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『Off Stage 』
各務 千隼la0276)&ディディエ・ディヴァインla0674

 楽屋から飛びだした各務 千隼(la0276)は、廊下に背を預けてやっと立っているスタッフ女子の手を取った。
「なにがあったんです?」
 低くやわらかい声で問う。
 その音でわずかに落ち着きを取り戻した彼女は、いきなりナイトメアが会場へ現われたこと、千隼を除く演者と観客は避難を開始していること、SALFへの連絡は終えていることを答える。
「中にはまだお客さんが残っていますよね。スタッフのみなさんは出口で誘導を」
 怯えた目で、各務さんは? と聞き返してくる彼女。
「元ですが、俺はライセンサーです。SALFの応援が来るまでくらいの時間は稼げます」
 楽屋を飛びだしてくるとき、無意識に引っ掴んできた魔導書「沈黙の予言」を掲げてみせ、千隼は駆け出した。
 ほんの少しの間、昔の俺へ戻る。大切な人たちをこの手で護るために。
 しかし。この魔導書は本来、SALFへ返さなければならないものだった。細かな仕組みは理解していないが、適合者とはいえSALFを抜けた自分に扱えるものか。それができたとて、ただひとりの力でナイトメアを押しとどめられるのか。
 ――演技はイメージだ。演技が人に俺じゃない誰かを魅せる「魔法」なら、イマジナリードライブはナイトメアに俺じゃないライセンサーを幻(み)せる「魔法」。だから俺は演じきる。大切な人たちを護る魔法使いを。
 意を決した彼の胸元で、懐中時計は変わらずに時を刻み続けていた。
 体へ伝うその音に、友のくれた「千隼なら大丈夫」を思い出し、彼は脚にさらなる力を込める。


 会場へ駆け込んだ千隼は、取り残され、恐慌のただ中に立ち尽くす観客へ呼びかけた。
「僕が君たちを護るから、順番に出口へ!」
 ステージへ立つために学んだ舞台芝居の発声法。“伯耆原エリク”を映した声音は、会場を闇雲に破壊しつつ迫るナイトメアの喧噪を貫き、人々へと降りそそいだ。
 ナイトメアの種別はマンティス。Sサイズとはいえ全高は人を大きく越える。群れでないことが唯一の幸いというやつだ。
「準備はいいかい、シニョリーナたち? ――伯耆原エリク、オンステージ!」
 最高の笑みを閃かせ、最後にキャスト全員で歌うはずだったゲームのテーマ曲を歌い上げる。
 その歌声で、観客たちは魔法から解かれたがごとくに動き出して。
 それを背で見送りながら、千隼はさらに踏み出した。少しでもマンティスを観客から離さなければ。
 外へ引っぱり出せば二次被害を引き起こす危険性が高い……ここで押し止める!
 イメージを込めて書を繰れば、沸き立つエネルギーが超加速してマンティスへと飛んだ。
 硬い外殻をレールガンに削られたマンティスが、その2対の足を後じらせる。
 間髪入れず、スキルを撃ち込む千隼。前衛がいない以上、出し惜しみはしていられない。
 これなら時間稼ぎくらいは!
 しかし、千隼の希望は数秒で打ち砕かれた。
 会場の壁をぶち破り、さらなるマンティスが踏み入ってきたのだ。
 会場からの避難はすでにほぼ終わっている。あと少し押しとどめられれば、希望へ繋ぐことができるはず。
「やるしかない……な」
 スキルを撃ち尽くした後は、この身を喰わせてでも時を稼ぐ。奥歯を噛み締めた、そのとき。
「やるしかないって? いらないクソ覚悟決めてる暇あんなら、クソでもなんでもいいからあと一秒生き延びる手ぇひり出しな!」
 自らの身の丈と同じほど長く、そして重いデザイアアックスを片手で振り込み、新手のマンティスを背後から打ち据えた老女が吐き捨てた。
 この豪放の内に慈母のごとき優しさを隠した声音は。
「ディディエさん……どうして!?」
 振り向いたマンティスの顎を重刃のフルスイングで殴り飛ばし、ディディエ・ディヴァイン(la0674)は軽く言葉を返した。
「出動要請あったからね。ま、大事な用があって近くまで来てたんで、ほかの連中よか先に着いちまったのさ」
 面を傾げたままマンティスが斬り下ろしてきた鎌を柄で受け止め、柄頭まで流して払い落とした。剛柔併せ持つその戦技はまさに老獪である。
「方向はあれだけど覚悟は買うよ、声変わりの。アンタが生きるって決めた世界を護ろうって覚悟はね。その志は引き受けた。後は戦うしか能のない婆に任せときな!」
 床に突き立った鎌の先を踵で蹴り押さえ、そのままマンティスの前肢を駆け上るディディエ。瞬時に敵の眼前まで至った彼女は憤怒に燃立つ金瞳をすがめ。
「孫が世話になったねぇ――ぶっ飛びな!!」
 眼へ押し当てた斧刃を、思いきり体をひねって引き流した。
 かくて右眼を斬り潰されたマンティスが体を泳がせ、声なき悲鳴をあげる。
 ち、両眼はもってけなかったかい!
 落ちながら胸に斧刃の腹をあてがい、横合から突っ込んできたもう1体の鎌をガードしつつ、舌を打つ。このまま落ちれば確実に追撃をもらう。その間に片眼を失くしたマンティスも体勢を立てなおして襲ってくるはずだ。
 しかし。追撃に出ようとしたマンティスの肢が折れ砕け、がくりとのめった。
 背を下にして落ちたディディエは見る。書を繰り、レールガンを撃ち放した千隼の姿を。
「俺も……戦う。……いっしょ、に」
 役のペルソナも声優のペルソナもなく、千隼は素顔で告げる。
 千隼が声優への転進を決めたとき、誰よりも彼を気づかい、その背を押してくれたのはディディエだ。その人に、道を違えた自分の先を押しつけるなどできようはずはない。
「そうかね」
 平らかに応えたディディエは立ち上がり、マンティスどもとの間合を測る。
「だったらアンタの世界、自分の手で護ってみせな」
 口の端に浮かぶ笑みを背で隠し、踏み出した。

