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『「神隠し 前編」 』
芳乃・綺花8870

 ある日の夕方。
 芳乃・綺花(8870@TK01)は一人通学路を歩いていた。人気もなく静かな場所だった。
 そんな時。
 ふと後ろから声を掛けられた。

「あの、すみません」

 後ろを振り向くとブレザーの制服に身を包んだ黒髪のセミロングの大人しいそうな中学生の少女がそこにいた。
 顔立ちは童顔で愛らしい雰囲気をしており、きっと笑うと可愛いと思われるそんな雰囲気だった。
 だが今の彼女の表情は固く、そして真剣な目をしていた。
「……あなたが退魔士の芳乃綺花さんでしょうか?」
「はい。そうですが」
「お願いです。わたしの妹を助けてください!」


 少女の話によると。
 最近女の子達の間で人気のある神社の社があるという。
 その社は縁結びの効果があるといわれており、その社に手を合わせ願い事を告げると恋が実るという噂があった。
 それはジンクスに近いものだが実際その社で願い事をした女子達の殆どが自分の恋が成就した。その事が噂になりネットを介してたちまち女子達の間で広がりを見せていた。
 そんな中。少女の妹もその社に訪れた。
 自分の恋が実るようにと。
 妹が社に行って帰ってきたその日の夜。どこか妹の様子がおかしかった。食欲はなく、呼びかけても曖昧な返事しか帰って来ずどこかぼーっとしていた。
 深夜妹が家を出ていくのを廊下で少女は見掛けた。少女は不審に思い妹のあとをつけた。
 たどり着いた先は恋が成就する社の前だった。

 ……どうしてこんな夜遅くこんなところに……。

 ますます不審を募らせていく少女に対して妹は社の前で手を合わせ、目を閉じ祈ると妹の姿はその場から忽然と姿を消してしまった。
 まるで妖にでもあったかのように……。

「その場で妹をいくら探しても見つかりませんでした。そこで芳乃さんのお話を別の方からお聞き致しまして……。お願いします! わたしの妹を助けてください」

 少女は懸命に綺花へと告げ、頭を下げた。
 おそらく少女のいうとおりこの事件は妖の類いの事件だろう。
 女の子が好きそうな恋愛を利用し、祈りを捧げに来た女の子を狙った悪質なものだ。
 民間の退魔士会社「弥代」に所属している者としては見過ごせない。
 それに加え魑魅魍魎の跋扈驚異は無視できない綺花はその依頼を引き受ける事にした。
「顔を上げて下さい。あなたの妹さんは私が必ず救ってみせます」
「有難うございます。宜しくお願いします」
 綺花の言葉に少女は目じりに涙を浮かべながら、そう綺花へとお礼を言った。




 その日の夜。
 綺花は町外れの森の近くを一人歩いていた。
 彼女は昼間の姿とは違い、戦闘服であるセーラー服にミニスカートの光沢があるランガード。バックラインのあるストッキング。それに加え愛刀である刀を腰に差していた。
 昼間の日差しが強い日中から一変して夜は涼しさを増していた。暫く歩いたのち綺花はある古びた神社の中の社の前に足を止めた。
 それはまるで誰からも忘れ去られたように手入れをされず、荒れていた社だった。

(どうやらここのようですね……)

 綺花は社の前に行くと、同時に古びた社の扉がバン!! と激しい音を立てて自然に開いた。

「妾の社に足を踏み入れる不届き者は貴様か」
 そこには着物を身に纏った美しい女の姿をした妖の姿があった。
「あなたが女の子達を狙った犯人ですね」
 低い声音で告げる綺花の言葉に妖はどこか意味ありげにクスリと笑った。
「そうだとも。女子は恋愛やそれこそ恋の話が大好き。だからわざとあのような場所にある神社を利用して、深夜妾の元へと来るように暗示をかけたのじゃ」
 妖は言葉を続けた。
「そして妾の元に来た人間を眠らせたあと小娘の魂を食らう。なにせ妾の暗示に掛かって一晩寝かせた娘の魂は美味いからのぉ」

 詰まるところ。
 この妖は恋が成就する人気の神社を利用して神社の社に細工をした。
 社に祈りを捧げに来た人間は妖の術に掛かり、夜中社の前に行くように命令をされていた。
 再び社に祈りを捧げると妖が住みついている社へと転送されてしまうのだ。
 そこで暗示に掛かった人間をそのまま眠らせ、その後一晩眠った人間は妖の暗示の術が身体中に行き渡ってしまう。妖はその魂を食らう算段をしていた。
 綺花は社に残されていた妖の僅かな痕跡や気配をたどり、この社の正体を見破ったのだった。

 妖の後ろにある社の中で眠っている女の子の姿が見えた。
 間違えない。少女の妹だ。
 おそらく暗示に掛かった女の子は敵を倒せば暗示から開放されるはずだ。
 そう思い綺花は目の前の敵へと告げる。

「あなたには悪いのですが女の子を返して頂きます」

「ふふ。面白いことを言うな。そう言われて妾が自分の獲物を素直に貴様に渡すとでも?」
「なら力づくで返させて頂きます」
「やってみるがいい」
 妖のその言葉と共に妖の近くの地面から狐の姿をした妖が二体現れた。
 狐の姿をした妖が綺花目掛けて駆け出し、襲いかかる。
 だが綺花は瞬時の速さで愛刀を抜くと共に自分へと向かって来る狐の妖を二体纏めて一閃した。
 狐の姿をした妖は空気に溶けて消え去る。
 綺花は駆け出し、女の妖の腕を切り落とそうとするが女の妖はそれを防ぐと同時に綺花と距離を取るために後ろに跳び退った。
 そして綺花は社の中で眠っている女の子を庇うように前に立つと、女の姿をした妖に向かって言う。

「では返して頂きます」
「物覚えが悪い小娘だな。この妾が貴様達を生かしたまたここから出すはずはなかろう」
 女の姿の妖は面白そうな表情をして綺花を見つめた。対して綺花は鋭い瞳を向けたまま女の姿をした妖を見た。




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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【8870@TK01/芳乃・綺花/女/18/女子高生退魔士】
東京怪談ノベル(シングル) -
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東京怪談
2019年06月19日

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