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『「神隠し 後編」 』
芳乃・綺花8870

 静寂がその場を支配する。
 互いが睨み合ったままの数秒間が過ぎ去る。その静寂を破るように芳乃・綺花(8870@TK01)が動き出した。
「行きます」
 刀を携え、敵へと駆け出す。
「何度やっても同じことよ」
 女の姿をした妖はそう告げると共に再び地面から狐の妖が出現した。
 先程の数とは違い五体。
 だがいくら数が増えたところで綺花の敵ではない。
 綺花は足を止めず駆け抜けながら自分へと襲いかかってくる狐の妖を次々と切り捨てていく。綺花は僅かにはためくスカートの裾を手で押さえた。
 彼女から切り捨てられた狐の姿をした妖は「ギャン!」と短い悲鳴を上げながら虚空へと消え去る。
 綺花は妖には目もくれず地を蹴り、女の妖へと飛び掛るようにして妖へと刀で斬り掛かった。
 だが妖は綺花の刀の刃を咄嗟に出した小刀で瞬時の速さで防いだ。

 ギッ。ギギィン。

 刃と刃がぶつかる音。
 綺花と妖の刃の鍔迫り合いをする。

「お前なかなかやるな。妾は他の妖と違って多くの人間の女の魂を食らった。力も、能力も膨大にある。その妾と互角にやりおるとは」

「笑わせないで下さい」

 綺花の言葉に妖は眉をピクリと動かした。
「あなたがいくら人間の魂を食べようとも、あなたがいくら力があろうとも私があなたを倒すことは変わらない事実です」
「抜かしたな小娘の分際で。良かろうお前の望み通りお前を倒してやる」
 低く、低い声音でそう告げる女の姿をした妖。
 それはまるで呪いの言葉のようだった。
 だが綺花はそんな言葉など素知らぬ態度で艶っぽい唇を動かす。

「あなたに私は倒せませんよ」

 それはまるで挑発するかのように。
 鍔迫り合いをしていた綺花は刀に力をさらに込めると、女の姿をした妖の刃を押し退けた。その拍子で僅かに女の姿をした妖の体制が崩れる。
 綺花は妖の肩を斬ろうとするが、妖は即座にそれを避けた。そして手にした小刀を社の中で眠っている少女目掛けて投擲した。
 ニヤリとした笑みを作る妖を無視し、綺花は再び女の子の側へと駆け寄った。
 女の子へと向けられた小刀を綺花は刀で打ち落とそうとした。が、空中で小刀が二、三本へと分裂をした。
 これで綺花達は攻撃を受けてダメージを負うのだろう……。
 そう確信していた妖だったが、妖の予想は大いに外れた。
 あろうことか綺花は分裂した小刀を全て打ち落とし、今の戦いで目覚めてしまった女の子を安全な場所に隠れているように指示を出した綺花は再び妖の元へと走り出したのだ。
 妖は地面から今度は狼に似た妖を呼び出すが、先程と同様に綺花は狼に似た妖も切り捨てていく。
 いくら敵を出現させても無駄なことだ。
 敵が次々に出現していくのならこちらは切り捨てていくのみ。
 傷一つ付いていない綺花の姿を見て女の姿をした妖の表情は醜く歪む。
「おのれ、おのれ、おのれぇぇぇ」
 絶叫に近い叫びを上げながら妖は地面から再び狼の妖を出現させようとしたが、いつの間にか気づかないうちに綺花が妖の懐に入っていた。
 そして。
「遅い」
 綺花は女の姿をした妖の身体を刀で斬ったのだった。
「ぎゃぁぁぁぁ」
 悲鳴を上げながら女の姿をした妖は苦しそうに顔を歪め身体をよろめつかせながら、その場の空気に溶けるように消え去ってしまったのだった。




「お姉ちゃん!」

 綺花に連絡をもらった少女は妹を見ると駆け寄り、強く抱きしめた。
 恋愛成就が実るとされていた神社の場所に綺花、少女の姉妹達はいた。
 妖を倒した後妹の暗示も溶け、妖が利用していた神社の社に張られていた術も消え去っていた。今はただの社だ。
 少女は妹の無事を確認しながら何度も、
「良かった……。本当に無事で良かった……」
 そう言った。
 そして少女は抱きしめていた妹の体をそっと話すと綺花の方へと向き直り、そして唇を動かした。
「妹を助けて下さって有難うございます。妹が無事に戻ってきてくれて良かった……。これも芳乃さんのおかげです」
「お役に立てたのなら光栄です」
 そう彼女は言った。

 薄暗い夜の雲の隙間から徐々にオレンジ色の光が差し込んでいく。
 夜から朝へと変わる。
 そんな空の下で帰っていく姉妹の後ろ姿を綺花は眺めながら静かに見送ったのだった。



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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【8870@TK01/芳乃・綺花/女/18/女子高生退魔士】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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芳乃・綺花様

始めまして。シナリオライターのせあらです。
この度はご注文の方有り難うございます。
綺花さんのノベルが書けて本当に嬉しかったです。ご指名の方有り難うございました!

せあら

東京怪談ノベル(シングル) -
せあら クリエイターズルームへ
東京怪談
2019年06月19日

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