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『バニーとチャイナが仕事するドタバタコメディ(漢) 』
化野 鳥太郎la0108)&ケヴィンla0192

 詳しい事情は省くが、ケヴィン(la0192)は不本意な諸事情から、友人の代打で女装ゲイバーでバニーをすることになった。バニーガール(漢)。

「とてもつらい」

 休憩室。ケヴィンは横になってぐったりしていた。
 お客にお酌したり、タバコの火を点けたり、「へ〜すごいですね〜!(笑)」と話し相手になってヨイショしたり、仕事である以上は真面目にサービスをやってきたわけだが、それはそうとMPは削れる。
 しかも真面目にやっただけにそこそこ人気が出てしまい、ちょっと引っ張りだこになっちゃったのが。バニーなのにタコ。これはイカに。

 このままバックれたい……いやでも引き受けてしまった以上、仕事はしっかりやらないと……。

 ケヴィンは何度目かの溜息を吐いた。
 無情にも休憩時間はあっという間に終わりを告げる。
 バニーちゃんは足が疲れるので脱ぎ散らかしていたハイヒールをヨイショと履くと、履き慣れないストッキングをぐいっと履き直し、引き締まったケツに乗っているうさしっぽをフリフリしながら現場に戻るのであった。なおケヴィンは根っこは真面目だからか、スネ毛とかもちゃんと処理したのだ。えらい。

 さて、後悔とヤケッパチを胸にケヴィンがホールに戻ると。
 聞こえてくるのはピアノの旋律だ。

(上手いな……)
 素人耳でも熟練した技巧だと分かる。誰が弾いているんだろうかと無意識的に音の方へと目をやった。そういえばこの音、聞いたことがあるような……そんな不思議な感覚と共に。

 ――そこにいたのはパツパツぴちぴちチャイナドレスの化野 鳥太郎(la0108)。

 丈が短過ぎてパンチラどころかパンモロしている。黒のセクシィなおぱんちゅ様だ。短い髪の毛を無理矢理かわいいリボンでツインテール(笑)にしている。ドレスの胸元はかっぴろげすぎて乳首が見えている。男の乳首は見えてもセーフ。おっぱいでけーなオイ。生足はスネ毛ボンバイエ。男性ホルモンが氾濫している。なお鳥太郎の地毛は「銀に近いプラチナブロンド」なので、スネ毛も「銀に近いプラチナブロンド」。照明にキラキラしている。すごい。北海道の雪。白樺の並木の幻影が見える。

「???????」

 そしてケヴィンは考えることをやめた。
 あれは自分の知らない誰かだ。チャイナから着たフェアリーアルヨ。
 スッと後ろを向いたケヴィンだったが……

「ケヴィンちゃーん!」

 オーナーから大きな声でそう呼ばれて、黒ストッキングノースネ毛ひきしまりケツバニーたんがケヴィンであることが、チャイナから着たパンモロフェアリープラチナブロンドスネ毛のカプリチオに気付かれてしまった。

「……!」

 パンモロ鳥太郎がハッとした表情で顔を上げる。
 ストッキングケヴィンはバッと顔を背けたが、時既に遅しオスシ。
「ケヴィンさん?」
 パンモロ鳥太郎がピンヒールをカッカッと慣らしてストッキングケヴィンの方に歩いて来る。
 逃げたい。でも逃げちゃダメだ。ストッキングケヴィンは唇を噛み締める。
「あーやっぱりケヴィンさんだ〜!」
 まあ当然のようにパンモロ太郎に気付かれる。次の瞬間、パンモロは遠慮なしにブハッと噴き出した。
「ひ……ケ、ケヴィンさ、ちょっと待って」
 パンモロ、大爆笑である。
 ケヴィンは「テメエなんかパンチラじゃねえかあアアアアアア!!!」……という叫びは心の中だけに留めた。
「うさちゃん」
 パン太郎は膝から崩れ落ちるレベルの大爆笑を続けている。酸欠気味になっている。
(そういうテメエはチャイナじゃねーか! ていうか仮にも女装なんだから無駄毛処理して来いよ! あと胸元広げ過ぎて乳首が見えてるんだよ! メイクも雑だなオイ! 口紅塗りゃあいいってモンじゃねーぞ! 全くなってねエな!)
 お局みたいなことを思い、ケヴィンは「俺は何を考えているんだろう」と突然冷静になった。
 ハタから見れば、腹筋を攣って地面に転がってビクンビクンしているパンモロチャイナと、真顔で立ち尽くす美脚(笑)バニーちゃんである。珍妙〜!



 ――Eli, Eli, Lema Sabachthani?
(神よ、何ゆえ我を見捨てたもう?)



