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『今のカレを作ったかつての話 』
ロベルla2857

「……あの日も、今日みたいに雨が降っていたな」
 ぼんやりと空を見上げながら、ロベル(la2857)が呟く。
 これは、ロベルが今よりもまだ「子供」だったころの話――……。

※※※

 孤児院を14歳で抜け出してから2年ほどが経った頃、ぼんやりとしながら空を見上げていた。
 気づけばいつの間にか雨が降り始め、ぽつり、ぽつりと頬を濡らす。
(まるで泣いているようだな)
 気楽な男妾生活をしながらも、どんよりとした空が今の自分を現しているようで笑えた。
「ねぇ、ウチにいらっしゃいよ」
 いつものように、見知らぬ奴に声をかけられ、宿代わりとしてベッドや飯を提供してもらう。
 たいていがその見返りを求められるが、ロベルはそれが苦ではなかった。
 相手が女でも男でも、寝食できれば一晩相手になればいい。
 そんな考えしか持っていなかった。

「あなた、ウチに置いてあげましょうか?
 いつものように一晩だけの相手と思っていたが、意外にも女から提案された。
「……置いてあげましょうかってどういうこと?」
「別に深い意味はないわ。お互いに相性がいいでしょう?」
 女の言葉に、ロベルは(確かに)と心の中でつぶやく。
 身体の相性だけではなく、性格も似ているせいか、女のそばは居心地が良かった。
「あんたがそれでいいなら」
「決まりね」
「じゃあ、名前――」
 自己紹介をしようとした時、女の細い指が唇に当てられる。
「恋人でも何でもないんだもの、お互いの素性は知らないままにしましょう」
「……別にいいけど」
「それより、あなた料理上手なのね。私じゃここまではできないわ」
「別に普通だと思うけど?」
 他の奴らの時と同じように朝食を用意していると、女から嬉しそうに言われた。

※※※

 女との生活は16歳の頃から始まって、18歳の現在まで続いた。
 一緒に暮らしているからと言って、別の相手と寝てはいけないわけではない。寝食の場が提供されている分、金を稼ぐことに集中できたし、18歳になった頃にはそれなりの金を貯めることができた。
(なんとなく惰性で一緒にいるような感じになってるな)
 男女だからやることはやるけど、最初の頃のような居心地の良さはない。
(そろそろ、終わりなのかもな)
 居心地が悪いわけではないが、ここにとどまる理由を聞かれても困るくらいないのだ。
「そろそろかしら」
「え?」
「惰性にも飽きたでしょ?」
 女の言葉はまるで自分が言ったかのように、すごく自然なものに聞こえた。
「……あぁ」
「じゃあ、終わりね」
 こうして、俺たちの関係は突然に、そして簡単に終わったのだ。
(……そういえば、始まりも簡単なものだったな)

※※※

 女のところから出て、しばらく経った後、一緒に暮らした場所に行ってみた。
 別に未練があったわけじゃない。女に会いたかったわけでもない。
 ただ、何となく足が向いただけ。その程度だった。
「……」
 ふたりで暮らしていた部屋は既に引き払われていて、無人になっていた。
「まるで、最初から何もなかったみたいだな」
 18歳まで続いたゆるゆるとした関係、それをかたどるものはすべてなくなったのだ。

※※※

「あの日々があったから、今の俺がいるのかもなー」
 金を貯めることができた、その点に関してはあの女のおかげと言っても過言ではない。
 もう一度会いたいわけではないし、向こうだって会いたいとは思っていないだろう。
「……俺は、あの頃から変わらない。適当に生きて、適当に逝くだけさ」
 タバコの煙を吐きながら、再び空を見上げる。
 あの頃の若かった自分を思い、自嘲しながら――。

 空は、そんなロベルを見ているかのように一層強い雨を降らせるのだった。

―― 登場人物 ――

la2857ロベル人間男性23歳ゼルクナイトスナイパー

――――――――――
ロベル 様

初めまして、水貴透子です。
諸々の事情がありまして、遅延してしまったこと大変申し訳ございませんでした。
キャラクターなどとても楽しく拝見しながら書かせて頂きましたが、素敵なキャラクターを崩していないかドキドキです。
今回はかっこいいキャラクターを書かせて頂き、ありがとうございました!

2019614

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水貴透子 クリエイターズルームへ
グロリアスドライヴ
2019年06月17日

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