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『Beautiful Knight 』
ユリア・スメラギla0717

●其は美しき一輪の華にして

 五月晴れの、とある日曜日。
 ユリア・スメラギ(la0717)は上機嫌で街へ出掛けていた。
 今日は、隣に『彼』の姿はない。されど、心は常に、彼と共に。
「あ、この紫のパーカー。ふふ、きっと……良く似合いそうね」
 そう。たとえ其処に姿がなくとも。
 いつだってユリアの目には、彼の姿が鮮明に映し出される。
 ブティックのマネキンが着せられている男物のパーカーを見て、ユリアはついつい彼がそれを着ている様を思い描いていた。
 先月は、満開の桜の下で、彼と一緒に写真を撮った。
 なら、次はやっぱり――彼の好きな、紫陽花かしら。
 二人のアルバムにまた新たな一枚が加えられることを想像し、ユリアは一人、幸せそうに笑顔を咲かせる。
 ユリアは今日は朝から、彼との次のデートに備えてアクセサリーショップやブティックを巡り、その日のお洒落の準備を整えていた。
 ライセンサーでありモデルでもあるユリアは、常に『自分を美しく魅せること』に余念がない。
 まして、それが最愛の彼とのデートであれば、尚更のこと。
 着古した身なりで彼に会うなんて、とんでもない。
 新しい、最高に美しい自分を、彼に見て欲しい。
 そんな健気な想いを胸に、ユリアは店内の様々な衣装を次々手に取っては、鏡の前で自分に当ててみて。次のデートに相応しい最高の一着を探していた。
「紫陽花を見に行くなら……やっぱり、紫がいいわよね」
 モデルとして数多の衣装を着こなしてきたユリアの審美眼は、確かである。
 紫は、着る者を選ぶ色ではあるが。アメリカ人とのハーフであり、日本人離れした華やいだ美貌と肢体を持つ彼女には、衣装に着られてしまう心配など無縁。
 彼女にかかれば、あらゆる衣装が彼女という大輪の華に添えられた花となる。
 一着の、薄紫色のワンピースを手に取ったユリアは、これがいいかしらね、と呟きながら、試着室へと足を進める。
「うふふっ。彼に新しいあたしを、早く見せたいわ♪」
 待ち合わせ場所で会った時、彼はどんな反応をしてくれるかしら。
 彼の表情を、言葉を、想像するだけで――胸が高鳴り心が躍る。
 そして、ユリアが店員に声を掛けて、試着室に入ろうとした時。
 ガラス越しに見える外の路上から、突如、大きな衝撃と、道行く人々の悲鳴が響いた。
「な、ナイトメアだ! 早く、SALFに連絡を!! ライセンサーの派遣を!!!」
 斯様な声が其処彼処から叫ばれているのが、ユリアの耳にも確かに届く。
 人々の悲鳴は止まず、何かが破壊される物騒な音も聴こえてくる。
 どうやら――エマージェンシーね。
「もうっ。KYなナイトメアね……!」
 そう呟きながらも、ユリアの行動は迅速であった。
 ナイトメアは神出鬼没。
 たとえ長閑な日曜日であっても、何時何処で『悪夢』に遭遇するか分からない。
 歴戦のライセンサーであるユリアは、有事に備えて常にEXISを携行している。
 店員にレジの奥で預かって貰っていた長剣と盾をその手に掴むと、直ちにIMDを起動。
 ユリアの周囲に麗しい花弁の幻影が舞い、その姿は赤と黒の戦装束へと転じる。
 臨戦態勢となったユリアは、疾風の如く店外へと飛び出すのだった。

