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『Ex.snapshot 005 ルカ マーシュ × ヴィリジアン 橙 』
ルカ マーシュaa5713)&ヴィリジアン 橙aa5713hero001

 春である。
 でもだからってどうと言う事でも無い。

 ルカ マーシュ(aa5713)は今日も元気にいつか『理想の魔法使い』となるべく鍛錬と精進を重ねており、
 ヴィリジアン 橙(aa5713hero001)は、今日も元気に幻想蝶≪ライヴスメモリー≫の中に引き籠っている。

 結局の所、纏めてしまえばそんな感じの平和な日常がひたすら続いている。

 それは勿論、H.O.P.E.所属のエージェントこと能力者≪ライヴスリンカー≫と英雄≪リライヴァー≫、としての何だかんだは別にある。愚神≪グライヴァー≫や従魔≪セルウス≫、能力犯罪者≪ヴィラン≫やらの対策に駆り出される必然、色々と洒落にならないとんでもない事態もあったりするが――そんな場面ではそれこそ炎やら雷やらを出す魔法使いそのものっぽい人も仲間内に居て活躍してたりするからして、ルカとしては正直羨ましかったりもする……と、こっちを語り出すと脱線になりそうな気がするので今はさておき。
 ここでの本題は、「ルカの気になる事」では無く「ルカ当人とその相方な英雄の事」である。

 取り敢えずそのルカは――先程から相方の英雄が(中に引き籠って)居る筈な手持ちの幻想蝶をじーっと見つめ、ついでに握っている小枝の先をそこに突き付けつつ、ひたすら何かを念じ続けていたりするのだが。



 一体何だっつーの、これ。

 ……何故か幻想蝶の「外」からじーっと見つめられている様な気がしてならないのが、どうにも気になって仕方が無い。ただの自分の気のせいかもしれないし、そうじゃないかもしれないあやふやな感覚。
 いや、この視線の主がルカだったとしたら、「魔法使いになる為の修行の一環」として今こんな謎な真似をしてるって線もあるかもしれないか?

 単なる思い付きではあるが、何だかその可能性が一番有り得る様な気がしてきた。

 元を辿れば2018年7月11日。まだ一年も経っていない、去年のルカの誕生日。よくわからない内にここ――この世界に居た俺は、どうやらルカの誕生日プレゼント(比喩)と言う事にされてしまっていたらしい。
 初めて出会った時に夢と憧れを興奮して語りまくるルカ本人から感謝と共にそう言われた(肺活量に乏しい身だとよくそこまで一気に喋れるなとも思った)。……単にばったり出会ってただけに過ぎないんだが、それにしては滅茶苦茶喜ばれていて面食らった(表情筋が硬い身だとよくここまで表情が動くなとも思った)。そして気が付けば何故か名前がヴィリジアン 橙になっていた(そもそも名乗った覚えも無いのだが。どっちが名前でどっちが苗字かも未だに謎である)。
 まぁ確かに、殆ど幽霊みたいな頼りない存在(だったとその時に初めて気付いて愕然とした)で、誓約すれば何か戦う力になるとか自分はこっちの世界で実体持てるとかその辺の事だけなら漠然とした自覚はあったから――そんな俺と会った方としても、俺が普通の人間だとは流石に思わなかったんだろうなとは思う。
 実際、魔法使いになりたい! と真っ直ぐに望みまくるこいつと誓約するのは吝かでは無かったし――但し、その結果がルカの望む「魔法使い」とは何だかちょっと違ったみたいで、若干申し訳なかったりするのだが。そう、共鳴≪リンク≫(なのか? つまりルカが「何か戦う力」を振るう時の話)しても剣とかたくさん中空に浮かぶ形で召喚、広範囲にブン回す技が主な訳だから、ある意味では魔法どころか物理である。
 そしてその手の「召喚魔法」は、ルカの望む「魔法」の分類にはどうやら入っていなかった。

 つまり、「魔法使い」になりたいと言う御希望にはいまいち沿えなかった訳である――そんなこんなと喜びから一転、嘆かれてしまった為、そっとしておこうと俺はなるべく幻想蝶の中で過ごす様にしていると言う面もある。
 と言うのは建前で。
 単に幻想蝶の中とやらが意外と快適で居心地好いから引き籠っている、と言うのが本当の所ではある。用が無ければなるべくここに居たい。外に行きたいと積極的に願うのは本を借りに行く時位――図書館に行くのは楽しい。つまり、そんなささやかな生活を楽しんでいると言うのがヴィリジアンの日常である。本絡み以外では出来ればあまり外に出て行きたくない。ここに居たい。そんな居心地の好さに寛いでいた所で、この居た堪れない視線らしき感覚がびしばしと来ている現状。

