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『もふもふなお花見 』
おまんじゅうla0254)&パウロla3198)&しらゆきla0211)&星杜 焔la3324

●お花見は突然に
 空の青く澄み渡る、絶好のお花見日和に。ある家では白い毛玉が二つ転がっていた。

「相棒達だけでかけたもふ〜ずるいもふぅ」
「もふ〜ひまをもてあましてるもふ〜」

 おまんじゅう(la0254)としらゆき(la0211)は大陸が雲間に浮かぶ世界から来た毛玉、じゃなかったもふらである。普段はこちらの世界で出会った相棒と面白おかしく過ごしているのだが、今日は相棒達だけお花見依頼に出かけてしまったのだ。

「退屈そうだねぇ〜」

 短いあんよをジタバタさせる様子に、相棒の父である星杜 焔(la3324)はほのほの笑うと。胸ポケットから何やらチケットを取り出した。

「お客さんから戴いたお花見会場の入場券があるんだけど〜きみたち行ってくるかい〜?」
「お花見もふ!?」
「おはなみもふ!?」
「おともだち誘っていっておいで〜お弁当はこの引換券でうちに買いにきてね〜」

 焔が経営する小料理屋『心宿』も出店するため、ご家族もどうぞとたくさんもらったのだ。途端にがばりと起き上がる二匹に、チケットはもちろんお小遣いと地図を入れたポシェットを巻いて。焔は優しく頭をなでなでもふもふ。

「もふ!パパさんありがともふ!」
「ほむらおとーさんありがともふ!」

 ちょっと前までの萎れた様子など何のその、キラキラおめめで二匹は家を飛び出した。まず向かったのは、食後のまったりタイム中なパウロ(la3198)の所。

「パウロちゃん!もふ会するもふ!」
「もふ会でふか?」
「おはなみもふ!おはなみもふ!」
「なるほど、お花見もふ会なんでふね」

 飛び込んできた二匹の言葉に、パウロはふむふむと頷くと肉球をもふっと叩く。お花見と聞いて何やら思い付いたらしい。

「ゆき、もふらちゃんも一緒がいいもふ!」
「いいでふね、誘いに行くでふ」

 しらゆきを先頭にもっふもふと走る三匹はSALF本部へ。驚く職員達の足の間を縫って、とある空き部屋に飛び込む。

「もふらちゃん!おはなみもふ!」
「どわっちゃあ!?」

 窓際で転寝していたもふら(lz0025)は、しらゆきのダイレクトアタックを受けて転がり落ちた。

「なんやコラびっくりしゃっくりやで!?」
「パパさんにチケット貰ったもふ〜お花見行くもふ〜」
「ええーワイのんびり昼寝したいんやけど」

 おまんじゅうのゆさゆさ攻撃にもめげず再び丸くなろうとするもふら。そこへススッとパウロが耳打ちする。

「もふ族同士で交流を深めるでふ。……美味しい物いっぱいでふよ」
「しゃーないな行ったるわ!!」

 俄然やる気をみせた現金なもふらを仲間に加え、もふーずは焔の地図を頼りにお花見会場へもふもふ走る――途中で、何故か急ブレーキをかけるパウロ。

「パウロちゃんどうしたもふ?」
「先に行っててほしいでふ、正しいお花見に必要な物を買ってくでふ」

 そう言って紳士服専門店に消えていくパウロに首を傾げながらも、三匹は今度こそ目的地へ。

「パパさーん!来たもふ〜」
「おっええ匂いするやないか」
「ほむらおとーさんのお弁当、おいしいもふよ〜」
「いらっしゃい〜好きなの選んでね〜」

 目の前でもっふもふな三匹に目を細める焔は、お弁当に夢中なおまんじゅうのポシェットをちょちょいとつつく。しばらく不思議そうに尾を揺らしたおまんじゅうは、ハッと気付いてポシェットを漁った。

