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『酒と語らいとと男と女 』
化野 鳥太郎la0108)& 七種 戒la2588

●ある日
 その日、女はバーで飲んでいた。
 女の名は七種 戒(la2588)。異世界からやって来た放浪者だ。
 七種は静かな雰囲気の店内で、ゆっくりとグラスを傾けていた。

 その日、男はどこかで休憩がてら何か飲もうかと思った。
 男の名は化野 鳥太郎(la0108)。元小学校教師の強面だ。
 化野は雰囲気の良さげなバーにバイクを停め、店の扉を開けた。

 そして二人は再会した。

●バーにて
 扉を開けた化野の目に最初に映ったのは、カウンターに座っている七種の後姿だった。
 二人は七種がこちらの世界に転移して落ちて来たところに化野が偶然居合わせた時からの縁で、お互いただの知り合い以上には知っている仲である。
 先日も二人は海辺で色々なこと――あまりさらけ出せない心の内のこと――などを語った経緯があったので、化野はすぐに彼女だと分かった。
(また酒を飲んでいるのか……?)
 酔い潰れるまで飲むという無茶な飲み方をしているなら止めるつもりで化野は七種に近付き、声をかける。
 最初から反発心を起こさせないように、フレンドリーな感じで、
「なんだ、元気そうじゃねえか」
「あら。鳥さんじゃない」
 と化野に向けた七種の表情は、思っていたのと反して、いやそれ以上にスッキリしたものだった。
 飲み過ぎているというふうではない。
 以前とは違う。
 あの海辺で会った日から、彼女は変わったのだろう。
 そう思った化野は、何も言わずに隣に腰を下ろした。

 最初はノンアルコールビールでも頼もうかと思っていたが烏龍茶に変更し、ちょっとしたつまみを食べるだけにする。
 烏龍茶を頼んだ化野に、七種が不思議そうに言った。
「せっかくバーに来たのに飲まないの?」
「ああ、バイクで来てるしな」
 ふうん、と七種はつぶやいて、自分のグラスをじっと見つめる。
「不思議ね、あんなに眠れなかったのに」
 その言葉の意味は、化野にも分かった。
 PTSD――。
 以前の七種は酒の力を借りなければ眠れず、酒を飲むというのはただ意識を落とすためだけの行為でしかなかったのだ。
 それだけ、元の世界での戦いが過酷だったのだろう。
 だけど今は、多量なアルコールを摂取せずとも、浅くではあるが微睡めている。それだけでも今までよりはずっとマシな気分だと、七種は思った。
 元々はお祭り好きな、明るい性格のせいだろう。一旦気持ちが前に向けば、PTSDからの回復も早かった。
「そうか。立派な進歩じゃないか」
「ふふ、そうね」
 七種は自嘲気味に笑う。
「気付いてみれば、私が悩んでいたことなんて些細なことだったのかもね。結局私は、周りに甘えていただけ……」
 皆が優しかったから。
「甘ったれじゃねえさ。悩むことは大事だ、悩まないより余程良い」
 そう答えた化野の顔は、真面目だった。
 些細なことだとしても、本人には大事なことだった。だから悩んだのだ。
 悩むことを放棄して辛い状況から抜け出せないままでいるより、悩み抜いてあがいた方が良い。
 自分で答を見つけなければ、先へ進めないのだから。
 元教師の化野は、かつて小学生ライセンサーがPTSDになってしまうのを何人も見てきた。それ故に、同じようなものを抱えている七種と彼らが重なり、彼女を放っておけない。
 そんな気持ちが、化野を動かしていた。
「これからも、悩むことはあるだろう。重みに耐えられないことは罪ではない。だから――その時は逃げてきな。大丈夫だ」
 少しでも安心して悩めるように、辛い時は逃げて来れる場所を用意してやること。それが自分のできることだ、と化野は思っていた。
 答は本人が自分で見つけなければならないが、見つける手助けはしてやれる。
 七種はそんな化野にある意味驚嘆の念を抱いていた。
 今時、主治医でもないのに他人の精神的な問題にまで関わろうとする人間がいるとは。
 彼女の表情を探るように見ている化野に、七種はやれやれという感じを滲ませ口を開いた。
「どこまでもお節介なのね」
「それが俺だ。あんたももう知ってると思ったが」
 ふてぶてしく口の端を上げる化野は、七種の反応を『覚えておく』という意味だと解釈した。

 七種の心境が変わってここまで立ち直れたのは、海辺での化野との会話のおかげで自分は生きたいのだと気付くことができたからだ。
 本当はもっとちゃんと感謝の意を表した方がいいのかもしれないが……、この男の言葉に影響を受けたと思われるのも何だか癪なので、このままでいいかと思い直す。
 それでもやっぱり少し悔しいから、拗ねたようなからかうような調子で
「普段はダメンズのくせに、こういう時ばっかり教師っぽいのズルいなぁ」
 と言ってみた。
 すると化野は
「ひひひ、『ぽい』じゃなくて実際教師だったしな。先生の言うことは聞いとけー」
 相好を崩して笑う。七種は若干あきれた。
 教師っぽいことを言ったと思ったら次にはおちゃらけたりして、化野という男もこれで複雑な男のようだ。
 でも彼は彼なりのやり方で真剣に七種と向き合ってくれている。それが分かっているから、彼女は『先生』に尋ねた。
「ねえ、誰かと関わりたいと思った時には……もう、増えてるのかしら?」
 正直、大切なモノを増やすのはまだ怖い。そう思っているけれど……、既に自分の手の中に大事な人がいるのだろうか?
 自分の手のひらを確かめるようにじっと見つめてから、七種はグラスに残った酒をあおった。
 七種の自問のような質問を聞いて、化野は彼女が前に進もうとしているのだと感じた。
 戒さんがそう望むのなら、きっと。
「……そうだな。あんたはきっと、気付いたら大切なものに囲まれてるさ」
 つまみをかじりながら、穏やかに答える。
 以前は大切な誰かを失うのが怖くて、反射的に彼らに銃を向け撃ってしまい、自ら人を傷付けていた。だから誰も『大切な人』にならないようにしてきた七種だったが。
 今は前を向いて、進もうとしている。