●星の守護者たる高潔な騎士

 路上では、二体の『悪夢』がその猛威を揮っていた。
 一体は蠍型。もう一体は蟹型。
 どちらも全長は三メートル程度。
 多脚で走り、周囲の建物を手当たり次第に破壊している。
(随分と知能が低いみたいね。『餌』と、そうでないものの区別もついてない)
 右手には長剣。左手には小盾。
 豊かな金髪を風に靡かせ、ユリアは敵へ駆け寄りながら戦況を把握する。
 どうやら幸い、まだ犠牲者は怪我人一人出ていないようだった。
「ナイトメアが出現しました! 直ちに周囲の封鎖と、避難誘導の手配を……!」
 走る足は止めぬまま。ユリアはインカムでSALF支部へ連絡する。
 ユリアの視界に映る蟹型は、今にも逃げ遅れた一般人の一人に、その凶悪な大鋏を振り下ろそうとしている。
「させないわ! トリテレイア!」
 護りの力たるアリーガードを発動させ、ユリアは瞬時に蟹と一般人の間に割って入る。
 左腕に装着したスピラルバックラーで、大鋏の一撃を受け流す構えだ。
 果たして、三つの螺旋の描かれた小盾が、アリーガードで強化された防壁の堅牢さも相俟って、振り下ろされた大鋏を外へと大きく弾き飛ばした。
 己の右腕に引っ張られるような格好で、蟹の体勢が大きく右へと崩れる。好機だ。
「もう安心よ?」
 背中に護る一般人に、優雅な微笑を向けると。
 ユリアは右手の大剣にIMDのエネルギーを集中させる。
 ――ブレイズソード「ビクトリア」。
 柄には薔薇の如き飾りがあしらわれ、真っ赤な刃には茨の紋様が走る。
 長大ではあるが、武骨とは真逆。
 しなやかな曲線を描くその片刃は、女性の体の線すら連想させる優美さ。
 破天荒で知られるジョゼ社社長の会心の作である長剣の刃が、ユリアの思念を受けて煌々と燃え盛る炎の幻影を纏う。
「一撃で、決めてあげるわ!」
 ユリアの揮う薔薇の炎刃が、蟹の巨体を斬り上げる。
 その一撃は、まさに苛烈。
 トップクラスのライセンサーであるユリアは、驚くべきことに、並のアサルトコアすら上回る威力の攻撃を生身で繰り出す。
 分厚い装甲をあっさり二つに裂かれ、蟹の巨体の上半分がゆっくりと崩れ落ちる。
 両断された『悪夢』の亡骸は黒い靄となって融け消えた。
 腰を抜かして座り込んでいた、先刻ユリアに助けられた一般人は、彼女の鮮やかな戦いぶりに思わず見蕩れていた。
 そして、次なる標的を目で追うユリアの視界には。己の剣の間合の遙か彼方で、蠍の鋭い尾の先端が、今まさに一人の一般人を刺し貫こうとしている様が映る。
 一見、絶望的な状況。
 だが、誰一人犠牲者を出さずに事態を収拾させるべく、ユリアは迷わず長剣を揮う。
「レモン色の熱情、美脚でお届けよ! シトラス・アーク!」
 炎刃から生じた衝撃波を、ユリアは華麗に宙を舞い、そのしなやかな脚で蹴り飛ばす。
 エクストラバッシュの直撃を受け、根元から切断された蠍の尻尾が路上に落ちる。
 そのままユリアは蠍に向かって走り、大きく跳躍する。
 尾を失い暴れる蠍の頭上から、落下の勢いをも乗せた炎刃が迫る。
 苦し紛れに蠍の揮った鋏が、ユリアの防壁を僅かに損傷させるが。
「咲け、秘薬の花弁! エキナセア!」
 ユリアが自らに向けて発動させたヒールにより、防壁の損傷はたちまちに修復される。
 ずぶり。
 確かな手応えと共に、ユリアの炎刃が蠍の心臓部を刺し貫いた。
 苦悶の声を響かせながら、蠍の体もまた、黒い靄となって消えてゆく。

 蠍の背に乗る格好になっていたユリアは、蠍の消失と共に、軽やかな身のこなしで着地。
 すると、いつしか逃げ惑うことすら止めてユリアの戦いぶりに目を奪われていた周囲の人々から、一斉に盛大な喝采が巻き起こった。
 モデルでもあるユリアにとって、衆目に晒されることは日常だ。
 ユリアは動じることも照れることもなく、悠然とその喝采を受け止め、人々に笑顔を向けてみせる。
 そもそも自分はゼルクナイトでありセイント。
 誰かを守る為に戦うことこそ、自分の得手とするところだ。
 喝采に包まれながら、ふと、ユリアは思う。
 今は亡き、大切な弟。
 弟は先天的な適合者で、小学生の頃は、同学年の子から苛められがちだった。
 自分のこの適性は、もしかしたら、姉として、そんな弟をずっと守り続けてきた影響なのだろうか……と。


━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

こんにちは、黒岩かさねです。
納期ぎりぎりのお届けになってしまいまして、申し訳ありません。
お待たせしてしまったのに見合う出来になっていれば良いのですが……。
前半の日常パートは、なるべく可愛らしく。
後半の戦闘パートは、なるべく凛々しく。
そんなイメージで描写してみましたが、如何でしょうか。
ご期待に応えられていれば幸いです。
もしイメージと違う部分などありましたら、どうぞリテイクをお気軽にお申し付けください。
このたびは、ご依頼ありがとうございました。
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黒岩かさね クリエイターズルームへ
グロリアスドライヴ
2019年06月03日

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