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『宝石像と褒めどころ 』
シリューナ・リュクテイア3785)&ファルス・ティレイラ(3733)

●とある建物
「と、いうことで、今日はこの怪奇現象が多発するっていう建物を徹底解析するよ!」
 ファルス・ティレイラ(3733)が回すカメラの前でSHIZUKU(NPC004)が元気よく解説をした。玄関の部分の撮影が終わったところで一旦撮影を止める。
「SHIZUKUさん、怪奇現象ってどんなのが起こっているんですか? 私が調べたのでは見つからなかったんです」
 ここが住宅街にある有名な宝石商が住んでいた建物ということは分かっているが、怪奇現象については噂はあっても曖昧だった。
 ティレイラにSHIZUKUは胸を張って答える「あるんだよ!」と。
「周囲の人や持ち主は何かを見てるんだけど、探索して広める人がいないんだよ」
 ティレイラは納得する。そして、改めて建物を見ると、異界に属する何かの存在を直感する。
「さあ、行くよ! ティレちゃん」
 SHIZUKUは扉を開き、ずんずんと入っていく。
 現在は廃屋といって過言ではない。
「SHIZUKUさん、持ち主の方から許可はいただいたんですか」
「もちろんだよ! 持ち主から怪奇現象を聞いたんだよ。深刻ぽいよね」
 アイドルが不法侵入をすれば格好のネタになる。
「なるほど、住んでいた人の情報が加わると……深刻!?」
「うーん、当時の話だと病気が増えたとか」
 SHIZUKUの返答にティレイラは首を傾げる。何かの呪いみたいなものだろうかと。
 思案している暇はなく、SHIZUKUを追いかける。
 一階の部屋を覗いた後、二階へ続く階段を上がった。
「見て、ステンドグラスすごーい! で、この建物には色々噂があって……」
 ステンドグラスは割れている部分もなく、色とりどりの光を床や壁に通していた。
「ということで、住んでいた人は徐々に病気になったんだけど、ここを離れたら元気になったとか!」
 SHIZUKUの解説を聞きながら、ティレイラは「呪いとか、生気を吸い取る存在がいるとか?」と考えていた。
 二階の廊下でティレイラは足を止め、壁を見た。
「何かある……?」
「え? 何々!? あたしには見えないよ? カメラ、あたしが持つから」
 ティレイラはSHIZUKUにカメラを渡してから、怪しいと感じたところを確認する。
 壁があるように見えるだけで、その先に道は見えた。カーテンのようなイメージがあるため、ティレイラは布を除けるように手を動かす。
「う、うわあ、皆さん見える? キラキラだよ! 水晶とかルビーとか単品じゃないし! キラキラしてすっごくきれいだよ!」
 SHIZUKUは大興奮してしているが、ティレイラも同じだった。
 カメラをティレイラが持ち、通路を進み始めた。
「宝石の重量もあるし、声や音が吸収される感じがするよ」
 実況しつつ進むSHIZUKUにティレイラは不安を覚え始めた。場所が狭いことや宝石からの圧力を感じるからだった。
 宝石たちを見たいという思いと、警鐘を鳴らす直感で思考が揺れ動く。
 広いところに出た。
 天井も床も壁も宝石のきらめき。
「す、すごい」
「言葉が出ません……」
「うん、『すごい』しかいっていないよ」
 SHIZUKUが笑う。
 奧にSHIZUKUが進もうとした時、ティレイラは異形を見た。
「……SHIZUKUさん! 右に飛んで!」
 SHIZUKUは声に驚き振り返り、転がるように移動した。
 ティレイラは複数の大きなクモの化け物からSHIZUKUを引き離すため、攻撃をしつつ、奧の通路に入った。

