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『桜が芽吹いた先もずっと 』
不知火あけびaa4519hero001)&日暮仙寿aa4519

 店員に案内されたのはレジ前で頼んだ通り、奥まった場所にあるテーブル席だった。出入口に近い側に座ると位置をずらし窓際に落ち着く。メニューを手に取った日暮仙寿(aa4519)の眉間に僅かながら皺が寄った。怒っているわけではなく、迷っているのだ。
(苺パフェでも頼むか……? いや、初対面の相手と会うときにそれもどうなんだろうな)
 思いながら、きっちり締めたネクタイの結び目に指をかける。仕事ではないが無関係でもなくしかし堅苦しく接するのも他人行儀に感じて、信用を得られなさそうだ。まだ社会人一年目だ、見た目と服装が釣り合っているとは正直思えなかった。結局のところ相手の感性次第だが。せめて約束を取り付ける際にさり気なく探りを入れるべきだったか。と何度目かの今になって反省する。ここがファミレスというのも中途半端だった。
 ぱらぱらと紙を捲りつつ、左手首に巻いた腕時計に目をやる。アポを取った相手はさておき、隣に座る筈の婚約者――桜が満開を迎える頃には妻になっている――のことがどうにも気がかりだった。戦いでは追い越し追い越され切磋琢磨の日々を送っていたこともあって、実力を不安に感じたことは一度もなかったが、戦場を離れた彼女ときたら“普通”に大概疎い自分が言うのもなんだが、突っ走っては派手に脱線したりと危なっかしくてしょうがない。流石に今の彼女にちょっかいをかける不届きな男はいないと信じたいが。
 いくら考えたところで答えが出ないのなら、いっそ開き直って己の欲望に忠実になろう。別に誰に咎められる好みでもないのだし。音を立ててメニュー表を閉じると、仙寿は未だに湧き上がる羞恥心を誤魔化そうとしてやけに真剣な面持ちになりながら、パフェとジュースを注文した。

 約束の時間より十分ほど早く待ち合わせた人物がやってくる。挨拶し、手で促すと二人は仙寿の対面に並んで座った。中央が余所余所しく開けられているのを見るだけで、距離感が垣間見える。男性の方がちらりと横目で女性を見やり、それからこちらに向き直った。一方の女性は顔を伏せたまま、如何にも萎縮しているように見える。仙寿は両者を密かに観察したのち、口を開いた。
「それで、早速ですが改めて話を伺っても?」
 就職先は勝手知ったるH.O.P.E.といえども、社会に出て一職員として責務を負うからには上っ面も込みの誠意を示さなければならない。努めて丁寧な喋り方で促せば、男性ははい、と神妙な顔で頷いた。目の前のグラスを脇に避け真剣に聴く態勢を取る。
 男性が能力者で女性は英雄という二人は恋人同士でもあった。しかしながら現在は喧嘩の果てに女性がそれすらも拒むような、冷めた関係へと変わってしまっている。そんな状況だけを考慮するなら部外者の仙寿たちが介入する理由はない。元々知り合いでもないし、言い方は悪いが能力者と英雄の実情を知るのが目的なので、今直ぐに何とかしようと気負ってもいない。そもそも人にとやかく言える程の経験もない若造だ。ただ、最適解を見つけられずともなるべく寄り添いたいとは思っている。未来をよりよく変える為に今を犠牲にしていい道理はないのだから。
 邪魔をしないよう相槌を打つのに留めていると、不意に男性の言葉が途切れた。場を繋ぐ為に何か言おうとして思いつくよりも先に女性がぽつりと、喧騒にぎりぎり掻き消されない小ささで呟く。――どうして私はここに来てしまったの。それを聞いて、男性が苦しげに表情を歪める。仙寿もかけるべき言葉を見失い、ぐっと唇を噛み締めた。
 仙寿自身も周りの友人も最初は英雄と誓約を交わし、一緒に生きていくことに多かれ少なかれ戸惑いがあったし紆余曲折も経た。しかしそれは愚神然りヴィラン然り、自分たちにしか対抗出来ない脅威があったことで衝突しても気持ちを切り替えなければならず、仙寿の場合は共鳴時に心持ちが変わって、彼女の考えを素直に受け取れたのも大きかっただろうと思う。王との戦い、更に因縁の一言では片付けられない相手との真剣勝負の決着。それらが年月を超えた絆を縒り合わせた。
 王が亡き今、新たな愚神も英雄も出現が確認されなくなった。それは裏を返せば直前までは現れていたということだ。女性もそうだった。
 残党は未だいるが、総数は着実に減りつつある。対応に当たるのもこれまでに多くの経験を積んできたエージェントが殆ど。新人の教育育成は部署としての体裁がようやく形になり始めた段階だ。現実問題、エージェントと依頼者双方の意見を纏めれば経験者優先が妥当ではある。しかしそれは帰る宛のない英雄の居場所を失わせることに繋がり、更には世間の反応や法律も絡み合う。
(俺たちへの偏見はまだなくなっていやしない)
 世界を救った存在と持て囃されている反面で、その超常的な力の矛先が何処に向けられるのか危惧して恐れたり、デマをばら撒いて差別を誘発したりと稀だが決して無視出来ない事例があるのが現実だ。それに婚約者は高認試験を受けて同じ大学に入ったが教育や就職に関する法も未だに不透明なまま。H.O.P.E.の権力に依存している現状を正常化するのは急務といえる。とはいえ多くの英雄と関わりを持つ機関が率先し推し進めるべきなのも事実で、かくいう仙寿もH.O.P.E.の法務部に籍を置いているのだが。
「H.O.P.E.を通してになりますが仕事の斡旋は可能です。……もし望むなら戦うことも近い内には」
 流石に今直ぐに、とはいかない。だが絶対に実現を果たす――と、人知れず拳を握った。
 不意に視線の先、テーブルに影がかかって仙寿は顔を上げる。ごめんねと言って息を切らす姿に思わず人前なのを忘れた。

