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『その少女、不可思議 』
田中 月子la3410

 ――2040年、SALF本部――


「ったく、何だってんだ!!」

「どうしたんだ? そんなにカリカリして」

 電話を叩きつける様に置いた若手職員に同期の若手職員が声をかける。

「クレームだよ、クレーム。そんなの知るかって話。大体なんでライセンサーの不始末で俺たちが頭下げなきゃいけないんだよ」

「確かにそうだけどさ、まあ、そう言うなよ」

 発足から10年余り、世界を救う組織として浸透したSALFだが、やはり文句やクレームを言ってくる人々は一定数いる。

 世界中を飛び回っているライセンサー本人が電話に出るわけはないので、しわ寄せは職員の方に来るのだ。

「で、今回はどいつ? 例の戦闘狂?」

 ライセンサーの中には問題を起こしやすい者とそうではない者がいる。

 勿論、前者はクレームの件数も多いので、職員の中でも顔と名前が悪い意味で知れ渡ってしまっているのだ。

「違う、またあいつだよ、あいつ。クレーム女王。本当勘弁してほしいぜ」

「あぁ、田中月子か……」

 田中 月子(la3410)の名前に、頷くとため息とともに同情的な視線が注がれる。

「仕方ねぇーよ。あいつは、ほら、あれだろ?」

『あれ』がなんなのか口には出さなかったのがいけなかったのか、同僚に意図は通じなかったようだ。

「あぁ。だから、放浪者は嫌いなんだよ!」

「放浪者全部を嫌ってやるなよ。あれが特殊なんだって」

 そう、月子は異質な放浪者だった。

 放浪者の中には人とは異なる姿をしている者もたくさんいるし、現代とは全く違う理の中を生きてきた者たちもたくさんいる。

 その為、中には異質と呼ぶのが適当な放浪者もいるのは事実だ。

 だが、月子はそれとは質が異なっていた。

 姿であるとか、考え方がではなく、存在が異質だというのが、彼女にかかわった本部関係者の共通の見解である。

「見た目がまともそうに見えるのがまたなぁ……」

「あれが、まともそうに見えるならお前、相当疲れてるよ」

 月子が纏っているセーラー服は彼女を普通の人間かのように見せるかもしれない。

 が、それは遠目に見た時だけだ。

 戦闘で破れたと思われるスカートや袖には常に何かの血が付いている。

 そして、これまた常に被っている顔のすべてを覆うマスクが彼女をより異質なものに見せているのだ。

「で、今度は何したんだ?」

「子供にチェーンソーを向けて奇声を上げまくったらしい。その子供はトラウマになったらしくてテレビでライセンサーを見るだけでもパニックになるんだと」

「あぁ……それはご愁傷様だな」

 こんなことはいつもの事だった。

 月子は頭のねじがいくつか外れているんじゃないかと思うような行動を平然と取るのだ。

 いや、顔が見えないので、平然かどうかは実際のところ分からないが。

「面談でもしてみたらどうだ?」

「無理だろ。会話噛み合わないらしいぜ。言葉は通じてもこっちの話をどれだけ理解してるか分かったもんじゃない。それにだいぶ前に面談した職員が精神的におかしくなって辞めたって話も聞いたし。俺、おかしくなりたくねぇよ」

