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『藤園の誓い、花乙女達の宴。 』
桃簾la0911)&不知火 楓la2790

 陽の光に照らされる新緑の煌めきに、桃簾(la0911)は眩しそうに目を細めた。
 萌黄色の半襟から伸びる白いうなじに、珠のような汗が滲む。
 初夏の心地よい風が駆け抜け、結い上げた鴇色の髪にあしらった、簪の蝶が風に舞い揺れた。

 桃簾の着物は白の紗。紗とは薄く透けるような透明感のある、夏用の着物である。
 白地に大きく桃花が描かれ、金糸の刺繍の蝶が上を飛び回る。下の濃桃の襦袢が仄かに見えるさまが、ことのほか涼しげに見えた。
 朱色の帯揚げと帯紐が、優しい色使いをキリリと引き締める。

「この陽気で着るのは、少し暑いですね」
「暑いかなと思って夏着物にしたけど、重ね着だから暑く感じるね」

 見るものを涼しげに感じさせるだけで、着る人は存外暑い夏着物。
 桃簾のおっとり微笑に、不知火 楓(la2790)は切れ長の瞳を細めた。
 普段は青年に間違われる凛々しさの不知火 楓(la2790)だが、今日はしっとり着物を着こなす和風美女だ。濡羽色の黒髪を、三日月の簪できりりと纏めた。

 楓の着物は蘇芳の紗。生地の上で、黒い楓が舞い散り、銀糸の刺繍で白い兎が跳ね回る。蘇芳の深い赤から、微かに白絹が垣間見えるさまは艶めかしい。
 半襟は桃簾とお揃いの萌黄色。シックな色使いに黄色の帯揚げと帯紐が明るさを加えていた。

「楓は普段から和服を着ているだけあって、流石に手慣れていますね。ふふ、男装でない楓の姿も珍しくて……とても綺麗」
「ありがとう。そんな風に言って貰えると何だか照れるな。桃も凄く綺麗だよ。よく似合ってる」

 女性らしい服を着る楓を見たいと、桃簾が願い、今日は着物でお出かけ。
 正式な和装の着付けは桃簾にはまだ難しく、楓が選び着せた。着付けかたが良いのか、着心地が良い。楓ほど着慣れている訳ではない桃簾だが、その所作や立ち振る舞いは、しっくりと着物に馴染んでいた。
 楓もまた楚々と歩く。着物が着崩れないよう、いつもの青年的な振る舞いは鳴りを潜める。

 二人の帯はお揃いで、若草色に藤の柄。並ぶ背中のお太鼓帯に藤の花が咲き、植物園の景色に美しく溶け込んでいた。

 藤の花見に、広い植物園へ赴く。
 ツツジが咲き乱れ、薔薇の匂いが漂い、大輪の芍薬から花弁が零れ落ち、可憐な鈴蘭がひっそりと佇んでいる。
 ゆっくり歩きながら、お目当の藤園の区画へ辿り着いた。

「まあ! これが藤ですか……優雅で美しいですね」

 見上げる程の高さの藤棚から、藤の花房が溢れ落ち、初夏の風に揺れる。そのたおやかで優美な姿は、和装の貴婦人を思わせた。
 桃簾がただただ見上げている間に、楓は木の下に書かれた説明板を読んでいる。

「ここは随分いろんな種類の藤があるんだね。白花藤は……もう見頃をすぎてしまってるのが残念だよ。六尺藤、桃色藤……。桃と同じ字だね」
「桃の字の縁ですか……懐かしいものを感じます」

 二人の目があい、微笑みあった。同じ日の事を思い出したのだ。
 フランスに現れた奇妙なナイトメア。それを討伐する任務が、楓と桃簾は出会いだ。互いに花の名前同士という縁のおかげか、初対面であったにも関わらず、見事な連携を取ることができた。

「咄嗟に、桃って呼んじゃったね」
「それがあるから、今日があるのです」

 楓にとって桃簾は、この世界での初めての友人であり、花仲間だ。
 友人を通り越して親友だと桃簾は思いたいが、友人というものに慣れていないため、楓に同じく思って貰えているのか、自信がない。
 小さな不安と、恐れる想い。迷いと躊躇いで桃簾が俯くと、背の高い楓には、表情がわからない。

「桃。大丈夫?」
「……暑さに、少し疲れました」
「じゃあ、あそこのベンチで休もうか」

 そこは藤の天井が長く続く、回廊のような小道だ。その下にベンチがいくつも並んでいた。
 花陰が日差しを遮り、心地よい風が涼しい、火照った体を冷ましてくれる心地よい場所。藤の花房を眺めながら、その下でお弁当を広げ、花娘の宴の開始。