●連絡なし
 シリューナ・リュクテイア(3785)はティレイラがいないことに気づいた。
 四日前、ティレイラがSHIZUKUの依頼で、何か調べにいったはずだ。
「さすがにこれだけ連絡ないのは問題よね」
 連絡が来ないということは、シリューナの情報網から漏れている怪奇現象があったり、事件が発生したと考えられる。
「まずは、どこに行ったかよね。ティレの魔力を探すことが必要ね」
 魔法の媒体と薬など必要そうなものを用意する。それと同時に、魔法で探す準備をした。
 捜索するとおおむねの位置は把握できた。そこに移動しさらに場所を絞る。
 そして、住宅街にある廃屋といって過言ではない建物にたどり着いた。ここからティレイラの魔力だけでなく何か異質な存在も感じた。
 シリューナは魔法を臨機応変に使えるように、意識を高めておく。
 廃屋の扉に付近には最近人の出入りがあったことを示す跡がある。
 慎重に進み、シリューナは上がった形跡がある二階に向かう。
 ステンドグラスを見ると、廃屋ではなく管理されているということが分かる。
 二階に近づくにつれてティレイラの魔力は近くなったが、どこか遠く感じる。
 通路を進むと空間の裂け目があり、そこからティレイラの力も感じた。
 その裂け目を杖を用いて魔法で開く。
 通路が見えた瞬間、シリューナは目を見開いた。
 磨かれた宝石の塊の通路だったからだ。
「魔法が関わっているわね」
 シリューナはすぐに攻撃や防御の魔法が使えるような状態にしておく。
 慎重に進むと広いところに出る。
 近くに人の形をした物を見つけた。なおかつ、その近くに大人の頭のサイズはありそうなクモがいる。
 それは複数おり、シリューナを見ると向かってくる。
 シリューナが杖を振るうと、氷の矢がクモたちを貫いた。
 一瞬で終わったからといって、油断は禁物だ。
 用心は忘れず、人のように見える物に近づいた。
 それは何かから逃げようとしているSHIZUKUだった。
 よろめき、膝を付きそうな体勢で止まっている。視線の先は、出入り口だ。浮かんでいる表情は、恐怖と絶望。
「……ティレは奧よね? 逃げようとしたら、クモに襲われ宝石の像にされたというところかしら」
 ティレイラの魔力の波動とSHIZUKUの状況からシリューナは推測した。
 SHIZUKUにかけられた魔法を解くことを考えつつ、シリューナは像を眺める。
 動きに合わせ衣類の波打ち、複雑な表情が現れている宝石の像に思わず感嘆の息を吐く。
「……素晴らしいわ……とはいえ……ティレのこともあるし」
 宝石の状況を目視後、手で触れる。ひやりとした感触の中に、じわりと人の体温を感じる。
 生きている宝石という感覚。
 魔力の糸を見いだしほぐす。
 しばらくすると魔法は解除され、SHIZUKUは「うわあ……あれ?」というの悲鳴と共に床に転がる。
 シリューナを見上げ、きょとんとしている。
「……お、お姉さま!」
「あなたにお姉さまと言われる筋合いはないわよ!」
 SHIZUKUはてへっと笑いながら頭に手をやる。
「それより、怪我はないかしら?」
「はい、擦り傷程度だよ。ありがとう、助けてくれて、ティレちゃんは!?」
「まだこれからよ。探しに行くけど、何があったのか簡単に教えてくれるかしら」
 シリューナが問うとSHIZUKUは語ってくれた。

