はない。
 頂上が近づくにつれ、はやる気持ちを抑えきれずに恭弥は歩く速度を早めた。
「おお、絶景っ!」
 その先で彼を待っていたのは、とびきりの絶景だ。眼下に展開している広大なパノラマに、登ってきた疲労も一瞬で吹っ飛び恭弥は思わず目を輝かせる。
 違う季節にくれば、また別の景色を見れるだろう。その時は、今回とは別のルートを開拓するのも一興かもしれない。
「よし。記念に、と」
 持ってきていた機器のカメラ機能を起動し、恭弥はシャッターボタンを押す。世界の一部が、彼の手中に収まるサイズに切り取られる。
 ベストショットと言って良い程上手く撮れたその写真の出来栄えを見て、恭弥は嬉しそうに笑みを深めるのだった。

━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
ご発注ありがとうございました。ライターのしまだです。
冒険者としての恭弥さんさんと狙撃手である恭弥さん、どちらをメインにするか悩んだ末に、両方執筆させていただく事にいたしました。
お気に召すお話に出来ていましたら、幸いです。何か不備等ありましたら、お手数ですがご連絡ください。
それでは、この度はおまかせノベルという貴重な機会をいただきありがとうございました。またいつか機会がありましたら、その時はよろしくお願いいたします。
おまかせノベル -
しまだ クリエイターズルームへ
グロリアスドライヴ
2019年05月07日

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