「桃がおにぎりを作るって聞いたから、僕はおかずを用意してみたんだ」

 黒漆のお重の蓋を開けると、その豪華絢爛ぶりに、思わず桃簾は言葉を失った。
 色朝やかな菜の花の辛子和え。筍の土佐煮、海老フライ。明太子を巻いた卵焼き。香ばしい鶏の竜田揚げの匂いが、食欲をそそる。
 どれも美味しそうなおかずばかりで、そこに彩りを添えるように、人参のきんぴら、スナップエンドウ、ブロッコリー、アスパラガスが美しく並べられている。

「初夏の植物園だし、春らしく、植物に纏わるもので……って、ん? 桃?」
「いえ、あまりに美しくて、食べるのが勿体無いと思っていました」

 楓の素晴らしい弁当を見た後では、おにぎりがあまりに不格好で。しょんぼり肩を落として、ラップに包んだまあるいおにぎりを差し出した。

「その……お弁当など作ったことがありませんし、料理の経験も殆どなくて」

 バイト先のスーパーで売っていたおにぎりを観察した。鮭や、梅と書いてあり、形は三角で、海苔に包まれている。
 何度もイメージトレーニングをしてから、おにぎり作りに挑戦したのだが……どうやって三角にするのかわからず、丸くなってしまい、力加減もわからない。
 潰すといけないと慎重になれば、ポロポロと崩れるし、しっかり握らねばと思うと、ガチガチに固くなる。
 何個も、何個も作って、多少はマシな物を選んだつもりだが、それでも自信はない。
 そんな桃簾の躊躇いなど気にも留めずに、楓はひょいっとおにぎりを手にとって、ぱくりと齧り付く。

「これ美味しいよ。鮭好きなんだ」
「そうですか? 上手く三角にできなくて……」
「おにぎりは簡単な料理だけど、だからこそ籠められた想いがよく伝わるんだ。桃が僕の事を考えて作ってくれた事がね」

 下手でも、不格好でも、想いは伝わった。楓の言葉を聞き、萎れた花のようだった桃簾が、元気を取り戻す。喜びのあまり頬を赤く染めた。

「美味しい、ですか?」
「桃はまだ色々な事を練習している最中なんだ。きっと料理もすぐ上達するよ。あの子もそう」

 楓があの子と呼ぶのは、二人にとって大切な少女の事だ。三人揃った時は「花名三人娘」と呼ばれた。

「彼女が焼いたクッキーは、とても美味しかったのですが」
「お菓子は得意だけど、料理は勉強中。今度三人で料理の練習してみる?」
「良いのですか?」

 桃簾が目を輝かせるのを、好ましいかのように目を細めた。

「桃って努力家だよね」
「何かを成し遂げたいと願うなら、努力して当然でしょう」

 努力を当然と言い切るのは、統治する者としての自負からくる。桃簾の美しさはうわべだけではなく、気高い矜持が内側から滲み出るような輝きを放つのだ。
 その有様に楓は微笑みつつ、内心思うのだ。

(……面白い子なんだよね)

 言葉は上からの物言いだが、自分の至らなさを素直に認める謙虚さがある。
 天然を発揮してみたり、家電を壊してみたり、アイスクリームに夢中になってみたり。側で見ていて飽きない魅力。

 世間知らずなのは、籠の鳥として世間知らずに生きてきた育ち故。
 否、今日の姿で例えるなら、それは平安貴族の姫君なのだろう。御簾ごしに下界を見下ろし、生きてきた。

 ──今もまだ、御簾の中だ。

 透明な紗で視界を隠すように、俗世を遮断し、簡単に人を踏み込ませない。
 けれど……楓はその御簾を軽々と捲りあげ、手を伸ばしたのだ。

「僕のお弁当も食べてくれる」
「もちろんです」

 改めまして、花友二人で弁当をつつく。

「この竜田揚げというのは……はむっ、外はカリッと、中はしっとりで……ちまっ……美味しいですね……」
「菜の花の辛子強めだけど大丈夫?」
「少し辛い方が、ほろ苦い菜の花とあってます」
「よかった。何をお弁当につめるか、考える時間も楽しいね」

 大口を開けず、小さく噛みしめる桃簾は小リスのように愛らしく、楓の艶やかな朱唇におにぎりが消えていく。

「ふふ。桃。これも……」

 楓が箸で摘まんで、白いおにぎりに乗せたのは、桃色の桜でんぶ。

「白い肌に鴇色の髪。桃みたいだなって思って」

 他の女子なら姫若様! と言うくらいに魅力的なイケメン台詞だが、姫君は一味違う。真顔で問い返した。

「楓の葉は、食べられるでしょうか?」
「食べないからね!」

 紅葉の天ぷらというものは存在するが、素人にハードルが高すぎる。
 今度紅葉の練り切りを一緒に食べようと話し、ギリギリセーフ。



 水筒の日本茶を飲みつつ、ポツリポツリと楓が語り出した。

「僕の父様は藤の名前を持つ人でね。子供の頃から、家族とはよく藤の花見をしたよ」

 瞼を閉じれば、子供の頃の楽しかった思い出が、くっきりと浮かび上がる。
 父も母も綺麗な人だった。所作も儚げな佇まいも。そんな二人の間に生まれたのに、楓はお淑やかさを脱ぎ捨てて、男子のように勇ましく育った。