「なあ、あんたは人を楽しませようとしている時が一番楽しそうに俺には見える」
 基本、七種は性格から言って人と関わるのが嫌いなわけではないはずだ。実際、全く人を寄せ付けないわけでもないし、誰かと楽し気にやりとりだってしている。
 ただ、誰かが自分の『特別』になってしまった時、失われることが辛いあまりに、そして自分がその人を傷付けてしまうかもしれないのを恐れるあまり、それ以上関わることに尻込みしてしまうのだ。
 この世界でもナイトメアとの戦いがある限り、そして七種がライセンサーとして戦う限り、そのジレンマは付いて回るだろう。
 でも、人との親密な繋がりがあるからこそ戦えることもまた事実で、それが戦いで疲れた心を癒すことも、恐れを克服するきっかけになることもある。
 本当は七種も知っているはずだ。
「それなら――、人から離れないで欲しい。あんたならすぐに友人に囲まれて、恋人もできて、そういう普通の幸せも、きっと望めると思うんだよな。だから――」
 大事な人を作ることを怖がらないで欲しい。
 化野のセリフを、七種は微笑みで遮った。全て言わなくてもいい、とばかりに。
 その微笑は皮肉でも自嘲でもなく、全く心から出た素直な微笑だったので、化野もそうっと黙った。
「鳥さんの言いたいこと、解ってる。だから心配は無用よ」
「そう、か」
「さて。もういい時間だし、私はそろそろ帰るわ」
 立ち上がる七種を見て、化野も烏龍茶を一気に飲み干して席を立つ。
「おい待てよ! バイクで家まで送って行ってやる」
「えぇ? 珍しい。そんな気遣いができる人だとは思わなかったわー」
「言ってろ。戒さんは一応『若い女性』だしな」
「わー、ありがとう〜、夜道怖かったの〜。とでも言っておけば満足かしら?」
「人の厚意は素直に受けるもんだぞ?」
 『私に女としての可愛げを求めているわけでもないでしょ?』という笑みで七種は化野を見やり、会計を済ませて先に店を出た。

●星空の下にて
 外は綺麗な星空だった。
 夜の澄んだ空気を大きく吸って、七種はふと思う。
 まさか自分を送ることまで考えて化野は烏龍茶を飲んでいたのか? 
(ホント、食えない男ね)
「おー、いい夜空だなー」
 なんて言いながら化野が店から出て来て、自分のバイクに固定してあったヘルメットを一つ七種に投げて寄越した。
 そこまで用意周到に彼の思惑通りになっているのは妙な気分だが、七種は大人しく化野のバイクの後ろに乗る。
「しっかり掴まってろよ」
 そしてバイクは走り出した。
 思ったより乗り心地が良い。きっと化野が同乗者に気を付けて運転してくれているからだろう。
 夜の道はどことなく異世界感があり、冷たい風も飲んだ後の体に気持ち良く感じられる。
 そんなふうに思っているうちに、バイクは七種の家の前に停まった。

「一応、ありがとうと言っておくわ」
 とヘルメットを返す七種。
「それじゃあな、ちゃんと睡眠はとれよ」
 家の玄関へと歩いて行く七種の後姿に化野が言った。
 七種はひらひらと片手を振り、玄関前でちらりと化野に振り返る。
「何でまだいるの? もう行っていいのよ?」
「ああ分かったよ。またな」
 と化野が後ろを向いた瞬間――、七種はまさか今、この流れでそんなことをするのかという意外さと素早さで銃を抜いた。
 これが最後の確認よ、と心の内でつぶやいて引き金を引く。

 乾いた銃声が響き――、しかし化野は銃弾に中らなかった。
 一瞬イマジナリーシールドを展開した名残が、化野の足元に星空色の炎となって残る。

「やっぱり、避けるのねェ」
「まだ死ぬわけにはいかねえからな」
 悪びれもせず、分かっていたけれどというふうの七種に、化野は咎めるでもなく返す。
 今死ぬにはやり残したことがありすぎる。
 それに、化野は自分の生き死にを他人に委ねる気はなかった。そしてこの腕がある限り、ピアノを弾くことは止めないだろうし、悩む誰かに手を差し伸べることも止めはしないだろう。

 二人の視線が絡み合い――、七種は満足そうに笑った。
 もう大丈夫、私は『日常』の帰り道にいる。
 銃を下ろした七種は、以前のような、どこか危うい空気がなくなっていた。
(もう大丈夫なんだな。あんたは、前に進んでる)
 しっかりと自分の足で立っている彼女の姿に化野は安堵し、今度こそバイクに乗って、帰路につくのだった――。


━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
ご依頼ありがとうございました!
化野さん、何だかんだで優しくて頼れるアニキですね〜。そして七種さんは強い女性だと思いました。

お二人の事情が難しい内容でしたが、お二人の言いたいことを間違えないよう、私も悩みながら書かせていただきました。
会話のかみ合わせでアレンジした部分など、お二人の意図と違っていないと良いのですが。

解釈が違っている部分や思っていたのと違うという部分などありましたら、ご遠慮なくリテイクをお申し付けください。

ご満足いただけたら幸いです。
またご縁がありましたら嬉しく思います。

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久遠由純 クリエイターズルームへ
グロリアスドライヴ
2019年05月27日

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