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『Father's Day 』
ユリア・スメラギla0717

 世間では母の日が終わると、早速次の日から父の日のプレゼント商戦に切り替わる。
 母の日に比べると何となく父の日の方が地味というか、あまり本格的ではないというか、ちょっと大人しめに過ぎていくカンジだが、ユリア・スメラギ(la0717)はちゃんと母の日同様、父の日もプレゼントを贈るつもりだ。

「何を贈ろうかしらね〜」
 と考え、結局父本人に尋ねることにした。
 本人が欲しがっている物を贈れば間違いないのだから。
 携帯で父に電話すると、すぐに出てくれた。
 娘からの電話に父は嬉しそうに元気か、などと聞いてくる。
「ええ、元気よ。あのね、ちょっと父の日のプレゼントのことなんだけど……、何か欲しい物はある?」
 ユリアの質問に、父はお前が元気ならそれでいい、とかお前がくれるものなら何でも嬉しいよ、という娘を溺愛する父親あるあるな答えをするばかり。
 それはそれでありがたいのだが、娘としては物足りないというか、ちゃんと喜ばれるものを贈りたいのにというジレンマもある。
「も〜、そうじゃなくて、遠慮しないで何でも言ってくれていいのよ?」
 何とか聞き出そうとしても特に何もない、今のままで十分幸せだからと言われてしまった。
「相変わらずママとはラブラブそうね……安心したわ」
 ふっとユリアは表情を和ませる。

 ユリアの父はかつては商社マンとして働いていた。
 だが、毎日の変わり映えしない仕事の繰り返しに飽き、転属をきっかけに辞めた。家族と離れたくなかったからだ。家族ごと転任先へ行くこともできたが、家族はそれを嫌がるだろう。父にとって家族の幸せが第一であり、家族の嫌がることは仕事であってもできなかったのだ。
 そして、愛妻家でもあり子供を大事に思う父は、今では愛する妻の経営する花屋を手伝い、幸せな日々を送っているという訳だ。

 娘を愛する父としては当然の流れで、ユリアは恋人との仲について尋ねられる。
「もちろん仲良くやってるわ。付き合って4ヶ月ね。……彼のこと、まだまだ知りたいわ。パパとママは、結婚まで3年くらいかかったんでしょ?」
 相手のことを良く知るには、それくらいの時間が必要なのかもしれない、とユリアは思った。
 相手の良い所はもちろん、自分と違う考え方や生活していく中での嗜好や習慣まで――、それらを全て知った上で受け入れる。
 ユリアも恋人と、そんなふうに相手の全てを許し受け入れ合えるような関係になれたら……。
 父の惚気話を聞きながら、ドラマなんかでよくある、娘の彼氏を片っ端から認めないという父親でなくて良かったと痛感する。
 父は元々おおらかでさばさばした性格だからか、娘の幸せを願うからこそ、娘の選んだ恋人も信用し二人の判断に委ねているのだろう。

 やがて父の話は息子も亡くしてしまい、ユリアも家にいなくて寂しい、という話になった。
 もちろん、その寂しさはユリアにも痛いほど解る。
 でも……、今のユリアにはライセンサーを辞めて実家に帰るという選択肢はない。
 だから、ユリアは優しくはあるがしっかりと自分の気持ちが伝わるように言った。
「パパ……いつか、子供は親元から離れるものよ。もう会えない所にいるわけじゃない。ほぼ毎日ママとメールもしてるし……」
 携帯の向こうから諦めたような小さなため息が聞こえる。
「パパ?」
 ユリアの問いかけに返って来たのは、父の少し悲しそうで悩んでいる声だった。
 息子と娘が自分の反対を押し切ってライセンサーになってしまったのは、自分が二人とちゃんと向き合えていなかったからではないのかと、今までずっと悩んでいたらしい。
 ユリアは驚いた。
 まさか父がそんなふうに思い悩んでいたなんて。
「違うわ、パパ! パパは何も悪くない。あの子もあたしも、パパとママが大好きよ。二人が大事だから、ナイトメアを倒すために戦わなければならないの。あたし達には、その力があるんだもの。――あの子も、そう思っていたはずよ」
 そうか、と父は吐き出すように言ったが、すぐにいつもの明るい調子に戻って、くれぐれも体には気を付けるように、と念を押す。
 父も本心では解っているのだろう。ユリアがライセンサーになった理由、そして戦う理由を。
 でも『父親』の本分で、言わずにはいられないのだ。
 そんな父の気持ちを察したユリアは、心配させまいと努めて、
「ええ、分かってるわ、パパ。お盆辺りには帰省予定だから。より美しくなった娘の姿、楽しみにしててね♪」
 と自信たっぷりに父に告げる。 
 ママと期待して待ってる、という言葉を最後に、父との電話は終わった。

 父はずっといい父親だった。
 そんなふうに自分を責めることなんてなかったのに。
 ユリアは父の秘めていた思いを知って、申し訳ない気持ちになった。
「パパにあたしの感謝をちゃんと分かってもらうために、最高のプレゼントをしないとね!」
 そして考えた結果、一冊のアルバムを購入。
「このアルバムに、あたしのモデルの新作写真、一杯入れて送ろっと♪ ママと一緒に見て欲しいわね、娘の成長ぶりを!」
 外見だけでなく精神的にもユリアは成長した。それは美貌にも反映されているはずだ。

 美しく、強く、セクシーな、これが二人の娘、ユリア・スメラギよ!

 『パパに感謝と愛を込めて』


━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
ご依頼ありがとうございました!
今回は父の日ということで、良い家族関係ですね〜。本当にユリアさんはご両親にとっても自慢の娘さんなんだろうなと思いました。

父親というのはともすれば娘には嫌厭されがちですが、ユリアさんのお父さんに対する優しい思いが伝わるようにと書かせていただきました。
どこかイメージと違う所や、「こうじゃない」という部分がありましたら、ご遠慮なくリテイクをお申し付けください。

気に入っていただけたら嬉しいです。
またご縁がありましたらよろしくお願いします。

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久遠由純 クリエイターズルームへ
グロリアスドライヴ
2019年06月19日

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