 ディディエという前衛を得たことで敵との距離が取れるようになり、視界が拡がった。
 千隼は二体にディディエが挟撃を受けないようポジショニングを移し、知覚攻撃を繰る。
 考えろ。残されたスキルを最大活用する方法を。自らへ言い聞かせ、マンティスの連携へ視線をはしらせた。
 肢を1本損ない、動きの鈍った個体がディディエを攻め、その間にもう1体が回り込んで追い立てる。意外なほど理にかなった戦術だ。
 だが、理にかなっているからこそ、崩すのは難しくないってことだ。
「……前は、俺に!」
 あいかわらず言葉が足りないねぇ。年の功がなきゃ察してもやれないハナシだよ。
 胸中で苦笑を漏らし、ディディエは前から攻めてくる三本肢のマンティスに背を向け、片眼のマンティスと対峙した。
「婆と遊んでもらおうか」
 潰れた眼の側から攻めるのがセオリーだが、あえてそちらへは向かわない。普通の虫ですら弱点を補うために手を尽くしてくるものだ。それに千隼が三本肢へなにかをしかけるつもりなら、その間合を離れることなく、自身へ引きつけておくべきだ。
 だからこそディディエは踏み出さずに両足を踏み止め、斧を大上段に振りかぶった。
 さあ、来なよ!
 全速で駆け込み、ディディエを両の鎌で抱きかかえにくるマンティス。振り下ろされた斧が最高速に達する前にこちらの動きを止め、着実にしとめる腹づもりなのだろうが、しかし。
 ディディエは確かに斧を振り下ろした。いや、真下へ引き下ろしたのだ。それによってマンティスは斧刃へ突っ込み、さらにはディディエを抱きかかえたことで胸部の外殻へ刃を食い込ませることとなり――
「はっ。いらっしゃいませってね」
 ディディエは斧の裏へ割り込ませていた膝を、渾身の力で押し出した。ゼロ距離からの勇猛なる行進がマンティスの胸を押し割り、鎌の抱擁から逃れ落ちた彼女の傷を癒す。
 もちろん、三本肢もただそれを見ていたわけではない。ディディエが同胞に抱きすくめられたと同時、彼女の背へ踏み出していたが。
 動けなかった。
 肢を縫い止められていたせいで。
「ディディエさんの、おかげで……うまくできた」
 腹の下から淡々と、千隼の声音が伸び出してくる。
 彼は待っていたのだ。ディディエが片眼を止め、三本肢がその背に意識を奪われる瞬間を。
 千隼が放った凍り閉ざす銀は、頭上から氷槍を降らせるスキルである。
 だからこそ彼は、スライディングで三本肢の下へ滑り込んだ。自らの“頭上”を低く保ち、敵の視界に槍を映さぬがため。
 その下から抜け出した千隼は、書を薙いで深く傷ついた肢を打ち据えた。
 と、次の瞬間――2本めの肢を砕かれたマンティスはバランスを崩し、床に腹を落として。
「……終わりだ」
「終わりだよ!」
 レールガンで裂かれた腹を重刃でかき回されて引きちぎられ、その動きを止めた。
「あと、1体」
「回りくどいのは性に合わないんでね、まっすぐ行かせてもらうよ」
 言い残して轟然と踏み込んだディディエに対し、残された片眼は慎重だった。
 先の千隼の槍は、片眼の肢をも傷つけていた。肢を止められれば胸の傷を抉られ、屠られる。動きながら攻め立てるよりない。
 残された眼から獲物どもが消えてしまわないよう、斜め後ろへ退きながら鎌を突き込む。距離を詰められぬことを第一に。
「だめだね。アンタもう、終わっちまってるんだからさ」
 ディディエは踏み込んでいなかった。右足をただ前へ置いただけ。片眼のみのマンティスは正確に測れなかったのだ。獲物と自分との距離を。
 突き込んだ鎌が伸びきって、体が硬直し、肢が止まる。
 あらためて踏み込んだディディエの斧をかわす術はもう、片眼にありはしなかった。
「おおっ!!」
 膂力と遠心力、さらには斧の重量を吸い込んだパワークラッシュの旋風が、片眼の防御の鎌ごとその胸を叩き割り。
「……横に」
 ディディエが横へ転がった次の瞬間、千隼は咲き乱れる赤を燃え立たせ、片眼を業火の底へ崩落させた。