 きっと、たぶん、それはあの幼馴染の為なんだ。幼い頃に僕を助けてくれた彼。
 ──今度は僕が守ってあげるよ。
 そう願い、己を鍛え続け、されど武の力だけでは、憂いを纏う幼馴染の心を救えない。
 きっと、たぶん、あの子の力も必要なんだ。それは嬉しさと寂しさが入り混じる、複雑な想い。

 ふっと気づくと、楓の手に桃簾の白魚の手が重なった。
 憂いを帯びた眼差しの楓を励ましたいのに、どうして良いかわからなくて。ただ、少しでも力になりたいと思いを込めて、手を握るしかない。

「藤の花も色々な思い入れがあるのですね。わたくしも楓との楽しい思い出の花となりました」
「桃との思い出が増えるのは、僕も嬉しいよ」

 ずっと幼馴染の為に、家族の為にと生きてきた。
 そんな楓が、この世界で初めてできた友人が桃簾だ。彼だけの為に生きるのではなく、他にも大切な人ができていく。
 それはとっても幸せな事かもしれないと、白魚の手を握り返す。

「おにぎりは、おむすびとも言うと聞きました。結ぶというのは、縁を繋ぐとも言えると」
「そうだね」
「だから、楓と縁を結びたいのです。親友だと思っているのは、わたくしの独りよがりでしょうか……」

 同じ放浪者なのに、楓は自分よりも、ずっとこの世界に詳しく、頼りになる。花名の友で、親友だと思いたいが、もし違うと言われたら……。
 どんどん声が小さくなり、自信がなく、萎れていく桃簾を見て、楓は苦笑をかみ殺しつつ、その優しさに心の中が温まるのを感じた。
 楓もまた桃簾を親友だと思いつつも、口に出したことは無かった。

「桃って友達には何だか不器用だよね。まぁ、僕もかな。親友として、これからもよろしくね」

 楓が澄み渡る空のような笑顔を浮かべば、桃簾は咲き誇る花のような笑みを浮かべる。
 二人で微笑み合い、改めて握手をして、縁を結び。次は花名三人娘で、藤を見に行こうと約束した。
 三人揃えば、藤園の誓いだろうか。


 藤の美しさをたっぷり堪能し、日が暮れる前にと立ち上がる。
 ふと出口の近くに見えた、土産物屋が目について、楓はお土産を買うのも良いかもしれないと思い直す。

「薔薇饅頭だって。珍しくて良いね。イチゴスキー達も気にいるかな……って、桃!」

 桃簾が巾着袋から財布を取り出し、そのまま店員に突きつけたのだ。

「それを……あるだけ全部、出しなさい」

 それと指差す先にあるのは『薔薇ソフトクリーム』の看板。アイス教徒が見逃すわけがない。財布ごと差し出す勢いで食べ尽くす。
 その行動力に楓も笑いを堪えきれない。

「楓も一緒に食べますか?」
「一つだけ貰おうかな」

 ソフトクリームを口にすると、バニラアイスに似た、ミルキーな甘さと舌触り。薔薇の香りは仄かで上品で、いくらでも食べられそうだ。
 ぺろりぺろぺろ、ぱくぱくと。ほう……と漏れる吐息に、薔薇の香りが漂う。

「何だか、僕が薔薇になったような気分だよ」
「はい。わたくしもそう思います。花友の花見の締めにふさわしいですね←」

 はい、今日一番の満面の笑顔いただきました。

 花の命は短いようで、存外長く強いのかもしれない。
 見目麗しい花乙女達の友情は、これからも枯れる事なく咲き続けるのだろう。

━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━

●登場人物一覧
【桃簾(la0911) / 女性 / 20歳 / 藤愛でる姫君】
【不知火 楓(la2790)/ 女性 / 20歳 / 藤語る佳人】


●ライター通信
いつもお世話になっております。雪芽泉琉です。
ノベルをご発注いただき誠にありがとうございました。ご依頼とても嬉しかったです。

着物も植物もお弁当も、大好きなモチーフなので、つい筆が滑りました。
藤棚のある植物園で、薔薇のソフトクリームを食べたのは、雪芽の実体験です。
藤の花さく季節の爽やかな風を感じて頂けるよう、心がけました。

雰囲気重視で、和の雅な単語や言い回しを多用した為、読みづらくないと良いのですが。
お二人の華やかで美しい友情のひと時に、彩りを添えられましたら幸いです。

何かありましたら、お気軽にリテイクをどうぞ。
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2019年05月23日

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