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『本と過ごす日々 』
ヴィリジアン 橙aa5713hero001

 とある大学の図書館。

「返却はこちらの用紙に……記載されてます。……挟んでおきますね」

 ヴィリジアン 橙(aa5713hero001)軽く頭を下げて数冊の本を抱えて帰っていく利用者を見送った。

「ヴィリジアンさん、慣れてきましたね」

 隣で返却処理をしていた職員さんが話しかけてくる。

「あ、ありがとうございます」

「最初来た時は声も小さいしどうなるかと思ったけどね」

「はぁ」

 そう言って笑う職員さんにどう反応していいのかわからないままヴィリジアンは頭をかいた。

「あ、もうお昼ね。先に休憩どうぞ」

「じゃあ、休憩貰います」

 ヴィリジアンはそう言ってエプロンを外すと、控室とは逆、館内に歩いていく。

「今日は……これにするか」

 1冊の本を手に取ると貸出手続きをして、図書館を出る。

 相方のお昼と一緒に買っておいた飲み物を片手にページをめくっていく。

 元々、幻想蝶の中で読書ばかりしていた彼にとって食事より読書の方が優先順位が高い。

 脱水にならないように水分は取るが、食事は相方と食べる時に、食べればそれでいい。

「あー、ヴィリジアンさーん。お昼?」

 彼の姿を見つけた学生が手を振ってくる。

 手を振り返すと、小さく黄色い歓声が上がった。

 最初の頃は反応しなかったのだが、すると彼女たちは近寄ってきてあれこれ話しかけるので最近はこうして最小限対応している。

 相方曰く、クール系イケメン司書としてそこそこの人気があるらしい。

 まあ、彼自身には全く興味のない話ではあるのだが。

  ***

「そろそろかな」

 いつも使っている薄桃色のしおりを本に挟み立ちあがる。

 相方の大学で始めたバイトは天職だった。

 読み切れないほどの本に囲まれた静かな空間。

 新しい本だって、入れる理由を説明すれば検討してくれる。

 仕事自体は面倒だと思うこともあるが、元々引きこもりに飽きて始めたバイトだ。

 読書の合間の気分転換だと思えば苦痛には思わなかった。

「すみません、本が破れちゃって……」

 学生が1冊の本を持ってやってきた。

「ちょっと……見てみます」

 そう言って本を受け取ると、ぼろっとページの束が落ちてきた。

「こちらで直しますので……大丈夫です」

「本当ですか!弁償とか言われたらどうしようかと思ってました。ありがとうございます」

 そう言ってほっとした様子で学生は帰っていった。

 本をぱらぱらとめくり破損具合を確認すると、何度か修理した跡がある。

(この本借りてく人多いからな)

 人気という訳ではないが、定期的に返却待ちになる本だということをヴィリジアンは思い出した。

「ちょっと直してきます」

 他の職員さんに声をかけ、バックヤードで補修の準備を始める。

「そういえば、この本……まだ読んだことなかったな」

 読んだことのない本。

 その事実が、彼の中の本の虫を騒がせる。

 ちょっと位なら、そう、取れたページまでならそんなにない。

 それに、他に破損がないか確認するのも仕事の内だ。

 言い訳がましく、そんなことを思いながらページをめくる。

 本は相方が先行している学問の研究書籍だった。

(これは、面白いな)

 伝承に書かれた魔法を科学的に検証した章、再現実験の結果が記された章もある。

 相方がどれほど本が好きかについては知らないが、魔法に憧れる彼ならこういう話は好きだろう。

 もしかしたら、彼のやりたい研究にも役に立つかもしれない。

 何かの授業で必要な書籍なのだろう、特定のページに開き癖がついている。

 中には、小さく書き込みした跡がついているページや付箋の跡が付いているページもあった。

(あいつはこういう授業好きそうだな)

 学生ではない彼には何の授業で必要なのかは分からないが、この本の話をすればきっと調べて取るだろう。

「ちょっと、ヴィリジアンさん、いつまでやって……って何、読んでるの」

 職員の声にはっと顔を上げると30分以上経っている。

「他に……破損がないかみてて……すみません」

「……そう言うことならいいけど、早めに直しちゃってね?」

 明らかに読みふけっていた彼に職員はため息を吐くとそう言って戻っていった。

(今度お礼した方がいいかな)

 見逃されたことに感謝しながらヴィリジアンは閉じかけていた本を開き直すと再び本の世界に入っていった。



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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【 aa5713hero001 / ヴィリジアン 橙 / 男性 / 25歳(外見) / 本の虫 】
おまかせノベル -
龍川 那月 クリエイターズルームへ
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2019年05月20日

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