 その後、腹筋崩壊した鳥太郎については休憩室へ運ばれて行った。
 あの時の出来事を、鳥太郎は後ほどこう語る。

「あんなバキバキの腹筋のバニーいねえよ」
「モナカアイスみたいな……もしくは板チョコみたいな……」
「でもね、あの人、スネ毛とか完璧に処理してたんですよ。やっぱりプロ意識っていうか……このまま世界を目指して欲しいですね」
「はい。彼のポテンシャルならば十分、世界に通用すると思います」



 とまあさておき。



 ケヴィンは頑張ってお仕事を続けていた。お仕事頑張っててえらい!
 とてもつらいけど、表面上は笑顔でニコヤカに接客している。
 一方で戦線復帰した鳥太郎は、その明るい性格とトーク力を活かして呼び込みを行っている。ケヴィンは内心ゲッソリしながらがんばっているが、鳥太郎の方は天真爛漫に楽しんでいるようだ。

(早く終わらねえかな……)
 こういう時って時間の流れが凄く襲い……気がする。ケヴィンはそれでも決して顔には出さずに、「俺はナンバーワンバニーガール」「一方その頃サバンナでは」とヤケクソの自己暗示をかけて接客を続けていた。

 が、ここでちょっとしたトラブルが起きる。

 酔っぱらった客が、隣に座っているケヴィンにもたれかかり、黒ストッキングでつややかな彼の太腿の上に手を置いたのだ。いいあししてるねぇなんて酒臭い吐息がすぐ傍で漂う。ハイレグバニーゆえに露呈しているごつごつした男らしい骨盤を指先でスススッとなぞられては、ケヴィンは不本意な吐息を全力で噛み殺した。
 そう、ケヴィンは感覚が鋭いばにーちゃんなので、そういうのされたらくすぐったくてハァンッてなっちゃうのである!
「お客さん、そういうのはちょっと〜……」
 引きつりそうになる顔を堪えて、仕事で培った完璧な演技力で、やんわりと断ろうとするケヴィンちゃん。
 だがそのオブラートに包んだ奥ゆかしい態度が逆にダメだったようだ。あー! 困りますお客様! あー! ケヴィンちゃんのバニーちゃんがたいへんなことになっちゃう! 闇オークションに出されて肩幅の広いスパダリに三億で落札されちゃう! あげくには尖りすぎたスパダリのアゴに貫かれて左心房損傷しちゃう!

 と、ここで思わぬ助け船が。

「お客さん、うちそういうお店じゃないんで」
 ドス低い剣呑な声と共に、客の手をケヴィンからひっぺがしたのは――鳥太郎だ。さっきまであんなにニコニコしていたが、不埒な客を見下ろすその眼光には容赦がない。
 オーナーにも問題行動は既に伝えていたようで、あとは他のスタッフがその客の対応をしてくれることとなった。ケヴィンは鳥太郎に付き添われ、休憩室に下がる。
 周りの目がなくなった瞬間、ケヴィンは機械の拳を鳥太郎にいきなり叩き付け――るも、ライセンサーゆえの思念の盾に呆気ないほど防がれてしまった。
「ケヴィンさん大丈夫? 随分荒れてるけど」
「うるせエ。別に一人でも対応できた。あれぐらい――」
「俺はそういうケヴィンさんがあんまり見たくないの」
 鳥太郎は肩を竦めて、ペットボトルに入った水をケヴィンに渡した。
 ケヴィンは大きな溜息を吐きながら、その水を受け取る。
 そして我に返るが、一瞬真面目な空気になったけど、自分も相手も酷いカッコウなのである。
「……」
 気分は虚無。ペットボトルの蓋を開けかけたまま虚無。
 鳥太郎はついでに化粧直しをしている。妙に慣れた手つきでグロスを塗り直して、んーマッとぷるぷる唇を鏡で確認している。
「ケヴィンさんさぁ」
「あ?」
「三白眼じゃん?」
「そーだが、何か?」
「カラコンの力って偉大だなーって」
 今のケヴィンはカラコンパワーで瞳が大きくなっている。あとメイク道具パワーで二重瞼になっているし涙袋も完備である。目がデカイ。
「俺もケヴィンさんみたいにカラコンしてデカ目にしちゃおっかな〜」
「おま……メイクにどんだけノリノリなんだよ。化粧の前にスネ毛どうにかしろよ。あと乳首が見えてるんだよ……」
「きゃ☆ えっち!」
「パンモロに言われたくないからな!? ぶっ殺すぞ!?」

 繰り返すが、野郎の乳首はセーフである。
 セーフですよね? 野郎の乳首はセーフですよね?
 セーフです(自己完結)

 とまあ、なんか一瞬真面目な空気になりかけたけど、気のせいだったのだった。
 これタイトルにも書いてるけどコメディだし。

 その後、バニーはMPを回復してから戦線復帰し、チャイナはマスカラが目に入ってしばらく辛そうにしていた。
 お仕事頑張ってる人は無条件でえらい!



『了』




━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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化野 鳥太郎(la0108)/男/37歳/人間
ケヴィン(la0192)/男/37歳/放浪者
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2019年05月22日

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