「マジか……それは知らなかったわ。やべぇな」

「君達、仕事中に無駄口を叩いてる暇があるってことは仕事を増やしていいってことかな?」

 あまりにも声が大きくなったのか、上司の目が2人に向いてるのに気が付いたベテラン職員が声をかける。

「「あ……すみません」」

 注意され肩をすくめる2人。

「大体、ライセンサーの悪口なんて言うもんじゃないよ。彼らは世界を守ってくれてるんだからね」

 まだ、いくらでも出てきそうな月子への愚痴を古株のベテラン職員が咎める。

「それは、そうなんですけど、でも……」

「あのライセンサーは別ですよ」

「あの?」

「はい、田中月子ってライセンサーなんですけど、知らないです? しょっちゅう問題起こして、民間人からもライセンサーからもクレーム来るんですよ」

「田中……月子……?」

ベテラン職員は眉を顰め名前を反芻した。

「どうしたんです?」

 想像と違う反応に若手職員たちは首をかしげる。

「いや、そんなライセンサーが過去にもいた気がする」

「そのライセンサーはどんな人物だったんです?」

 単純な興味だった。

 彼女の名前自体は平凡なものだから、もしかしたら同一人物ではないかもしれない。

 が、同一人物という可能性もある。

 どちらにせよ、毎日の様に様々なライセンサーと向き合うこの仕事で名前を憶えられているというのは、かなりの個性の持ち主だと言える。

 例え、同一人物じゃないとしても、話を聞けば、今後のクレーム対応に役立つかもしれないというある種の打算もなかったと言えば嘘ではない。

「いや、そんなにしっかり覚えているわけじゃないんだが……」

 考え考えベテラン職員は口を開いた。

「ちょくちょく問題を起こす放浪者で、対応に頭を抱えていた同僚がよく愚痴ってきたんだ。今の君たちのようにね」

 若い職員たちは顔を見合わせた。

「最初に、クレームを受けたのがその同僚だったんだが、その時、面談したこともあって彼女が問題を起こす度に、彼は面談していたよ。それでも全く改善されないのだと零していたな」

「その同僚さんはどうなったんですか? まさかおかしくなったとか……」

 我ながら変な言い方だったと思いながらもその聞き方しか出来なかった。

 だが、同一人物なら彼は……。

「実家を継ぐことになったらしくてね、しばらくして辞めてしまったよ。その後も彼女の問題行動は続いたという話だが……」

「どんな問題行動を起こしてたんですか?」

「うーん、何だったかな。あまり詳しいことは覚えてないが……あぁ、そうそう。奇声を上げてどこかに走り去ったり、よくわからないことを矢継ぎ早に民間人に言って怖がらせたり……そんな感じだったと思う。まあ、放浪者は私達とは違う世界から来ているからね。そう言うこともあるんだろう位であまり真剣に聞いていなかったが、そう言う愚痴が多かった気がするよ」

「……そうですか」

 他人の空似というには内容があまりにも酷似しているように感じる。

「期待を裏切るようで悪いんだが、今話していたライセンサーとはきっと別人だ。件の彼とは今でも普通に酒を飲む仲だし、それに、そのライセンサーは……」

「どうしたんですか?」

 変なところで口を噤む先輩に若手たちは首をかしげる。

「そのライセンサーは、もう戦死しているはずだ」

  ***

「お疲れ」

「おぅ、お前も早く仕事終わらせて帰れよ」

「わかってるって」

 その日、笑いながら同僚の背中を見送った若手職員は、誰もフロアにいないことを確認するとSALFのデータベースにアクセスした。

 勿論、越権行為だということは分かっている。

 それでも、どうしても調べたいことがあった。

「田中……田中月子……」

 見るのはSALF発足当時からのライセンサーの名簿。

 その膨大な量のデータの中からお目当ての名前を探す。

「……っとあった」



 ――田中 月子。

 種族:放浪者。

 登録年月日:2031年××月××日

 ナイトメアとの大規模戦闘にて戦死――


 偶然だろう。

 そう思った。

 話を聞いた時は、同一人物かもしれないと一瞬思ったが、調べてみるとやはり苗字も名前も単体でなら数十件はヒットした。

 そう、だからそこまで珍しい名前というわけでもない。

 そう思いながら、デスクに置いてあった月子のデータを手繰り寄せ見比べる。

 この顔全てを覆うガスマスクを被った顔写真も……そう、偶然だ。

 あるいは、戦死した田中月子と言う人物の近親者か誰かが、彼女を真似ているのかもしれない。

 何故そうするのかはわからないが、そう考えるのが自然だろう。

(メイン職、サブ職も一緒……いや、きっとたまたまだ)

 だれかが真似ていたとすれば一致するのは当たり前のことだし、同じ組み合わせのライセンサーなど、いくらでもいる。

(たまたま名前が一緒で、姿が酷似していて職も同じってだけだろ)

