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『うたかたのゆめ 』
おまんじゅうla0254

「……もふ?」
 うとうと眠りから目が覚めたおまんじゅう(la0254)は、つい周囲を見渡した。
 だって、目に飛び込んできたのは、いつも見慣れていた家の景色ではなくて、そこは……
 ひどく、懐かしい光景だったのだから。
 
「もふ!? ここは……『あそこ』もふ?」
 転移する前に暮らしていた、浮遊大陸。
 『相棒』と一緒に暮らしていた、小さな家。
 畳敷きの床、台所は土間にあるし、そこには小さなかまど。
 いろりはもう初夏だからだろうか、使われなくなっているみたいだけれど、きれいに掃除がされている。
 どれもかつては当たり前だった光景。懐かしい景色。相棒と二人暮らしをしていた長屋。
 どうしてここにいるのかわからないけれど、息をいっぱいに吸えば鼻をくすぐるのは温かい味噌汁の香り。今住んでいる家でも味噌汁はしょっちゅう出てくるけれど、それよりもほんのり塩気を多く含んだ味噌汁のにおい。具に使われているのはきっとわかめとお豆腐、そう思っただけでジュルリとよだれがあふれ出す。
 しっぽを数回動かして、ついでにもちもちほっぺを小さな手のひらでかるくつねって。
「うー、いたいもふう……ってことは、うそじゃ、ないもふ……」
 ほっぺはまだ痛みでじんじんするけれど、おまんじゅうは眼をきらきらさせて立ち上がった。きっと今頃『相棒』は、……いつものように、七輪で好物のさんまを焼いているに違いない。
 耳を澄ませば、ぱたぱたとうちわを煽る音も外から聞こえてくる。『相棒』は、そう、そう言う人だった。
 でも、今のおまんじゅうは、よくわからないけれどおなかがぺこぺこ。
 それに、もう戻ることのないと思っていた場所にいる。
 懐かしいお友達や、みんなはみんな、この世界にいるのかしらん。
 おまんじゅうはわずかに目を伏せて思い出す。
 でも次に目を開けたときにはきらきらと輝いた瞳をしていた。
 もしかしたら、懐かしいひとにあるもふ? そう考えたら、なんだかわくわくしてきたのだ。
 そっと引き戸を開けて、もっふもっふ、と外へ足を出す。
 土のにおい、風のにおい。ナイトメアとライセンサーが戦っている世界とは、異なるにおい。
(なんでもふはここにいるんだもふ……?)
(ううん、あの世界が夢だったのかもしれないもふ?)
 考えていても答えは出ない。
 だからちょっと散歩をしよう。もしかしたら、なにかわかることがあるかもしれない。
 さいわい近所にはお友達も住んでいるはずだ。なら、いつもと同じなら。
 おまんじゅうはどきどきしながらいつも持っていた財布を首から提げ、朝ご飯までには帰ってくると意気込んで家を出たのだった。
 
 ……といっても、おまんじゅうの目の前にはたくさんのたくさんの誘惑が待っていた。
 市場を横切れば、ふんわり漂ってくるおいしそうな香り。
 角にある焼き団子屋は、そう言えば以前お手伝いを相棒がしていたっけ……あの時はもふ仲間たちみんながゆゆしき事態といって頭を抱えていたなあ、等と懐かしい記憶が蘇る。
 街の様子はまるきり記憶のままで、自分と同じようなもふもふやら、賢そうにきりっとした顔立ちの犬やら、二股に分かれた尾をもつ猫やら……さまざまな生き物をつれた人びとがごく当たり前のように歩いていた。
 そしてついにおいにつられ、できたての大福をふたつ買った。ときどき相棒と一緒に、おやつを買っていた店だ。懐かしさにつられてつい買って、そして口へ運ぼうとして――おまんじゅうは首を小さく横に振る。
「たまには相棒におみやげを買っていってやるもふ!」
 そしてこれを相棒と一緒に食べるのだ。きっといつも以上においしいに違いない。
 そう思って帰り道を歩き出し――
「あっ!」
 石にけつまづいて、転んだ。
 
 
「おーい、おまんじゅう!」
 ……声がする。相棒の声ではない。少し甲高い、声変わり前の少年の声。
 それはいまの相棒のもので、頬をぺちぺち叩かれてようやく目を開ければ、いつもと変わりのない子ども部屋。
(……夢、だったもふ?)
 おまんじゅうは不思議そうに首をかしげる。台所のほうからは、ふんわり漂うお味噌汁の香り。
 でもほっぺたにつねったあとがあって、余計に混乱する。
 どっちがほんとう?
 ううん、とりあえず今は朝ご飯を食べよう。
 そこで思い出した。
 ――大福、食べ損ねたなぁ。
 
 
━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
今回はご発注ありがとうございました。
おまかせと言うことで、夢の中でもと思い、つい懐かしい世界を歩かせてみましたけれど……お気に召していただけましたでしょうか。
もしそうなら幸いです。
グロリアスドライブの世界は想像力が強さになると聞いています。
もふらもきっと、強くなれる気がします。エエ。
では、重ねてありがとうございました。
おまかせノベル -
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グロリアスドライヴ
2019年05月13日

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