 SALFから派遣されてきたライセンサーと協働し、一応の後始末を終えた後。
 千隼は半壊した会場のロビーの片隅、魔導書を前に置いて正座を決めていた。
「ライセンサー辞めた子がなんでEXISなんて持ってるんだろうね?」
 ディディエの言葉に顔をうつむかせ、冷や汗をしたたり落とす。
 考えていなかったわけではないのに、忘れていたのだ。EXISを持つ資格があるのはライセンサーのみ。だからこそ、その特権へのバッシングはありつつも、世界の平和は保たれている。
「その……仕事の関係者に、話を……するまで、逮捕は……」
 公になってしまった以上、責任は取らなければならない。だとしても、スタッフや共演者に事情を説明して、かける迷惑を最小限に留めたい。職業人として最低限の務めだけは――
「決まってんだろ。ライセンサーだからだよ」
 え?
 思わず顔を上げた千隼を待ち受けていたのは、ディディエの人の悪い笑顔。
「退職届はね、途中で止められてんのさ。ライセンサーってのはそれだけ貴重なんだ。予備役扱いで、ヤバイときにゃ駆り出されんだよ。そうでなきゃ、あたしはともかく後から来た連中が見逃してくれるわけないだろ」
 識別コードが生きていたからこそ、千隼は協働するを受け入れられていたわけだ。
 と、ここでディディエは決まり悪そうに目を逸らし。
「でね、あたしの大事な用なんだけどね。実はさ」
 おずおずとポケットから引き出された1枚のチケット。そこに刻印されていたタイトルはそう、『Legend Star☆Project』3rdライヴ。
「ディディエさん……俺の、こと」
「たまたまだよ、たまたま!」
「……でも、それは、前売り券……」
 ディディエは髪を掻きむしり、息をついて観念し。
「様子見てやろうって思ったんだけど、ちょいと前の任務が押しちまってね。で、やっと着いた途端、ナイトメアのご登場だろ。見損ねちまったよ」
 わかっているつもりでわかっていなかった。道を違えることは別れなんかじゃないんだと。大切な人は、いつだって俺のそばにいてくれる。
 千隼は立ち上がり、心を整えて。
「Buona sera。僕の歌で、美味しい笑顔にしてあげる」
 ソロ曲を、アカペラで歌いあげた。
 ディディエへ、今ある自分のすべてを伝えるため、思いの丈を込めて。
 このときの千隼は気づかない。自分の顔に浮かぶ、少しぎこちなくも美しい笑みに。
 それをあたたかな目で見やっていたディディエだが、意を決したように腰の後ろからタオルを引き抜いた。
「コンサートってのはさ! こうするって聞いたんでね!」
 手縫いで“CHI・HA・YA”を刺繍したタオルを拡げてみせ、耳まで真っ赤にした無表情で振り回し始めた。
 そんなディディエの不器用な情を受け止めて、千隼は誓うのだ。
 次は俺が会いに行くから。別の道を同じように進む、大切な人たちへ――
 
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2019年06月10日

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