●発見
 話を聞き終えてシリューナはSHIZUKUの肩を抱いた。
「あなたが無事でよかったわ。……まあ、ティレにも言うことはあるけれど、あなたを守ろうとしたことは褒めないとね」
 結果的にはSHIZUKUを守ったのだ。
「この先にいるのね。戻るのも、あなたを置いていくこともできないから、ついていらっしゃい」
「もちろん! かっこいいところは撮るからね!」
 SHIZUKUはカメラを構えてシリューナを見ている。
 シリューナはあきれて拒否もできたが、まずはティレイラ救出を先行させることにした。
 SHIZUKUを解呪したり、眷属を倒しているため、ここを作り上げたモノが気づいている可能性がある。
 二人は通路を進む。
「終わったらお茶でも飲みましょう」
「楽しみにしてるよ。体が冷えてるんだよね」
 シリューナはSHIZUKUの様子から体力の消耗が激しいことを感じた。宝石にされていた間、体力を奪われていたに違いない。
 それだけでなく、ティレイラにはねぎらうためにもおいしい菓子を食べさせたかった。
 シリューナはSHIZUKUに指示を出す。
「通路から出ないこと。むろん、危険を感じたらあなたの判断で行動しなさい」
「はい!」
 SHIZUKUの返事を聞いてから、シリューナは部屋に飛び込んだ。
 ティレイラの像は比較的近くにある。
 ティレイラは翼を広げ、竜としての姿を現している。つまり、SHIZUKUからこの化け物を引き離して戦おうとしたのだろうか。
 そして、空間の奥には先ほど見たクモの化け物と、胴がシリューナの身長よりの大きそうなありそうなクモの化け物がいた。
「さっさと片づけるわよ!」
 数が多かろうと、先ほど数が多い方とは対峙している。多少の違いが合っても、ここにいるモノはおおむねクモとしての性質も持ち合わせているはずだ。
 ただし、数が多いため、確実に倒すために一つ多く手順は踏んでおく。
 持ってきた魔法薬の瓶を一本投げつける。床ではじけたそれは煙と化した瞬間、クモたちがたじろぐ。これで、通路の方に以降とする個体はほぼなくなる。
 この間に、シリューナは杖を用い、魔力を紡ぐ。敵を一気に倒すため、幾つか魔法を重ねていく。
 完成と同時に杖を振るった。
 地面から細いつららが生え、まるで波のようにシリューナの前方を走っていく。
 それらは化け物を突き刺し、凍らせ、粉砕していった。
 見ていたSIZUKUが「あっ」と思ったときには、部屋に異様な生き物はいなくなっていた。
 残るのは宝石のみ。
「う、うわああ、かっこいい」
 SHIZUKUから拍手と歓声が上がる。
 シリューナから苦笑とため息が漏れた。周りに新たな敵がいないか、念のために探る。異界との接点となっているのか、不安定そうだが、何かいる様子はなかった。
 シリューナはほっとしてティレイラの様子を見る。
 SHIZUKUの時と状況は同じだが、巣と思われる敵の近くにいたために魔力の影響が強いようだった。SHIZUKUの時よりも時間はかかりそうだが、問題なく戻せそうだ。
「……解くわね」
 シリューナは解呪のために魔力を紡ぎながら、ティレイラを見つめる。
 恐怖と嘆きが浮かぶ表情。魔力を紡ぎながら触れると、ひやりとした感触の方が強い。
 普通の宝石なら見られない曲線や髪の毛の一本一本の細工、透き通る素晴らしい造形に思わず「綺麗ねぇ」と声が漏れた。
「……あの……えっと?」
「あなたもこうだったのよ?」
 SHIZUKUは近づく。
 調査に付き合ってくれていた少女が宝石になっているのをみれば驚く。オカルト系アイドルとて、初めてのことだ。
「これでも生きているんだよね。もう、少しで元に戻んだよね?」
「ええ、そうよ」
 SHIZUKUはティレイラが戻れるなら安心して、目の前の怪奇現象をしっかり見ておくことができるようだった。
「そっか、魔法でこうなるから、髪の毛とか洋服とかそのままこうなるんだ……」
 SHIZUKUは感心しながら眺める。
「そうよ。通常なら宝石で彫像なんて難しいでしょ? このような曲線を作ったり」
「なるほど! 魔法ならではだね! 自分がこうなるのは嫌だけど」
 SHIZUKUは溜息を吐いた。
 ティレイラが戻れるまで、鑑賞会が続く。
 徐々にぬくもりが強くなってきた。
 解呪が成功した瞬間、「来ないでっ!」というティレイラの声とともに、翼が動く。
「あれ? ここに網があったような……霧みたいなものに包まれたような……お、お姉さま! SHIZUKUさん!」
 ティレイラは状況を掴みと、ほっとしたのか力が抜け座り込んだ。

 そして、帰宅し、お待ちかねのお茶会となる。
 シリューナが用意した甘いお菓子とおいしいお茶に、ティレイラとSHIZUKUは安堵の様子を見せた。

━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
 発注ありがとうございました。
 心霊スポット探索だと、ティレイラさんたち以外にもたくさんの人が引っかかっていそうでしたのでこのような感じになりました。
 いかがでしたでしょうか?
東京怪談ノベル(パーティ) -
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東京怪談
2019年06月18日

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