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『愛の宿る場所 』
ユリア・スメラギla0717)&霜月 愁la0034

 ユリア・スメラギ(la0717)と霜月 愁(la0034)が付き合い始めてからもうすぐ3ヶ月になる、ゴールデンウィークの頃。
 ユリアはライセンサーとしての依頼とモデルの仕事をこなす忙しいスケジュールの合間を縫い、愁を誘って旅行に来た。
 1泊2日の、温泉旅館でのデート。

 連休中とあって旅館内は人で賑わっていたが、現在は宿泊する和室で2人きり。
 先程仲居さんが運んできた夕食の膳に、ゆっくりと舌鼓を打っている。

「旬の山菜料理と魚のセットね」

 ユリアは嬉しそうに言って、刺身をぱくり。
 愁はそんなユリアの様子を見て微笑み、自分も刺身を口に運んだ。

「はい、美味しいです」

「愁君と一緒に食べているから、さらにデリシャスに感じちゃう」

 そう言ってユリアが隣に座る愁にウインクをする。
 愁は少し顔を赤くして、もぐもぐと口を動かした。

 初心な恋人の様子を微笑ましく思いながら、ユリアは「そういえば」と話題を変える。

「SALFもカップルが増えてきたわ。身近な相手がくっつくと、お祝いも弾むわね」

「確かに、カップルが増えましたね。幸せいっぱいです」

 それからしばらく2人は、身近にいるカップルについて話をした。
 彼ら彼女らがどのような様子だったかを情報交換し、幸せそうであることを聞いては微笑みあう。
 恋人がいることの喜びを知る2人であるから、その喜びを友人も感じていることが素直に嬉しいのだ。

「これからも恋のディスタンスを上手く測って、仲良くラブを育んでほしいわ」

 ふとユリアが言葉を漏らす。

「恋の距離ですか?」

「そう。恋のディスタンスは、近すぎても遠すぎてもダメなの」

 愁はユリアの言葉の意味を考えた。
 近すぎても遠すぎても駄目になる、恋の距離。
 自分とユリアの距離はどれくらいなのだろうか。

「……僕達なりの距離で、共に歩んで行きたいですね」

 考えた末、愁は自分の結論を声に出す。
 ユリアが柔らかく微笑んでくれたので、愁は見惚れてから笑顔を返した。



 夕食が終わり膳も下げてもらって、2人で手を繋ぎながらのんびり過ごす。
 しばらく休んでから、そろそろ温泉へ行こうかと、タオルや着替え用の浴衣を持って部屋を出た。

 廊下を並んで歩き、男湯と女湯の分かれ道である広間に至る。

「上がったら、ここで待ち合わせでいい?」

「構いません。ゆっくりと温泉を楽しんできてくださいね」

 しばしの別れに、愁は少しだけ寂しそうに微笑む。

「愁君もね」

 ユリアは数秒思案してから、恋人の顔を覗きこんでみる。
 不思議そうに見つめ返してくる愁に、触れるだけの口付け。
 すぐに顔を離すと、きょとんとしている愁の顔が見えた。

「うふふっ、サプライズキスよ……♪」

 ようやく思考が追いついたのか、愁の頬がかあっと赤くなる。
 はにかみながらもどこか嬉しそうな愁の反応に、ユリアも温かな気持ちになった。

「いきなり混浴は刺激的かな……。あたしは全然OKよ?」

「も、もう、からかわないでください」

 愁の顔がさらに赤く染まる。
 ユリアは蠱惑的に微笑んでから、手を振り、女湯ののれんをくぐっていった。

 少しだけ、離れ離れ。



 男湯にて、体を洗ってから温泉に浸かった愁は、1人で思考に沈んでいる。

(恋の距離って何なのだろう。ユリアさんと僕の間の距離はどれくらいなのだろう)

 考えるのは、夕食を食べながらユリアが漏らした言葉のこと。

(ユリアさんと僕の距離。物理的には、今は数十メートルかな。もっとずっと遠いこともあれば、さっきみたいにゼロになることもある)

 サプライズキスを思い出し、愁は恥ずかしげに微笑んだ。

(未だに、あんな綺麗で強い人と恋人なんて信じられない時があるけど。僕はもう、1人じゃない)

