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『星天の舞台でステップを踏んで 』
レイオンaa4200hero001)&春月aa4200)&荒木 拓海aa1049)&メリッサ インガルズaa1049hero001

 最初のステップは音楽で踏み、後は自分たちの心の音色のままにステップを踏む。星々が眠りにつく頃まで気のままに。

 長かった戦いに終止符が打たれ、多くのものがホッと一息ついた。ただ、大きな戦いが済んだというだけで、王の許をを離れ行動する従魔や愚神たちとの戦いが終わったわけではない。とはいえ、肩の荷が下りたのもまた事実である。そんなこともあり、有志たちによる祝賀パーティが催されることとなった。
 場所は山間にある古城。ドレスコード有りということもあって、参加者たちは張り切って準備をする。会場入りの前の準備では、一緒に来ていた友人たちと飾り合ったり、褒め合ったりと忙しない。
 参加者である春月(aa4200)は一緒に来ていた友人に長い髪をセットしてもらった。ドレスは赤いミニドレス。スカートの部分と首元にはバラが咲く。耳には長めのタッセルが春月が動くたびに揺れる。相方のレイオン(aa4200hero001)は淡いブルーのスーツ。タイとチーフは色を合わせた。準備が整えば、楽しみだとはやる気持ちが抑えきれない春月に会場は逃げないからと落ち着かせながら、迎えの車へと乗りこんだ。
 春月たちが準備する同時刻、荒木 拓海(aa1049)とメリッサ インガルズ(aa1049hero001)もまた身支度をしていた。メリッサよりも先に支度を終えた拓海は襟元や袖に金糸の刺繍が施されたスーツ。ちょっと派手だったかと同じころに支度を終えた妻に確認すれば、問題ないとばかりに称賛された。そんな中、メリッサたちが着替えている部屋からは楽しそうな声が漏れてくる。そして、支度を終え、部屋から出てきたメリッサは水色の花をふんだんにあしらった紫がかったシフォンドレス。
「あら、いつもよりイケメンに見えるわよ、エスコートよろしく」
 妻を一足先に送り出し、待っていた拓海にそう言いながら、手を差し出せば、拓海は勿論と差し出された手を取り、会場へと向かった。

 春月とレイオン、拓海とメリッサがそれぞれ会場となる古城に到着したころにはすでに多くの同僚もとい戦友たちの姿があった。今回のために多くの使用人を雇ったようで、あちらこちらへと忙しく動き回っている。参加者としての確認が終われば、使用人に案内され、大広間へと向かう。道程には元の持ち主の趣味だろうか豪華な調度品の数々が展示されていた。程なくして、大広間へと到着し、その扉が開かれれば、煌びやかな世界が広がっていた。天井中央には大きなシャンデリアとそれに添えるように配置された小さなシャンデリア群。そして、大きく食事エリアとダンスエリアで二つに分けられていた。それぞれでバルコニーも解放されているようで、食事をしながらでもダンスをしながらでも、外を味わうことができるようになっていた。
「うん、美味しい! あ、こっちのも美味しそう」
「そんなに急いで食べなくても……」
 用意されていた豪勢な食事に美味しい美味しいと言いながら頬張る春月に給仕から受け取ったドリンクを料理も逃げないからと差し出す。
「ありがとう!」
 受け取った飲み物を片手に食事を再開させる春月にレイオンは言った傍からと溜息を吐きつつも、止めることなく、手に持つドリンクを口にする。
 参加者が全員集まれば、主催者の言葉からの乾杯。そして、本番とばかりに会場の一角の音楽隊が演奏を始めた。
 曲が始まるとすぐに春月は食事をやめ、踊ってくる! とダンスエリアに飛び出していった。レイオンは踊る彼女がよく見える位置に移動し、飲み物を片手に見守る。途中、知人たちと少し言葉を交わしつつも、その目はしっかりと春月の踊りを捉えていた。勿論、途中、ダンスに誘われることもあったのだが、丁重に断らせてもらった。そして、また春月を見ていれば、ばちりと目が合う。踊ろうと訴えかけてくる目にレイオンは近くの給仕に空いたグラスを渡し、ダンスエリアに足を踏み入れる。普段は共に踊ることはないが、今回は祝いの席。彼女の誘いのままに付き合おう。
 一方、拓海も妻と合流し、食事に舌鼓を打ち、曲が始まれば、妻にどうかなと手を差し出す。許可を貰えば、共に曲に合わせてステップを踏む。数曲楽しむと妻に送り出され、目が合った知人たちとあの時はどうだった、これからはと会話を交わしながら、ダンスを楽しむ。そして、メリッサの許へ。
 踊らせていただき光栄です、とおどけながらも曲に合わせ、ステップを踏む。
「リサとだからここまで来れた」
「ええ」
「どうかこの先も子の手を取る許可を」
 メリッサの手に添えるのではなく握り、神妙にそう言葉にすれば、メリッサは微笑む。
「責任をもって、この先も私を花と咲かせてね」
 その言葉に拓海は勿論と言葉を返した。その後はこれからのことを交わし、今日は踊り明かそうと拓海が意気込めば、そうねと同意する。それから、しばし踊り、拓海はテーブルに移動し、メリッサはパートナーを友人にして、ダンスを続けた。軽快な音楽になれば、ゆったりとしたステップから軽快なステップに変え、ターンや男女が同じ方向を向いてステップを踏むクレイドルなどのちょっとした技も混ぜる。スピンやターンのたびに翻る髪やドレスは堂々と踊るメリッサをより美しく魅せた。