「引換券あげるもふ〜」
「おや、間に合ったようでふね」

 何やら荷物を抱えたパウロも合流し、再び真剣に悩むもふーず。それもそのはず、人気の桜の花が描かれた細工巻、筍や菜の花のおむすびやおいなりさんに、メインのおかずもからあげ、チキン南蛮、とんかつ、焼肉、ステーキ、焼き魚、シュウマイ、エビフライ、コロッケ、ハンバーグ、肉団子……様々な種類がもふーずを手招くのだ。

「くっ悩むやないか……せやけどイケてるワイはザギンのシースー一択や!」
「ゆきはからあげ弁当がいいなーもふ!」
「お寿司もいいけどたけのこおむすび付のからあげ弁当も気になるもふ〜おはぎもおいしそもふ〜全部食べたいもふ〜」

 決められないおまんじゅう。だがその一言でパウロは閃いた。

「全部買えばいいのでふ!」
「おまえが天才やったんか!!」
「もふ、全部買っちゃうのめいあんもふ!パパさん、足りるもふ?」
「もちろんだよ〜そうなるんじゃないかって思ってたんだ〜」

 にわかに興奮しだした毛玉達が揃って差し出す引換券を、焔は楽しそうに受け取って。移動販売のワゴンに全種類を山盛り乗せた。

「重いからね、俺が持っていくよ〜ついでに穴場も教えてあげる〜」
「ほむらおとーさん、手伝うもふ!」
「ありがと〜気を付けてね〜」

 もっふもふと一生懸命に押したり引っ張ったりされるワゴンは、はたから見ればまるで雲に乗っているよう。そのままゆっくり、少しだけ歩いた先は、安全柵に囲まれた崖っぷちに申し訳程度の桜が何本か。

「どこが穴場なんやにーちゃん」
「パパさん間違えたもふ?」

 首を傾げるもふーずを、焔は崖の中でも周囲から突き出した場所にある、何故か透明な床張りの東屋からちょちょいと手招き。もふーずが首を傾げながら近付いてみるとそこには。

「わぁ〜すごいもふ!桜のお布団もふ!ゆき寝てみたいもふ!」
「この世界の桜もきれいもふ〜」
「なるほど、これは穴場でふね」
「落ちないようにね〜」

 崖の下は満開の桜の森。おかげで透明な床は一面淡い桜色に。東屋は広く、喜んで転がり回るもふーず達を横目に、焔は端にビニールシートを広げてせっせとお弁当を並べる。蓋を開くと漂ってきた匂いに、花より団子なもふ達はダッシュでお座り。

「シースー!ワイのシースーはどこや!?」
「からあげじゅわっと美味しいもふ〜」
「焼き魚の塩加減が絶妙でふ」
「どのおべんとも美味しいししあわせもふ〜♪」

 夢中でお弁当を頬張るもふーずを幸せそうに眺める焔。自分の作った料理を誰かに美味しいと食べてもらえるのは、何と幸せなことか――それが、大切な家族とその友達ならなおさらに。このままずっと眺めていたいけど、お店を長く離れておくわけにはいかない。

「次はデザートを持ってくるね〜」

 小さく呟いて、焔は幸せ気分でその場を後にするのだった。



 満ち足りた空気が場に満ちる。

「もふ、お腹いっぱいもふ〜」
「アカンて……もー食えへんで」

 空のお弁当ケースの波間に、トドのように転がるもふーず。少しでも腹を軽くしようと、運動とばかりに振ったもふらの尾がしらゆきの顔をくすぐった。

「わぷ、もふらちゃんくすぐったいもふ〜」
「ゆーたかてしゃーないで、腹ごなしや」
「それでふ!!」
「なんやビビったァァ!?」

 飛び上がるもふらはアウトオブ眼中。もぎゅっ、とパウロの肉球が地面を叩く。苦しいのならば減らせばいい。つまりはカロリー消費――すなわち。

「こんなこともあろうかと、でふ!!」
「何するもふ?何するもふ?」
「わかったもふ!おうたうたうもふ!!」

 じゃじゃーんとドヤ顔で取り出されたハンディカラオケセットに、おまんじゅうとしらゆきはキラキラおめめで群がった。よく晴れた気持ちの良い日に、相棒とやってるヤツだ!

