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『切っ先が残す爪痕 』
ダスク・L・オーゼンla2698

 始まりには破壊があった。
 それがダスク・L・オーゼン(la2698)の依代であり、かつては彼の全てだった。

 ◆

 怪物の腕が、手近にある障害物へと振るわれた。木々が倒れ、轟音と共に土埃が上がる。
 SALFに所属する戦士として、ダスクは今敵と対峙している。ただ衝動のままに暴れる怪物の姿が過去の自分の姿と重なり、彼は眉根を寄せた。
「すまないが、これ以上意味なき破壊を許すわけにはいかない。そろそろ、終わりにさせてもらおうか!」
 ダスクの愛用の武器の切っ先が、強力な一撃を敵へと叩き込む。怪鳥の爪の如き鋭い刃は、ナイトメアの身体へとトドメとなる傷跡を刻むのだった。

 ふと、どこかから泣き声が聞こえる。仲間に一言断りを入れ、微かに聞こえるその声を頼りにダスクは歩き始める。
 その先で彼が見つけたのは、一人の少女だった。逃げ遅れてしまい、ずっと隠れていたのだろう。
 怯えて縮こまる少女へと、ダスクはなるべく穏やかな声音で話しかける。先程までの戦士としての圧はなりを潜め、今の彼は普段の紳士的な雰囲気を纏っていた。
 彼女を怯えさせないように気を使いながら、ダスクはその大きな身体を小さく丸め、相手と視線を合わせる。
「もう大丈夫だ。君の安全は、この私が保証しよう」
 浮かべた笑みは優しく、少女に自分は助かったのだと教えてくれる。ホッとし一層嗚咽をあげ始めた少女の事を、その大きな手は優しく撫でるのだった。

 ――始まりには破壊があった。ダスクは今もなお、破壊する日々を送っている。
 しかし、それは意志なき破壊ではない。人々を、この世界を守るために、必要な破壊であった。

 ◆

 拠点にある休憩所の椅子に、ダスクは一人座っている。大きな指がキーボードを叩く小気味の良い音が、室内には響き渡っている。
 その巨体を屈め、ダスクは一心にノートパソコンに何かを打ち込んでいた。
 ふと、廊下を歩く仲間達の楽しげに話す声が耳をくすぐり、彼はようやくその手を止める。珈琲に口をつけながら見た時計は、先程ダスクが見た時とは短針の位置が二つほど違っていた。
「ふむ、少し集中し過ぎてしまっていたようだな。そろそろ小休憩を取るべきか」
 独りごち、ダスクはすっかり冷めてしまっていた珈琲を飲み干す。
 ――人々は破滅願望を持つ。無意識下に存在するそれを、個人個人で制御する事は不可能に近く、破壊が彼らの中から消え去る事はない。
 ダスクという男はそれから生まれ、今もなおその欲求へと苛まれている。かつての彼は破壊しか知らず、唯一存在するその衝動に従いただ破壊の限りを尽くした。
 破壊、破壊だ。破壊し、破壊しなければ。決して潰えぬその願望のせいで、幾度も命を繰り返しながら彼は戦闘に投じ続けた。
 知識を得たのは、それから幾つ生を迎えた頃だっただろうか。永き時の中で、ダスクは自我を得て様々なものを知った。
 破壊で救えるものがあるという事を知ったダスクは、今は人々を守るために組織に身を置き武器を振るっている。
「しかし、知れば知る程、人というものは奥深いな」
 ノートパソコンの画面には、ダスクが打ち込んだ文字が行儀よく列をなしていた。こうやって幾つもの文字を組み合わせる事で、一つの物語が生み出せるのだから面白い。
 得た知識から、今まで自分が見ていたのは、本当に人という生き物の一部でしかなかったのだという事をダスクは教わった。
 彼らにあるのは、単純な破壊だけではない。想像し創造する彼らの姿は、ダスクには愛しく映る。
 そして、そのダスク自身も今は人としての身体を持ち、人と同じ様な生活を送っている。想像し、創造する日々。こうやってパソコンで物語を綴る事は、彼の趣味の一つだった。
 自身の綴ったその小説を、今一度ダスクは読み直す。ダスクの綴ったこの世界は、他でもないダスクにしか生み出せなかったものだ。
「おっと、間違って消してしまっては惜しい。この辺りで一度、保存しておかねば」
 今しがた作り出した小説を保存するために、巨躯の紳士は再び背を丸めパソコンを操作する。マウスカーソルの切っ先が、また一つダスクの創造した物語の跡をこの世界へと残すのだった。

━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
ご発注ありがとうございました。ライターのしまだです。
この度はおまかせノベルという貴重な機会をいただけ、光栄です。
ダスクさんは小説の執筆をされていらっしゃるようなので、是非その辺りを書かせていただきたいと思いこのようなお話を綴らせていただきました。
お気に召す物語になっていましたら幸いです。何か不備等ありましたら、お手数ですがご連絡くださいませ。
それでは、ご依頼誠にありがとうございました。またいつか機会がありましたら、その時はよろしくお願いいたします。
おまかせノベル -
しまだ クリエイターズルームへ
グロリアスドライヴ
2019年05月27日

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