 ……何と言うか、ちょっと文句とか言いたいかもしれない。

 とか思ってたら、「外」から自分を呼ぶ声がした。
 やっぱり、ルカである。



「なーなーヴィー、ずーっと見てたのわかった? 僕が何考えてたのかわかった??」
「……」

 やっぱり、気のせいではなく本当に幻想蝶――越しにルカはヴィリジアンの事を見ていた、らしい。それも、ルカが何を考えてたのかわかったか、と来た。
 それこそ期待に満ちたきらきらした淡い色の眼差しで。多分答え合わせ――のつもりでヴィリジアンを呼び出した様な感触がある。

「……何やってんの?」
「くっ……わかんなかったかっ」
「……まぁ」
「うーん。そっか……まだ集中が足りねーって事かな。行けたと思ったんだけど」
「……だから……何やってんの?」
「そりゃあもちろん魔法の鍛練に決まってんじゃねーか! 対象に集中してじっと見つめて念じるのって魔法使う時の基本中の基本だよな?」

 能力者と英雄なんだからこういうの以心伝心で通じ易いんじゃねーか、魔法の練習にはもってこいなんじゃ――って思って。
 そんな風に堂々と言われても、ヴィリジアンとしては反応に困る。何と言うか、以心伝心でも何でもなく、物言いたげな真っ直ぐな視線を無言のまま(そして意図もいまいち読めないまま)注がれるのはただひたすらに居た堪れなかっただけだから。
 のんびり寛いでた所に「これ」は――ちょっと落ち着かないから出来れば止めてほしいと言うのが正直な感想。

 とまぁ、そんな事を正直に言っても、ルカが落ち込むだけである。
 そして言ったとしてもあまり改善の余地がある気がしないので、いちいち言い出すのもどーかなーと思う。それは流石に言い出せば今すぐには止めてくれるだろうけど――へこたれずに暫くしたらまた同じ事を試しそうでもある。
 ……よって、こういう奴なんだと諦めて放置するのが一番楽な対処法だったりする。何の解決にもなってないが、まぁ初めからこういう奴だとはわかっている訳で――そもそも魔法の鍛錬と言っても完全に自己流である。と言うか、言ってしまえば思春期ど真ん中の厨二病的妄想の域である。
 但し能力者とか英雄とか――「こういう身の上」だから実現可能性としてはゼロじゃない、と縋る藁ががっつり残っている訳で、ただ妄想とも言い切れないのが面倒臭い所。そもそも以前から「そんな魔法使いになる為の涙ぐましい努力(?)」を姉から凄い踏みにじられ方をしているらしいとも聞いており、それでもへこたれないのだから筋金入りである。
 ぱっと見ではチャラかったりひ弱そうに見えるかもしれないが、結構根性があるのかもしれない。
 まぁ、慣れていないせいか元々の性格か、戦いに臨む前には緊張して人の話が耳に入ってない、とかあるが。

 それはそれ、これはこれ。



 カオティックブレイドとは何ぞや。

 要するに英雄としてのヴィリジアンが分類されるクラスになるのだが、本人はその辺全く気にしていない、と言うか多分よくわかっていないと言う方が正しい。だからそこで「何ぞや」と改まって問われても、真っ当な答えが思い付くものじゃない。と言うか取り敢えず、それは思い付きで話す様な事では無いんじゃないか、と言う気だけはする。
 ヴィリジアンとしてはそう思うので、取り敢えずお手上げ。

 なので、この辺の事についてはルカの方に完全バトンタッチ。望んでいた「魔法使い」とは何か違ったなーとは思っても、現場でそれなりに使う必要がある能力な以上は、やっぱりそれなりに考えている訳で。ただ闇雲に魔法使いになりたいなりたいと夢想しているだけでは無いのだ。決して。
 と言う訳で、ここは言葉の上だけで云々語るより、カオティックブレイドならではの能力を披露した方が手っ取り早いかと思ったので――共鳴するだけしてみるが。