「なんやカラオケかいな、ワイの美声で桜もザワザワっちゅーもんやでほんまほんま」
「順番を決めるでふ。じゃんけんするでふよ」

 肉球的な意味でちょっと無理があるのでは、と外野からツッコミが入りそうな提案に、だがもふーずは真剣な顔を突き合わせる。

「では行くでふよ……じゃーんけーん」
「ポンや!!」

 バッと出された肉球は――全て『パー』?いいえ、もふーずのリアクションを良く見てみると。

「なんでグー出さんだんやワイ……!」
「もふ!ゆき勝ったもふ!」
「記念に動画も撮影しちゃうもふ〜」
「しらゆきさんの独り勝ちでふね」

 崩れ落ちるもふらにぴょんぴょん跳びはねるしらゆき、器用にビデオを構えるおまんじゅうとハンディカラオケを操作するパウロ。どうやら同族同士、違いがわかるらしいです。とまれ、準備は万端、いざカラオケ大会のはじまりはじまり。

「さいた〜もふ♪さいた〜もふ♪」

 桜色の床の上で、もっふもっふと跳びはねながら歌い始めるしらゆき。のびやかな歌声は心底楽しそうで、桜達も笑いさざめき、柔らかな春風に乗せて花弁を贈る。

「ゆきちゃんこっち向いてほしいもふ〜」

 毛に絡む花弁で桜色に染まる姿を、おまんじゅうはばっちりビデオカメラに収める。あとで彼女の相棒に見せてあげなければ。一生懸命追いかけるレンズの端から、何かがステージに乱入してくる。

「ワイのぜっつみょーーな合いの手を見たらんかい!!」
「わぁ、もふらちゃん、ゆきと一緒に歌うもふ??」

 嬉しそうなしらゆきに、順番を待ちきれなかったもふらはイケメンスマイル(本人比)でサムズアップすると、主旋律に合わせてハモりだした。

「む、意外と上手いでふね」

 パウロはノリノリで身体を揺らしながらも、自身の出番に備えて荷物を確認する。アレはある、コレもある――と、ちょうど二匹の歌が終わって。

「僕の出番でふね、準備するでふ」
「準備もふ?」

 おまんじゅうの疑問顔の前で、パウロは先程買った袋からおもむろにネクタイを取り出すと。

「おっワイなんやイヤな予感しよるで……?」

 ちょっとヒキ気味のもふらの声も何のその、丁寧に頭に巻き始めたではないか。

「パウロちゃん、なんで巻いたもふ?」
「よくぞきいてくれましたでふ。これが花見の正装でふよ」
「何サラッとホラぶっこいとんねん!?ちゃうわ!!!ぜんっぜんちゃうわ!!!」

 床を叩きまくるもふらを不思議そうに見ながらも、しらゆきは頷いた。賢いパウロちゃんが言うなら間違いないに違いない。パウロは頭に手をやりきちんと巻けているか確認すると、何故かグラスにジュースを注ぎ始める。

「……ちょお聞いてや奥さん、ワイもひとつヤな予感すんねんな」

 架空のお茶の間に遠い瞳で訴えかけるもふらをアウトオブ眼中で、なみなみと注がれたグラスを片手にステージの中央に進み出ると。ゴホン、咳ばらいを一つ。

「今から大人の花見をしまふ!」
「大人もふー!」
「花見もふー!」
「ほらァァーー!!!めっちゃ勘違いィィーー!!!」

 ジュースを一気に飲むパウロ。やんややんやと拍手をするおまんじゅうとしらゆき。その背後でダイナミックローリングを始めるもふら。大人ってなんだろう、花見とはいったい。

「うぃ〜、ヒック……いい気分になってきたでふよ〜」

 フラフラとよろけた足取りでステージ上をあちらこちらするパウロの手元、ハンディカラオケからどっしりとした旋律が流れてくる。これは、かの有名な国民的歌手の十八番――!

