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『夕焼けの色 』
ファラーシャla3300

 日が傾き、地面を這う影が長く伸びる。
 ファラーシャ(la3300)の淡い白金の髪が夕焼けの陽で橙色に染まる。
 この空の色を見ると、彼女は何となく懐かしい気持ちになる。
 ここと全く景色が違うけれど。故郷の日暮れ時も、こんな色で輝いていたから。
「……お仕事も終わったことですし、お買い物をして帰りましょうか」
 独り言ちる彼女。
 ……ライセンサー仲間によると、食料品店は『すぅぱぁまぁけっと』というらしいが、どうにも慣れない。
 つい、故郷の言葉で言い直してしまう。

 ――ファラーシャは、元々この世界の住人ではない。
 異世界から、2058年の地球にやってきた『放浪者』と言われるものだ。

 彼女の故郷は、複数の浮遊大陸があり、その中に様々な国が存在している。
 そして国や人種ごとに、多種多様な文化を花開かせている場所だった。
 まだまだ発展途上であった故郷と比べると、文化的な面でも、技術的な面でも、今いる『地球』の方が進んでいる。
 季節を問わず色々な食材が食卓に並ぶのを見た時、最初は驚いた。
 故郷で季節外れのものを食べようと思ったら、保存用に加工したものが圧倒的に多かったから。
 素材そのままで出て来るというのはかなりな衝撃だったのだ。
 そういう意味でも、『冷蔵庫』というのは画期的な品だと思った。故郷に持って帰りたいと思う程には。
 あと、通信手段も故郷とは大分違う。
 すまーとふぉん、とか言うのも最初は良く分からなかった。
 遠くにいる相手と話すという手段は彼女の国にもあったが、動く写真つきで話した時には、一体どんな幻術を使っているのかと電話を分解しかけた程だ。
 そんなことはあったけれど、最近ようやく使いこなせるようになった。
 あともう1つ驚いたのは、『てれび』と呼ばれる活動写真。
 中に小さい人が入っているのかと思って矢張り分解しかけた。
 ちなみに、分解するのが好きな訳ではない。
 気になったことは確かめてみたいという、知的好奇心を満たす為の行動だ。

 ともあれ。この地に来て、便利なものに触れて、感心して……ここでの暮らしに大分慣れてはきたけれど。
 だからだろうか。……ふと、故郷を恋しく思うことがある。
 この世界に突然飛ばされて来て、両親に旅立ちの挨拶が出来なかったからかもしれない。

 ――ファラーシャの両親は、人に仇なす敵を倒したり、困っている人を助けたり……そんな仕事を請け負う人達だった。
 戦う能力に優れ、彼女自身もその能力を受け継いだらしい。
 だったら、その能力は他人の為に使うべきだ、と。
 両親から戦闘技術を学んで……。
 鍛錬は厳しかったけれど、自分が強くなるのを実感できるので好きだった。
 強くなれば、両親がとても喜んでくれるので、それが励みになったというのもあるかもしれない。
 戦士として、人として憧れている両親。将来、自分も両親と同じ職に就くのだと思っていた。
 思っていたのだけれど……。
 結局、それが叶うことはなく。今はこうして地球でライセンサーとして働いている。
 良く考えてみれば両親の仕事もライセンサーによく似ていて、まあ近しい仕事に就いた、とは言えるのかもしれないが。
 人生何が起こるか分からない。

 もう1つ予想外だったのは、両親から受け継いだはずの技能や性質が大きく変化し、二人が持っていなかった癒しの力を手に入れるに至ったことだ。
 これも突然転移してきた影響なのか、理由はハッキリしないが、両親が聞いたらさぞビックリするに違いない。
 父上は……。
「わー。ファラすごいね。さすが母さんの娘だ!」
 ……とか言いながら抱き着いて来そうだし。母上は……。
「私もその能力欲しいです」
 とか真顔で人の身体を調べ出しそうだし――。

 両親の反応を想像し、くすりと笑うファラーシャ。
 ……娘が突然消えて、心配をかけているかもしれない。いや、間違いなく心配している。
 でも、あの2人なら、私がいなくても大丈夫だろう。
 子供の目から見ても仲睦まじく、お互いを尊重し、支え合っている夫婦だ。
 ……まあ、娘を溺愛しているが故に地の果てでも探しに行くという父上を、母上がぶん殴って止めているような気がしなくもないけれど。
 それもいつものやり取りだ。

 ……父上も母上も、故郷でこんな夕焼けを見ているのだろうか。
 地球の太陽と、故郷の太陽は違うかもしれないけれど。
 あの2人に、自分の無事が伝わるようにと……思わず祈る。

 いつになるかは分からないけれど。
 胸を張って故郷に戻れるように。
 両親の教えを忘れず、この地で励もう。

 空を見上げるファラーシャ。
 橙色の太陽は大分傾き、宵闇の足音が聞こえて来る。
「さて、今日の夕餉は何にしましょうか……」
 そんなことを呟き、歩き出す彼女。

 そうだ。折角だし、故郷の料理を作ってみよう。
 食料品店に寄れば、きっと似たような食材が買えるはずだ。
 ファラーシャは、母に習った料理を思い出しながら、帰路についた。

━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
お世話になっております。猫又です。

お届けまでお時間頂戴してしまい、申し訳ありませんでした。
ファラーシャちゃんのノベル、いかがでしたでしょうか。ファラーシャちゃんの設定を掘り下げる感じで認めてみました。
少しでもお楽しみ戴けましたら幸いです。
好き勝手色々書いてしまいましたが、話し方、内容等気になる点がございましたらお気軽にリテイクをお申し付け下さい。

ご依頼戴きありがとうございました。
おまかせノベル -
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グロリアスドライヴ
2019年06月24日

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