 ◆◇◆

 ぽかんと口を開けたかと思えば他人には冷たく感じるだろう相貌がにわかに色めき立つ。立ち上がりこそしないものの身を乗り出す彼に不知火あけび(aa4519hero001)は普段ならいざ知らず、今ばかりはつい足を一歩後ろへと引いた。
「無理はするなって言ってあっただろっ!」
「し、してないってば!」
「嘘つけ、どのみち遅れてるんだからゆっくり来ればよかったんだ」
 一度言葉を切り、息をついて額を押さえると仙寿は小さな声で呟いた。
「……頼むからもう少し自覚を持ってくれ。心臓が止まるかと思ったぞ」
「……うん、ごめんね」
 実のところ本当に無茶はしておらず、服を必要以上に着込んだせいで汗をかいてしまっただけだったがいちいち弁解するのも気が引けた。というか怒っていてもそれが愛情に端を発するものだと知っているから嬉しさが先に来てしまう。今では恋仲としての自分たちも当たり前になり、友人には笑顔でバカップルと揶揄されているくらいだ。結婚したら暫くは言われなくなるかもしれない。
(それはちょっと、残念かも)
 と内心思いつつ、呆然とした顔の男女に気付いて我に返った。慌てて会釈程度になってしまうが頭を下げる。
「遅れてしまってすみません。話は彼から聞いていました。私は、えーっと」
「婚約者」
「婚約者のあけびです」
 並々ならぬ面映ゆい響きに顔が熱くなるのを自覚しつつ、仙寿が出した手に手を重ねて腰を下ろした。学部は違えど同じ大学に通い、成人し、就職してからはスーツ姿も板についてきたとあけびは思う。仕事場も同じだがこれから何ヶ月かは離れざるを得ず、浮気は心配していないが、自分の与り知らぬ所でモテるのは目の前でそうなった時とは違うモヤモヤがある。充分過ぎるほど世話を焼いてくれているが、嫌がられない程度に家では甘え倒そうとこっそり決意した。
 遅れてしまったぶん、話は進んでいただろうし、繰り返しになるのは申し訳なかったが、本人の口から聞くことに意義があると初めから話してもらうことにした。男性の話は事前に仙寿から聞いていた通り。
「あなたはどう思っていますか?」
 質問されると思っていなかったようで、え、と女性が戸惑いの声をあげる。視線が上向いて目が合い、あけびは微笑んで瞼を伏せた。
「今、自分が何をしたいのか、どう生きたいのか。それが一番大事じゃないかなって私は思います。勿論誰かを傷付けるのは論外ですけど、でも、大切な人には少しくらい迷惑をかけたっていい。相手も同じように思ってくれているならそれは、とても嬉しいことだから」
 胸に当てていた手を下ろし、目を開けると隣の仙寿を見つめる。吊り目がちな瞳を細めて彼も笑い返してくれた。頷き、視線を正面へ戻す。困惑したまま、男女は互いを見つめ合った。やがて言ってほしいと男性が切り出す。その腕が伸ばされ、テーブルの下で手を取るのが分かった。男性に引き摺られるように見ている方まで緊張してくる。女性は唾を飲み込み、それから本心を打ち明けた。
 戦いに関する記憶しかないことや男性との出逢いが嬉しかったこと。段々惹かれていき、しかしエージェントの活動を始める前に王が倒れ目的を失って共鳴出来なくなった。自らの存在意義を見出せず、自暴自棄になって男性を遠ざける。いっそ誓約を違え消えてしまいたいと願う程。側にいたい、けれど何をすればいいのか分からない。そんな感情はあけびにも覚えがあるものだ。最初は散々に衝突した。平気な顔をしてやり過ごしたあと友人に慰めてもらったことも幾度となく。――今となっては笑い話だ。
「どれだけ大切に想っている相手でも結局別の人間です。他人だから分かり合えずぶつかって、それでも向き合わなきゃ、分かるチャンスすら見つからなくなる。勿体ないことだと俺は思います。出逢ったのは偶然でもお互いに歩み寄らなきゃ絆は続かない。これは俺たちの勝手な結論だ……ですけど」