「もふ〜♪もふもふ〜♪」
「帝国行きの夜行飛空艇降りた時からァ〜ってなんやねん!?歌詞ちゃうし!?そもそも演歌ベタァァ!!!」
「もふ♪もふ♪」
「もふ〜パウロちゃんじょうずもふ〜♪」
「ちゅーかワイだけ!?ツッコミワイだけなんか!?」

 もっふもふと手拍子をするおまんじゅうとしらゆきの瞳は、『これが大人の花見……!』とキラキラ輝いている。叫びすぎて肩で息をしながらもふらは悟った、味方はいない。

「楽しそうだねえ〜」
「パパさんもふ!」

 ワイワイ騒がしいカラオケ大会の終わり頃、再びワゴンを押す音がして。焔がほのほのと顔を覗かせる。ワゴンの上にはたくさんの――甘い物。もふーずの尻尾がピンと天を向いた。

「ッカーーにーちゃんわかっとるやないか!消費の後は摂取や!」
「季節のフルーツが山盛りでふ!」
「ゆきも食べたいもふ〜♪」
「仕上げがあるからちょっと待っててね〜、危ないから少し離れてて〜」

 群がってくるもふーずを一匹ずつ一撫でしてから遠ざけて。焔は鉄板に火を入れる。熱で空気が揺らめき始めた所へ投下したのは。

「パパさんアイスもふ!?溶けちゃうもふ!」
「ここからだよ〜」

 バニラアイスの塊が音を立てて溶けていく。焦るもふーずに微笑みを返し、さらに上からラム酒をふりかける。瞬間、ボンッ、という軽い爆発音と共に、赤い炎がアイスを焼いた。

「アイス燃えちゃうもふ!?」
「ワイのアイスがァーー!?」
「落ち着いて110番でふ!机の下に隠れるでふ!」

 焦りがMAXに達してあわあわと走り回るもふーず。焔は一人、可愛いなぁ、と落ち着き払って塊を硝子の器へ。鉄板に溶けて残ったアイスには、苺を練り込むように溶かしてソース作り。焔の平静な様子に、もふーずも徐々に落ち着きを取り戻して集まってくる。

「おいしそうもふ〜ほむらおとーさんはやくはやくもふ〜!」
「ワイの控え目ぼでぇがぺっしゃんこや!!」
「ふふ〜もうちょっとで完成だよ〜」

 待ちきれない食いしん坊達の為に、ソースをかけた塊の隣に手早くフルーツをトッピングして。仲良く並んだ前にゆっくりと置いていく。いただきますの大合唱もそこそこに、もふーずは飛びついた。

「あっつ……くないもふ!」
「ふしぎな味わいもふ!」
「フルーツが瑞々しくて肉球が落ちそうでふ」
「ッカーーアアアアーーーおかわりィィ!!」

 それぞれの反応を見せながら、食べる勢いが止まらない。次はマンゴー、いやキウイが、と続々寄せられる要望に、焔は嬉しそうに手を動かし続ける。

「あ、桜のお花もふ」
「しらゆきさん、たくさんついてるでふよ」

 何度目かのおかわりの後、しらゆきの器に花弁がひらりと落ちる。パウロの言葉にふるふる身体を震わせると、確かにたくさん落ちてくるではないか。

「きれいもふねえ……あの子にも見せたかったもふよ」

 仕事に出かけた相棒を想って少ししんみりするしらゆき。あの明るいオリーブグリーンの瞳が楽しそうに瞬くのを、隣で見るのが好きなのに。

「あ、ゆきいいこと考えたもふ」

 しばらくじっと眺めていた花弁をたくさん集めて焔に差し出す。想い出を集めるように、丁寧に。

「ほむらおとーさん、これ、押し花にしたいもふ」
「ここに挟んでおけばいいよ〜、おうちに持って帰ってあげるね〜」
「記念写真も撮るでふ。そうすれば見せられるでふよ」
「ワイ真ん中やで!!」