「……」

 何と言うかまぁ、そろそろ毎度の事ではあるが、パッとしない。
 そう、共鳴しても姿形が特別変わらないのである。共鳴しても変身……してない。魔法使いにはなれなかったけど、変身するならそれって魔法じゃね? と思っていたのも今は昔。儚い夢。現実は、何処からどう見てもルカのまま。光の加減で緑っぽくも見える稲穂みたいな金色の髪も、そんな髪がツーブロックに短く刈られているのもそのまんま。別に魔法使いっぽく伸びたりしない。瞳の色とかも変わるかなと思えばそれも無く、元の通りの灰色のまま。身長とか体型が変わってるとかもなく――気分で付け替えてるピアスも同じっぽい。
 取り敢えずヴィリジアン要素何処行った。
 がっくりしつつもまずそんなツッコミめいた疑問が浮かぶ気がする。……これではただヴィリジアンの姿形が消えるだけである。共鳴して一つになったからってこの状態で会話が出来る訳でも無いし、使える能力もやっぱり魔法っぽくなくてパッとしないしで(ばーっと火を出したりぴしゃーんと稲妻落とすみたいな派手なのがやっぱり憧れなのである)、これどうなんだろうと悩ましくなってしまう所はある。
 まぁ、会話が出来なくともこっちの精神がヤバくなると流石に英雄側と切り替えたり出来るみたいだが、そっちだと何かいつもと姿形や性格が違うって話である。つまり英雄側だと共鳴中はちゃんと変身するみたいで……でも任意で切り替え出来る訳じゃない辺り、なんか色々、納得行かない。
 レートが上がればちょっと髪と瞳の色も英雄の名前っぽく変わって来たり(因みに普段の英雄は名前らしい色の要素は全く無いんだが何故かここでいきなり出て来る)、会話も出来たりするみたいだけど……それもそれでよく考えると、やっぱりどうなんだろうと言う気もする。
 いざなったらなったで突然喋られてもお化けみたいで気持ち悪いし、外見変わってもそーゆー場面で鏡なんかある訳無いから自分でわからないし。魔法っぽい変身になってるかどうかなんてわかったもんじゃない。

 つまり結局、人生ままならないものなのである。



 取り敢えずすぐ共鳴から戻って後。

「……で、どうなの……」
「? 何が?」
「……カオティックブレイドがどうの……って話じゃなかったっけ……」
「あー、僕の方も結局よくわかんねーかも。ってか戦う時じゃないと共鳴してもスキル迂闊に使えねーし?」
 百聞は一見に如かず、をやろうとしたけど、よく考えたらそんな気がしたので止めた。
「……正解。良く止めてくれたよ……」
「っつーか、それより僕だと共鳴した時変身にならないのがどーしても納得行かねー!」
 ジアンだと変身してるんだよな?
「……と、思う……」
「何だ。はっきりしねーの?」
「……自分で見れねーし……」
「あー、そりゃそうだよね。でも変わってるっぽいって」
「……よくわかんねーけど……多分。あ。前髪……短くなってた気がする……?」
 くせっ毛があんまり気にならなかった様な。
「そういやいつも気にしてるよなー……ってそれズルい!」
「?」
「だってそれじゃダイの思い通りに変身してるって事じゃね!?」
「……。……そうかも……?」
「こっちは幾ら頑張っても魔法っぽい事になった試しがねーのに! あーなんか悔しいっ!」
「……」
「って聞いてんのダイ、ヴィジー、それともリジー?」
「……どれでもいいんだけど……」
 名前。呼び方。
「うーん。自分的にこれ!って感じの呼び方、何かねーの?」
「……うーん……」
 悩。
「むう」
「……だから……好きに呼んでくれていいんだけど……」
「いや、やっぱ名前ってのは魔法的にも大事なモノなんだし、いつかきっとヴィルがしっくり来る様な呼び方見つけてやるから待ってろよ!」
「……はいはい……」
 しっくり来ると言うなら何でもしっくり来てるから気にしてないとも言うんだが。

 まぁ、ルカが納得する様にしてくれればそれでいい話。
 大体いつも、こんな感じで平和な日常が続いている。



━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

 ルカ マーシュ様、ヴィリジアン 橙様には初めまして。
 今回はおまかせノベルの発注有難う御座いました。果たして初めましての当方で本当に良かったのかと思いつつ。
 そして初めましてから大変お待たせしてしまっております。……当方こんな感じで毎度の如く作成期間を長く頂いてしまう輩なのですが、宜しければお見知り置き下さいませ。

 内容ですが、おまかせ……と言う事で、キャラクター情報の文脈重視っぽい形で、過去作品やらマイページ情報やら取り混ぜつつキャラ紹介的な日常……の様なものをやらせて頂いたつもりなのでした。
 ただ、前半はともかく後半は誰向けに何をしているのかいまいち謎かもしれないのですが……(仄かにメタ気味と言うか)

 初めてお預かりするのにいきなり内面描写込み、と言う無茶やらかしておりますが、致命的な読み違え等無ければ良いのですが(特に幻想蝶絡みや共鳴中描写辺りが気になっていたり)……もし「こんな事考えないしこんな口調だったり態度じゃない」等あったら申し訳ありません(汗)

 如何だったでしょうか。
 少なくとも対価分は満足して頂ければ幸いなのですが。

 では、またの機会が頂ける時がありましたら、その時は。

 深海残月 拝
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2019年05月27日

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