 熱が入って素の喋り方が混じり、それが微笑ましくてつい笑ってしまう。拗ねるように向けられた視線は年上女房予定の貫禄で受け流す。女性は少し緊張を解いて、今幸せなんですねと言った。来た時と同じ目線に合わせて、あけびは自らの体を見下ろす。
 さするのはすらりとした体躯に若干目立つお腹だ。出産予定はまだ少し先の話だが、大きなトラブルもなくここまで大きくなってくれた。まるで子供の方が祝福してくれているかのように。
 誓約を交わし、肉体を有しても英雄は異世界の存在であり、人間と英雄が子供を成すのはこれまで不可能とされてきた。しかし王が残滓のみとなって、また新たな異世界の存在が確認された影響もあるのか、不変の事実は覆ったのだ。仕事に慣れ、腰を落ち着けてから結婚をと話していたのが前倒しにはなった。個人的には籍を入れるのが春になったのは中々ロマンチックでいいなと思う。いつ産まれるかは子供次第とはいえど。そう楽観視しているあけびとは逆に仙寿は冗談の一つも言おうものなら腹を切るんじゃないかという真剣な面持ちでプロポーズをしてきた。これ以上なく熱烈なものだった。
「勝利はエージェントみんなで掴み取ったけど、子供が産まれるのは奇跡だから、人も世界も全然捨てたものじゃないよ」
 触ってみる? と親しみを込めて聞けば女性は頷いた。席を詰めて隣に座ると恐々と触れてくる。じっと目を閉じて、そして同時にあっと声が漏れる。赤ちゃんがお腹を蹴った感覚が女性にも伝わったらしかった。顔を見合わせれば今日初めてだろう笑みが零れる。家族以外も喜ばせるなんて産まれる前から孝行娘だ。
「二人が戦いたいんだったらH.O.P.E.が……俺たちが支援する。死に物狂いになって、新人が活躍出来る道を拓くから、だからみんなで作る部署の最初の一員になってほしい」
 俺たちという言葉と共に重ねられた手を握る。互い違いに指を交差させて、離れないように強く。
 男性が立ち上がり、女性と二人、向かい合う。頭を下げてよろしくお願いしますと、そう声を揃えて言うのに時間はかからなかった。あけびも仙寿と顔を見合わせ、こちらこそと言う。誰からともなく笑い声が零れた。
(暫くサポート出来ないけど、良妻賢母になって仙寿のことを支えるから。これからもよろしくね)
 その言葉は子供が産まれた時まで取っておく。きっと言わなくても分かるけど、愛情表現はどれだけしてもし足りないし多分皺くちゃのお爺ちゃんとお婆ちゃんになっても変わらない。現在も違う形で世界を変える力を求め続けているように。
 時は巡り、そしてまた桜の季節がやってくる。

━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
ここまで目を通して下さり、ありがとうございます。
拝見した作品の記述的にとりあえず妊娠出産した時期は合っているはず……
ですが、二人とも四年で卒業したとか、結婚のタイミングとか、
かなり重要な部分を勝手に書いているのでやらかしていたら申し訳ないです。
結婚は大学の卒業後ですし、でも仕事に慣れるまでは結婚しなさそうだとか
仙寿くんの家柄的に同時期に式もきっちりやりそうだなあとか。
そうこうしているうちに妊娠しているのが分かる感じですよね。
だったらいっそ出産後になるのかなと考えて作中でのあの記述になりました。
新人教育の部署の立ち上げタイミングも悩んだんですが、結論は見つからず。
大学生時代、就職直後、子供が生まれた後と色々書きたくって、ですが
前線を戦い抜いた二人が法律や新人教育に尽力する未来に惹かれたので、
その辺りを踏まえた話を書こうという気持ちが一番大きかったです。
今回も本当にありがとうございました!
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2019年06月17日

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