 そこまで考えてはっとした。
 物理的には離れているかもしれないが、愁は確かに「1人じゃない」と感じている。
 この気付きは大事なことのような気がして、しっかりと自分の記憶に刻んだ。

(そうだ、僕はもう1人じゃない。僕を選んでくれたユリアさんのためにも、もっと強くなりたい)

 つらく孤独な時間を過ごしたこともあったが、今の自分の隣にはユリアがいる。
 愛する人と共にいるために、もっと強くなることを心に誓った。



 時を同じくして、ユリアも美肌効果のある温泉に浸かっている。
 ほどよい温かさに包まれながら考えるのは、自分のことと愁のこと。

(……あたしの価値観の中心は死んだ弟の復讐から、愁君と共に過ごすことへ変わっていった)

 目を瞑れば、これまで一緒に過ごしてきた愁の顔が思い浮かぶ。
 ユリアの心の中のポートフォリオは、愁との思い出で満ちていた。

(一人の女としての幸せを、愁君から一杯貰った……)

 ポートフォリオの中にある、愁と過ごす自分の姿。
 どれも自然に微笑んでいる。
 幸せで彩られたポートフォリオのページをこれからも増やしていきたい。

(愁君に、もっと美しく艶やかなあたしを見せたい……)

 自分の告白を受け入れ、今も隣にいてくれる愁のために。
 ユリアはこれからも自分を心身共に磨くことを心に誓った。



 温泉を堪能し終え、浴衣に着替えた2人は再会を果たす。
 連れ立って歩き、和風の庭へ出た。
 温泉で温まった2人を夜風が優しく撫でる。
 周囲に人の姿はないようだ。

 静かで平和なひとときを、和やかに恋人と過ごす。
 だから逆にだろうか、ナイトメアのことが急にユリアの脳裏に浮かんだ。
 手を固く握りしめながら、決意を込めた声で語り出す。

「あたし達が幸せに語らう最中にも『悪夢』に苦しめられる人達がいる……。あたし達で、助けないとね」

「助けましょう。これ以上の悲劇を生まないためにも」

 2人とも真面目な顔で頷きあった。
 自分1人ではおそらく成し遂げられない。しかし、最愛の恋人と共にであればきっとできる。
 言葉に出さずとも、お互いを信頼している心は通じ合った。

 そっと夜風が2人の浴衣を揺らした。

 ユリアの表情が緩む。愁を見つめ、恋人だけに向ける甘い微笑みが浮かぶ。

「あたしの愁君への想いは揺らがない。あたしの守るべき人であり、守って欲しい人……」

「はい。この先何があっても、僕はユリアさんと共に在ります。たとえ体は離れることがあっても、心はいつも共に」

 愁は静かに左手を伸ばした。ユリアの右手に自分の手を重ね。指を絡めるように握る。

「愁君……!」

 愁の方から触れてくれた嬉しさでユリアの心が満ちる。
 自分も手を握り返し、愛のままに愁を抱き寄せた。
 愁の腕もユリアの背中に回り、優しく抱きしめる。

 月だけが2人を見ている中、ユリアは愁にそっと顔を近付けた。

「ん……っ……」

 入浴前のサプライズキスとは違う、深いキス。

「もっと、もっと……大好きな人と、長く情熱的なベーゼを交わしたいの……」

 ユリアはあふれる愛を分かち合おうと、愁と口付けを続ける。
 愁はまだ不器用ながら、ユリアからの接吻を受け入れる。
 それがまたユリアは嬉しかった。

 2人の唇が離れ、それでも変わらず抱きしめあったまま。
 ユリアはそっと囁く。

「これからも、大好きよ……愁君」

 ユリアの温かな体温も、少し弾んだ吐息も、全てが愁への愛を物語っている。
 愁の返事はすぐに放たれた。

「僕も、大好きですよ!」

 湯冷めする暇もないくらいほてった体で、2人は再び強く抱きあった。


━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
 愛に満ちているユリアさんと愁さんのご様子を感じていると、私まで嬉しくなります。
 どうかこれからも2人の思い出を重ねていってください。
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2019年06月11日

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