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『カロスにて 』
アウィン・ノルデンla3388)& 桃簾la0911

 遥かなる世界、常春の地、その世界の名はカロスという。

(ここが、フォルシウス領主屋敷……)
 アウィン・ノルデン(la3388)は豪奢な造りの館に圧倒されていた。ノルデン領主屋敷も立派なものであるが、土地が変われば文化も変わる。異国情緒、というものにアウィンはすっかり感心していた。
 彼はノルデン領主――すなわちアウィンの父親――の使者として、このフォルシウス領に訪れていたのだ。
 使者としての仕事は一段落し、今は自由時間だ。さてどうしようか、とアウィンは考える。
 と、ふわりと揺らぐ風が青年の頬を撫でた。それは花の香りを乗せていて――アウィンは無意識的に、藍宝石の瞳をそちらに向ける。
 視線の先には開かれた窓があった。アウィンは花の香りに誘われるように、窓辺に近付き身を乗り出す。
(これはこれは……)
 見えたのは花庭だ。名高きフォルシウス領なだけあって、完璧に手入れが行き届いた見事なものである。おそらくここら周辺で一番見事な花庭だろう。
 アウィンが目の保養として咲き誇る花々を眺めていると――ふと、その中に華やかな青色を認めた。
(あれは――何だろう?)
 ノルデンでは見かけぬ花だ。澄んだ青色が美しい。
 ひょっとしてフォルシウスの固有種だろうか。そんな興味が湧いてくる。
(近くで見てみたいな……)
 そう思った時には、アウィンはふらりと中庭目指して歩き始めていた。


 それからほどなく――


「これは……迷ったな」
 アウィンが肩を竦め、額を抑えた。
 一階にまで下りてきたのは良い。だがフォルシウス領主屋敷は存外に広く、そして入り組んでいた。
(おかしい。窓から見えた時はそう遠くないと思ったのに)
 そう。アウィンは迷子になってしまったのである。
 今、彼がいるのは瀟洒な中庭を囲む回廊。さっきからここをずっとウロウロしている気がする……。
「どうしよう……」
 アウィンはすっかり困った顔で、そう呟いた。



 ……時は少し遡り――



 その日、桃簾(la0911)――ロゼリン・フォルシウスは「あまり部屋から出ないように」と父親から言いつけられた。
 今日は他所の領地から使者が来るとのことで、つまりはその者と鉢合わせをしないように、とのことだ。

 ――領主家の女は宝石である。
 屋敷の奥、外の目に触れず大切に磨かれ、やがて他家へと渡る、一点の穢れなき至宝。

 それがロゼリンにとっての常識だった。
 フォルシウスの姫として生まれ、何ら疑問もなくそう育った。

 それでも――

 外、というものには憧れが一切ない、と言えば嘘になった。
 窓辺から風に乗って聞こえてくる祭囃子、女中が廊下で交わすささやかな噂話、本が教える知識という広い世界……。
 とはいえ、ロゼリンは気高きフォルシウスの姫。逃げ出したい――とは、思わなかった。

 なのに今、ロゼリンは中庭にて花を眺めていた。
 揚げ足をとるようだが、言われたのは「あまり部屋から出ないように」なので、絶対に一歩たりとも出てはならない、という意味ではないと解釈した。まあ、ほんの少しの時間だけだ。部屋に缶詰め状態で稽古続きだと流石に息が詰まる。
 それにこの中庭は、使者や領主が仕事をする棟からは離れている。用もない者がここに来ることなどないだろう。

 と、思っていたのだが。

(ん……? あれは……)
 ふと顔を上げた先の回廊、視界に入ったのは一人の男だ。フォルシウス風ではない服装をしている。それに髪も黒く、この地では珍しい色彩だった。
 となると、今日父親が言っていたよその領地からの使者か。
(なぜこんなところに……?)
 ほぼ無意識的に花の茂みに隠れてしまうロゼリンだが。

「これは……迷ったな」

 聞こえてきたのは、そんな声で。

「どうしよう……」

 更に聞こえたのは、ほとほと困り果てた声だった。
(……)
 まさか、と思うが、そのまさからしい。
 かの使者はつい迷い込んでここまで来てしまったようだ。
 このままそっと踵を返してもよかったが――よもや他領地の使者が迷子になったなど露呈すれば、あまりよろしいことにならないだろう。下手をすれば、「痴態を晒した、領主の顔に泥を塗った」と、あの憐れな使者の人生が潰えてしまうやも。
 それは流石に可哀想だ。何より――知らない土地の、知らない人。ロゼリンのもともと強い好奇心が、刺激されて。

