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『幼い日からの手紙 』
Uisca=S=Amhranka0754

 Uisca Amhran(ka0754)は、辺境の聖地リタ・ティトの巫女である。
 聖地で修行したことがあるものは、基本的に「白龍の巫女」と呼ばれることが多い。それは老若男女の区別はなく、経験の量なども人によって千差万別だ。
 故郷をすでに失い、行くあてのない孤児などもいたが、たいていの巫女はそれぞれの部族から適性を見いだされ、家族と離れて巫女の修行をすると言うパターンだった。それ以外だと、転移してきていくあてのないリアルブルーの人間が、クリムゾンウェストで生きていくすべを手に入れる為に
 修行をするのはそう言うさまざまな事情を持った子どもが多かったこともあり、入れ替わりは案外激しかった。修行を終わらせて故郷の部族に戻り、その集落の巫女としているものもすくなくないし、そのいっぽうで覚醒者として目覚め、定住の地を持たずに何でも屋のようなハンター稼業をするものも少なからずいた。
 Uiscaは前者であり、後者でもある。
 幼い頃にその適性から部族を代表してリタ・ティトで修行を積み、今はハンターとして世界を飛び回っている。
 同じように巫女として辺境ユニオンのリーダーを頑張っているリムネラやその他の巫女たちの誇りとなれるように――というふうに。
 
 
 そんなある日。
 Uiscaの元に、一通の封筒が届いた。送り人を見てみれば、リタ・ティトでかつて世話になった先輩巫女であり、その名前をみてUiscaも懐かしさを覚える。
 手紙にはこう綴られていた。
 ――聖地で大掃除をしていたら、懐かしいものが出てきたので、あなたに送ります、と。
 同封されていた一葉の便箋は、シンプルな白いもので、しかしそこに書かれていた文字は幼い頃の自分のモノ。はてなんだろうとその便箋を見てみれば、
『おとなになった私へ』
 そう書いてあって、ああ、と思った。
 小さい頃、そう言えばこんな手紙を書いたこともあったっけ。小さく微笑みながら、彼女はその便箋に目を通した。
 
 
『おとなになった私へ。
 元気でいますか。
 いまの私はなにをしていますか。
 りっぱな巫女になっていますか。
 あと、白龍さまは元気でいますか。
 この間、はじめて託宣をもらいました。とってもこわくて、私はそんなことになっちゃうのは嫌だって思いました。
 白龍さまは、こんな託宣を私にさずけたけれど、それは私のやることなんでしょうか。巫女って、すっごくこわいです。
 でもこわがってばっかりじゃ、大巫女さまにも白龍さまにも、笑われてしまいますよね。白龍さまはきっと私だから、こういう託宣をくれたんだと思ってます。
 私にはきっとこんなこわい託宣も、はねのけちゃうくらいの力があるんだって、そう信じてくれたんだと思います。
 でも、本当はそんな力なかったら、どうしよう。
 そうおもったら、やっぱりこわいです。あんまり突拍子のない、託宣だったから。だって、もし本当なら、この世界がほろんじゃうんですよね?
 私はこの世界にほろんでほしいなんて思っていません。だから、おおきくなったら、この世界がほろぼされたりしないように、がんばってほしいです。
 託宣なんて、ひっくり返せられるように、がんばりたいんです。
 そうしたら、きっとみんなもよろこんでくれますよね?
 みんな笑顔でいてくれますよね?
 ねえさまも、みんなも、笑ってくれていますよね?
 みんながしあわせな毎日をおくってるって、私はしんじてます。
 だから、大きくなった私も、笑っていてくださいね。』
 
 読み終わったUiscaは、小さく微笑んだ。
 そういえば、そうだった。小さい頃は、託宣に怯えてしまっていた。それでも、今彼女はハンターとしてそれを防がんとしている。当初の託宣とは異なる道を進み、さまざまな世界の変化があり、絶望も生まれ、それでもUiscaは、ハンターの本分を果たそうとしている。
 まもなく大きな戦いも控えている。それを戦い抜いて、平和な毎日を取り戻したい。しあわせな毎日を、みんなのものにする為に。
 
 
 
━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
このたびはご発注ありがとうございました。
普段から依頼などでも書かせてもらっていますが、そんな方のノベルも書かせていただけて光栄です。
今回はいわゆる『タイムカプセル』的なお話にさせてもらいましたが、満足していただけましたでしょうか。
拙い文章ではありますが、喜んでいただければ幸いです。
では今回は重ねてありがとうございました。
おまかせノベル -
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ファナティックブラッド
2019年05月28日

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