「あ、お父さん、発見!」
「お、春月!」
 食事エリアで休憩がてら食事をつまんでいた拓海たちの許に同じように休憩していたのだろう春月が嬉しそうにやってくる。その後ろにレイオンを連れて。そもそも、春月と拓海の歳は近いのだが、それぞれ父のように娘のように思っている。最後の大戦では肩を並べて戦った仲でもあるが。
「メリッサさん、ドレス凄く似合う! 綺麗! 美人!」
「情熱の赤ね、とても綺麗」
 ギュッと抱き着いてくる春月にメリッサも抱きしめながら、互いにここがいいだのと褒め合う。そして、流れ弾のようにお父さんもかっこいいと拓海にも飛んできた。
「メリッサさん、踊ろう」
「いいわね、踊りましょう♪」
 そうだと思い出したようにダンスに誘う春月。そして、それに喜んでとメリッサも誘いに乗る。ドレスコードのあるパーティでもあるということで上品にと気遣っているものの今日という日を楽しみにしていたのだ、かわいい子に誘われれば、嬉しくもなる。
 ダンスエリアに立つと自然と踊り始める。女同士ということで春月が男パートのステップを踏む。少しはできるとということもあって、上手くメリッサとも合わせている。その間も春月は尽きることなく、メリッサを称賛していた。踊り終えれば、メリッサをエスコートしながら、春月も戻ってくる。
「疲れたか?」
「全然! むしろ、まだまだいけるよ!」
「よし、じゃあ、どうだ一曲」
「喜んでっ!」
 誘うように手を差し出せば、嬉しそうにその手を取る春月。ただ、ダンスエリアでは多くの人が既に踊っている。入れば、スペースは空くだろが、それではちょっと物足りない。どこか空いたところはないかと探せば、お父さんあっちと春月が食事エリアにほど近いところにあるバルコニーを指差す。十分なスペースもあるし、丁度いいとそちらに向かう。
「一曲、お願いできますか?」
「喜んで」
 春月と拓海がペアを組むのをみて、レイオンはメリッサに差し出す。それにメリッサはカーテシーで挨拶し、その手を取る。そして、拓海と春月と同じバルコニーに向かう。
 バルコニーは二組が広く踊っても問題ないくらい広く、天井には星々が輝いていた。そんな舞台で春月と拓海は始めワルツのようにゆっくりとしたステップを踏み、互いのリズムを合わせる。
 踊りながら、最後の大戦について言葉を交わしていくうちにテンションが上がってきたのか段々とステップを刻むように早くなっていく。
「お父さん」
 目で、もう少し激しくしてもいいと訴えれば、勿論という言葉の代わりに笑みを浮かべる拓海。それが合図となり、ダンスはより激しいものになっていく。
 片手で春月を持ち上げ、そのままターンするなどアクロバットリフトを数種類取り入れたり、最初は拓海の腕を使って上体を反らす通常のドロップだけだったのが、春月が足を振り上げ、ドロップ・キックしてみたりと十分な広さがあるからこそ二人は思いっきりその空間を使う。
 そんな二人と対照的にレイオンとメリッサはオーソドックスに優雅で落ち着いたダンス。踊ることは滅多にないとはいえ、リードやステップは完璧にこなすレイオン。それにメリッサも堂々とついていく。片手を高く上げ、メリッサに連続回転してもらうハンマーロックなどちょっと難しいステップも取り入れる。そんな中、互いに競うように激しく踊る春月と拓海のダンスが目に入り、レイオンは苦笑いを浮かべた。
「楽しそうで良いじゃない、ああして自分を出せる様って好きよ」
「いや、拓海が大丈夫かなって思ってね」
「大丈夫よ、心配いらないわ」
 春月が楽しそうなのは勿論だが、拓海だって十分に楽しみながら踊っているのだから、問題ないと告げれば、そうかといって頷いた。
 休憩も交えつつ、踊っているといつの間にか空も白んでいた。テンション高く踊り続けていた拓海は少し息が上がっているものの何ともないような顔。
「どうだオレのステップは」
 そう言ってニッと笑う拓海に春月はめっちゃかっこいい! と褒める。
「お父さんもダンスを仕事にすればいいのに〜」
「確かにそれもいいな」
 でも、オレにはやりたいことがあるからな、と続ければ、うんうんわかってると春月は笑う。そこに同じようにダンスを終えたレイオンが拓海の許にメリッサを送り届ける。
「楽しそうに踊っていたね」
「うん、めっちゃ楽しかった!」
 流石はお父さんだよねと笑う春月の後ろでは近くの給仕からもらったカクテルをグイッと呷る拓海の姿。そんな拓海にお疲れ様と声をかけているメリッサがあった。その二人の姿に苦笑いを零していると踊ろうと春月はレイオンの手を引く。まだまだ踊り足りないらしい春月に笑みを零し、レイオンは再びバルコニーでステップを踏んだ。
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東川 善通 クリエイターズルームへ
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2019年05月10日

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