 そう自分に言い聞かせながらデータの照合を続ける。

 身長も体重も……何もかもが一致した。

 身長や体重は自己申告ではない。

 ちゃんと、SALF側で検査して記入されるものだ。

「いやいや、偶ぜ……」

 そこまで考えて、はたと思う。

 そこまで一致するものだろうか。

 真似していたとしてもここまで似せられるものだろうか。

 じわりと嫌な汗が背中を伝っていく。

 ここまでくると同一人物と考えた方が納得できる気がする。

「いや、でも……」

 死者が生き返るなんてことありえるはずもない。

 手元の資料との整合性を取るなら、この戦死したというデータが嘘だということになる。

 だが、それにしてもデータが10年前と何も変わっていないのは流石におかしい。

「だから……偶然……」

 口が乾いて上手く動かない。

 一生懸命納得のいく答えを考えるがどうしてもその答えが導き出せずにいた。

 彼女は放浪者だ。

 彼女達がどこから現れるのか、どうして現れるのか、そもそも彼女たちが何者なのか、はっきりとは解明されていない。

 だから、別の世界線とやら同一人物が来る。

 そう言うこともあるのかもしれない。

 実際、この世界とは別の運命を辿った地球からやってくる放浪者も数多くいる。

(きっと、そうだ)

 それが、今考えられる一番納得できそうな答えだった。

 でも、そうではなかったら……。

 無理やりにとはいえ納得したはずの答えに感情が異を唱えている。

 べたりとした気持ちの悪い汗で手が濡れていく。

(見なかった、俺は何も見なかった)

 どちらにせよ、研究職でもない一般職員の、それも下っ端である自分が考えたところで、分かるはずもない。

 ぞわりとした得体の知れない、言い知れない気持ち悪さを覚えながらも、職員はたった今見たものをなかったことにしようと思った。

 そうすることが正しいと直感で感じたのだ。

 何かを振り払うかのように彼はデータベースからログアウトし、逃げる様に帰宅した。


 ――翌日――

 彼は、戦死者の遺留分整理に駆り出されていた。

 ナイトメアとの戦闘は遊びではない。

 命を懸けた戦いであるが故に、こういうことは少なくない。

 誰か戦死者が出る度、戦死者の身元確認の為に現地へ赴き、その持ち物を回収し、遺族や友人、仲間の元へ届ける。

 それもSALF職員の仕事の1つだった。

「おい。こっち来てくれ」

 昨日、愚痴り合った職員に呼ばれて行くと、そこにはぐちゃぐちゃになった死体があった。

「これは、即死だろうな」

「マジかよ……」

 ボロボロになり布切れ同然になったセーラー服。

 粉砕されたガスマスク。

 そしてはじける様に飛び散っている肉片。

 顔などは確認できなかったが、遺留品からこれが、月子だということは2人の目には明らかだった。

 いくら問題行動ばかり起こしていたからと言ってこんな死に方にならなくても良かったのに。

 2人はそう思いながら遺体に手を合わせた。

 ――田中月子、ナイトメアとの戦闘で死亡

 遺留品整理が終わり、職員はそう、PCに打ち込んだ。

 悲しい話だが、珍しい事ではない。

 むしろ日常茶飯事に近い話だ。

 そう言う世界に、彼らライセンサーは生きているのだから。

 そして、慌ただしい日常に呑まれる様に月子の事は彼らの中で風化し記憶から消滅していった。

  ***

 ――2059年、SALF本部――


「ったく、なんなんだよ!!」

「あいつ、頭おかしいんじゃねーの」

 かつて若手だった、今はベテランとなった職員の耳に、若手職員同士の会話が入ってくる。

「まったく。君達、仕事中に無駄口を叩いてる暇があるってことは仕事を増やしていいってことかい?」

「あ、いや……。すみません」

「ライセンサーの事を悪く言うもんじゃない。彼らは世界を守るために頑張っているんだから、敬えとはいわないが、少しは大目に見ないと」

 ばつが悪そうにしている若手に先輩としてアドバイスしてやると、まだ言い足りないのか彼らは口を開く。
「でも、こいつは別ですよ」

「そうですよ。田中月子って言うんですけど知りません?」

 遠い記憶の彼方で聞いたことのある名前に職員は眉をひそめた。

「……そんなライセンサーが、過去にもいた気がする」



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2019年06月25日

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