 こんなこともあろうかと、ネクタイと一緒に買っておいた自撮り棒にスマホをくっつけ。桜が一番綺麗に見える場所に全員でおしくらまんじゅう。押し合いへし合い、もふらが弾き飛ばされたりして。何枚か撮った写真は、全てが楽しいに満ちている。しばらく眺めていたおまんじゅうは、嬉しくなって歌い出した。

「も〜ふ〜も〜ふ〜♪」
「もっふ〜もふ〜♪」
「もふ♪もふ♪」
「もふっちゃ♪もふやで♪」

 段々と増える歌声。スマホの小さな画面を見ながら、寄り添い合って歌うもふーず。お互いの体温と春の陽気、二つの温もりが相まって。

「おやおや〜いい夢見てね〜」

 いつの間にか夢の世界に旅立ったもふーずに、焔は優しくタオルケットをかけた。



 雲海に浮かぶ壁に囲まれた浮遊島『天儀』の、一番大きい都の大通り。腕が入る裾をつけた一枚布を帯で纏める、独自の服装を着こなした人々が所狭しと歩いている。

『相棒とお花見うれしーもふ!お弁当たのしみもふ!』

 新しく開店したばかりのお弁当屋さんを出て、大好きな相棒と桜の名所へのんびり歩くおまんじゅう。

『あっおまんじゅうちゃんもふ!おまんじゅうちゃんたちもお花見いくもふ?』
『もふ!しらゆきちゃんもお花見もふ?いっしょにいくもふ!』

 道中で出会ったしらゆきとしらゆきの相棒ともふもふお話しながら、着いた場所は桜が満開。

『お弁当たべるもふ!今日は何のおむすびもふ?』
『もふ〜たのしみすぎるもふ〜!』

 布を敷くなり騒ぎだした二匹に、相棒達はわかっていたよと苦笑して。たくさん買ったお弁当を、敷布いっぱいに広げてくれた。

『からあげもあるもふ!わ〜いもふ!』
『おいしいもふ!おいしいもふ!』

 二人と二匹の笑い声は、桜の花弁と共に風に乗って高く遠く舞い上がっていった――


 暖かくて青い空の下、それを切り取って嵌め込んだかのような柔らかな碧眼を瞬かせる神父様。その傍ら、同じ速度でパウロは草原をのんびりもふもふ歩いている。

『今日もいい天気でふ』

 昼飯後の腹ごなし、いつものお散歩。ゆるやかな風が、優しく微笑む神父様の黒いカソックを揺らしながら吹き抜ける。遠くに見えるのは西洋式の教会。神父様とパウロの大切なおうち。

『そうでふ、この前こんなことがあったでふ』

 一生懸命に話す頭を、神父様は楽しそうに撫でて。パウロは幸せな気持ちに包まれる。ああ、とっても気持ちが良くて、何だか眠くなってきたような――



「……な、皆、そろそろ帰るよ〜」

 ゆさゆさ。身体をゆすられる感触に、おまんじゅうとしらゆきは飛び起きた。

「もふ!?からあげどこもふ!?」
「たまごやきもないもふ!?」
「おや〜楽しい夢を見たのかな〜……パウロちゃん〜?」

 にこにこと二匹の頭を撫でる焔は、ゆっくり起き上がって俯いたままのパウロに何かを感じたか、そっとティッシュを差し出した。

「花粉症でふ」
「うん〜……落ち着いたら帰ろうか〜」

 鼻をぶびーとかむ背中を優しく一撫で。あとはなんにも言わずに二匹の相手をする。

「ウウッ……そないなおにぎり口に入らへんで……つぶされてまうやんけ……」

 三匹の下敷きになっていたもふらは、隅の方で独り、真っ青な顔でうなされていた。



 ――ある春の日の、柔らかな一幕。

━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
もふもふなご縁を有難うございました。
発注文がすごくもふもふしていましたので、ノベルも可能な限りもふもふさせたつもりですが――まだ行けたような気が致します。精進したいところです。舵天照は詳しくありませんので、もしも差異がございましたら、遠慮なくリテイクをお申しつけくださいませ。
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2019年05月17日

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