「ここから奥は決められた者しか立ち入ることはできませんよ」

 しゃらりと絢爛なる装束を花の風になびかせ、ロゼリンは彼の背後からそう声をかけた。
「え、あ――」
 驚いた様子で、男――アウィンは振り返る。
「……!」
 そして更なる驚愕に目を丸くする。
 麗しい装束、美しい乙女。射貫くように真っ直ぐな黄金の瞳、佇むだけで感じる宝石のような気品。
 ゆえに、アウィンは瞬時に理解した――彼女こそが、兄へ嫁ぐ姫なのだと。
(……この姫は、本物だ)
 息を呑んだ。姫君がまとう空気に、つい後ずさってしまいそうになる。
 けれど、ノルデンの使者として、ここで臆するような姿を晒す訳にはいかない。アウィンは丁寧にお辞儀をする。
「知らぬ花が見えて……迷いました。失礼を」
「……知らぬ花?」
「はい。青い、空の色に似たものでした」
「そう。……客人ならばあちらから戻ると良いでしょう」
「ありがとうございます。では――」
 アウィンは今一度深く頭を下げると、速やかに踵を返した。姫君の指示通りの道を行く。
 その足取りは努めて通常通りを装っているが、姫君から背けた彼の表情は余裕のないものだった。

 ――あれが、『本物』――

 ぐ、とアウィンは奥歯を噛み締める。
 彼の兄にしてかの姫を娶る男を生んだ母親は、他領主家の姫である。既に病死した者なれど、正真正銘正統なる血統の、生まれ持って気高き存在である。
 だがアウィンの母は後妻で、庶民出身の元侍女だった。本物ではない。正統ではない。メッキの金だ。
 ゆえに、いつもアウィンの心の奥底には『本物』への劣等感があった。努力などでどうにもならない部分だからこそ、どうにもならなくて、苦しくて堪らなくて。

「……っ」

 思い返すのは、かの姫君の金色の瞳。混じりけのない本物の金。兄の髪色にしてもそう。黄金は一番の証。その色彩はいつも、『劣等(メッキ)』である自分を苦しめるのだ。
 所詮、己は『兄の代価品』だ――。

 気付けはアウィンは見知った場所に出ていた。
 けれど、スッキリした思いなどカケラもなかった。
 もう、あの青い花のことなどどうでもよくなっていた。

 ただただ、心の中で燻ぶり燃えているのは劣等感と、嫉妬と空虚さだった。



(外の者でも知らぬ花があるのですね……)
 一方。中庭のロゼリンは、使者が去って行った方を漫然と眺めていた。
 ならば自分はもっと無知なのだろう。そんな思いが湧いて、姫君は俯いた。
 そうすれば青い花が足元に咲いているのに気付いた。だがその青い花が、彼の言っていた花なのかは分からない。かわした言葉は一瞬で、簡易的で事務的だった。
「……、」
 ロゼリンは小さく溜息を吐く。そんな細やかな動作にすらも、花に留まる胡蝶のような美しさがあった。妻としてその身を差し出す男の為に教育された無意識の所作である。
 花を摘もうか一瞬迷った。だが、摘んだところで何になる。醜く枯れてしまうだけ。すぐに捨てられ処分される。だったら、この庭の上でまだ、自由に精一杯咲かせてやった方がいい。……せめて、花ぐらいは。
(……など、卑屈でしょうか)
 自嘲じみた感情だ。だがそれは確かにロゼリンの胸に灯っている。
 ……これは羨望だ。あの使者に対し、ほんの少しなれどロゼリンは「羨ましい」と思ったのだ。彼の世界は広いのだろう。いろんな人に会うことを許されて、どこにだって行けるのだろう。将来だって自分よりは選択肢があるはずだ。
 もう一度だけ、ロゼリンは溜息を吐いた。最後に彼女は使者が去った方を一瞥すると、姫を彩る装飾をなびかせ踵を返す。姫君の小さな世界、奥の屋敷へと。

 ――今頃、かの使者は徐々にここから離れているのだろう。
 そして明日にでもなれば、外の世界へ歩いて行くのだ。
 きっと彼と二度と会うことはあるまい。
 会ったとしても、顔も声も覚えてはいないだろう。ましてや、名前すらも聞かなかったのだから。



 ――それはアウィンがニ十歳、桃簾が十七歳の時の出来事である。



『了』




━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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アウィン・ノルデン(la3388)/男/23歳/放浪者
桃簾(la0911)/女/20歳/放浪者
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2019年05月31日

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